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News Pick Up 2012年7月第3週

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インディーゲーム界隈のニュースを、俺個人の趣向でピックアップして適当に紹介するよ!

※英語はまだまだ勉強中なので、正確な情報を知りたいときは原文を読んでね。
※なるべく正確な情報を掲載したいため、誤りなどの指摘がありましたらコメント欄、またはhayaniemozuアットgmail.comまでご連絡ください。

XBLA版『Minecraft』が300万本突破 2012/07/20

『Minecraft』を手がけるNotchこと、Markus PerssoがXbox LIVE アーケード版『Minecraft』のセールスが300万本を突破したと、自身のTwitterで明かした。

『Minecraft』は言わずと知れたインディーゲーム界の化物タイトル。XBLA版は2012年5月9日に1600MSPでリリースされ、発売当初から圧倒的な売上を見せていた。オリジナルにあたるPC版よりもバージョンが古いが(今後、アップデートで対応予定)、プラットフォームを移してもその人気は健在どころか勢いを増したといってよいだろう。
なお、Gamasutraの記事によると、7月1日時点で売上上位の『Catsle Crashers』はおよそ290万本。これを超えて唯一の300万本タイトルの栄誉を手にしたことになる(もっとも『Catsle Crashers』の300万本超も時間の問題だろう)。

ソース:
Twitter Notchのアカウント
https://twitter.com/notch/status/226229686055874560
Gamasutra「Xbox Live Arcade sales analysis, June 2012 」
http://www.gamasutra.com/view/news/174307/Xbox_Live_Arcade_sales_analysis_June_2012.php

『Fez』パッチに対する再パッチはなし 2012/07/18

不具合があってパッチ配信の一時取り下げを行なっていた『Fez』の、パッチが2012年7月19日に再度配信された。しかし、このパッチは不具合を修正したものでなく、元の不具合のあるパッチである。

事の顛末について開発のPolytronは、以下のような理由を挙げている。
  • 再度パッチを当てるためには、多額の支払い(万ドル単位。原文ではtens of thousands of dollars)が必要となる
  • セーブファイル削除のバグが生じるのは1%未満のユーザーにしか生じないとが明らかになったこと。また、この数はとても許せるような数ではないが、規模の小さいインディーデベロッパがそんな大金を払うだなんてまったくもって意味を成さない(と感じている)
不具合が生じるのはクリア済み、またはクリア直前のプレイヤーである。したがっていちばん熱心に『Fez』をプレイしたプレイヤーを傷つけてしまうことになってしまい、Polytronは彼らに対する謝罪も述べている。

このほかにも、仮にSteamでリリースされていれば、リリース後の2週間でパッチは無料でリリースできたであろうことや、マイクロソフトのプラットフォームに独占配信することによってお金を得ているように勘違いしている人々がいるが、実際は「私たちが彼ら(マイクロソフト)に払っている」ということに言及しており、少なからず物議を醸した。

現在、該当記事はPolytronのサイトから削除されている。Choke Pointには日本語訳した全文もあるので、気になる方はそちらを参照してもよいだろう。

Choke Point Polytron、『Fez』のパッチを再配信へ「新パッチにはお金が掛かりすぎる」
http://www.choke-point.com/?p=11833

余談だが、Polytronは同日にTwitterの公式アカウントで、『Fez』のXBLA独占配信が数ヶ月で終わると告げている(『Fez』と明言されてないが、該当するのは『Fez』しかない)。
もしかすると別のプラットフォームでも近い将来に配信が始まるのかもしれない。

ソース:
Polytron公式サイト
http://polytroncorporation.com/
Googleキャッシュ Polytron公式サイト「We're not going to patch the patch」
http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:PZZnOUyYuJkJ:polytroncorporation.com/were-not-going-to-patch-the-patch+&cd=1&hl=ja&ct=clnk

英語版DLSiteの誕生1周年記念キャンペーンの結果が発表 2012/07/19

インディーゲーム(この場合は、同人ゲームといったほうが適切かもしれない)のダウンロード販売を行なっているDLSite。英語版の同サイトでは、誕生1周年を記念して英語に翻訳して欲しいタイトルの投票を行なっていたが、2012年5月24日から同6月24日までの投票を受けた結果が発表された模様。

投票の結果、1位となったのは『孤独に効く百合(Lonely Yuri)』という百合をテーマにしたテキストアドベンチャー(公式サイトに倣えば雰囲気百合ノベル)のようだ。作品を手がけたサークル夜のひつじのサイトによると、PC向けのパッケージ、ダウンロード販売のほか、iOSにもリリースしている。
公式サイトを見ても、Twitterアカウントを見ても開発の元に連絡はまだ来ていない(あるいは未確認である)ことが伺え、実際に話しが進み、リリースにこぎつけるまではかなり長い道のりがありそうだ。
2012年7月24日追記
開発の方は、さすがに英語版の話があることを知っている模様。推測になってしまうが、連絡もちゃんと来ていると思われる。



ソース:
へぼるーそん「DLSite英語版の一周年記念投票で、百合ノベル作品が一位となった模様 」
http://hevoluson.blog87.fc2.com/blog-entry-210.html
へぼるーそん「DLSiteの英語版で、『ユーザー投票で一位となった作品を英訳する』という壮大な企画が始まった模様」
http://hevoluson.blog87.fc2.com/blog-entry-202.html
DLSite公式サイト「First Anniversary Campaign!」
http://www.dlsite.com/eng/campaign/anniversary1
『孤独に効く百合』公式サイト
http://yorunohitsuji.xii.jp/p_kodoyuri.html
サークル夜のひつじの中の人のアカウント
https://twitter.com/poroi/

『No Time To Explain』が独自のサマーセールで$3に 2012/07/19

極太レーザーの反動を駆使してステージを突破していく2Dプラットフォーマー『No Time To Explain』が、70%OFFの$3セールを実施中だ。セール価格がいつまで続くのかは不明。基本的にはSteamに対抗してのセールということになるのだろうが、いかんせん公式サイトを見ても言わんとするところがわからなかった。

『No Time To Explain』は$3なら迷わずオススメできる内容。過去に紹介記事を書いたので、気になる方はそちらを参照してほしい。

NYDGamer「今月のオススメ『No Time To Explain』」
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/03/no-time-to-explain.html

ソース:
tiny Build GAMES公式サイト「No Time To Explain Summer Sale! 70% off!」
http://tinybuildgames.com/no-time-to-explain-summer-sale-70-off

Kickstarterで『SpaceChem: Limited Edition』プロジェクトが開始 2012/07/15

化学反応をモチーフにしたパズルゲーム『Spacechem』の開発Zachtronics Industriesが、Kickstarterで『SpaceChem: Limited Edition』のファンドを募っている。限定版を入手したい場合は$25と加えて輸送のための$3の支援が必要となる。

パッケージに含まれるのは以下のもの。
  • Windwos、Mac、Linuxに対応したインストーラ、またサウンドトラック(FLAC、MP3)の入ったサイン入りディスク
  • DLC「63 Corvi」
  • CDキー(恐らくプレイ時に必要になるCDキーのこと)
  • Spacechem仕様の周期表
すでに目標金額は達成されており、目標金額の7倍近い金額が集まっているようだ。今のところ、限定版はKickstarterでしかもらえない予定のようなので、ファンは要チェック。

ソース:
Kickstarter『SpaceChem: Limited Edition』のページ
http://www.kickstarter.com/projects/2131152481/spacechem-limited-edition
『Spacechem』公式サイト「SpaceChem: Limited Edition」
http://www.zachtronicsindustries.com/spacechem-limited-edition/

今週の気になるゲー

『Bonsai Defense』


外敵から実を守りつつ樹木を育てるという変則型のタワーディフェンス。敵の攻撃を凌ぐだけではクリアできず、
果実(から得られるポイント)花から得られる蜜を規定数回収しなければならない。枝は伸ばすだけでなく、剪定することも可能。WindowsとMac向けにリリースされている。無料。

インターフェイスが美しく、画面構成もセンスがある感じで『Eufloria』を思い出す。

ちなみに公式サイトには方丈記の訳文が掲載されており、海外インディーゲームのサイトでそのようなものを見るとは思わず、かなりとても驚いた。
2012年7月27日追記
4Gamerのインディーズゲームの小部屋にて紹介されているので、リンクを貼っておく。また、上記に誤りがあった点を修正した。

4Gamer「インディーズゲームの小部屋:Room#240『Bonsai Defense』」
http://www.4gamer.net/games/040/G004096/20120724067/


ソース:
『Bonsai Defense』公式サイト
http://www.bonsaidefense.com/

まとめ

Steamセール中ということもあってか、穏やかな週だったように思う。あと先週から『ふしぎの城のヘレン』、『LA-MULANA』という2本がおもしろいため、ニュースをあんまりチェックできていないというのもあったり。

さてさて今週はCS機と絡めたニュースが多かった。『Minecraft』は当然というべきかもしれないが、やはり凄まじい売上である。この調子で行けばアップデートもあるし、400万本は堅そう。

日本語の記事もいっぱいあったようなので取り上げなかったが、『Machinarium』がPS Vitaでリリースされるかもとか、SCEが『LIMBO』を独占タイトルにしようとしていたみたい、といったニュースもこの1週間で報道されている。

『Fez』のパッチの件は、致し方ないかなという印象。記事中で紹介したtiny Build GamesもTwitterで「おいおい、XBLAのパッチ作るよりPCでゲーム1本作ったほうが安いだなんてッ!」という旨の発言をしており、やはり小規模デベロッパにとってはパッチリリースにかかる多大な資金は大きな足枷となるようだ。
そろそろ『Tiny and Big: Grandpa's Leftovers』、『ふしぎの城のヘレン 』の紹介記事を完成させたいので頑張る。

レビュー『Tiny and Big: Grandpa's Leftovers』

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レーザーカッターでぶった斬った岩を、ワイヤーで引きずり下ろす。

『Tiny and Big: Grandpa's Leftovers』はそんな豪快な一面を持ったゲームだ。デモ版プレイ時から期待していた作品のひとつで、ひと通りのプレイが終わったので紹介したい。

※開発のご好意により、レビュー執筆用のプロダクトキーをいただいて本作をプレイしている。当然、本レビューもそのプレイを元に構成している。私自身は普段どおりに書いたつもりだが(そもそも嘘を書くのは読者だけではなく、開発や作品に対しても失礼だろう)、一応はその点を踏まえたうえで読んでほしい。

概要

■ジャンル 三人称視点アクションアドベンチャー
■開発 Black Pants Game Studio
■プラットフォーム Win / Mac / Linux
■リリース日 2012年6月20日
■価格 $12.99(価格は公式サイトのもの。これは各種特典が付く。Steamなどでは$9.99)
■入手経路 公式サイト、Steam、GOG.com、GamersGate
■公式サイト http://www.tinyandbig.com/
■プレイ時間 5時間程度(クリアまでは3時間くらい)

開発を手がけるのはドイツ カッセルのデベロッパ、Black Pants Game Studio。同チームはカッセル大学のメンバーを中心に集まった6名からなる小規模デベロッパで、本作は独自開発のScape Engineで開発されている。

リテール版のパッケージ画
Scape Engineは2002年から使われているという年季の入ったエンジン。MOD DBによると *1 、Win / Mac / Linuxに対応するほか、(旧)Xboxにも対応している(いた)ようだ。スクリーンショットを見ると、本作のようなグラフィックスタイルに特化しているというわけでもなさそうであるが、詳細は不明。

*1 MOD DB「Scape Engine」
http://www.moddb.com/engines/scape

BGMは特定のアーティストよるものではなく、異なる12のインディーアーティストを採用するという、変わった形式。全部で18曲が収録されている。

IGF 2011のStudent Showcase Finalist、IGF 2012のTechnical Excellence部門選外佳作(Honourable Mention)選出を筆頭に、さまざまなイベントで各種賞を受賞をしており、個人的にかなり期待値の大きかった作品だ。

エピソード0として『Tiny and Big: Up That Mountain』という作品が前もってリリースされており、現在も公式サイトでダウンロード可能。1レベルのみの収録となっているが、本作の持つエッセンスは十分に感じられる。エピソード1の『Tiny and Big: Grandpa's Leftovers』もデモ版のリリースの予定があるとのこと。

なお、ドイツのAmazon(Amazon.de)だと、リテール版も販売されている。

ゲーム内容

主人公はハイテクマニア(technophile)のTiny。祖父が残した唯一の遺産(と言っても単なる白いパンツ)を取り戻さんと、自身のハイテクデバイスを駆使して宿敵Bigに立ち向かう、というかなり突飛なストーリーだ。
名前とは異なり、Bigより大柄な主人公のTiny
Bigは盗んだパンツを常に頭にかぶっているというクレイジーなキャラクター
一部だけ自動で会話が進む場面が一部存在する
ただ、会話を理解しなくてもゲームを進める分には支障はない
Tinyの使うデバイスはRay Cutter、Sticky Claw、Rocketの3つ。
  1. Ray Cutter:レーザーカッター。オブジェクトを切断する、本作の要とも言うべきデバイス
  2. Sticky Claw:スティッキークロー。ワイヤーの先端に爪がついており、オブジェクトを掴んで引っ張れる
  3. Rocket:手製ロケット。撃ち込んでからジェット噴射することで、オブジェクトを押せる
ロケットはRBを押している間ジェット噴射を行う
私はクリアまでRBを押し続けることに気づかず、あまり使わなかった
これらのデバイスを使いながら、ステージ上を駆けずり回ってBigを追跡し、祖父の偉大なる遺産(= パンツ)を奪還するのが本作の目的。画面や装備品からはTPSっぽいアクションアドベンチャーといった印象を受けるが、本質的にはパズル要素強めの3Dプラットフォーマーというのが適切だろう。敵は存在せず、ヘルスの概念もない。

オブジェクトによって圧死したり、落下死した場合は、(通過時に自動セーブされる)チェックポイントから再開となる。レベルは全部で7つあり、最初のレベルは完全なチュートリアルレベルとなっている。

アクション性はあまり高くなく、タイミング勝負になるようなシーンも極めて少ない。操作はマウスとキーボードのほか、Xbox 360コントローラに標準対応。本レビューはXbox 360コントローラでのプレイを元に執筆している。

ぶった斬れ、押せ、引っ張れ。そして進め

『Tiny and Big: Grandpa's Leftovers』最大の持ち味が、レーザーカッターを使ったアクションパズルだ。

レーザーカッターを使うときはLTを引いたままにして照準を固定し、右スティックで切断範囲を指定する。その状態でLTを離すとレーザーが照射されて、対象のオブジェクトを切断できる。対象を完全に切断できるときは、オブジェクトの縁が青くなり、見た目にもわかりやすくてよい。
右スティックの上下で角度調整、左右で切断範囲を調整する
切断されたオブジェクトや固定されていないオブジェクトは、スティッキークローを使って綱引きの要領で引っ張ったり、ロケットやTiny自身の力で押したりできる(名前はTinyだが、力はTitan並だ)。
自身の数倍はあろうかという巨石も難なく押せるTinyの怪力
スティッキークローはその場でワイヤーを引き戻すことができない。引っ張るときはある程度の空間を確保しよう
これらのアクションを組み合わせることで、柱を倒して橋代わりにしたり、動かした巨大なブロックを足場にして高所に登ったりということを可能にしている。これが本作をプレイするうえでの肝だ。もちろん、レーザーカッターで斜めに大きくカッティングし、坂道を創りだして登ることだってできる。
倒した柱を橋として使うのは常套手段。倒れてくる柱に潰されないように
このゲームメカニックは純粋に楽しいのだが、それをより一層際立たせている要素があるので言及しておく。

まず、かなり大きな、いや巨大なオブジェクトでも切断できる点。これが素晴らしい。

これによってステージがダイナミックに変動し、ほかのゲームでは味わえないプレイ感覚を生み出している。「切る」、「切断する」よりも「ぶった斬る」という言葉を使いたい理由がこれである。ただし、本作は爽快感が魅力となるゲームではないので、プレイ前にその点を理解しておかないと肩透かしをくらってしまうだろう。
レーザーカッターにかかれば、こんな大きな石門でも一気に真っ二つ
第2にプレイヤーの自由が保証されていること。先の点と重複するが、切断できないオブジェクトがほとんどなく、思ったようにアクションできるというのが心地よい。プレイヤーの抱く「これを切ってみよう」はほとんど裏切られることがないため、自身の思い描くまま自由に攻略手順を見つけることができる。

無論、実際にはパズルの解法はある程度決まっている。しかし、ゲーム側はそれをあまり押し付けてこないし、カッティング自体は完全に自由な角度、範囲で行えるため、プレイヤーの意志で世界に干渉しているという感覚が非常に大きいのだ。そういった意味では、自身で望みの解法を見つけ出すサンドボックス型のゲームに近いかもしれない。

ゲームメカニックの活きるロケーション作りは秀逸

ロケーションに関するいくつかの事柄は、高く評価したい。

エピソード0(デモ版)では、ボリューム自体が少ないのでバリエーションに乏しく単調という印象だったのだが、製品版ではこの印象が払拭されており、いい意味で驚かされた。

本作の主だった舞台は砂漠にある古代遺跡だ。遺跡は人が作ったにしては大きめな造りとなっていて、巨大な柱や彫像といったものをよく見かける。特に中盤のレベルでは建造物の大きさに加えて、強い傾斜のある場所や斜め上方向へと登っていくシーンが随所に盛り込まれており、さらにそのスケールを強く感じさせることに成功している。

中盤で訪れる謎の巨大遺跡。外観は独特の雰囲気を放っており、非常によい
レベルごとのコンセプトが明確な点もよい。デモ版では変化に乏しかったビジュアルも、砂漠の遺跡という共通項を持たせつつ、きっちりと変化が見られるようになっている。

また、ゲームメカニック的によじ登っていく場面が多くなってしまうことも、開発はちゃんと把握しているようで、プレイヤーを飽きさせないためのいくつかの工夫が施されている。垂直方向の移動一辺倒にならないように水平方向のパズル要素を設けたり、登るだけではなく遺跡内部へと降りていくといったシチュエーションも用意してあるといった具合だ。
遺跡へと続く道が古いためにところどころ崩れているのも説得力があり、ゲームメカニックとうまく噛み合っている
終盤に訪れる遺跡内部。ビジュアルの変化のみならず、
そこまでの頂上へと登るプレイから、最下層へと降りるプレイに見事にシフトさせている
とりわけインディーゲームはゲームメカニック偏重になりがちだと個人的に思っている。しかし、本作においては、ゲームメカニックの魅力を引き出すロケーション設定、飽きを防止するレベルデザイン(変化の付け方)の双方がかなり秀でていると感じた。

奇抜な設定が活かされた演出

複数の自作デバイスを操る主人公のTinyとは打って変わって、宿敵のBigはテレキネシスで岩石を放り投げたり、ほとんど浮遊して移動するなど、現実離れした設定がなされている。

しかしながら、ストーリーそのものがかなり風変わりであることも影響してか、その設定自体に不自然さはあまり感じない。むしろ飛んできた巨石をレーザーカッターで両断して回避したり、次々と高所へと逃げまわるBigを追わなければならなかったりといったように、プレイヤーに体験させたいシーンを自然と作り出せていると思う。
柱の上を自由自在に飛び回るBig
と言っても常時動いているわけではないのでアクションゲームとしての毛色は薄い
LTを引いている間は、照準の合っているオブジェクトの時間が停止する
落ち着いて操作するための気遣いだ
また、ずいぶんと遅れた紹介になってしまうが、本作ではマンガ的な表現がされているのも特徴だ。スクリーンショットからトゥーンレンダリングが用いられているのは一目瞭然だろう。さらに最たるものが効果音が可視化されている点である。

レーザーでオブジェクトを切断するとき、オブジェクトが音を立てて地面に落下したときなどに効果音とともに、音が文字となって表示される。例を挙げると、レーザーがオブジェクトに当たるときに「FIZZLE!」、スティッキークローがオブジェクトを掴んだときに「POK!」、轟音とともにオブジェクトが落下したときに「GENASH!」などの文字が飛び出る。
効果音の可視化はこんな感じ。おかげでアクションの手触りが一回りよくなっている
これがコミカルな世界観とダイナミックなゲームプレイにマッチしており、画面が寂しくなりがちなパズルアクションの性質をうまく補なっている。

せっかくだからカットシーンもコミック風のコマ割りっぽい演出を入れるなどしたほうがおもしろいと思うのだが、そこまでは手が回らなかったようだ。Bigのアクションもコマ割りから飛び出すような演出と組み合わせれば、さらに魅力的なシーンづくりをできたはず。全体の感触がよいだけに非常にもったいないと感じた。
こんな風にコマ割りすれば、それだけで統一感も生まれてよさそうな気がするのだが
(写真は私が画面写真を編集して作成したもの。雑で申し訳ない)

リプレイを促すコレクション要素は練り込み不足

本作ではリプレイを推奨する要素がいくつか存在している。
  • カセットテープ:ステージ上のカセットテープを入手することでBGMを増やせる
  • 石ころ(Boring Stone):単なるコレクション。集めるだけの存在
  • アーケードマシン:各レベルに1つ存在。専用の短いレベル(アクティビティ)をプレイできる
  • ステージ成績:レーザーの使用回数、死亡回数、クリアタイムなどが記録されランキング化される
とコンテンツ自体は充実しているのだが、残念ながらこれらはうまく機能しているとは言いがたい。
カセットテープ(BGM)の収集状況は、ポーズメニューのPOSSESSIONSから確認可能
コレクション要素は死んでリトライした場合、取り直しになってしまうことが大きな問題。すなわち行きも帰りも失敗せずに取らねばならず、仮に入手に成功したとしても、次のチェックポイントまでに死んでしまえばやり直しとなってしまうのだ。特に石ころは進むべき方法を示す、マリオにおけるコインのような役目も果たしているのだが、集めることによるメリットがなく、必要性をあまり感じなかった。

恐らくステージクリア時の成績とコレクションとを絡めた弊害だと思う。しかしながら、これらはステージ成績とは独立させたほうがよかったし、そうでなくとも取り直しが必要となるシステムは避けるべきだった。開発者としてはいろいろな場所に足を運んでもらいたいという想いが強いのだとは察するが、プレイヤーがコレクションする必要性を感じなければ本末転倒である。

なお、コレクションの隠し場所は、ほとんどが道中と脇道で入手できる反面、かなり難易度が高めなものが少なからず存在している。

ゲーム側でそこに至る道筋をフォローしていないのは個人的にはあまり好きではないけれども、ユーザーによる攻略情報が充実してくればさして問題ではない、という考え方もできるだろう。ただし、それはあくまでゲーム自体が盛り上がった場合のことなので、状況によっては開発側から情報を開示していく(開発のブログにヒントを載せるなど)姿勢が求められる。

カセットテープは『Grand Theft Auto』や『Saints Row』などでお馴染みのシステムで、悪くはないが、よくもないといった印象。楽曲自体は個人的に悪くないと感じるし、任意のタイミングで好きな曲を聴くこともできる。その一方でBGMを使った演出がスポイルされてしまったかな、という印象が拭えない。

開発者にはこだわりをもってシーンに合わせた曲を選択してほしいというのが個人的な願いだ。
ステージ上には開発者を模した、
古代の神々のオブジェクトが隠されており、実績にも絡んでいる 

総括

『Tiny and Big: Grandpa's Leftovers』はありふれた3Dプラットフォーマーを文字通り一刀両断する、インディーゲームらしい意欲的な作品だ。

エキセントリックなストーリーとキャラクター設定は人を選ぶかもしれないが、ダイナミックなパズルアクションは眼を見張るべき出来栄えである。岩を切り出し、足場を作るのはなにも古代人だけではないのだ。Tinyが手にしたレーザーカッターとスティッキークロー、それにロケット、そしてなによりもプレイヤーの想像力(創造力と言ってもいいだろう)が、パズルの解法を創りだしていくプレイフィールは特筆に値する。

コレクション要素はやや退屈ながらも、レベルデザインやコミカルな演出といった部分は秀でており、プレイヤーを飽きさせない工夫もちゃんとある。特にロケーションは魅力的で見せ方も申し分ない。

奇抜な世界観に尻込みする必要はない。そのような不安はレーザーカッターが切り落とし、ロケットが遥か彼方に吹き飛ばしてくれるだろう。爽快感を得るようなゲームではないが、サンドボックスのような創造力を刺激するゲームを求めるなら、『Tiny and Big: Grandpa's Leftovers』はうってつけのタイトルと言える。

2012年8月5日追記
上記、総括部分の英語バージョンを追加した。

Overall

“Tiny and Big: Grandpa's Leftovers” is an ambitious work as indiegames which slashes cliche 3D platformers.

Someone like the eccentric story and character settings the other don’t like. However it is exquisitely-executed that this dynamic puzzled action game. Cutting rocks, making platforms, not only ancients but you also do so. It deserve special consideration that you feel unique game play by solving puzzles when you use your imagination through Tiny’s laser cutters, sticky claws and rockets.

Although collecting is somehow boredom, it is pretty good in terms of level design and comical descriptions. So it is designed not to bore players. Especially, the game settings are amazing, staging perfect!

Don’t hesitate to eccentric world view. Tiny’s laser cutter slashes off the worries, the rocket lauded with anxiety launches space off! The game play is not so brisk, but if you want to be tickled the imagination like good sandbox games, you must play “Tiny and Big: Grandpa's Leftovers”.

Translated by(英訳したのはこの人)
死に舞
@shinimai

ファーストインプレッション『LA-MULANA』

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2012年7月29日修正
画面写真のアスペクト比が正常ではなかったため、アスペクト比を修正して差し替えた

先月リリースされたPC版『LA-MULANA』がおもしろい。

・・・・・・のだが、クリアまではまだまだ時間がかかりそうである。レビューはクリアしてから書くというのが私の基本スタンスとはいえ、このままでは旬の時期を逃してしまうので、ファーストインプレッションとして現段階での『LA-MULANA』の評価を綴ってみたい。

ファーストインプレッションということで、リリースに至るまでの経緯や開発チームの情報といったものは省略した。また、プレイ途中であるために最終的な評価が覆る可能性もあるのは留意してほしい。

なお、プレイ時間はゲーム内時計で5時間程度だが、リトライが多く、これは正確ではない。体感的には、10時間程度だと思われる。

『LA-MULANA』ってどんなゲーム

本作は『メトロイド』や『悪魔城ドラキュラ』シリーズに代表される、フィールド探索型の2Dアクションゲーム。フィールドを行き来して謎を解き、プレイヤーの能力を徐々にアップグレードさせて探索範囲を広げていくというゲームだ *1 。

*1 海外では、2つの代表作から名をとって「Metroidvania」と呼んだりする

『スーパーマリオ』シリーズのようなシームレスに画面がスクロールする方式ではなく、画面端に行くと隣接するエリアに画面がスクロールする方式を取っている。画面構成は異なるが、2Dの『ゼルダの伝説』シリーズを想像すればわかりやすいだろう。

主人公は考古学者のルエミーザ博士。彼を操り、タイトルにもなっている巨大な古代遺跡「LA-MULANA(ラ・ムラーナ)」の謎を解くのが、本作の主な目的だ。
古代遺跡と言えばまっさきに思い浮かべる人も多いであろう、ピラミッド
『LA-MULANA』公式サイト
http://la-mulana.com/

PLAYSIMで1200円で購入可能

PLAYISM「LA-MULANA」
http://www.playism.jp/games/lamulana/

雰囲気とマッチした探索、そして謎解きが秀逸

同ジャンルの始祖とも言うべき、『メトロイド』や『悪魔城ドラキュラ』より秀でていると感じたのが、『LA-MULANA』の探索と謎解きのおもしろさである。

先達である両シリーズは、プレイヤーの持つ探索能力の拡張に比重が置かれている。2段ジャンプができるようになって高所に登れるようになるとか、特定のオブジェクトを破壊できるようになって探索エリアが広がるといったものが、例として挙げられる。

一方の『LA-MULANA』は、プレイヤーの洞察力や推理力といった部分に比重が置かれている。主な解法を列挙してみよう。
  • オブジェクトを叩いて壊す
  • 一見、進めないように見える場所に足を踏み入れる
  • 台におもりを置いて、仕掛けを作動させる
  • ブロックを特定の床に移動させる
多くの謎解きはこれらのいずれかに該当する。しかし、謎解きは一筋縄ではいかないものばかりだ。これらを見つけるために、先に述べたようにプレイヤーの洞察力が必要となるためである。

怪しいオブジェクトを見つけるのも、進めないように見えて進める場所を見つけるのもプレイヤー自身の力によるところが大きいのだ。それでいてヒントはちゃんとゲーム内に提示されており、気をつけていれば怪しい部分がわかるようになっている、という点が非常に素晴らしい。

謎解きには画面から怪しい部分を見つけるようなもののほかに、フィールド内に点在する石碑に書かれたメッセージがヒントになっているものも多数存在する。

例えばゲーム序盤で発見できるメッセージに次のようなものがある。
白き箱を押す者よ。
白き床は白き箱とひかれあう。
さすがにこれはわかると思うので答えを書いてしまうが、これは先に挙げた「ブロックを特定の床に移動させる」というもの(『ゼルダの伝説』とかでよくある)を示したものだ。
白い床に白いブロックが乗ると、ブロックの中心部が赤く点灯する
石碑(画面右側)のほか、白骨死体(画面中央下部)を調べてもヒントが得られる
ヒントをくれる少女ムーブルグ。語り口がいちいちかわいらしい
このようにヒントをゲーム内で自然に提示し、かつそれがゲームの雰囲気(遺跡探索)と合致している点を私は高く評価したい。アクションの楽しさが主軸となっていた先輩作品よりも、探索の楽しさが主軸となっている点も実に興味深い。

公式ガイドブックでは「遺跡探索考古学アクション」という言葉が使われているが、この言葉に一切偽りはない。あるとすれば冒険劇である点が抜けていることだろう。したがって私は「遺跡探索考古学アクションアドベンチャー」とするのが、くどいながらも妥当だと思う。

ちなみに謎が解けなければ一生そこで詰まる、という危険性を多分にはらんでいるのも先輩作品と同様である。

高難易の意味するところ――それはビターな味わいか、はたまた毒か

開発チーム自らが口にするように本作は難しい。高難易度の主要因は、以下の2点である。
  • ジャンプ軌道
  • ライフ管理
まずはジャンプ軌道について。本作ではジャンプしたあとにその軌道をほとんど変えることができない。例えば離れた足場に向かってジャンプしたあと、敵がいるのに気づいて軌道変更し、元いた足場に戻るというようなことができない。つまり1度ジャンプしてしまったら戻れないのだ(垂直ジャンプは例外)。

このような仕様は昨今まったくといっていいほど見かけないが、かつての名作2Dアクション『魔界村』シリーズが同様のジャンプシステムを採用している。

この仕様によって、1回のジャンプの重みが想像以上に大きい。慣れるまでは、とにかくこれが文字通りプレイヤーの足枷となるだろう。
水中での操作はさらに難易度が上昇する
次にライフ管理。『LA-MULANA』では、ほかのゲームで見かけるような瞬時にライフ回復するアイテム(ハートなど)がない。ライフを回復するためには、ライフ総量相当のソウル(倒した敵が落とす)を集める必要があるのだ。

このため、ダメージの蓄積がのちのちに与える影響がかなり大きい。「ボス戦にたどり着くまでに瀕死になっていた」のでは、ボスに瞬殺されてしまうのがオチだ。特にライフの総量が少ない序盤はこの傾向が顕著となっている。
なかには炎の噴き出るような場所も。罠の類は総じてダメージが大きい 
地上などにある温泉を使えば、ライフはすぐに全回復できるのだが……
さて問題は、この2点をプレイヤーがどう捉えるかだろう。この問いに答えるのは至極簡単だ。

私は好きだ。
そしてこの仕様が嫌いな人に『LA-MULANA』は向かない。

これだけである。

本作はこの仕様に合わせて作られている。侵入者の命を絡めとる数多の罠、離れた足場までの距離、雑魚の動きからボスの攻撃パターンに至るまで、おおよそほとんどのレベルデザインがピタリとこれに当てはめて作られているのだ。それは一種の美しさを秘めているとさえ言える。

こういったシステムを取っている(主に古い)高難易度のゲームはワンミスで、何度も同じことをさせる場面が少なくない。過去の『ロックマン』シリーズにおける垂直に登っていくステージなどが最たる例として挙げられる。

もちろん、『LA-MULANA』にもそういった面がないわけではない。その一方で「私が単に難易度を高めるならこうするな」という部分はそうなっていないことが多く驚かされる。きっとあえてそうしていないのだと思う。ルームガーター、ガーディアンといった中ボスやボス格の敵までの道のりも、決して短いものではないが、長すぎるというわけでもない。

このような安易な難易度上昇を避けた丁寧なレベルデザインは、まさにエレガントと形容するべき内容である。
ボスはパターンを見つけて、それにハメるような趣が強い
そういったものが苦手なプレイヤーは合わないかもしれない

バランスが悪いかな、と思うところ

ちょっと熱が入ってしまったが、気になる点がないわけではない。美点に比べれば些細なことだと認識しているので、列挙するのに留める。
  • 入手すべきなのに、明らかに入手できていないアイテムがある
  • 地上に戻ってのライフ全回復が面倒(温泉が近ければよかった)
  • サブウェポンの弾が購入しないとほとんど手に入らない
  • 序盤の難易度の高さ *2
*2 どうやら最初に倒せるガーディアン2体(公式ガイドブックにも載っているアンフィスバエナ、サキト)をとばして進めていたようなので、それが一因となっているかもしれない

※2012年10月19日追記
ずいぶんと記述が遅れてしまったが、下記の問題点は最初のバージョンのみのもので、すでにアップデートにて解決済みである。

一部の環境ではセーブできないなどの問題が生じるようだ。私も同様のトラブルに見舞われた。『LA-MULANA』起動時に「管理者として実行」することで回避できるので、トラブルが起きた場合は試してみるといいだろう。

なお、フリーズしたのをAlt +F4で強制終了してもBGMが消えないようである。その場合は、タスクマネージャーのプロセスタブから「LaMulanaWin.exe」を終了させればよい。

まとめ

『LA-MULANA』は、開発者からの正々堂々とした挑戦状だ。遺跡にはたくさんの罠が待ち構え、頭を悩ます謎解きがいくつも存在する。しかし、ゲーム中にはちゃんと手がかりが散りばめられており、解いてみれば納得いくものばかりだ。

己の観察眼、推理力、アクションゲームのスキル。これらが一体となって、初めて彼らとの戦いの舞台に立てる。いずれもが欠けてはならないが、すべてを結集して「LA-MULANA」を踏破したときがプレイヤーの勝利である。そうすれば開発からの惜しみない賛辞も期待できよう、というものだ。

近年稀に見る、開発者との崇高な戦いの舞台、それが『LA-MULANA』である。「正面切って開発者と戦うなら、本作をおいてほかにはない」と結論づけてもあながち間違いではあるまい。

News Pick Up 2012年7月第4週

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インディーゲーム界隈のニュースを、俺個人の趣向でピックアップして適当に紹介するよ!

※英語はまだまだ勉強中なので、正確な情報を知りたいときは原文を読んでね。
※なるべく正確な情報を掲載したいため、誤りなどの指摘がありましたらコメント欄、またはhayaniemozuアットgmail.comまでご連絡ください。

PLAYISMにて本物の伊勢海老が当たる、異色のキャンペーン始まる 2012/07/27

インディーゲームのローカライズ、ダウンロード販売を行うPLAYISMは、同サイトでの『NEO AQUARIUM -甲殻王-(以下、甲殻王)』のリリースを記念して、『甲殻王』の早期購入者に伊勢海老が当たるという、恐ろしく奇抜なキャンペーンを行なっている。
2012年8月12日までに『甲殻王』を購入した人の中から、抽選で1名に本物の伊勢海老が当たるとのこと。1名は予定らしいので、キャンペーンが好評なら当選人数が増える可能性もあるのかもしれない。

『甲殻王』はイセエビやズワイガニといった水棲生物たちが戦う3Dアクション(シューティング的色合いが強い)。2012年春に販売が始まっていたが、ダウンロード版の製品は今回が初めてとなる。製品版のリリースは8月3日で、デモ版はすでにダウンロードが可能。価格は800円で予約購入者は20%OFFの640円で購入できる。

なお、英語版PLAYISMでは『NEO AQUARIUM(『甲殻王』の英語版のタイトル)』の早期購入者向けに、(海老っぽい)浴衣を1名、扇子を5名に当たるキャンペーンを行なっている。

ソース:
PLAYISM『NEO AQUARIUM -甲殻王-』
http://www.playism.jp/games/neoaquarium/
『NEO AQUARIUM -甲殻王-』公式サイト
http://www.neoaq.net/
英語版PLAYISM『NEO AQUARIUM -King of Crustaceans-』
http://www.playism-games.com/games/neoaquarium/

Nifflasの最新作『Knytt Underground』が発表 2012/07/26

『NightSky』や『Saira』などで知られるスウェーデンのデベロッパNifflasの新作『Knytt Underground』について、多数の海外ゲームメディアが報じている。

『Knytt Underground』は、同じくNifflasの手がけた2Dプラットフォーマー『Knytt』、『Knytt Stories』の続編にあたる作品。PS3とPS Vita向けに2012年末にリリースされる予定となっており、Win / Mac / Linux版の計画もあるとのこと。

『Cave Story』などで知られるNicalisと開発、パブリッシングを行なっていた『NightSky』とは異なり、Green HillとRipstone Publishingという会社とパートナーシップを結んで開発、販売が行われるようだ。

恐らくNifflasの公式サイトで、「The Great Work」という名で紹介されていた現在進行形のプロジェクトが『Knytt Underground』なのだと思われる。

「The Great Woks」は、シルエットで描かれた地形と幻想的な色合いが印象的で、『NightSky』に近いビジュアルだった*1。しかし、今回の報道で掲載されているスクリーンショットを見ると、『NightSky』のそれをベースとしつつも、カラフルな色合いの背景も多数ある模様。

*1 YouTube「The Great Work (the game) Trailer」
http://www.youtube.com/watch?v=QRsUCyYp5F8

『NightSky』はビジュアルのみならず、音楽、レベルデザインともに高いレベルでまとまっていたお気に入りの作品なので、ぜひともプレイしたい。

ソース*2
Nifflas公式サイト
http://nifflas.ni2.se/
The Indie Game Magazine「KNYTT UNDERGROUND IS COMING TO PS3 / PSN LATER THIS YEAR」
http://www.indiegamemag.com/knytt-underground-is-coming-to-ps3-psn-later-this-year/#.UBYN3GQj4qc
IndieGames.com「Nifflas to Create Knytt Underground for PlayStation, PC」
http://indiegames.com/2012/07/nifflas_to_create_knytt_underg.html
Rock, Paper, Shotgun「Knytt Underground coming to PSN and Vita」
http://www.eurogamer.net/articles/2012-07-27-knytt-underground-coming-to-psn-and-vita

リリース全文(らしきもの):
USEDN REVIEWED「Acclaimed PC platformer Knytt Underground coming to Playstation 3 and PS Vita」
http://usednreviewed.com/acclaimed-pc-platformer-knytt-underground-coming-to-playstation-3-and-ps-vita/
develop「NIFFLAS, GREEN HILL AND RIPSTONE PUBLISHING ANNOUNCE STRATEGIC PARTNERSHIP」
http://www.develop-online.net/press-releases/89066/Knytt-Underground

*2 一次ソースにあたるものが見つからなかったので、いくつかのメディアの記事を掲載する。また、プレスリリースの全文と思われる記事も同様に掲載しておく。

ジェットパック&ランな3Dプラットフォーマー『Cloudbuilt』発表 2012/07/23

スウェーデンのデベロッパCoilworksは、3人称視点の3Dプラットフォーマー『Cloudbuilt』を発表した。公開されたトレーラーを見た感じではジェットパックを使った高速移動や大ジャンプのほか、垂直駆け上がりを含むウォールラン、スライディングなどアクション要素がかなり強めで、爽快感の高い作品となりそうだ。

公式サイトによるとオールドスクールなプラットフォーマーを目指して開発されているらしい。また、シューター要素を持ち、全レベル(20を越える数が用意)においてプレイヤーが独自にルートを見出すようなつくりとなっている、とアナウンスされている。
開発のCoilworksは、これまで『Ovelia: The Wake』という作品を手がけており、そちらも反重力ブースター(anti-gravity booster)やウォールランなどを用いた内容だったようだ。そして、この『Ovelia: The Wake』からいくつかのエッセンスを抜き出し、さらに焦点を絞って開発されているのが『Cloudbuilt』ということらしい。

なお、『Ovelia: The Wake』自体はまだ完成していないが、「開発がキャンセルになったわけではない」とCoilworksは明言している。『Cloudbuilt』で弾みをつけてから、改めて開発に着手するのだと思われる。

ソース:
『Cloudbuilt』公式サイト
http://coilworks.se/cloudbuilt/
Coilworks公式サイト
http://coilworks.se/
Mod DB『Ovelia: The Wake』
http://www.indiedb.com/games/ovelia-the-wake

『異聞イワナガ』動作確認バージョンがリリース 2012/07/28

アクションシューティング『異聞イワナガ』の動作確認バージョンがリリースされている。
『異聞イワナガ』は、シューティングツクール95製のアクションシューティング『奇譚イワナガ』のリメイク版にあたる作品。リメイクといってもグラフィックは2D表示から3D表示へと変更がなされ、開発者自ら「内容的にはゼロから見直してるので 全くの別物と思われます。」と口にするほど手が加えられている。

本作は異なった属性を持つ2人のプレイヤーキャラクター切り替え、同属性の敵弾にプレイヤーの弾を当てると相殺するシステムなどが特徴で、トレジャーの『斑鳩』や『シルエットミラージュ』をどこか彷彿とさせる。

なお、動作確認版のダウンロードは2012年8月12日まで。

ソース:
虚ろ舟公式サイト
http://kerubin.web.fc2.com/
開発者公式ブログ 目が虚ろ「異聞イワナガ(仮 デモ映像」
http://kerubinblog.blog104.fc2.com/blog-entry-138.html

『Sanctum』Mac版ベータが開始 2012/07/25

タワーディフェンスに、FPSの要素を組み込んだゲーム『Sanctum』にMac版ベータの知らせが届いている。

すでにSteam上で『Sanctum』を所持している人は、ライブラリ上に『Sanctum Beta』が登録されているほか、専用フォームでテスターとして登録すればキーが発行される。

Mac版『Sanctum』は開発のCoffee Stain Studiosのサイドプロジェクトとして極秘裏に進められていたそうだが、そろそろ『2』の情報も開示されるころではないだろうか。あと個人的には日本語をどうにかしてください。

ソース:
Indie DB『Sanctum』Sanctum Mac Coming Soon!
http://www.indiedb.com/games/sanctum/news/sanctum-mac-coming-soon
ベータテスター登録フォーム
https://docs.google.com/spreadsheet/viewform?formkey=dHlCVGJjUkxUSHNsVnM1eFF1VWw2NHc6MQ#gid=0

今週の気になるゲー

『MLP: Fighting is Magic』

『My Little Pony』のキャラクターたちが戦う格闘ゲーム。

『My Little Pony』は女児をメインターゲットとしたコンテンツ(アニメやおもちゃ)でありながら、男女問わずに(一部の)大人にも人気のある、日本で言う『プリキュア』シリーズのような作品。ターゲット層が異なるが、日本で『月姫』の世界観をベースに『MELTY BLOOD』が開発されたのに似ているかもしれない。

Hasbro社が権利を持つ『My Little Pony』フランチャイズに基づいた作品であるため、本作は非営利のプロジェクトとして進められており、フリーウェアとしてリリース予定。2D格闘ゲームツクール2nd(2D Fighter Maker 2002)で製作されている

初期は使用キャラクターとして6キャラクターが予定されており、無料のDLCによって17キャラクターに拡張予定だという。グラフィックは手描きだそうだ。

ゲーム内容は『GUILTY GEAR』シリーズのようなコンボゲーのようで、4ボタン操作(Light / Medium / Hard / Magic)を採用。ローカル、オンラインでの対戦がサポートされるほか、ストーリーモードの収録も予定している。

ソース:
『MLP: Fighting is Magic』公式サイト
http://www.mane6.com/p/mlp-fighting-is-magic.html

『Recruits』

『Recruits』はスカッドベースのトップダウンシューターで、現在アルファファンディング中。SFめいた設定が多いと感じていた同ジャンルのなかで、リアル寄りの設定を採用しているようなので、個人的に本作は注目している。

『Recrutis』でフィーチャーされている要素をいくつか列挙してみる。
  • スピード感のあるアクション
  • マシンガン、グレネード、爆発物や近接攻撃といった多彩な攻撃
  • 戦車、ヘリコプター、ジープなどの車輌
  • バリエーションに富んだレベルデザイン(ジャングル、都市、砂漠、雪、夜戦)
  • アップグレードシステム(能力上昇のほか、特殊能力取得もあるっぽい)
  • シングルプレイに加えて、マルチプレイも搭載
公式サイトが謳っているだけなので、実際のところどうかはわからないが、やはりおもしろそうである。ちなみにアルファ版ということで動作はまだ安定していない部分もあるようだ。Desuraでは67%OFFの$4.95で購入できる。

ソース:
『Recruits』公式サイト
http://recruitsgame.com/
Desura『Recruits』
http://www.desura.com/games/recruits

『Outsmart!』

キャラがかわいい。以上……だけではちょっとあれなので。

主人公は25歳の夢見る乙女Anneite。ヤル気のないボーイフレンドの尻を叩いて、$50,000を集めるシミュレーションゲーム。ちょっとしかプレイしていないのであまりわからない。

ちなみにサブタイトルは「All your base are belong to us.」をもじった「All his money are belong to us.」

ソース:
KONGREGATE『Outsmart!』
http://www.kongregate.com/games/stellarNull/outsmart
『Outsmart!』公式サイト
http://outsmart.stellar-0.site40.net/

今週の注目トレーラー

Hawken Web Series Trailer

期待のメカアクションTPS『Hawken』に関して、2013年にWebで公開予定の実写映像のトレーラー。

詳しくは知らないので省略するが、それなりの顔ぶれを集めて作ってるっぽい。とにかく見よう!

ソース(ではないけど一応):
http://www.playhawken.com/

まとめ

スウェーデンのデベロッパの動きもさることながら、やはり今週は伊勢海老のインパクトが最大だったかな、という印象。SteamやGOG.comには真似できない(真似しない)異色のキャンペーンなので、私も『甲殻王』は購入してみようかなと思う。

PLAYISMでは『甲殻王』に続いて、BGMからシューティングステージを生み出すという意欲作『Symphony』もリリース予定。ゲーム自体はこちらのほうが気になっている。なお、『Symphony』は予約購入すると20%OFFになるが、これはSteam版も同じ。価格は微妙にSteam版のほうが安いが、日本語は入っていないと思われる。また、英語版PLAYISMでは、Steamと同等の価格で提供されている。

バンドル系のニュースはさまざまなところで情報が得られると思って、今回も省略したが、やはり掲載したほうがいいのだろうか。今後の課題として考えてみたい。

News Pick Up 2012年8月第1週

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インディーゲーム界隈のニュースを、俺個人の趣向でピックアップして適当に紹介するよ!

※英語はまだまだ勉強中なので、正確な情報を知りたいときは原文を読んでね。
※なるべく正確な情報を掲載したいため、誤りなどの指摘がありましたらコメント欄、またはhayaniemozuアットgmail.comまでご連絡ください。

コミックマーケット82、開催迫る

言わずと知れた同人活動最大級のイベント、コミックマーケット82の開催が迫っている。開催日は2012年8月10日~同12日で、東京ビッグサイトにて行われる。

日本の同人ゲーム(英語ではIndie Gameではななく、あえてDoujin Gameと呼ぶことが多いようだ)も多数出展されるため、一部の海外インディーゲームメディアでも幾度か取り上げられている。もしかすると第2、第3の『まんけん!(英題:Cherry Tree High Comedy Club)』、『SATAZIUS』*1が登場するのは今回のコミックマーケットからかもしれない。

*1 いずれもNyu Mediaによってローカライズされて海外展開した同人ゲーム。同社では上記2作品のほか、『Ether Vapor Remaster』、『eXceed』シリーズ、『花咲か妖精フリージア(英題:Fairy Bloom Freesia』を手がけている(『花咲か妖精フリージア』は未リリース)

えーでるわいすのなる氏が、同人ゲームまとめの動画を作ってくれているようなので貼っておく。

ソース:
コミックマーケット公式サイト
http://www.comiket.co.jp/
Nyu Media公式サイト
http://nyu-media.com
えーでるわいす公式サイト「C82 同人ソフトまとめ動画 企画要項」
http://edelweiss.skr.jp/info/c82pv/c82pv_plan.html

HTML5版『Spelunky』が登場 2012/07/30

先日、Xbox LIVE アーケードでHD版がリリースされたばかりの『Spelunky』が、ブラウザ上で動作するHTML5へと移植された。

移植を行ったのはDarius Kazemi氏で、最初の移植作業には3時間を要したとのこと。もともとオリジナル版の『Spelunky』はYoYo GamesのGameMakerで製作されており、GameMakerが1年前にHTML5に対応したので移植自体はさして難しいことではないらしい。ただし、氏は「『Spelunky』が複雑なゲームだったためにちょっと難しかった」と付け加えている。

リリース時はサウンドが鳴らない、スコアが保存できないなどの問題を抱えていたが、YoYo Gamesの協力もあって現在は全体的にパフォーマンスが向上した模様。私の環境では最初のステージが始まった時点で操作ができなくなってしまったが、気になる人はプレイしてみてもいいだろう。なお、オリジナル版の『Spelunky』はフリーゲームである。

ソース:
HTML5版『Spelunky』
http://tinysubversions.com/game/spelunky/
Tiny Subversions(移植した人のブログ)「Spelunky HTML5」
http://tinysubversions.com/2012/07/spelunky-html5/
『Spelunky』公式サイト
http://spelunkyworld.com/
YoYo Games「GameMaker」
http://www.yoyogames.com/gamemaker

『QWOP』のBennett Foddy氏の最新作『CLOP』がリリース 2012/08/04

操作が異常に難しい陸上ゲーム『QWOP』を筆頭に、操作と挙動が独特な奇ゲーを連発してきたBennett Foddy氏が最新作『CLOP』をリリースした。今までの作品と同じくブラウザ上で動作する。フリー。

『CLOP』は『QWOP』の主人公がユニコーンになったようなゲーム。H、J、K、Lの4つのキーでユニコーンの四肢を操作し、ゴール地点にいる少女を目指すといった内容だ。なお、タイトルの「CLOP」は馬が歩くときの擬声語で、日本語だと「パカラパカラ」あたりが当てはまる。

今年の2月に『2QWOP』、7月に『SUN GOD』をリリースしたばかりにも関わらず、勢力的な活動が続いており、ただただ驚くだけである(ゲーム内容に関する驚きを含む)。

ソース:
『CLOP』
http://www.foddy.net/CLOP.html
FOODY.NET
http://www.foddy.net/

今週の気になるゲー

『Krautscape』

新作というわけではないのだが、たまたま知ったので紹介。

『Krautscape』はマルチプレイ専用(最大4人)のレースゲーム。あらかじめ決められたコースを走るのではなく、先頭を走るプレイヤーの行動に合わせてコースが自動で生成されるというのが最大の特徴。コースの右側を走り続ければ、右カーブが出現し、中央を走り続ければストレートのコースが生成されるといった感じのようだ。また、ウィングを広げてショートカットすることもできる。

複数人いないとプレイできないっぽいのが難点だが、内容自体は非常に気になる。先頭が有利な気もするのだが、どのようにバランスを取っているのだろうか。

ソース:
『Krautscape』公式サイト
http://www.krautscape.net/

今週の注目トレーラー

『Battlezone: Airhunt』

『LIMBO』のようなビジュアルスタイルの2D横シューティング。自機はヘリで、機銃とロケット、それにホーミングミサイルを武器として使える。ローカルでの2人COOPにも対応している。HUDレスっぽい画面で、自機へのダメージ表現とスコアをどう表現しているのかは不明。

現在はDesuraでアルファファンディング中で、デモ版も用意されている。

最低でも4人は参加できるマルチプレイ(デスマッチ、チームデスマッチ)を搭載予定とのこと。

ソース:
Desura『Battlezone: Airhunt』
http://www.desura.com/games/battlezone-airhunt

まとめ

時間が取れずに短い内容になってしまった。申し訳ない。

取り上げていないところでは、『Minecraft』がバージョン1.3.1へアップデート、PC版『Awesomenauts』のリリースなんかがある。

それと『Dear Esther』を手がけたthechineseroomの新作『Everybody’s Gone to the Rapture』に関する情報が明らかになっていて、かなり気になっている(以下に貼るdoope!の記事が詳しいので取り上げなかった)。『Dear Ether』よりも舞台へとインタラクトする要素が強まっているみたいで、どんな内容になるのか期待半分不安半分といったところかな。

doope!「Dear Estherの精神的後継作品『Everybody’s Gone to the Rapture』のスクリーンショットが登場、興味深いディテールも」
http://doope.jp/2012/0723716.html

今週末のコミケは行かない予定だが、どのような作品が登場するのか楽しみである。

レビュー『ふしぎの城のヘレン』

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やや不作気味に感じた上半期の印象を払拭するかのように、私の前に現れた2012年下半期最初のお気に入りゲームが『ふしぎの城のヘレン』だ。リリースは2011年末ということで、今年のベストゲームと形容しがたいところはあるのだが、ポテンシャルとしては十分で「とにかくおもしろかった」というのが率直な感想。

ほかの人にもぜひプレイしてみてほしいと感じさせるものだった。というわけでレビュー。

なお、あまりに本作が気に入ってしまったので、製作のさつ氏にインタビューを行った。後日、掲載予定である。

2012年8月15日追記
インタビュー記事を掲載しました

関連記事:『ふしぎの城のヘレン』製作者インタビュー
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/08/blog-post_15.html

概要

■ジャンル RPG
■開発 さつ
■プラットフォーム Win
■リリース日 2011年12月23日
■価格 無料(フリーソフト)
■入手経路 公式サイト
■公式サイト http://www.geocities.jp/i_to_may/
■プレイ時間 6時間程度(公式サイトによると4時間程度)

『ふしぎの城のヘレン』は、RPGツクール2000(英語版はRPG Maker 2000)で作られたRPG。製作したのは、さつ(チームではなく個人)氏。フリーソフトである。

2ちゃんねる発祥のイベント「VIPRPG紅白2011」に提出された作品のうちの1つで(全77作品が提出されている)、イベント公式サイトの投票の結果、ほとんどの部門で上位に入賞している。また、最優秀作品にいちばん近しいマイベスト部門では1位に選出された。参考までに各部門での成績を記載しておく。
  • マイベスト部門:1位
  • テクニック部門:2位
  • グッドバランス部門 : 1位
  • ユーザビリティ部門 : 1位
  • シナリオ部門 : 2位
  • 雰囲気部門 : 1位
  • 演出部門 : 1位
残りのいやらしさ部門、テラワロス部門、これひど部門では上位入賞していない。詳しくはイベント公式サイト参照のこと。

VIPRPG紅白2011 - 投票所 投票結果
http://vipkohaku2011.web.fc2.com/page07_1.html

プレイに際しては、RPGツクール2000 RTP(ランタイムパッケージ)が必要となる。

ファミ通.com - RPGツクール2000 RTP
http://www.famitsu.com/freegame/rtp/2000_rtp.html

ゲーム内容

主人公はエルフの少女ヘレン。これといって理由は明示されないが、家の北にある遺跡を皮切りに、さまざまな場所を冒険をしていくことになる。
ヘレンは読み書きができず、書物はおろか、看板すらも読むことができない
フィールド上にいる敵と接触することで戦闘に突入する、シンボルエンカウント方式を採用。戦闘はコマンド選択型で、独自のターン制で進むようになっている。パーティーの概念はなく、戦闘中の操作キャラクターは1名だけである。

また、RPGにつきもののキャラクターのレベルアップは存在しない。キャラクターの能力を強化する方法は主に以下の3点に絞られている。
  • HPアップの入手、またはハンバーグを食べることによる最大HP上昇
  • よりよい性能のアイテムの入手
  • アイテムのレベルアップ
HPアップは特定のツボを割ったり、宝箱の中から入手できる
武器を含むアイテム類は所持しているだけで装備しているものとみなされ、戦闘中に自由に使用することができる。ただし、所持できるアイテムは最大で8つまで。

アイテムのレベルアップは、戦闘で勝利すると得られるEXPを使って行う。アイテムごとにレベルアップに必要なEXPの量が決まっており、メニュー画面からEXPを消費して任意でレベルアップさせる。各アイテムのレベルは「ロングソード+1」や「ウッドシールド+2」のようにアイテム名の後ろにつく数字で表示される。なお、最大レベルは+9である。
鍛冶屋でもアイテムをレベルアップできる。この場合、限界を突破しての強化が可能

攻略しがいのある戦闘システム

RPGの花形とも言うべき戦闘。『ふしぎの城のヘレン』の戦闘はかなり独特なので、上記のゲーム内容とは別に以下で解説する。
  1. 主人公のヘレンと敵1体とが、1対1で戦う決闘のような方式
  2. 戦闘中のアクションには「行動まで」、「効果」、「防御」の3つのパラメータが存在。「待機時間」、「攻撃力」、「防御力」と読み替えるとわかりやすいので、以下ではそのように記述する
  3. アクションを決定すると互いの待機時間が減っていき、いずれかの待機時間が0になると、そのアクションが発動
  4. 「攻撃側の攻撃力」から「防御側の防御力」を引いた数値が最終的なダメージとなる
  5. アクションが終わったら次のアクションの選択を行う。待機中のアクションは待機状態を続行する
  6. ヘレンか敵のHPが0になるまで、3~5を繰り返す
画面上方に敵の、画面下方にヘレンの情報が表示される
『ファイナルファンタジー10』のカウントタイムバトルがイメージ的には近いだろうか。ただし、本作にはキャラクターの素早さのようなパラメータは存在せず、選択したアクションでのみターンは制御される。

上記のようなシステムにより、以下の特徴が浮かび上がってくる。
  • 待機時間が短いアクションは一方的に何度も攻撃できる
  • 防御力が高いアクションは相手の攻撃力を完全にシャットアウトできる
アクション次第で敵の攻撃を完全に防げるのは、本作を攻略するうえで非常に重要
また、戦闘中のアクションには大きく分けて4つのカテゴリ(剣、弓、魔法、盾)が存在し、それぞれ異なった特性を持っている。

カテゴリ
待機時間
攻撃力
防御力
特性
突出したパラメータがない。
その代わりに中程度のパラメータが並ぶ
待機時間が短く、時間あたりのダメージ効率が高い
剣や盾で簡単に防がれる
魔法
なし
防御無視の高ダメージ
待機時間が長いうえに防御力皆無で、隙が甚大
なし
魔法以外の攻撃をかなり軽減できる
攻撃が一切不可

各カテゴリ間の相関関係はだいたい上記の通り
この仕組みによって、相手のアクションに合わせて適切なアクションを選択すれば、かなり大きなアドバンテージが生まれるようになっている。逆に言えば、適当にボタン連打するだけでクリアできるようなゲームではないということだ。
回復魔法も1つだけ存在。長期戦を挑むならあったほうがよいが必須というわけではない
もちろん、「相手のアクションに合わせて」と言っても、ずっと盾で守っているだけでは勝てず、待機時間をうまく調節しなければ、無防備な状態で攻撃を喰らうはめになってしまうので、短期的な戦略ではなく、長期的な戦略が必要となる。ボス戦ともなれば、この傾向はさらに顕著となり、かなりの手応えを感じるだろう。

ランダム要素の排除によって浮かび上がる攻略する楽しさ

『ふしぎの城のヘレン』の最大の特徴が、戦闘におけるランダム要素の排除である。これは運に頼ることのできない、戦略性の高さと言い換えてもいいだろう。

本作では、タイミング悪く攻撃が外れることはないし、たまたまダメージが少なかったということもない。それどころか運悪く敵が強力な攻撃をしかけてくることすらないのだ。敵の行動は状況に合わせて完全に制御されており、その状況を作り出すのはプレイヤーの選択、そして選択の積み重ねだけなのである。

つまり「運悪く敗北することがない」反面、「運よく勝利することもない」のだ。
敵によって使ってくるアクションはさまざま。序盤の敵スケルトンはワンパターン
時折、攻撃力の高い攻撃を仕掛けてくるゴブリン。実際は特定の条件のもとで強力な攻撃を使ってくる
無論、ほかのゲームでもそういった側面は存在するのだが、ここまで厳密な作品を私は知らない。本作に求められる緻密な戦略は、一般的なRPGの戦闘におけるそれよりも、敵の行動パターンやパラメータ、行動順などを研究して行うタイムアタックやレベル制限クリアのそれに近いように思う。

また、本作では敵の攻撃を的確に凌がなければ数ターンで死に至るバランスになっている。最大HPを上げることはできるが、それは付け焼刃でしかなく、根本的な解決にはならない。したがって敵の行動をうまく制御し、それに対処していくことが非常に重要だ。

以上の事柄によって、本作は敵を攻略するという楽しさが全面に出たゲームになっている。既存のRPGだと『真・女神転生3 ノクターン』のプレスターンバトルの感覚に似ているかもしれない。各アクションのパラメータに、敵の行動パターン、さらに自身と敵のHP管理。これらの要素に気を配り、しかるべき選択を続けた先にのみ勝利が待っているのだ。
不確かな勝利は存在しえず、勝利は確かな手応えを持ってプレイヤーに与えられる

活き活きと動くドット絵のキャラクターたち

最初に最大の魅力だと感じた戦闘について書いてしまったので、なにやら硬派な内容と受け取ったかもしれないが、作品全体がまとっている雰囲気は穏やかなものである。

ドット絵のキャラクターがキビキビと動くさまはとても心地よく、なかでも主人公ヘレンの動きは愛らしい。私個人としては長らく2DスタイルのJRPG(と呼ばれるゲームや、それに近しいゲーム)を触っていなかったので、懐かしさのようなものもあるのだろう。しかし、それを差し引いても十分なほどに見ていて、また操作していて楽しい。
ウィンドウを開きっぱなしにしていると、ヘレンが決めポーズを取る
フィールドのみならず、戦闘中でもキャラクターたちがよく動き、戦っている感じがよく出ている。SEも非常に効果的に使われていると感じた。

ストーリーは短いながら堅実な作りで、演出面が光る

本作のプレイ時間は4~6時間程度と、RPGのプレイ時間としては極めて短い部類だ。しかし、ストーリーは淡白なものではない。進行に合わせて舞台設定が徐々に明らかになっていき、最初はかなり曖昧だった目的も次第に輪郭を帯びていく。最後まで順当にテンションを上げていき、きっちりとしたタイミングで結末を迎えるので、安定して楽しめる。

ストーリーは奇をてらったものではないが、極々ありふれたものというわけでもないだろう。ただし、ストーリーの展開、特に終盤は王道的な展開をするので、一部のイベント戦闘を除けば刺激や驚きといった部分への訴求はあまりない。
ヘレンが訪れる先はバリエーションに富んでいる。空中庭園っぽいところなどもある
謎解きが必要となる場所も存在。ほかにも隠し通路を見つける必要があったりする
BGMの使い方やイベントシーンの作りといった演出面はかなり凝っている印象。作り方が粗いと「陳腐」で片付けられてしまう「王道」も、本作はとにかく丁寧で、王道らしい王道としてきっちりと完成されている。なかでもゲーム中盤のあるイベントと、終盤の一連のイベントは素晴らしく、強く印象に残っている。物語を彩るキャラクターたちも個性的で、特に愛嬌のあるキャラクターが多い。
ヘレンを照れさせるヘンタイのおじさん、こと魔王
登場キャラクターたちがコミカルな色合いが強いのは好き嫌いがわかれるかも知れない
なお、進行は一本道である。ただし、終盤の行動によってエンディングは2つに分岐し、一方がトゥルーエンドと言うべき内容となっている。分岐すると言っても、選択肢の積み重ねで分岐するタイプではないので、両方を観るのはさほど難しくはない。意識していればほとんどの人が難なく両方のエンディングを見られるはずだ。

テンポ、マップデザインと無駄のない作りが飽きさせない

『ふしぎの城のヘレン』はテンポがよい。

ゲーム開始時に長ったらしいイベントシーンを挟むことはないし、戦闘の展開も小気味よい。所持アイテムを選別する必要はあるが、お金の概念はなく、ショップで武器を買い集める必要もない。戦闘中に知略を巡らせるときに指は止まりこそすれ、頭の回転は止むことがないだろう。

このため、プレイしていて無駄な時間をほとんど感じさせない。

惜しむらくは、再戦ができない(敗戦すると自動で自宅に戻り、同じ戦闘を繰り返すリトライの項目がない)ことであるが、これがRPGツクール2000の仕様なのか、作者のこだわりなのか(あるいは私が気づいていないだけか)は不明である。

と思ったのだが、F12キーでソフトリセットができる。また、どこでもセーブができるため、リトライもすぐに可能だ。私は先程気づいたばかりだが、これからプレイする人は念頭に入れておくといいだろう。

また、フィールドマップも無駄なく洗練された印象を受ける。

一見、飾りに見えるオブジェクトにも意味があり、ゲームを進めるにつれて、その無駄のなさに驚ろかされるばかりである。

フィールドを行き来する手段もかなり練られており(本作はワールドマップはなく、フィールドマップが何らかの形で接続されている)、退屈な移動時間となってしまう部分を減らす努力が端々から垣間見える。

プレイテンポも無駄のないマップも、ゲームのコアを成す要素ではないし、プレイヤーの印象には決して強くは残らないだろう。しかし、プレイ体験をグッと底上げするのが、そういった部分への気遣いであるのは疑いようのない事実だ。『Super Meat Boy』のリトライ速度、『スーパーマリオワールド』のステージ1のレベルデザインを持ち出すまでもないだろう。

本作は、どこまでも果てしなく気が効いていて、ストレスを感じさせる部分が非常に少ない。これは大きな美点である。
捨てたアイテムは倉庫のような場所に自動的に回収され、いつでも自由に持ち出せるのも非常に便利

総括

『ふしぎの城のヘレン』は、RPGのバトルの楽しさを凝縮したような作品だ。敵の行動をコントロールし、自身の行動を最適化するというものをベースとしながら、勝利のためには重層的な戦略が必要となるため、バトルの達成感や充実感が極めて高い。ランダムな要素がまったくないことで、理不尽さを感じることもなくなっている。それでいてルールはシンプルで、すぐに把握でき、磨き上げられた宝石や刀剣のような美しさがある。

ハードな戦闘とは一点、世界観はかなりゆるりとした雰囲気だ。ドット絵のキャラクターが動く様子は非常に活き活きとしており、ドット絵に対する懐かしさだけでは語り尽くせない愛らしさがある。

イベントシーンは独特のキャラクター設定に加えて、BGMを始めとした演出が素晴らしく、安定して楽しめるものとなっている。特筆すべきは終盤に訪れる怒涛の展開だろう。「誰もが予想だにしなかった結末」とはいかないものの、プレイヤーを心動かし、物語に幕を下ろすには十分な内容となっており必見である。

レベルアップにパーティー編成、それに装備のカスタマイズと肥大化していったRPGたち。それとは別の方向へと舵を切ったRPGが『ふしぎの城のヘレン』だ。圧倒的なボリュームはないが、芯となっているバトルシステムは恐ろしく洗練されており、一切の無駄を感じさせず、プレイは非常に濃密だ。驚くべきことに本作はフリーで楽しめるが、たとえ有料であったとしてもバトル好きならマストプレイのRPGといっても過言ではなかろう。

『ふしぎの城のヘレン』製作者インタビュー

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『ふしぎの城のヘレン』があまりにおもしろく、筆者も「良すぎて惚れすぎてどうすればいいかわからなかった」ので、製作のさつ氏に作品についていろいろと伺った。なお、本作に関するさつ氏とポーン氏*1のやりとりも非常に興味深かったので、許可を得て併せて掲載することにする。

*1 『雪道』、『灼熱姫』など、先鋭的なフリーゲームを多数手がけたフリーゲーム作者。フリーゲームサイト「ステッパーズ・ストップ」を運営している。

ステッパーズ・ストップ
http://stst.cocot.jp/

関連記事:レビュー『ふしぎの城のヘレン』
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/08/blog-post.html


はじめに

さつ氏
――はじめに自己紹介をお願いします。
さつ さつと申します。VIPRPGのイベントなどでいくつか作品を公開してきました。一部はサイト(http://www.geocities.jp/i_to_may/)にてダウンロード可能です。

作品の製作にあたって

名の欠けた騎士「アンデッドナイト」もRTP出身
――まずお聞きしたいのは、製作にあたって最初に着想を得るものについてです。最初に出てくるのはシステムですか、ストーリーですか。
さつ 「システムとプロットはよく融和したものを作りたい」って想いがやはりあって、「できればそこにキャラクターも」と思うのですが、アイデアは欲しがれば出てくるというものでもないので、いつも場当たり的です。
――例えば、主人公のヘレンは「文字が読めない」設定ですよね。RPGとしては変わっっていると思うのですが、どういった理由からなんでしょう。
さつ ヘレンのデフォルトの顔グラフィックがあまりにアホっぽくて、かわいいので(笑)
――たしかにちょっとアホっぽいですね(笑) ヘレンに限らず、登場キャラを見ていると、RTPの素材*2にとても愛着があるように感じるのですが、こだわりのようなものがあるのでしょうか?
さつ 私自身ツクール製のゲームをよく遊ぶので、その中で使われていた素材に対しても格別の愛着があります。音楽は自作できないので諦めましたが、「画像は自作かRTPのみで行こう」と決めていました。
――プレイしていて、たくさん動くドット絵がとても印象的でした。苦労したものや思い出深いものなどはありますか?
さつ ドット絵の大半は、ほかのゲームのために作っていてお蔵入りになっていたものなのですが、改めて見返してみるとハーピーのグラフィックがお気に入りです。きれいなので。

*2 RPGツクール200のデフォルト収録素材のこと
さつ氏お気に入りのハーピー

対話:グラフィックに関して

ポーン グラフィックはものすごく凝ってると思いました。
さつ ありがとうございます。
ポーン 後期SFCのゲームの影響があったりするんでしょうか?
さつ どうなんでしょう……凝ったという意識はなくて……。必要になったので描いたという認識が強いですね。
ポーン と言うと?
さつ 最初は敵が棒立ちの一枚絵だったんですが、それだと対戦している感じが出なくて。
ポーン なるほど。
さつ 敵味方フェアなルール下で戦闘するというのは大事だと思ったので、グラフィックに関してもそこは公平に行くことにしました。
ポーン 敵と対等なのはリアリティに関わりますもんね。

イベントシーンで意識したこと

――中盤のとある事情が明らかになるところと、ラストの熱い展開など、魅力的なイベントシーンが多かったです。イベントシーンなどで気を配った部分を教えてください。
さつ 「プレイヤーが選ぶ」ということだけは極力心がけるようにしました。テンションの高い展開も、プレイヤーが置きざりになってしまうと、それだけ温度差が広がってしまうんですよね。なので一本道ではあるけれど、行動だけはプレイヤーの操作に委ねられるようにしました。
――プレイヤーの意志と聞くと、2種類のエンディング分岐を思い出しますね。クレジットの短いほうのエンディングは『洞窟物語*3のそれに似ていますが、『洞窟物語』を意識してあのような形になったのでしょうか。
ゲーム中のシーンで筆者が知っている元ネタはこれだけ
さつ 『洞窟物語』は私の大好きなフリーゲームのひとつで、あのエンド分岐の仕掛けはその中でも印象的でした。話の流れでは、ほとんどのプレイヤーがバッドの選択肢を選ばないと思うんです。でも、その選択肢があるおかげで、プレイヤーは「もう一方の選択肢を選んだ!」って思えるんですよね。オマージュというより、単純に良いデザインだと思って、マネしちゃいました。
――なるほど。ほかにもオマージュのようなものはありますか?
さつ ザック*4の一連のセリフにだけは、本当に知る人ぞ知る元ネタがあります。

*3 日本のフリーゲームのなかでも、最大級の知名度を誇る2Dアクションゲーム作品。ニンテンドーDSに移植された(現在は配信停止)。その人気は日本だけにはとどまらず、海外では『Cave Story』として知られている。
*4 まったくの余談だが、勇者ザックの「クーゲルシュライバー(Kugelschreiber)」(他作品ではほかのキャラも使っているようだ)は、ドイツ語で「ボールペン」を意味する単語。ドイツ語にするとなんとなくカッコイイ単語として有名である

ゲームデザインに秘められた意図

――序盤に2つあるうちの片方しか中身が入手できない宝箱という仕掛けがあります*5。あれはどういった意図でそうなったのでしょうか。
さつ 結果的にはそれほどでもなかったのですが、両方のシナジー(組み合わせ)が強力だな、と感じたからですね。宝箱の中身はどちらも強くて明確な答えはないのですが、あの段階で「このゲームではどういうものが強いんだろう?」と考えてみてほしかったんです。あと(この仕掛けがある)2つめのエリアには、もうひとつ狙いがあって。「ウイングガード」と「ウッドシールド」という2つの盾、それにそこまでで手に入る3つの剣をそれぞれ比較させて、どう強いのか学んでもらうという意図がありました。
――ちなみに自分のファーストプレイを仮定した場合、あの宝箱はどちらを入手すると思いますか。
さつ 私はパワーバングルを取ったかなと思います。あの時点では軽い(行動までの時間が短い)武器は強いと思わせる仕掛けがあって、パワーバングルは軽い武器ほど恩恵が大きいからです。


*5 『ファイナルファンタジー5』のチキンナイフとブレイブブレイドの関係に似ている

問題の宝箱がある場所。どうやってもどちらか片方しか入手できない



対話:製作のうえで気にかけている部分

ポーン 見落とされがちなんだけど、ウェイト(Wait)は大きな問題ではないかと。ウェイトさえなければいろんなゲームの快適さが段違いになるのに、と思っているのですが、その点、ヘレンは開幕速攻で動かせてもらえて、ここでセンスのよさを期待できました。スクショ、ヘレンという主人公の選抜、ダッシュアニメ、ツボ破壊など、開始してすぐで魅せる要素がたくさん詰まってるんですよね。感動しつつ、引きとしてとても正しいなと思ったのですが、製作に際してはこういうユーザ体験も意識してたんでしょうか?
さつ 導入には凄く気を使いました。
ポーン おお、やはり。
さつ やっぱりフリーゲームは序盤で投げやすすぎますからね。
ポーン ゲームを始めて「どうしてこのゲームは『なにがどう最高なのか』を、開始してすぐにわかるようにしないんだろう」とかは思いますね。できれば開始する前からわかるといいんですけど。
さつ なるほどー。
ポーン ヘレンの最初では、素朴な小屋とか一匹だけいる羊とかもうれしかったです。
さつ 最初って特に重要で。ゲームを理解してもらう、ってところから始めなくちゃいけない。
ポーン 最初が一番通る確率が高いですからね。
さつ ×を押すと走る、ツボを押すと割れるみたいなリアクションが返ってくると「マップ画面ではこういう行動をすればいいんだなー」とわかってもらえるかなぁと。
ポーン とても正しいと思います。
さつ そういう狙いがあって、そこに力を入れました。ゴーレム倒すあたりまでは丸々チュートリアルのつもりでした。
ポーン サンダーが揃うあたりまでですね。露骨にチュートリアルの顔をしないチュートリアルはいいですよね。
さつ チュートリアルで「○○をやるんだ!」というのが苦手なので(笑)
ポーン ぼくも苦手です。
さつ やる方としても覚えることが多そうで、身構えてしまいますし。
ポーン チュートリアルは、究極的にはないのがいちばんですよね。
さつ そうですね。直感的に理解できるのがいちばん。
ポーン ドアノブみたいに見ただけで分かるように。
さつ マリオなら右に進めばいい、とわかるように。触ってるうちに覚えるあたりが具合のいいところかなと思います。
ポーン マリオ、初期ドラクエもそのへんが考えられてますね。
さつ そうですねー。「やれ」とは決して言わない。
ポーン ボタンや説明が少なかったりするのは、とても大事ですね。世の中、説明をこと細かにするのが親切だと思ってるようなものは多いように思います。
さつ 作る方も、導入は一気にやってしまいたいので、ついついパパッとやりたくなってしまいます。なので、考えたことは最初の階層が一番多いです。

独特の戦闘システムが生まれた背景

――ランダム要素が介在しない戦闘システムにはかなり驚かされました。あのシステムが生まれた背景には何があるのでしょうか。
さつ やっぱりランダム要素が苦手だった、というのがいちばんの理由だと思います。自分が苦手なのものをリストアップしてみると、プレイヤーの意思決定のあとに運要素が来ているものが多かったんですね。例えばシミュレーションの命中率みたいなものって、最終的には乱数に任せるしかなくなってしまう。なのでそういうのはやめようと思いました。一方でおもしろい「対戦ゲーム」というのを色々調べてみたんですが、将棋とかチェスとか、競技性の高いゲームは運要素が排除されているな、と感じたんです。ランダム要素がない以上、対戦相手の思考だけが不確定要素になっていて、それを読んでいくのが楽しいのかな、と。そんな感じで、まあ、ああいうものができました。私は将棋が弱いので未だに結論は出せていませんが。
――システムの作成にあたって影響を受けた作品はありますか。
さつ 影響を受けたというわけではありませんが、ヘレンのシステムを面白いと感じた方は、テンションさん作の『リリアが為に剣が要る』も楽しめるのではないかなー、と思います。

対話:戦闘のデザイン、そしてバランス

ポーン お聞きしたいことがいろいろあったような。
さつ はい。
ポーン あのシステムはどんな風に出来たんだろう、とかですね。頭で考えたのか、自然とこう、浮かんでくるのか、って。バランスもすごくよくできてて、数値の調整は理論的にやったのかとか、本能と手探りでやったのかとか。
さつ 戦闘システムについては、一応前身になるゲームはあったんですよ。
ポーン 2作出てたのは知っています。
さつ 『愛はさだめ、さだめは死』*6っていうやつで、それでは剣客小説の攻防シーンみたいなのをゲームにできないかなというところから考えました。
ポーン 剣客小説ですか。知らないジャンルだ。
さつ システム的な着想はフレーバーから先立って考えることが多いです。
ポーン ヘレンという人物が先だったりしたとか?
さつ ヘレンの場合は、『愛はさだめ』の戦闘システムを洗練したものを出したいなー、というところから作りました。
ポーン 剣から弓、魔法まで使いこなすのがまたエルフにぴったりで、あの人物とあのシステムとどっちが欠けてもあのきれいさにはならないのですよね。そういうのを見ると、どこから決めたんだろうと不思議になります。システムが先でしたか。
さつ 武器の種別は、まず3すくみにしようと考えていて
ポーン 3すくみなのに、じゃんけんにならないところがおもしろかったです。あ、3すくみじゃないか、最終形は。
さつ 軽い攻撃なら弾きながら攻撃可能(剣)、無防備な相手なら連射できる(弓)、遅いけれど発動すれば強力(魔法)という特徴を先に設定して、あとから剣や弓という種別をそこに当てはめていきました。
ポーン なるほど。
さつ 構想中に盾が入ってきたので、3すくみにはなりませんでしたが。
ポーン 盾はよかったですね。ダメージが0になる防御ってそのまま実装すると破綻するのに、武器を切り替えて一時的に防御を上げることで、タイミングがよければ完全防御も可能なんですよね。自分の思考が力としてゲームに反映される感じがしてよかったです。スライム相手に「カツン!」とダメージをカットできたときに「防御がこんなに気持ちいいものか」と思いました。
さつ 個人的に回復魔法が嫌いなので、戦術で消耗を抑えるというのは毎回重視していますね。
ポーン 回復魔法はたしかにたるみますね。
さつ 結果的には回復魔法が重要になってしまいましたが。
ポーン そうですね、ヘレンのヒールは強かったですね。ぼくも別のゲームで、回復手段はそのまま使わせると戦闘が終わらなくなってしまったりするので、強い制限を加えてました。
さつ 回復魔法が使いやすすぎると、ボス戦が「長いだけの戦闘」になってしまうのがどうも苦手で。それで苦戦している感は味わえるんですが……。
ポーン たしかに長いだけのボス戦というのは、ありがちで見落とされてる問題ですね。
さつ 短いほうがトライ&エラーもやりやすくて楽しいと思うんです。
ポーン そうですね。そういった見落とされてる問題に気づけるのは、センスの問題だと思います。ヘレンには端々からセンスを感じました。
さつ ありがとうございます。魔王だけは意識してヒールゲーにしちゃいました。
ポーン ぼくはほとんどをヒールで乗り切ってたんですが、魔王以外はヒールなしで結構いけるということなのかな。
さつ 終盤のボス戦は、「長期化を受け付けない」デザインにしました。

*6 さつ氏製作のフリーゲーム。『ふしぎの城のヘレン』の前に出た作品。

敵のデザインとその製作過程

――全体を通して、敵キャラクターたちの特色が強く出ていると感じましたが、戦闘中の敵の行動は待機時間とヘレンの行動で決まるのでしょうか。
さつ ヘレンの行動を見て対応する敵もいれば、自分の戦術を確立している敵もいます。例えば回復で耐えて、攻撃を強化してから戦うとかですね。それと共通して、敵の戦術には欠陥を1つずつ設定するようにしました。同じ敵には同じ戦闘が再現できてしまい、無難に戦って無難に勝てるようでは飽きてしまうので。戦闘を重ねてプレイヤーが最適解を出すのを楽しんでほしかったからです。
――本作の感想を見てみると、プレイヤーによって苦戦するボスが違うような印象を受けます。私の場合は、二刀流のボスがいちばん手強く感じました。意図的に必要以上に弱くした敵、あるいは強くした敵というのはいますか。
さつ ほとんどのボスキャラは、私やテストプレイヤーさんのプレイスタイルを参考にしてそれを狙い撃ちにする意図でデザインされました。回復でダラダラ戦うプレイヤーがいたので、長引くと強化される攻撃が出てきて不利になるとか、セコくセコく削っていくプレイヤーがいたので、情報を参照できない敵が出るとか……。一辺倒の戦い方で勝ち抜けるのは飽きちゃうだろうな、と思ったからです。特定のボスに苦戦した人はその型にはまってしまったんだと思います。
――強すぎるなどの理由で削った敵などはありますか。
さつ 敵ではありませんが、攻撃力が小さくて防御力が高い「殴れる盾」は、はじめはプレイヤーが使えたんですが、雑魚的に対して鈍い強さを発揮していてつまらなくなってしまうため、削りました。ちなみに敵側にはその「殴れる盾」みたいな攻撃を使う敵が残っていて、かなり終盤に出てきます。

対話:ボスキャラのデザイン

魔王城四天王の一角「痺れのパライソ」
筆者は四天王だと「暗闇のブランド」がいちばん好き
さつ フェアな戦闘をベースとしてるので、暗闇とか毒みたいなルール破りが出てくるほうが面白いかなと。
ポーン 暗闇や毒は、四天王戦で「1ボスひとつの特殊能力」として割り当てたのがとてもバランスいいなと思いました。普通のRPGでは単に不快な障害である毒も、ボスという形にして目の前に出されると、「よし、立ち向かって倒すぞ」ってなって、自発的な気分で向き合える。
さつ 四天王はコンセプトが明確に作れたかなと、自分でも気に入ってます(笑)
ポーン 暗闇が楽しかったです。情報のありがたみを痛感しました。どうしようもない、適当に行動するしかないように見えて、考えればちゃんと攻略できるところもよかった
さつ 「運ゲー」もやはり避けたかったですからー。

『ふしぎの城のヘレン』のプレイヤーについて

――プレイヤーからのフィードバックや感想などで驚いたものはありますか?
さつ 制限プレイなどもありましたが、いちばんは『戦いの果てのヘレン』*7かな。製作中「対人もできないかな」というのは思っていて、実際に対人戦というコンセプトで作った敵もいるんです。なのでこうして手動ゲームとして成立したのはやっぱり衝撃でした。悲願でもあります。
――新作の予定はありますか? あればいつごろプレイできそうかも教えてください。
さつ 予定はあるのですが、いつごろになるかは全くわかりません。

*7 『ふしぎの城のヘレン』の戦闘システムをベースにした手動ゲーム、並びにそれを元にした一連のイベント。キャラクターを作成してパラメータを割り振り、スキル、行動ロジックを決めて戦う。イベントの主催は、ステッパーズ・ストップのポーン氏。特別参戦という形でさつ氏自身も参加している。詳細は公式サイト参照のこと。また、『ふしぎの城のヘレン』と『戦いの果てのヘレン』について熱く語っている「あとがき」はぜひ読んでほしい。

ステッパーズ・ストップ「意識録 - イベント - 戦いの果てのヘレン」
http://stst.cocot.jp/other/event_xhelen.html
ステッパーズ・ストップ「戦いの果てのヘレン あとがき」
http://stst.cocot.jp/other/event_xhelen/after.txt

――プレイヤー、あるいは未プレイの方へ一言お願いします。
さつ あらゆるフィードバックは糧になります。たくさんの糧をありがとうございました。

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レビュー『LOOT』

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テキストを読み進めるタイプのゲーム、いわゆるノベルゲーを私はほとんどプレイしないのだが、コミックマーケット82で頒布された作品のなかで気になったのが、ノベルゲーム『LOOT』だった。

推理モノに、超能力バトルのエッセンスをミックスした作品で、とてもおもしろかったので紹介したい。

後日、インタビューを掲載予定。

※2012年9月15日
インタビュー記事を掲載しました。


『LOOT』製作者インタビュー 前編
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/09/loot_15.html
『LOOT』製作者インタビュー 後編
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/09/loot_9288.html


概要

■ジャンル テキストアドベンチャー
■開発 CREO
■プラットフォーム Win
■リリース日 2012年8月11日(コミックマーケット82の2日目)頒布
■価格 1000円
■入手経路 Melonbooks DL、DL.Getchu.comなどでダウンロード販売(1050円)
■公式サイト http://creo.main.jp/page/product/loot/
■プレイバージョン ver 1.03
■プレイ時間 10時間(1周あたりは4~5時間。2周のプレイに加えて、スキップ併用のエンド回収を行った)

ゲーム内容

オリジナルのテキストアドベンチャー(ノベルゲーム)である。同人ソフト界隈ではよく見かけるエンジン吉里吉里で開発されている。

主人公は大学1年生の市松明人。一見、どこにでもいる大学生のようだが、実は【盗聴】という特殊な力を持っている。【盗聴】は、その名の通り盗み聞きができる能力。対象の人物が聴いている音を、同じように自分も聞き取ることができるというものだ。

当然、『LOOT』の世界においても【盗聴】の能力は普遍的なものではなく、主人公だけが使えるものとなっている。ただ、【盗聴】以外にもいくつかの特殊能力が少なからず存在しており、それらの能力を持った人物たちが次々と登場し、物語が繰り広げられていく。

と書いてしまうと、一見ファンタジー要素のある学園モノのようなテイストを想像してしまうかも知れないが、冒頭でも述べたように本作はミステリである。

そして本作をミステリたらしめているのが、特殊能力【盗賊】の存在だ。

【盗賊】は、他人の能力を奪い取るという力を持っている。ただし、能力を奪取するにはその能力者を殺害しなければならない。ここまで読めばだいたい察しがつくとは思うが、本作は数多の能力を得ようとする【盗賊】の殺人劇に幕を下ろす、というのが主目的となっている。特殊能力とミステリという相反する要素を組み合わせた意欲的な作品と言ってよいだろう。

なお、『LOOT』はゲーム開始時にいくつかのルールが定められる。以下に引用してみる。
  • この物語には、12種類の「能力」という超自然能力が登場する
  • 12種類以外の説明されていない「能力」は物語に関与しない
  • 12種類の「能力」全てが物語に関与するとは限らない
  • 「犯人」は登場する9人のうちの1人である

当たり前のようなルールだが、これが明確に定められているおかげで無駄な推理や予測は不要となる。また、能力は設定が細かに決められており、連続使用が認められているかどうかや、能力使用に関する注意点、例外的な処理といったものが明確にされている。

能力の把握は、本作を読み解いていくうえで非常に重要なファクターとなっており、すべての能力に関するルールは、メニューのTIPSからいつでも確認できるようになっている。
TIPS。能力に関する決まりごとはすべてここに記されている
推理するときに重要となりそうなエピソードは、Episodeにまとめられる
公式サイトからデモ版のダウンロードが可能。

現実と非現実が混ざりあう魅力的なストーリー

冒頭で「超能力バトルのエッセンス」と書いたが、本作に出てくる能力はマンガなどに登場する派手な特殊能力に比べると一見地味だ。雷や炎を操ったりはできないし、時間を止めるのはもちろん、光速を超える速さで動作するようなことはできない。

本作で定義されている能力は以下の12種類。
  • 【圧縮】自身の五感をひとつ犠牲にして、一日だけ不死を得る
  • 【概略】触れた対象(人物)の、ありとあらゆる情報を知ることができる
  • 【幻視】物体や場所が持つ記憶を知ることができる。いわゆるサイコメトリー
  • 【固定】物体を空間に固定できる。いわゆるクラフトワーク
  • 【察知】察知エリア内にいる能力一覧と、その能力の内容がわかる
  • 【借用】他人の持つ能力を一日だけ借りられる
  • 【操作】操作エリア内にいる人物を操る
  • 【盗賊】能力者を殺すことで能力を奪い取る
  • 【盗聴】対象の耳が得た聴覚情報を、同じように得られる
  • 【読心】読心エリア内にいる他人が考えていることを読み取れる
  • 【変装】触れたことのある人物に変装できる。いわゆるクリーム・スターター
  • 【忘却】触れた対象の記憶を消せる。いわゆるジェイル・ハウス・ロックではない
誰かわからず見えない敵である【盗賊】との情報戦や、事件に残された不可解な謎を追っていくストーリーが、これらの特殊能力によって展開されていき、純粋なミステリにはない独特のおもしろさを生み出していると感じた。

また、能力にはデメリットや例外的な挙動が存在する。

例えば、【盗賊】は殺して能力を奪うことができる一方で、能力を持たない無能力者を殺害してしまうとその時点で死に至る、という強烈なデメリットを持っている。さらには【盗賊】の所持者が殺害された場合、殺害した人に【盗賊】が移るというリスクも併せ持っている(つまり殺すと奪える代わりに、殺されると奪われる)。これにより【盗賊】は無差別に殺人を繰り返すことはできず、奪う側である一方で奪われる側にもなりうるのだ。
殺すことで能力を奪える【盗賊】は、本作最大のキーパーソン
ほかにも能力を借りられる【借用】には相手の許可が必要だったり、人を操る【操作】は操作対象の受けたダメージが自身に返ってきたりと、どれも意味のある設定がなされており(ただし、必ずしもゲーム中に影響するとは限らない)、それがはじめからちゃんとルールとして明記してある。したがってプレイし終えてから、不満の残るような真相にはなりがたいデザインになっている。

ストーリーに合致した主人公の能力【盗聴】

主人公の市松明人は、【盗聴】を使うことができる。ほかの能力に比べるといささか地味な能力ではあるが、【盗聴】のおかげで、事件の推理に必要な情報を積極的に集めることができるのは非常におもしろい*1。また、最序盤でミリヤとの接触のきっかけになるシーンは、能力がうまく使われており、強く印象に残っている。

*1 盗聴は任意で発動できるわけではない。ストーリーの流れに沿って自動的に行われるようになっている
【盗聴】時は、画面右上の盗聴ウィンドウにその情報が表示される
アドベンチャーで特殊能力と言うと『逆転裁判』シリーズのサイコ・ロックを思い出す。相手の心を揺さぶる心理戦といった趣が強かった(『逆転裁判』自体がそういう方向性のゲームなのだが)サイコ・ロックと比較して、『LOOT』の【盗聴】は、情報を収集する情報戦という色合いが強いと感じだ。

もともと【盗賊】に能力持ちであることがバレると(命と能力を)狙われるという前提があるので、相手にバレずに情報を得ることはとても大きな意味があり、その点でもストーリーと【盗聴】の能力はうまく噛み合っていると言えよう。

これと同時に、犯人である【盗賊】は登場人物9名のなかにおり、彼らを盗聴可能であるにも関わらず、簡単に犯人にたどり着かせないストーリー展開を無理なく行った部分も評価したい。

細部が気になりつつも、ストーリー全体に対する印象はよい

全体を通して選択肢は少なめで、ストーリーはほぼ一本道で展開すると考えてよい。エンディングは全部で3種類あり、そのほかに明確なバッドエンドが1つある。
イベントグラフィックは10枚程度とやや少ないが、印象的なシーンを作り出すことに成功している
なお、最大の見せ場と言える真相を暴くシーンは楽曲もよく(チェックメイトという曲。クリア後に解禁されるEXTRAからサウンドテスト可能)、非常に印象的だった。ただ、犯人探し自体は実質的に1回の選択肢のみに委ねられているのがやや物足りなかった、ということは付け加えておこう。それでも後半は物語が大きく動き、息をつかせぬ展開でやめどきを失うほどにおもしろかったのも事実である。

また、消去法で考えていけば、真犯人を見つけ出すのはあまり難しいことではないだろう。

しかし、ミステリの楽しさは推理して犯人を当てること以外に、そこで描かれる心理描写を楽しんだり(そちらに偏ったのが『刑事コロンボ』シリーズのような倒叙物だろう)する側面もあると思うので、あまり深い問題だとは考えていない。

惜しむらくは真犯人の犯行の動機が弱かったことだ。【盗賊】であるがゆえに限界はあるのだろうが、エピソード0のタイトルと描写だけでは弱いのではないか、と感じた。エンディングも3つのうち、2つはやや近しい内容でもうひとつ変化が欲しかった。

不満点をいくつか

全体的にはかなり満足した内容だったのだが、不満がないわけではない。

まず第一に、推理に穴は見られなかったものの、内容が二転三転している部分、矛盾を感じる記述がそれぞれ1箇所あるように見受けられたこと。全体の出来がいいだけに、私の勘違いでなければ修正されることを望みたい。

とても小さなことだが、能力名は『』ではなく【】や[]、""で囲っていたほうが可読性が上がったのではないかと思う。『』は会話文中の「」としても登場するため、場合によっては『』が多くなってしまうというのが主な理由だ。【】はキャラクター名を使うのに使用しているので避けたのだと思うが、なにか一工夫あってもよかったかもしれない。

ミステリに特殊能力という着眼は非常におもしろかった反面、キャラクターの個性付けはやや弱い。キャラクターデザイン自体はシルエットでもわかるくらいにかなり差別化されているし、能力自体が大きな個性ではあるのだが、彼ら自身の持つ性格をもっと強く感じさせる描写がほしかったというのが率直な感想である。
個人的には主人公の友人である住良木一光が好きなのだが、個性的である彼でもやや薄味
ヒロイン的ポジションの九条ミリヤ。彼女が【盗聴】を【察知】したことで物語は動き出す
中島さつき、次郎の仲良し姉弟。次郎は比較的キャラクターが立っていたように思う
操作周りは概ね不満はなし。当初は飛ばせなかったアイキャッチも最新のパッチver 1.03でスキップ可能になり、プレイアビリティは向上している。既読スキップの挙動がたまにおかしかったり(既読なはずの部分で止まる)、極稀にキャラクターの立ち絵が半透明になるが、大きな問題ではないだろう。

プレイ時間は4~5時間程度で、すべてスキップしつつ進めると1時間弱ほどになる。比較的短時間でリプレイできるので、台詞に隠されていた伏線を見つけるといった、この手のゲームで楽しい周回プレイもしやすいだろう。
主人公が家庭教師をしている恵。なかなかいいことを言っている
といくつか不満を並べたが、最初のものを除けばとても些細なものである。

総括

『LOOT』は、その名の通り【盗賊(THE LOOT)】の能力をめぐって繰り広げられるミステリテイストのノベルゲームだ。現実的な側面を重視するミステリでありながら、荒唐無稽な特殊能力がいくつも登場する。

ゲーマー諸兄であれば「Portal Gunで密室殺人」や「Strafe Jumpで現場を逃走」といったおおよそありえもしない想像をするかもしれないが、そのような心配はいらない。そもそも『Bioshock』のPlasmidのような力はほとんど登場しないのだ。

そして開発のCREOは現実と非現実とを巧みに織り交ぜ、ミステリとして非常にうまく融合させた。そこには純然たるミステリとはまた違った味わいがある。不可思議を明らかにせんと読み進めるミステリに、非現実的な能力が彩りを添え、プレイヤーの好奇心をさらに刺激するのだ。

探せば粗もあるかもしれないが、『LOOT』はそんな問題を吹き飛ばす魅力を持っている。本作は小粒ながら、しかしそれでいてたしかに良質なノベルゲームなのだ。

私個人としては、同様の手法を用いたノベルゲームが新たに制作されるのは大歓迎だ。ただし、そのときは先行者たる『LOOT』を越えねばならないだろう。そのときまで『LOOT』は霞むことのない輝きを放ち続けるに違いない。『LOOT』を殺して、その手法を完全に奪い去る、次なる【盗賊】が現れるその日まで。

News Pick Up 2012年8月第4-5週

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インディーゲーム界隈のニュースを、俺個人の趣向でピックアップして適当に紹介するよ!

※英語はまだまだ勉強中なので、正確な情報を知りたいときは原文を読んでね。
※なるべく正確な情報を掲載したいため、誤りなどの指摘がありましたらコメント欄、またはhayaniemozuアットgmail.comまでご連絡ください。

Steam Greenlightが正式稼働 2012/08/31

Steamの配信タイトルをユーザー投票でサポートできるシステムSteam Greenlightが、ついに稼働した。しかし、明らかにSteamには来ないだろうと思われるようなタイトルを掲載するなどの蛮行が蔓延り、出足はあまりよくなかった。

現在はガイドラインが設けられ、稼働当初のおかしな賑わいはなくなっているものの、いまだ不便に感じさせる部分は多いという印象が拭えない。あくまで個人的な印象だが、開発者でなくとも登録できてしまう点、デモ版があってもSteamからはダウンロードできない点など、現状ではDesuraに劣っていると言わざるを得ない。

上の画像もそれを意識してのことである。

Steamでの配信は「ユーザー拡大」という開発者にとっての大きな福音になりえるのだが、今後どこまでそれをちゃんとサポートできるのか、さらなるサービス強化が望まれるところだろう。

ソース:
Steam「Valve Launches Steam Greenlight」
http://store.steampowered.com/news/8761/

『SpaceChem』のZachtronics Industriesが新作『Ironclad Tactics』を発表 2012/08/29


幾多のプレイヤーを悩ませ、投げ出させたであろうパズルゲーム『SpaceChem』を手がけたZachtronics Industriesが最新作を発表した。タイトルは『Ironclad Tactics』

『Ironclad Tactics』は、1860年のアメリカ南北戦争を舞台にしたリアルタイムストラテジーとなるようで、そこにカードゲーム的な戦略性が加わっているそうだ。南北戦争といってもリアルな世界観ではなく蒸気機関で動くロボットが登場する。ゲーム中には80を越えるカードが登場し、それを用いて自由にデッキを作成できるほか、シングルキャンペーン以外にマルチプレイヤーモードも搭載しているとのこと。

極めて静的で、淡々とひとりで論理の渦に巻き込まれていった『SpaceChem』とはだいぶ違ったプレイフィールになることが予想される。なお、PCGamerでは、公式サイトにない画像も掲載されているので私のようなZachtronics Industriesのファンは見てみるとよいだろう。

余談だが、『SpaceChem』のほうはPax Primeにてミニトーナメントを開催しており、まだまだコミュニティサポートは続けていくようだ。

ソース:
『Ironclad Tactics』公式サイト
http://www.ironcladtactics.com/
PCGamer「Ironclad Tactics: card-based strategy from the creator of SpaceChem」
http://www.pcgamer.com/2012/08/29/ironclad-tactics-card-based-strategy-from-the-creator-of-spacechem/
Zachtronics Industries公式ブログ「ZI@PAX: SpaceChem Mini-tournaments!」
http://www.zachtronicsindustries.com/zipax-spacechem-tournaments/

国産インディー格ゲー『ヤタガラス4』の海外展開が決定 2012/08/23

PDW:HOTAPENの手がける2D格闘ゲーム『ヤタガラス4』が、Nicalisによって海外展開されることが発表された。もともとPC向けにリリースされていた同作だが、ニンテンドー3DSに移植されて発売される。北米とヨーロッパでリリースされるようで、今のところ日本での発売予定はない模様。




ゲーム内容については4Gamerのインディーズゲームの小部屋が詳しい。

4Gamer「インディーズゲームの小部屋:Room#196『ヤタガラス4』」
http://www.4gamer.net/games/040/G004096/20110906081/

『ヤタガラス4』は著名な格闘ゲームプレイヤー「こくじん」の実況を搭載したり、同じく格闘ゲームプレイヤーの「総師範KSK」、「ときど」の応援機能を搭載といった尖ったチューンがなされていたので(ちなみにシステムと調整は梅園が行なっている)、そのへんがどうなるのか気がかり。

ソース:
Nicalis公式ブログ「Nicalis Strikes with Yatagarasu Fighting Game – play@PAX Prime 2012」
http://blog.nicalis.com/2012/08/nicalis-strikes-with-yatagarasu-fighting-game-playpax-prime-2012/
『ヤタガラス4』公式サイト
http://yatagarasuinfo.web.fc2.com/

Wiiウェア版『LA-MULANA』の海外展開が正式アナウンス 2012/08/30

当初アナウンスされていたWiiウェア版の北米リリースがキャンセルされ、それから月日を経てPC版での全世界同時リリースに至った『LA-MULANA』。このたび、ついにWiiウェア版の海外展開が正式に決定した。

パブリッシングを務めるのはスペイン バルセロナのEnjoyUp Games。リリースは2012年9月20日を予定しており、価格は日本よりも少し安い1000Wiiポイントとなるようだ。日本でリリースされたDLCがどうなるかなど細かな情報は今後開示される予定とのこと。

ちなみに『LA-MULANA』はSteam Greenlightに登録しており、Steamでのリリースも目指している様子。PLAYISM名義での登録になっているが、混乱を避けるためNIGORO名義での登録のほうがよかったのではないかと思う。

ソース:
『LA-MULANA』公式ブログ(英語)「We decided to release WiiWare version in North America and Europe」
http://la-mulana.com/en/blog/we-decided-to-release-wiiware-version-in-north-america-and-europe.html
EnjoyUp Games
http://www.enjoyup.com/
Steam Greenlight『LA-MULANA』
http://steamcommunity.com/sharedfiles/filedetails/?id=93001822

『とつげき!人間戦車』の英語版の予約がGamersGateで開始 2012/08/30

『とつげき!人間戦車』の英語版『War of the Human Tanks』の予約購入が、GamersGateで始まっている。『とつげき!人間戦車』は、同人ゲームサークル焼肉万歳の手がけたターン制ストラテジーで、Fruitbat Factoryが英語へのローカライズを行なっている。ニュースとして扱うのがこのタイミングになってしまったが、ローカライズについては、2012年6月の段階で発表されていたようだ。

Fruitbat Factoryは、日本のゲームを英語圏に提供することを目的に、2012年に設立された会社。メンバーは3人と少なく、Nicalisをさらに日本のゲームよりにしたようなイメージだろう。

リリースは2012年9月14日を予定しており、GamersGateのほかDesuraでもリリース予定があるようだ。価格は$9.99のようだが、現在は確認できない。

ソース:
『とつげき!人間戦車』公式サイト
http://yakiniku-banzai.com/humantanks/
『War of the Human Tanks』公式サイト
http://yakiniku-banzai.com/ht-e/
焼肉万歳公式サイト
http://yakiniku-banzai.com/
Fruitbat Factory公式ブログ「Human Tanks Sighted on GamersGate」
http://fruitbatfactory.wordpress.com/2012/08/30/human-tanks-sighted-on-gamersgate/
GamersGate『Human Tanks, Charge! War of the Human Tanks Deluxe Edition』ストアページ
http://www.gamersgate.com/DDB-TANKS/human-tanks-charge-war-of-the-human-tanks-deluxe-edition

『Defender's Quest GOLD』がついに正式リリース 2012/08/29

前回も紹介した『Defender's Quest GOLD』の話題。

近日リリースということだったGOLDがついにリリースされ、購入済みのプレイヤーは無料でアップデートが施された。ゲーム起動時にアップデートのチェックが入るので、インターネット接続さえしていればアップデートは簡単に行える(自動でアップデートするわけではない)。

なお、事前に告知されていたとおり、価格は$9.99へと値上げされた。私はまだ少ししかプレイしていないので感想は控えるが、もともと十分にオススメできるタイトルだったので、ぜひともプレイしてみてほしい。デモ版もある。

ちなみにDesura、Impulse、GamersGate、Steamでのリリースも近々発表できるところまで来ているらしい*1

*1 ちょっと英語が怪しいので原文も引用して載せる
-Launch on Desura/Impulse/GamersGate/Steam SOON BUT EXACT TIME = TBD
ソース:
『Defender's Quest』公式サイト
http://www.defendersquest.com/
『Defender's Quest』公式ブログ「Defender's Quest gold launches today」
http://www.fortressofdoors.com/2012/08/defenders-quest-gold-launches-today.html

PAX Prime開催 2012/08/31

海外で行われるゲーム関連の大型イベントのひとつPAX Primeが、アメリカのワシントン州 シアトルにて開幕した。開催期間は2012年8月31日~同9月2日まで。

インディゲームを取り扱うIndie Megaboothでは30社が出展しており、各社タイトルの最新情報が公開されている。以下に出展した開発会社とタイトルを列挙しておく。併せてIndie Megaboothのトレーラーも貼っておくので、気になる方はチェックされたし。なお、一部動画には出てこないタイトルや、Indie MegaboothのWebページにしか出てこないタイトルがあるが、両方掲載した。このため、誤記などもあるかもしれない。
  • 17-BIT『SKULLS OF THE SHOGUN』
  • 24 Caret Games『Retro/Grade』
  • Antichamber『Antichamber』
  • Arcen Games『A Valley Without Wind』
  • Blendo Games『Quadrilateral Cowboy』
  • Blue Manchu『Card Hunter』
  • Broken Rules『Chasing Aurora』
  • Capy『Super TIME Force』
  • Carbon Games『AirMech』
  • Data Realms『Cortex Command』
  • Dejobaan Games, LLC『Drop That Beat Like an Ugly Baby』、『Drunken Robot Pornography』
  • DrinkBox Studios『Guacamelee!』
  • Eyebrow Interactive『Closure』
  • Fire Hose Games『Go Home Dinosaurs! 』
  • Gaijin Games『Runner2: Future Legend of Rhythm Alien』
  • Gaslamp Games Inc.『Dungeons of Dredmor』
  • Klei Entertainment『Mark of the Ninja』
  • Misfits Attic『A Virus Named TOM』
  • Muteki Corporation『Dragon Fantasy: Book II』
  • Nicalis『1000SPIKES』、『YATA』*2
  • Pixelscopic『Delver's Drop』
  • Pocketwatch Games『Monaco』
  • Primer Labs『Code Hero』
  • Radial Games『ICEBURGERS』、『Monster Loves You!』
  • Retro Affect『Snapshot』
  • Ska Studios『Charlie Murder』
  • Spry Fox『Steambirds 2』、『Leap Day』、『Triple Town』、『Panda Poet』
  • Strange Loop Games『Vessel』
  • Two Tribes『Toki Tori 2』
  • Vlambeer『LUFTRAUSERS』、『Ridiculous Fishing』、『Super Crate Box VS』
  • Young Horses『Octodad: Dadliest Catch』

*2 動画を見る限り、『ヤタガラス4』のことだが、『YATA』がローカライズ後の正式名称になるのかどうかは定かではない

『Runner2: Future Legend of Rhythm Alien』、『Toki Tori 2』あたりの続編モノ(『Charlie Murder』も『The Dishwasherの精神的続編と考えてよいのだろう)なんかは待ち焦がれているプレイヤーも多いのではないだろうか。

個人的な注目は、いい加減そろそろ出てほしい『Monaco』、前作『And Yet It Moves』が気に入っている『Chasing Aurora』、ハマったあのゲームに対戦が搭載されるという『Super Crate Box VS』らへん。今回初めて知ったタイトルのなかでは『Card Hunter』が気になっている。Mojangの『Scrolls』と似ている気もするが……。『Octodad: Dadliest Catch』は前作よりグラフィックが向上した印象かな。

ソース:
Pax Prime公式サイト
http://prime.paxsite.com/
Indie Megabooth公式サイト
http://indiemegabooth.com/

今週の気になるゲー

『Incredipede』


目玉の化物に手足を生やしてタスクを達成させるという奇怪なゲーム。東京ゲームショウ2011中に行われたSENSE OF WONDER NIGHT2011でもピックされていた作品で*3、非常に気になっていた作品だ(忘れていたが)。

*3 当時はアルファ版に近い内容だった。参考動画のURLを貼っておく
YouTube「Incredipede - SOWN 2011」
http://www.youtube.com/watch?v=A5ev4qxGa7I

近々、早期ベータテスト参加権を含んだ予約購入が始まる予定らしいので、情報を追っていきたい。

ソース:
http://www.incredipede.com/

今週の注目トレーラー

『Lococycle』

『The Maw』や『Splosionman』と個人的に好きな作品をリリースしているTwisted Pixelの最新作『Lococycle』がPAX Primeにて公開されたのだが、なんともカオスなゲーム画面で話題を呼んでいる。

詳しい説明は省くので動画を観たほうがわかりやすいだろう。なお、設定もぶっ飛んでいてE3 2012で公開されたトレーラーでは、以下のような説明がついている(恐らく日本Xbox 360公式)。

YouTube「Lococycle - E3 2012 トレーラー」
http://www.youtube.com/watch?v=Q9XzFop8Km0

I.R.I.S ­ ビッグアームズ アカデミー、アサシン スクールの 2 分野にわたる主席卒業生。40 を超える格闘技をマスターし、柔道、合気道、クラヴ マガ、ジークンドーの師範でもある。刀剣、ピストル、さらには核技術もマスター。50 以上の言語を話し、あらゆる文化に精通。世界のいかなる場所にでも一瞬にして溶け込む技術を持ち、1600 メートルを 3 分 40 秒で走り切った初の女性候補生でもある。だが彼女の成長に終わりはありません。悪役とヒーローは紙一重の存在。Twisted Pixel Games がおくる、新たな傑作ゲームです。

『Splosionman』シリーズもPC版のリリース予定があるため、ひょっとするとこちらもいずれPC版がリリースされるのかもしれない。Twisted Pixelの最近の作品はあまり好みではなかったのだが、今回はかなり期待している。

ソース:
Twisted Pixel公式サイト「Twisted Pixel Goes LOCO at PAX Prime」
http://twistedpixelgames.com/news/twisted-pixel-goes-loco-at-pax-prime

併せて読みたい

今回はなかなかどうして漏れが結構あるので、併せてどうぞ。

ASTRAL GATE「今週のインディーゲームニュース 水曜まとめ」2012/08/22
http://astral-gate.com/indiegamenews/3120/
ASTRAL GATE「今週の注目インディーゲームニュース まとめ 8月4週」2012/08/25
http://astral-gate.com/indiegamenews/3229/
ASTRAL GATE「今週の注目インディーゲームニュース 水曜まとめ 8月5週」2012/08/29
http://astral-gate.com/indiegamenews/3284/
ASTRAL GATE「今週の注目インディーゲームニュース まとめ 9月1週」2012/09/01
http://astral-gate.com/indiegamenews/3318/

まとめ

前回は予期せぬ休みになってしまったので、またしても2週間分のニュースを扱うはめになった。今回は個人的に注目しているデベロッパの動きが活発で、かつ国産インディーゲームの海外展開もいくつかあったので、そちらに偏った内容になってしまっているのはご容赦願いたい。

今週はなんといってもSteam Greenlight。私自身はSteamでリリースされようとされまいとゲームのクオリティには大して影響がないだろういう立場で、さらにシステムがまだまだ未熟であることも手伝って好意的な評価は下せないというのが率直な感想である。本文中にも書いたが、アルファファンディングもあっておかしなタイトルが載らない分、Desuraのほうが遥かに有意義であると感じている(Steamとインディーゲームについてはいずれ詳しく書きたいのでそのときに譲ろう)。

でそんな気持ちを吹き飛ばしてくれたのが、『Lococycle』のバカトレーラーだった。Twisted Pixelは設定周りは基本的におふざけテイストが強いのだが、ゲーム自体はしっかりしているので本当に期待している。『Comic Jumper』のようにはならないでほしい。

『Super Crate Box』がSteamでリリースされたのは驚いたけど、『Super Crate Box VS』への布石かな。対戦よりもCOOPのほうが合ってると思うのでそちらもぜひとも搭載してほしかったり。そんなところ。

『LOOT』製作者インタビュー 前編

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『LOOT』が素晴らしく、作品についていくつか知りたいことがあったのでインタビューを申し出たところ、快くお答えいただいた。

インタビューは購入を検討中の未プレイの人や現在、プレイ中の人でも安心なネタバレなし編と、より突っ込んだ話が出てくるクリア済みの人向けのネタバレあり篇の2部構成となっている。こちらはネタバレなし篇。

インタビューに応えたのは、『LOOT』の企画者Janus氏。

Janus氏のサイト 家主はJanus
http://janusisjanus.web.fc2.com/

関連記事:
レビュー『LOOT』
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/09/loot.html
『LOOT』製作者インタビュー 後編
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/09/loot_9288.html

はじめに

――まずはサークルCREOについて自己紹介をお願いします。
サークルCREOのロゴ
Janus CREOは学園恋愛からミステリ、SFなど、おもしろそうと思ったノベルゲームを自由に作っています。これまではこみっくトレジャーなどの関西のイベントに参加していましたが、この夏はコミックマーケット82やコミティア101にも参加し、これからは関東のイベントにも参加していきたいと思っています。

CREO公式サイト
http://creo.main.jp/






作品のコンセプトと、それに影響を与えたコンテンツ

――本作の最大の魅力とも言うべき「ミステリと異能力の組み合わせ」ですが、この発想はどこから生まれたのでしょうか。
Janus 推理と能力を合わせた発想は特に何かの流れから来た発想というわけではなく、ふとした思いつきでした。元々私は推理モノはほとんど読まず、どちらかといえば漫画を好んで読んでいました。例えば『HUNTER×HUNTER』、『ジョジョの奇妙な冒険』、『LIAR GAME』、『カイジ』といった、主に心理的駆け引きが熱い頭脳バトルの漫画ですね。【固定】や【借用】の能力はそのあたりからヒントを得ています。推理モノは、『LOOT』を作る2年ほど前に初めて綾辻行人の『十角館の殺人』を読み衝撃を受け、このようなノベルゲームが作りたいと思ったのがきっかけです。作品の中にパロディが出ているのもその影響です。ほかに影響を受けた作品と言えば、『うみねこのなく頃に』でしょうか。ミステリとファンタジー、チェスなど被る要素はありますが、だからこそ焦点の差別化を意識した部分は多くあります。
明人が恵に勧めた小説は鮎辻彰人『三角館の殺人』
ちなみにこのシーンは「安楽椅子探偵」という名である
――人狼(正式名称は『汝は人狼なりや?』)などの影響もあると耳にしたのですが、そのあたりを詳しくお教えいたけますか。
Janus 影響を受けた「作品」とは言えないのですが、『汝は人狼なりや?』や『あやつり人形』などのボードゲームはかなり影響を受けています。もともと私とBGM担当のA.SAKAがドイツのボードゲームをよく好んでプレイしていました。一時期は『ドミニオン』のオンラインプレイ配信などもしていましたね*1。『人狼』は有名なので説明は省きます。『あやつり人形』は、少しマイナーなのですが、これを読んでいる人や『LOOT』をプレイしてくれた方に是非オススメしたいボードゲームです。少しルールはややこしいのですが、簡単に言えば毎ターンそれぞれがリスクとリターンを天秤にかけながら役職カードを選び建物を建てていくゲームです。役職は「暗殺者」や「盗賊」、「商人」や「建築家」などですね。
――「盗賊」。
Janus といったようにどこかで聞いたような名前もあります。それぞれのプレイヤーは独立していて勝利を目指すのですが、ときに勝ちそうなプレイヤーを止めるために、ほかの人と協力するなど色々な思念やジレンマが交錯するゲームです。その要素は『LOOT』にも表れていると思います。『あやつり人形』の推奨人数は3人以上なのですが、A.SAKAと私でルールを2人用に改変したものは何度やったかわからないほどやりました。

*1 『ドミニオン』自体はアメリカ産だが、ドイツはボードゲームのメッカである。『ドミニオン』は、そのドイツのボードゲームシーンにおいて史上初の三冠達成したという、文字通り化物タイトル

特殊能力の取捨と選定

――さまざまな能力が登場するなかで、主人公の能力を【盗聴】にした理由はなんでしょうか。
Janus 主人公に【盗聴】を持たせるアイディアは企画開始時からあったものでした。『SIREN』というゲームの「視界ジャック」をヒントにしています *2 。視力ではなく聴力にしたのは、ノベルゲームでこの要素を作るならば、視界ではなく聴覚のみのほうが得られる情報の制限がかかって展開させやすいと思ったためです。
――盗聴ウィンドウも独特ですね。
Janus 盗聴ウィンドウは企画段階ではやる予定はなく、途中で思いついたものです。一度に大量の情報が入ってくるのは、プレイヤーには難しいのでなないかという意見も出たのですが、そこは目新しさを優先しました。その情報を処理している主人公を、ただ能力を持っているだけではない超人的な要素を持つ人間に描きたかったからでもあります。
――ほかの能力の選定はどういった経緯があったのでしょうか。
Janus ほかの能力もほぼ、企画開始時から出ていた能力でした。後から追加した能力は【察知】、【固定】、【借用】の3つです。【察知】は、主人公がほかの能力に気づくために用意しました。
元々は「周辺の能力者の存在がわかる」だけの能力でしたが、それでは【察知】の能力者が主人公と上手く遭遇できないため、「受けている能力がわかる」という能力を追加しました。【固定】は厨二バトル要素があってもいいだろう、という声から採用しました。【借用】はプレイヤーに推理の幅を増やす為に用意しました。【察知】持ちのミリヤが嘘をついていると全てが成り立たなくなってしまうので、ミリヤ以外の人物に【察知】させることで問題の解決を図ったんですね。しかし、勘のよいプレイヤーは、これが事件解決の糸口になったのかもしれません。
――本編には出てこなかった能力、いわゆるお蔵入りしてしまった能力というのはありますか。
Janus 【透過】や【顕現】などですね。【透過】は5分間、他人に気づかれなくなるという能力です。情報が漏れているのではないか、という危機感の演出のために出そうと考えていましたが、必要性がないと考え、今回は見送りになりました。『HUNTER×HUNTER』のメレオロンあたりからヒントを得ています。もうひとつの【顕現】は、他者の目に写っていない状態であれば好きな物質を創造することができるという能力です。ポケットからありもしない銃を取り出すとか、死体を偽造するなど色々と使用用途はありますが、ややこしくなりそうなのでこちらも見送りになりました。オリジナリティがあって推理的な要素も展開できそうな能力なので、もし今後続編を作ることがあれば登場することもあるかもしれません。

*2 「視界ジャック」。『SIREN』の根幹を成すゲームシステムで、視界を盗める能力。対象の人物の見る視界を同じように見ることができる

ネーミングに隠されたキャラクター設定

――能力の選定についてお聞きしましたが、初期の設定から変化のあったキャラクターはいますか。
Janus ヒロインの「九条ミリヤ」は、当初は学園のアイドル的存在というキャラ付けでした。
いきなりそんな人物に呼び出される、という王道的な展開で行こうと考えていたのですが、いつの間にかその要素はなくなっていました。ビリヤードが趣味という設定もあって、ネーミングもそこから来ています。この設定を受けて、ビリヤードをしながら主人公と事件の推理をするシーンを作る予定もあったのですが、「流石に滑稽」という意見が多かったためカットになりました。
――ネーミングの話はほかのキャラクターも同様ですか。
Janus キャラ付けのために全員の趣味をざっくりと決めていっていたので、その名残がネーミングに出ているキャラは多いです。「市松明人」はチェスから、市松(チェック)で明人(メイト)。「住良木一光」はポーカーから、住良木(皇/すめらぎ)がロイヤル、一がストレートで、光がフラッシュ。中島次郎は、厨二病というキャラ付けで当初は作っていた名残ですね*3 。ただ最終的には姉思いの不良という立ち位置になりましたが。柊由美は弓道、白石蔵吉は囲碁などです。
――白石は途中で名前が変わったようですが。
Janus 元々は「白石蔵之介」という名前だったんですが、たまたまカラオケに行ったときにうたぼんに「白石蔵之介」と載っていたため、調べたところ『テニスの王子様』に同姓同名のキャラがいることを知り変更になりました。

*3 「中」島「次」郎で「厨二」

BGMへのこだわり

――BGMの作曲者は4名もおり、驚きました。例えば「plot」は「plot reverse」と合わせ、2曲存在しています。
Janus 「plot」、「plot reverse」は、まず私が枠組みである「plot」という曲を作り、その後、A.SAKAがアレンジを加えた物が「plot reverse」になります。
――2バージョンあるアイキャッチのサウンドも、同様にお二方が担当していますね。作曲に対して特別な思い入れを感じました。
Janus 企画者の私自身がもともとBGM制作をしているため、BGMにはこだわっています。また、BGMがすべてオリジナルなのは、サークルの伝統です。ただすべての楽曲がこの『LOOT』のために作られたわけではなく、使えそうなものは以前のゲームに使用した曲なども再利用しています。とは言っても、再利用しているのは全体の2割ほどで、ほかはすべて『LOOT』のために作った曲です。
『LOOT original sound track』のジャケット
――印象に残っている曲や思い入れのある曲はありますか。
Janus 個人的に思い入れがある曲は、私の作った「Her Name Is …?」という曲です。さっちゃんのテーマ的な曲で、よく聞けば分かるのですが、例の童謡をアレンジしたものになっています*4
――個人的には「チェックメイト」という曲がとっても好みですね。
Janus 最終場面の「チェックメイト」、それにタイトル曲である「Loot」はよく評価を頂いている曲ですね。BGMについては、好評なことからサウンドトラックを出すことになりました。2012年9月16日開催のの「同人ゲーム.fes 2012 autumn」*5のときに『LOOT』のおまけとして配布する予定です。既に『LOOT』を持っている方は、会場で盗賊の名前をこっそり教えてくださればプレゼントいたします。イベント後には、フリーのBGM素材としても使用できるようにmp3とoggをウェブサイトで配布します。

*4 0:17あたりからがわかりやすい。元になっている童謡は、もちろん「バナナが大好きなあの娘」の歌
*5 大阪日本橋で開かれる同人ゲームイベント
http://doujingame-kouryukai.com/tf

未プレイの方へのメッセージ

――未プレイの方に一言メッセージをお願いします。
Janus 『LOOT』は未プレイの方にも、自信を持って薦められる作品になっているのでぜひプレイしてみてください。ゲームがおもしろそうなのかわからない方は、まず体験版を公開しているのでそちらで雰囲気を味わってもらえたらと思います。ですが、概要や雰囲気を見ておもしろそうと感じた方は、できれば体験版をせずに完成版を最後まで一気にやっていただけた方が満足してもらえると思っています。

続き:
『LOOT』製作者インタビュー 後編
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/09/loot_9288.html

『LOOT』製作者インタビュー 後編

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『LOOT』の企画者Janusにお話を伺ったインタビュー後編。こちらはネタバレあり篇。前編と同様に、こちらもインタビューに直接応じているのは、『LOOT』の企画者Janus氏である。

Janus氏のサイト 家主はJanus
http://janusisjanus.web.fc2.com/

※『LOOT』の結末に関する事柄が出てきます。『LOOT』は推理モノのノベルゲームなので、プレイが終わってから読むのを推奨。

関連記事:
レビュー『LOOT』
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/09/loot.html
『LOOT』製作者インタビュー 前編
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/09/loot_15.html

キャラクター設定の苦労

――思い入れの強いキャラクターは誰でしょうか。
Janus 思い入れの強いキャラクターは、「さっちゃん」こと「中島さつき」でしょうか。近日公開、頒布予定のサウンドトラックのジャケットも彼女です。彼女のネーミングについては、【察知】のキャラだから「察知ちゃん→さっちゃん」で行こう、で決まりました。このときは、まさか『LOOT』の一番大きなトリックの一つを担うとは当初は思っていませんでした。実はゲームにはほぼ登場していない、そのうえ親友に殺される、という悲惨で不遇なキャラなので、スタッフ受けがかなりいいです。本物のさっちゃんもミリヤが演じていた感じの人物です。服装はちょっと『死亡遊戯』のトラックスーツっぽい雰囲気もありますが、さっちゃんが中国拳法を使えるかどうかは不明です。
――キャラクター設定で苦労したキャラクターはいますか。
Janus 主人公「市松明人」のキャラ付けは、キャラが固まるまで時間がかかりました。ありがちなやる気のないキャラもつまらない、かと言って熱血も違うし……と色々と考えましたね。当初は『DEATH NOTE』の夜神月みたいなキャラになりかけていたんですが、やり過ぎだと思い修正しました。『十角館の殺人』のエラリイにも影響されています。最終的には知的でキザ、でも好奇心旺盛というキャラになりました。プレイヤーの選択で「白」にも「黒」にも転び得る、という点は意識したポイントです。

3つのエンディングにある意図

――プレイヤーの選択でどちらにも転びうるというお話が出てきましたが、エンディングは最初から3つで、あの内容と決まっていたのでしょうか。
Janus 当初、エンディングは2つだけを予定していて、On Set END(「ミリヤと共に」)のエンディングはありませんでした。しかし、どうしてもミリヤに愛着があったため、【盗賊】であろうと生き残らせるエンディングもあっていいだろうと想いから追加しました。普通の勧善懲悪はあまり好みではなくて、かといっても王道は外せないと思った結果、このような3種類のエンディングになった形です。どれがトゥルーということはなく、プレイヤーが選択したエンディングがトゥルーという風に捉えてもらえれば幸いです。

作中の伏線、意図、小ネタ

――かなり個人的な質問で恐縮ですが、作中で気になった点を1つだけ質問させてください。さつきに変装したミリヤが残したメモは、【察知】を消そうとしていた形跡がありました。この意図を教えてください。
Janus 日記にあった消そうとしていた跡は、【察知】した能力の部分ではなく、前半のさつきの日記の部分です。さつきの部屋にいたミリヤがさつきの筆跡を真似ようとした練習の形跡です。ミリヤは後半の【察知】の一覧には気づかずに捨てていました。
――そういうことだったんですね。ほかにプレイヤーが気づかないかもしれない意図のようなものはありますか。
Janus ネーミングの話でも出てきた能力、名前、当初の性格とすべてが厨二だった「中島次郎」は最たる例かもしれません。意図というのは少し違いますけれども。こちらが意図したことで気づかれなさそうなのは、やはり冒頭の部分でしょうか。あれは、【察知】のさつきと【盗賊】のミリヤが会話しているシーンです。あのシーンの直後にさつきはミリヤに殺されています。物語の序盤まで読むと、【察知】であるミリヤと無能力者であるさつきの会話のシーンだと錯誤するのですが、それが狙いです。ミリヤはそれまで【盗賊】は自分から動かなければ殺されることはないと思っていたため、安心していたのですが、そのタイミングで友人から【察知】の話を打ち明けられ、恐怖から錯乱し、さつきを殺害してしまいます。そのせいで歯止めが効かなくなったのがミリヤの動機です。ほかにもいくつか1周目では気づけなさそうな伏線はありますが、2周目をエンディング回収のためだけやるのではなくゆっくりプレイしてもらえればある程度気づけると思います。
次郎と恵のこんなやりとりも、次郎の能力を知っていれば意味がわかる
――イチオシのネタなどはありますか。
Janus どうでもいい細かいネタで気づける人がいればうれしい、と思ったものは一つあります。序盤、明人がミリヤにチェスで負けて一光に「コーヒー、ブラックで頼む」というシーンがあります。あれは『凍牌』という麻雀漫画の「畑山」の台詞からパロっています*。ほぼ身内ネタでしたが、こういう小ネタが入れれるのも同人の強み(?)ですね

* 『凍牌』に出てくる畑山は、普段は微糖のコーヒを飲んでいるが、本気を出すとブラックコーヒーを頼むという設定がある

『LOOT』に関する二次創作

――『LOOT』をモチーフにしたボードゲームを作る動きがあるようですね。
Janus 『LOOT』のボードゲーム化は、全力で協力していきたいと考えています。ドイツのボードゲームに夢中になっていたときに、何度かオリジナルのボードゲームを作ろうとしたこともあったので、そういった制作はとてもやってみたかったことでした。同人には色々な形の二次創作が多くありますが、ボードゲーム化は『LOOT』に関してはいちばんうれしいものです。近々、テストプレイヤー募集などの告知をツイッターなどでする予定です。制作を言い出してくれたタカスガタイキ様には感謝しきれないほど感謝しています。
――ほかにも『LOOT』に関して、こんなことをして世界観を広げてみたいという気持ちはありますか。
Janus これからの『LOOT』の展開は、サントラ以外にサークルとして何かをする予定はありません。同じ設定で違うキャラや展開が見たいという意見もあるので、二次創作などでそういったものが見られればうれしい限りです。私自身が『バクマン』の影響で、漫画の原作者をいつかやってみたいと常に思っていたため、もしも画をつけてくださるような方がいれば是非スピンオフなどの原作を書いてみたいとは考えています。

気になる次回作

――次回作の構想はありますか。あるとすれば『LOOT』に関連するものでしょうか、あるいはまったく別の作品でしょうか。
Janus CREOは今後もノベルゲームを作っていきますが、『LOOT』のメンバーはこれを機に新しいサークルを立ち上げる予定です。スタッフロールにもありますが、「rats nest」という名前を予定しています。rats nestでの新作の予定として、来年の夏コミ完成を目標に『ウタカタ』という作品を作るつもりです。『LOOT』とは全くの別作品であり、日常の謎や都市伝説を追いながら人間関係などを描く「真実」をテーマにした作品になると思います。『LOOT』では「キャラクターの個性が弱い」という感想が多いので、次の『ウタカタ』ではその辺りにも焦点を置きたいと考えています。また、『LOOT』の続編は今のところ未定です。ただ、『LOOT』をおもしろいと思ってもらえたのならば、次の『ウタカタ』もおもしろいと思ってもらえるような作品になると思うので、よろしくお願いします。

最後に

――すでに『LOOT』をプレイしたプレイヤーへ、一言お願いします。
Janus プレイヤーの方々には本当に感謝以外の言葉がありません。特にこの同人ゲームという界隈は狭く、プレイヤーがいなければ成り立たないジャンルです。満足してもらえたのならば本当にうれしいです。もし満足してもらえなかったのなら、次回作では必ず満足してもらえると思うのでご期待ください。また、もっともっと多くの人にこの『LOOT』というゲームを知って頂きたいです。「この作品を知らないと損」というような人が、まだまだ沢山いると思っています。なのでプレイしておもしろかった、こんな作品が好きそうな人がいる、という人には、是非この『LOOT』を広めて頂けると幸いです。

News Pick Up 2012年9月第2週

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インディーゲーム界隈のニュースを、俺個人の趣向でピックアップして適当に紹介するよ!

※英語はまだまだ勉強中なので、正確な情報を知りたいときは原文を読んでね。
※なるべく正確な情報を掲載したいため、誤りなどの指摘がありましたらコメント欄、またはhayaniemozuアットgmail.comまでご連絡ください。

第4回WOLF RPGエディターコンテスト、結果発表 2012/08/31

第4回WOLF RPGエディターコンテストの結果が発表された。ウディコンと呼ばれるこのコンテストは、SmokingWOLが提供するフリーのRPGエディタ「WOLF RPGエディター」製のゲームを競うコンテンスト。今回の総合グランプリの上位入賞作品は以下のとおり。
  1. 『悠遠物語~空の大陸とアイテム屋さん~』
  2. 『暗闇の迷宮』
  3. 『COSMOSカードゲーム』
  4. 『ダンジョンズ・オブ・アドヴェンチャラーズ!』
  5. 『Princess Saviour』
いくつか気になる作品をプレイした見た雑感。

総合グランプリ2位 『暗闇の迷宮』  

グリッドで仕切られた2Dダンジョンを探索するRPG。プレイヤーは魔族で、ドワーフやダークエルフ、ゾンビなどを引き連れてダンジョン踏破を目指す。仲間はほとんど女性キャラだが、イラストがかわいいのでそんなことは気にならない。ランダムでいろいろな特性を持ったアイテムが入手できるので、それを合成して、装備を強化しつつ先へ進んでいくというスタイルになっている。プレイ自体は淡々としているが、なかなか中毒性が高い。

総合グランプリ9位 『戦友(ともだち)100人できるかな?』 

バカゲー。「愛すべきバカゲー」とはよく言ったものだが、まさにこういうゲームのことを言うのであろう。10分くらいで終わる。バカゲーが好きならマストプレイ。

総合グランプリ7位 『架空共生層プレノード・オブジェクタ zero』

自動生成のテキストを組み合わせた文章を読み進めるという一風変わったアドベンチャー。独特のセンスが人を選ぶものと思われ、私は選ばれなかった部類。センスが合うかどうかはプレイして試すのがいちばんだろう。

ソース:
WOLF RPGエディターコンテスト公式サイト
http://www.silversecond.com/WolfRPGEditor/Contest/

センス・オブ・ワンダー・ナイト2012のプレゼンテーションタイトル10作品が選出 2012/09/07

東京ゲームショウ2012のビジネスデイに行われる「センス・オブ・ワンダー・ナイト2012」の、プレゼンテーションタイトル10作品が選出された。「センス・オブ・ワンダー・ナイト」は、簡単に言うと尖っていて斬新さを持ったタイトルにプレゼンテーションの場を与えるというコンセプトのイベント。開催は今年で5回目となる。

16の地域から75作品のエントリーがあったようで(17の地域、74という記述もある))、プレゼンテーション可能となった選出タイトルは以下の10作品。
  • 『Backworlds』
  • 『BaraBariBall』
  • 『BREAKS』
  • 『ちゅまむ chumam』
  • 『Douse』
  • 『Grandmaster』
  • 『Memory of a Broken Dimension』
  • 『TAISO』
  • 『Tengami』
  • 『光弾の射手 The Light Shooter』
例年通り、「センス・オブ・ワンダー・ナイト2012」はビジネスデイに開催されるため、プレゼンテーションを見るためには東京ゲームショウのビジネスパスが必要。昨年はイベントの模様をUstreamで配信していたので、今年も同様に配信されることに期待している。

ソース:
東京ゲームショウ2012「センス・オブ・ワンダー・ナイト2012」のページ
http://expo.nikkeibp.co.jp/tgs/2012/business/sown/

『Eryi's Action』など、Nyu Mediaのローカライズ作品がDesuraにて販売開始 2012/09/05

Nyu Mediaがローカライズした日本の同人ソフトがDesuraでの販売を開始した。販売が始まったのは、以下の5タイトル。
  • 『Cherry Tree High Comedy Club(原題:まんけん!)』 
  • 『Eryi's Action(原題:エリィのアクション)』
  • 『Ether Vapor Remaster』
  • 『eXceed 2nd - VAMPIRE REX』
  • 『eXceed 3rd - JADE PENETRATE BLACK PACKAGE』
  • 『SATAZIUS』
『Eryi's Action』を除いた4作品は、Nyu Mediaのローカライズ第1弾タイトルで、2012年9月21日にリリース予定。一方の『Eryi's Action』は2012年9月9日にすでにリリースされている。『Eryi's Action』はNyu Mediaのローカライズ第2弾のタイトルなので、ほかのタイトルもそのうちリリースされるものと思われる。
『Eryi's Action』は日本では1000円程度で販売されており、Desuraでは$4.99(400円弱)とおよそ半額で購入が可能。一旦は日本市場での販売価格に合わせて$9.99に修正されたのだが、現在は$4.99に戻っている。そのうえGamersGateでは$9.99という価格設定になっており、なかなか安定しないのが心配である。ちなみにDesuraの『Eryi's Action』は英語版で日本語版は未収録のようだ。

ソース:
『Eryi's Action』公式サイト
http://eryisaction.com/
Desura「Nyu Media」のページ 2012年9月分のニュース
http://www.desura.com/company/nyu-media/news/?filter=t&kw=Search+...&month=09&year=2012&game=#content

Steam Greenlightから10タイトルが選出、正式リリースへ

これはあとでまとめようと思っているので手短に。Steamでのインディーゲーム配信をサポートするSteam Greenlightから以下の10作品が選出され、Greenlit Gamesとして発表された。
  • 『Balck Mesa』
  • 『Heroes & Generals』
  • 『Cry of Fear』
  • 『Routine』
  • 『Kenshi』
  • 『Towns』
  • 『No More Room in Hell』
  • 『Project Zomboid』
  • 『Dream』
  • 『McPixel』
いずれもメジャーどころで順当に作品が選出されたという印象(『McPixel』を除く)。驚きは少なかったが、「これを選んで大丈夫なのか?」みたいなタイトルが選ばれるよりかはマシだったろう。そもそも「おもしろいのにマイナーという不遇なインディーゲームを救おう!」とかいう慈善事業ではないのでこういう結果も当然といえば当然である。

とはいえ、リリース決定に至るルールが不明瞭であるため、最初から決まっていたのではないか、といった余計な詮索をしたくなってしまうのも事実。ルールを決めるということは、抜け穴を決めるということに等しいので難しいのかもしれないが、今後改善されてほしいところではある。

ソース:
Steam「Greenlit Games」
http://steamcommunity.com/workshop/browse?appid=765&method=browse&controller=sharedfiles&browsesort=pending&browsefilter=pending&p=1

Dejobaan GamesとNicalisが、Steam Greenlight登録のサポートを表明 2012/09/05

お遊びが好きたせいか、2012年9月5日よりValveはSteam Greenlightへの登録に$100の手数料をかけるようになった。これを受けて同日、『AaaaaAAaaaAAAaaAAAAaAAAAA!!!』を手がけたDejobaan Gamesが「期待できるタイトルに、デベロッパに代わって自分が手数料を支払おう」とブログで発表した。

「代わりに支払う」と言っても、あくまで貸し出し(loan)のようだが、すでにサポートするタイトルは決まった模様。後日、公開されるそうだ。

インディーゲームをパブリッシュしているNiclaisも、Dejobaan Gamesのこの動きに賛同、3本のインディーゲームをサポートすると発表した。こちらについては2012年9月末に結果を明かされる予定。

ソース:
Dejobaan Games公式ブログ「Dejobaan Will Loan You $100 to Submit to Steam Greenlight」
http://www.dejobaan.com/greenlight100/
Nicalis公式ブログ「Nicalis Will Loan You $100 to Submit to Steam Greenlight」
http://blog.nicalis.com/2012/09/nicalis-will-loan-you-100-to-submit-to-steam-greenlight/

IndieGameStandのロンチが迫る 2012/09/11

インディーゲームのセールを積極的に行なっていくIndieGameStandなるサイトがオープンした(いつの間にかしていた)。正式サービスの開始は2012年9月26日。主な特徴は次のとおり。
  • 4日ごとにフィーチャーされるインディーゲームが変わる
  • Pay What You Want方式を採用し、好きな価格で購入可能
  • セールスの一部はチャリティへと回される
  • 提供されるタイトルはDRMフリー(場合によってはDesuraやSteamのキーも提供)
The Humble Indie Bundleが、バンドルではなく単体のタイトルになったようなイメージだろうか。

平均額以上の支払いでボーナスがアンロックされるThe Humble Indie Bundle、支払額が少ないと徐々に最低限度額が上昇していくIndie Royale、売上目標に応じて別のコンテンツがアンロックされるBe Mine、複数タイトルからいくつかピックして購入するIndie Fort Bundle(この仕様は3のみ)。このようにいろいろな試みがなされているプロモ、販売方式だが、結局のところ、魅力的なタイトルを引っ張ってこれるかどうかになってしまっているので、IndieGameStandも例に漏れずそうなるだろう。

公式ブログに掲載されたモックアップ画像を見ると、平均額以上でボーナスコンテンツがアンロックする仕様(DesuraやSteamのキーを購入額でアンロックする仕組みもできるっぽいが、不明)と、ギフト機能が確認できる。支払額に関するデータ(総購入者数、平均支払額、プラットフォーム別の平均支払額、支払額上位)の表示や、支払額の推移グラフといったほかのサービスでお馴染みの機能も揃えているようだ。

また、ゲームをダウンロードするアカウントページでは、Steam Greenlightへのリンクも貼れるようでデベロッパとしてはなかなか使い勝手がよさそうである。ちなみに2012年8月8日の時点で、36のデベロッパと49のゲームが参加を表明しているようだ。

また、ロンチ直前プロモーションとして『Chester』が無料配布されている。『Chester』はDesuraでも無料キャンペーンをやっていたので、すでに持っている人もいるかもしれないが、興味を持っていて魅入手の人はこれを機会に手に入れてもいいだろう。

ソース:
IndieGameStand公式サイト
https://indiegamestand.com/
IndieGameStand公式ブログ
http://blog.indiegamestand.com/

『Depth』が開発中止に 2012/09/15

海を舞台にした一人称視点のアクションアドベンチャー『Depth』が開発中止となったと、『Depth』のクリエイティブディレクターのAlex Quick氏が公式サイトで発表している。同作は、襲いかかる凶悪な人喰い鮫と戦いを繰り広げながら、海底に眠る財宝を集めるというゲームで個人的に非常に期待値の高かった作品。

開発はひと月前に無期限の活動休止となったそうだ。IndieDBには2010年の時点で『Depth』のページができているので、2年以上に渡って開発が続けられていたことになるだろう。開発中止の主要因としてプロジェクトのメンテナンス、そしてそのスタッフにかかる費用があまりに高額になりすぎたことも挙げられている。

氏は「depth_isn't_dead(『Depth』は死んでなんかいない)」という言葉とともに、来たるときが来れば再浮上する可能性もあるといった旨の発言で報告を締めくくっているようだ。

ソース:
『Depth』公式サイト
http://www.depthgame.com/

『Incredipede』の予約が開始 2012/09/06

前回のニュースでも扱った不思議な生物に手足を生やすゲーム『Incredipede』の予約購入が開始している。『Incredipede』公式サイトで購入が可能で、Humble Store経由での購入となる。予約特典は以下のとおり。
  • 通常価格$15を、20%OFFの$12で購入可能
  • ボーナスとしてデスクトップ用壁紙(複数)
  • 早期ベータアクセス権
気になるベータアクセス権の開始は10月の早い時期を予定しているようだ。購入者にはメールにて連絡が行くようになっている。なお、予約購入のページによると、製品版には60のレベルが用意されており、レベルエディターが付属する。

ソース:
『Incredipede』公式サイト
http://www.incredipede.com/

『LOVE』が無料化 2012/09/08

スウェーデンの開発者Eskil Steenbergがたったひとりで開発しているインディーMMOアクション『LOVE』が無料化した。もともと月額課金制を取っていたのだが、それをやめての無料化となる。無料化に伴い、寄付システムが導入された。

寄付は公式サイトで$10から可能。寄付をすると、14桁のコードが送られてくるので、アカウント作成時にコードを適用することでキャラクターサイズが大人になる(本来は子どもサイズ)、移動用のアビリティを得られるなどの特典が入手できる。

リリース当時はファンディングなしにひとりで開発しているということでそれなりに話題を集めたタイトルだったが、どの程度の人気があったのかは不明。印象的なビジュアルを始め、独創的な感じがするタイトルなので少しプレイしてみたい。

ソース:
『LOVE』公式サイト
http://www.quelsolaar.com

『Terraria』がコンシューマ機へ移植決定 2012/09/11

『Minecraft』を2Dにしたような箱庭2Dアクション『Terraria』の公式フォーラムで、同作がXbox LIVE アーケードとPlayStation Networkへと移植されることが発表された。

『Terraria』は最終のアップデートを終えており、すでに開発の手を離れた状態にある。そのため、コンシューマ機への移植は、外部の505gamesが担当するようだ(またEngine Softwareという会社も移植に参加している、と複数のメディアが報じている)。

新要素、追加要素などは現段階では明らかになってはいないが、オリジナル版の中心人物Andrew "Redigit" Spinksは「新バージョンへの追加要素をユーザーに見せるのが待ち遠しい」とコメントしており、追加要素自体はほぼあると見てよいだろう。

コンシューマ機へのリリース時に本家と比べて古いバージョンだった『Minecraft』と異なり、『Terraria』はすでに開発を終了しているため、恐らくは最終バージョンが最初からリリースされるものと思われる。なお、リリースは2013年早期を予定している。

ソース:
『Terraria』公式サイト
http://www.terraria.org/
『Terraria』公式フォーラム「Terraria Online」
http://www.terrariaonline.com/

今週の気になるゲー&注目トレーラー

『Qbeh』

キューブを使って足場を作っていくファーストパーソンパズラー。パズル要素は弱めで、プラットフォームアクションとしての毛色が強い。Desuraから無料でダウンロード可能。

右クリックで色つきのキューブを回収することができ、回収したキューブは左クリックでステージ上に配置できる。ただし、キューブを配置できるのは、色つきのキューブに隣接した場所のみ。全4レベルで難しいシーンもなく、20分程度で終わる。クレジットのあとにサプライズがあるのと、Easter Eggも備えているらしいのだが、改めてリプレイする気にはなれなかった。

ソース:
『Qbeh』公式サイト
http://liquidflowergames.com/qbeh.php
Desura『Qbeh』
http://www.desura.com/games/qbeh

『Fibrillation』

ホラーテイストの一人称視点アクションアドベンチャー。ロシア産らしいのだが、廃墟っぽい雰囲気と、不条理が支配する独特の世界観がとにかく魅力的だ。

プレイヤーは歩く(または走る)ことと、目をつぶることしかできず、恐怖から逃げ惑い、あるときはわけもわからぬまま歩みを進める。デモ版は20~30分程度で終わり、製品版も1.95と非常に安い。『Dear Eshter』のようないかにも作品といった風合いのゲームで、製品版もプレイしようと思う。

ソース:
『Fibrillation』公式サイト
http://egorrezenov.com/

『Plunger Lunger』

2Dのワイヤーアクション。アクションそのものは軽快なのだが、動作がやや重い(私のPCスペックの問題もあるだろう)。プレイヤーから出ている数字は恐らく速度。上達に伴ってステージを高速で飛びまわれるようになるアクションっぽいので好き。

ソース:
Facebook『Plunger Lunger』
http://www.facebook.com/PlungerLunger

併せて読みたい

ニュースを一気読みするなら、ASTRAL GATEさんがオススメ!

ASTRAL GATE「今週の注目インディーゲームニュース まとめ 9月2週」2012/09/08
http://astral-gate.com/indiegamenews/3350/
ASTRAL GATE「今週の注目インディーゲームニュース まとめ 9月3週」2012/09/16
http://astral-gate.com/indiegamenews/3388/

まとめ

意外と早かったGreenlightには驚いたけど、タイトル自体は予定調和。「遅かれ早かれSteamに来てたんじゃない?」ってタイトルで目新しさに欠けた印象。Greenlightがそういうものじゃないとわかっててもやっぱそう感じてしまう。

『Depth』は、とても待ち遠しかったタイトルなので非常に残念でした。『Fibrillation』は雰囲気が本当によくて期待作。公式サイトによると40分程度で終わるらしいが、価格も安いのでそんなものだろう。

斬新なゲームが登場することを願って、今週末の「センス・オブ・ワンダー・ナイト2012」に期待したい。

センス・オブ・ワンダー・ナイト 2012 雑感

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独創的なゲームを発掘するゲームプレゼンイベント、「センス・オブ・ワンダー ナイト 2012(SOWN 2012)」について、足早に紹介するよ!

センス・オブ・ワンダー・ナイトって?

公式サイトより抜粋してみよう。
ゲーム開発者にスポットライトを当て、“見た瞬間、コンセプトを聞いた瞬間に、誰もがはっと、自分の世界が何か変わるような感覚”=「センス・オブ・ワンダー」を引き起こすようなゲームのアイデアを発掘し、東京ゲームショウ2012の会期中にプレゼンテーションの機会を提供する企画で、今年で5回目の開催となります。
さらにイベントの目的。
  • 実験的であり、創造的であり、伝統的と呼ばれないゲームデザインやアイデアを含んだゲームを紹介すること
  • 「センス・オブ・ワンダー」を感じられるゲームが作られることの重要性を紹介し、それにより、ゲーム産業の活性化を図ること
  • 実験的なゲームを開発している人たちに、将来へのチャンスの場を提供すること
  • ゲームデザインに新しい領域を作り出していくこと
つまるところ「今まで見たこともない、プレイしたこともないような、斬新、画期的、革新的なゲームを見つけようぜ!」ってイベントである。

イベントの模様はUstreamで配信され、2011年のものはYouTubeにも動画があげられたりしている。実は「ここから商業化にこぎつけたんじゃないの?」ってゲームもあったりする(いや逆なんだろうな、きっと。商業化が決まってて発表する場が与えられたという感じ。『Unfinished Swan』とか『ゴミ箱』あたりね)。

Ustream「TGS 2012 Sense of Wonder Night」
http://www.ustream.tv/recorded/25571142
※170分と長い

センス・オブ・ワンダー・ナイト 2012公式サイト
http://expo.nikkeibp.co.jp/tgs/2012/business/sown/index.html

※2012年10月17日追記
NAVERまとめ「Links of SENSE OF WONDER NIGHT 2012 10 Presenters」(関連リンク集)
http://matome.naver.jp/odai/2134705119278730501

SOWN 2012のプレゼン作品の紹介

毎度前置きが長くなるのが私の悪い癖なので、本題に移ろう。

以下が、プレゼンされた4カテゴリ全10作品である(掲載は発表順にならった)。

だれかこれを説明して Someone please explain about it
どんなものだが見てみたい Want to see what kind of thing
クールな既存ゲームの再定義 Cool re-definition of traditional style
とてつもなく奇妙で美しい Absurdly strange and beautiful
※タイトルクリックで、この記事内の該当部分へとジャンプ

『Grandmaster(開発:Beast Mode)』 動画 0:24:50~

乞食となってモノあさりする、という風変わりなゲーム。ウクライナ産。

タブレット端末向けに開発されているようで、画面をスワイプしてゴミ箱の中を引っ掻き回し(アイテムを移動させ)、食べ物を探すというゲームらしい。ゲームの合間には、食べ物を横取りしようとやってくるほかの乞食や警官を撃退するというカオスなイベントも。

プレイヤーの着せ替え可。

キャラクターデザインのセンスといい、実に個性的である。プレゼンでは最終的に乞食を題材にした歌を歌って、会場をわかせた。その影響もあってか、オーディエンス賞とNHN Japan賞を受賞*1 。Facebook上では、受賞について「Audiencu Awardu! NHN Awardu! Sugoi!」とポストしており、私を和ませた。

*1 選考段階で一度もれたところを、NHN Japanの強い要望で選考に残したとの発言もある

Facebook『Grandmaster』
http://www.facebook.com/grandmaster.game

『ちゅまむ(開発:い~といん)』 動画 0:39:10~

日本産のパズルアクションゲーム。2台のiPhoneを使って遊ぶ。画面上を移動するキャラクターが2台の端末間を移動するというのがメインのゲームメカニック。

ゲームは2台の端末上で動作し、ランダム生成されたルートを2人のキャラクターがオートで移動している。プレイヤーは2台の端末に表示されたルートがつながるように端末を並べ、その状態で画面をピンチ(つまむ*2)することで、ルートを接続してキャラクターを誘導していく。

*2 ゲームタイトルはここからとったものだろう

スコアは、ルート上のボーナスポイントの通過回数×キャラクターがすれちがった回数(ランデブーと呼ぶ)で算出される。

タッチデバイスお得意のイチャイチャできるゲームメカニックで、とても興味深い。審査員からも「操作について特許申請したほうがいいよ」と言われていたのが印象的だった。受賞はなかったものの、プレイするか(する相手がいるか)どうかは別として個人的には結構好きなタイトル。GREE賞を受賞した。

『BREAKS(開発:なんも)』 動画 0:47:45~

タッチデバイスを想定した開発中の作品。リリース時期やプラットフォームは未定。日本産。円形のステージ上にブロックが現れるので、自機となっているボールをスワイプ操作で動かし、ブロックにぶつけて破壊するという内容だ。

最大の特徴は、状況に応じてBGMにエフェクトがかかるようになっていること。プレイするたびに異なる体験になるようだ。ゲームプレイをパフォーマンスという方向に持っていくことを目指しており、その結果としてプレイヤー自身がクリエイターになれるのではないか、ということを開発者は考えているそうだ。リプレイ記録と再生、及びWeb形式での書き出しを実装済みといかにも近代的な仕様が入っているのは素晴らしい。

コンセプトはとても興味深いのだが、残念ながら動画ではどこまで可能性があるのかわからなかった。

『BREAKS』公式サイト
http://fullpowersideattack.com/

『光弾の射手 The Light Shooter(開発:安本匡佑)』 動画 0:59:50~

東京工科大学の助教授が開発しているゲーム。開発している安本氏は、メディアアート、ゲーム、バランスボールインターフェイスなどの研究者で、本作は身体意識をテーマにしている。独自の電子弓デバイス「電子弓弐式_一葉」を使った一人称視点のシューティングゲームとなる。銃を撃つ代わりに、弓を射るガンシューティングを想像してもらうとわかりやすい。

画面は暗闇なのだが、弓を引くことで狙っている方向にのみ光が当たるようになっている。弦を放つと光弾が飛んでいき、光弾でターゲットを破壊するというゲームだ。

当初はブロックを撃つゲームだったのだが、東京ゲームショウでの出展に際して(SOWN 2012以外にも東京工科大学のブースにて出展していた)「妖怪とかを撃つゲームにしてほしい」という天の声(大学側の声だろう)があり、ダサくなりそうで嫌だったので違う方向に作り替えたそうだ。

この作り替えたあとの画面構成がおもしろい。暗闇に白点と白線だけですべての情報を表すというスタイルなのだが、敵は単なる点の集合ながらきちんと人型のターゲットが動いているように見える。それまで安元氏がひとりで研究していたのを、バイオロジカルモーションという別の研究者の技術を用いて実装しているとのこと。

Kinectが関係してそうだが、プレゼン中にはKinectという言葉は登場しなかった。なお、日本マイクロソフト賞を受賞している。

『TAISO(開発:雑魚雑魚)』 動画 1:10:30~

スマートフォンを体操選手に見立て、実際にスマートフォンを回したり投げたりして操作する体操ゲーム。以上。バカバカしいコンセプトをマジメに実装した、清々しいまでのバカゲーである。無料。

開発の雑魚雑魚(日本)は、去年に続いての登場。昨年に続き、GMOインターネット賞を受賞した。プレゼンが結構長いが、ゲーム同様おふざけしている部分が多く個人的には楽しめた。とはいえ、そのプレゼンは人を選ぶかとは思う。

App Store『TAISO』
http://itunes.apple.com/jp/app/taiso/id527515884
Google Play『TAISO』
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.zacozaco.taiso2

『Douse(開発:DigiPen Team Terrabyte)』 動画 1:32:25~

ゲーム教育の名門DigiPen Institute of Technology(アメリカ)の学生チームが手がけた作品。

主人公は天から降りてきた水の妖精*3。雨を降らせる力を使って、ステージ上の仕掛けを解いていながら進んで、天に戻るという横スクロールアクション。いわゆるプラットフォーマーである。今回プレゼンされたゲームのなかではいちばん既存のゲームに近いかな。公式サイトからダウンロード可能で、無料でプレイできる。

*3 タイトルにもなっている「douse」は「水を浴びせる」という意味

内容的にもシンプルそのものといった感じ。ステージ上の任意の地点に雨を降らせることで、枯れた植物に花を咲かせることができ、極一部で雨を使ったステージ攻略用のギミックがあるようだ。SEはいいけど、イマイチのめり込めなかった。

『Dous』公式サイト
http://douse.nfshost.com/

『Backworlds(開発:Anders Ekermo & Juha Kangas)』 動画 1:44:50~

スウェーデンのデベロッパが開発する2Dパズルアクション。今回、プレゼンされたなかでは私が唯一プレイしたことのあるゲームである。

『Backworlds』では表と裏の2つの世界が同時に存在しており、プレイヤーはドラッグすることで裏世界を表出させたり、逆に表世界を隠したりすることができる。これを使うと、裏世界の足場を出現させることで、表世界だけでは届かないような足場へと移動するといったようなことが可能になり、それが本作の基本的なテクニックとなる。

今回のプレゼンテーションのバージョンは、以前公開されいたデモよりもさらに開発が進んだもののようだ。もともとあった2つの世界を描き出すメインのゲームメカニック、それに重力反転床に加え、新たに時間を止めるギミックが採用されていた。動画で見ただけなのではっきりとはわからないが、ドラッグした範囲の時間を停止させることができるようだった。

正直、前にデモをクリアしたときは「おもしろそうだけど、微妙かも」という印象だったのだが、新たなギミックによってさらに豊かなゲーム体験を可能にしているようで期待が持てる。

なお、デモ版だとプレゼンでは出てこないボス戦もプレイできるはずである。

『Backworlds』公式サイト
http://www.backworlds.com/

『BaraBariBall(開発:Strange Flavor)』 動画 1:54:50~

8bitライクなビジュアルの対戦型アクションゲーム。アメリカ産。

ルールは簡単。アリーナ上に出現するボールを相手プレイヤーと奪い合い、画面下部にある自キャラクターと同じ色のエリアにボールを落とすというゲーム。ポイント制となっており、時間内により多くのポイントを得たほうが勝者となるようだ。

手にしたボールを投げることはもちろん、複数回のジャンプや空中ダッシュ、相手を近接攻撃で殴ってボールを奪ったりできる。1体1の対戦のほか、2対2のチームプレイにも対応している模様。

ボールが画面下に落下したときのエフェクトが『大乱闘スマッシュブラザーズ』っぽい。また、足場への復帰ジャンプやへりへの掴まり、無敵不可のローリングなど随所からスマブラの香りがする。

『BaraBariBall』公式ブログ
http://bbb.strangeflavor.net/

『Memory of a Broken Dimension(開発:xra)』 動画 2:09:25~

アメリカ産の一人称視点アクションアドベンチャーっぽい(?)ゲーム。これは言語化が難しい。というかプレゼン見ても、どんなゲームなのかよくわからなかった。特定のコマンドラインを入力することで、ステージが生成され、ステージを行き来するようなゲームのようだった。

ただわからないながらも、いかにもセンスの塊といった感じのビジュアルデザインはそれだけで興味関心を惹かれた。

『Memory of a Broken Dimension』公式サイト
http://dev.datatragedy.com/projects/moabd/

『Tengami(開発:Nyamyam)』 動画 2:22:00~

イギリス、ドイツ、日本と複数の国のクリエイターで手がけていた和物アドベンチャー。『Superbrothers: Sword & Sworcery EP(邦題:スキタイのムスメ)』みたいなゲームかな。

飛び出す絵本の世界を冒険するようなゲームで、絵本のなかを行き来し、隠された謎を解きながら進めていくような内容になっている。謎解きや場面転換のエフェクトなどに飛び出す絵本のような仕掛けがほどこされており、プレイ感覚もなかなか独特なのではないかな、といった印象。

和紙のようなテクスチャ、出雲大社を参考にして作られた建造物、四季の移り変わりやサウンド面など日本の文化の影響を色濃く受けているのが伺える。

驚いたのは、アートワークを実際に印刷すると絵本にすることもできるということ。どこまで現実的に可能なのかはゲームの完成までは疑問が残るものの、素晴らしい試みだと感じた。

アストラルゲートさんとこで前に記事があがってたので、詳しくはそちらを見てみるとよいかも。また、GameBusiness.jpでは開発者へのインタビューも行なっている。こちらは読み応えがあって、かつ開発者の熱い思いも聞けるので是非。

アストラルゲート「古代日本を舞台にした、イギリス製アドベンチャー『TENGAMI』に惹かれる」
http://astral-gate.com/indiegamenews/2504/
GameBusines「【TGS 2012】Youtubeの動画を見てひらめいた・・・『TENGAMI』開発者特別インタビュー」
http://www.gamebusiness.jp/article.php?id=6853

『TENGAMI』公式サイト
http://nyamyam.com/games

まとめ

今まで以上に、(いい意味で)既存のゲームの枠組みから外れるような作品が多かったな、という印象。デバイスの普及が大きいんだろうね。あとへんてこりんなピコピコデバイスを拍手代わりとするシステムは、相変わらず秀逸だと思う。

プレゼン時間はもう少し明確にされていてもよかったように思っていて、その点は次回以降は改善してほしい。あとは未だにイベントとしての箔の弱さもどうにかするべきじゃないのか、という気がしなくもない。そのためにはより多くの作品が集まるべきで、知名度が必要だと思うんだが、予算があまりおりないようで*4賞金なども準備されてないというのが実情のようだ*5。インディーゲームがずっと右肩上がりとは思えないが、頑張ってほしいところである。

*4 協賛も安定していない。Microsoft(あるいはXNA)とかSonyは、協賛してたりしていなかったり。任天堂のみが唯一毎年協賛している。Unityはこの手のイベントの協賛に積極的なので、今後も協賛には名を連ねると思われる
*5 ただしファイナリストは、協賛のUnityからUnity PROがプレゼントされている

個人的に気になったのは、『BaraBariBall』、『TENGAMI』、『Memory of a Broken Dimension』の3つ。『BaraBariBall』はシンプルな操作(十字ボタンと2ボタン)と見た目に反して、なかなかいろいろなアクションが入っていてよさげ。『TENGAMI』は言わずもがな、世界観の勝利。そして世界観の勝利という点においては『Memory of a Broken Dimension』の尖った雰囲気も捨てがたい、といったところ。

最後に。

SOWN 2009ファイナリスト『ANTI CHANMBER(当時は『Hazard — The Journey Of Life』)』の開発Alexander Bruceからのビデオメッセージが印象的(動画では0:12:30~)だったので、そちらを引用して本稿の締めくくりとしたい。引用中の太字はスライドの原文に合わせたものだが、日本語訳部分は太字になっていない部分があったので、私が太字にしている部分もある。
<原文>

I was not selected for SOWN in 2009, I would not be an independent developer today.

I would be working in an office somewhere, and would have never traveled outside Australia.

The peopele I met at TGS 2009 and

the experience of being in Japan changed entire direction of my career.

For the presenters: Meet as many people at the conference as you can. I am where Iam because of the people I met who helped me along the way.

And for the audience: Keep an open mind. Many experiments lead nowhere, but others inspire people to try new things, and occasionally. some experiments change our industry entirely.


<訳文>

もし、2009年のSOWNに選ばれてなかったら、今、インディ開発者になっていなかっただろう。 
どこかのオフィスで働いていて、オーストラリアから外に出かけることも決してなかった。

東京ゲームショウ2009で出会った人たちや、日本での経験は私の人生の方向をすべて変えた。

プレゼンターの人たちは、できる限りこのカンファレンスで多くの人に会ってほしい。なぜなら、出会った人たちは、今後の道のりのなかで、助けてくれる人たちになってくれるからだ。

そして、聴衆のひとたちには、広い心でいてほしい。多くの「実験」は何もならないかもしれない。だけど、誰かが新しいことに挑戦しようとすることからインスパイアされることがあると思うはずだ。そして、時には、いくつかの「実験」は、私たちの産業を完全に変えてしまうのだから。

素敵。来年もあるといいね、SOWN。

デモレビュー『Gorogoa』

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IndieCade 2012で颯爽と現れた(というかたまたま、このタイミングで私が知ったのだが)『Gorogoa』の出来が非常によいので、デモをプレイした感想をまとめてみようと思う。

関連記事:
ショートインタビュー『Gorogoa』
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/10/gorogoa_14.html

ポイント・アンド・クリックをさらに高めたスライド・アンド・ドロップのアドベンチャー

Jason Robertsという個人によって開発されているようで、プログラムもグラッフィクも恐らく単独でこなしているものと思われる。楽曲は音楽サービスMagnatune.comにて提供されているものを使用しており、クレジットに曲名と作曲者、収録アルバムが明記されている。

ゲーム内容はと言うと、いわゆるポイント・アンド・クリックと呼ばれるタイプのアドベンチャーゲームである。古典的なゲームであるこのジャンルは、言わずもがな世界観の見せ方が重要になってくることが多いのだが、『Gorogoa』はビジュアルのみならず、ゲームメカニックの方面からもアプローチを加えて、本作を独創的な作品たらしめることに成功している。
線の細い写実よりのビジュアル。細部まで描き込まれたイラストが動くのは、見ていて楽しい
どんなゲームなのかはトレーラーを見てもらったほうが早い。ただし、トレーラーを見てしまうと、序盤の解法がわかってしまいかねないのには注意が必要だろう(以下に続くゲーム内容の記述も同様である。ただし、トレーラーは流れが早いので、何が起こっているかわからないかもしれない)。なのでビジュアルに惹かれた人はデモ版をプレイするのをオススメしたい。


ゲーム内容の詳細に入ろう。

本作では画面が4つのタイルにわかれており、それぞれのタイルをドラッグ・アンド・ドロップ(スライド・アンド・ドロップと形容してもいいかもしれない)することで好きな場所へと移動させられる。タイルは重ね合わせることが可能となっており、特定の組み合わせでタイルを重ねるとゲームが進展することがある。つまりポイント・アンド・クリックだけではなく、タイルのスライド・アンド・ドロップも使って進めるゲームなのだ。
例えば、トレーラーの0:12あたりのシーン
左下のタイルを、右上のタイルに重ねると…… 
扉から出てきたはずの少年が、建物から出てくるシーンへと展開する
複数のシーンを関連するオブジェクトや動作で結びつけるという手法はテレビCMなどで見かけるものだと思うのだが、実際にプレイしてみると、この感覚は独特でとても刺激的だ。

「何が起こるか」をある程度予想してクリックするポイント・アンド・クリックとは異なり、「何かが起こるとわかっているけど、何が起こるかはわからない」というプレイ感覚を生み出しており、先の読めない展開が続く。

それに加えて、ゲームは文字情報がほとんどないままに情景描写だけで進んでいくため、説明の少ない不可思議な世界観とスライド・アンド・ドロップのもたらす奇妙な合理性とが相まって、その行く末がどうなるのかとても気になる。

タイルの重ね合わせ以外にも、タイルを移動させると下から新たなタイルが現れたり、複数のタイルをつなぎ合わせると大きなイラストが完成して動き出すといった挙動もあり、触って見て楽しむポイント・アンド・クリック型のアドベンチャーをさらにワンランクアップさせたような味わいとなっている。
トレーラーの0:10頃に登場するシーン
左上のタイルを、別の場所(動画では左下)に移動させると……
移動させたタイルの下(動画では左上)から新たなタイルが現れる
また、タイルによっては拡大や縮小することも可能で(拡大率や縮小率、その場所は固定)、さらに深みのあるゲームプレイを実現している。
0:19くらいの右上のタイルに、リンゴの木があるシーン
タイルの移動や拡大・縮小を組み合わせて大きなイラストにすると、
カラスが飛び立ち、リンゴが落ちる
冒頭でも述べた通り、IndieCade 2012にてVisual Design Awardを受賞している*1のにも頷ける。緻密なイラストが単にアニメーションをするのではなく、一定の合理性を保ちながらシーンが展開していく様を見れば、なるべくしてなった結果と言ってもまったく過言ではないだろう。

*1 IndieCade 2012「IndieCade 2012 Award Winners」
http://www.indiecade.com/2012/award_winners/

ヒント機能は直接的で貧弱だが、不満は残り難い

救済措置としてクリックできる場所を直接表示する機能がついている。これはあまりに直接的すぎて個人的に好ましくないと感じている。また、ポイント・アンド・クリックとは異なり、この機能ではタイルを移動させるタイプの解法がわからない。ヒントの質はあまり高くないだろう。
ウィンドウ上部のShow Hotspotをオンにすると、
クリックできる範囲が緑の枠で囲まれる
ただ、意図したものかどうかはわからいものの、ポイント・アンド・クリックのアドベンチャーにありがちな小さなクリッカブルポイントを探すような不毛なシーンがないのは非常によい。

タイルを移動させる解法も、重ね合わせが必要となるシーンでは透過される部分が真っ白になっていたり、イラストをつなぎ合わせるシーンではちゃんとタイル同士がくっつくようなイラストになっていたりと、少なからずヒントとなる情報が画面上には存在している。このため、一般的なポイント・アンド・クリックに比べると解法に対して不満の残るシーンがかなり少ないのもよい点だろう。

今後の予定

デモ版は30分~1時間もあれば終わるもので、公式サイトから無料でダウンロードできる。一応、セーブ機能もついているので、この手のアドベンチャーが苦手で時間がかかりそうだという人でもあまり心配する必要はない。

『Gorogoa』公式サイト
http://gorogoa.com/

リリースについては、2013年後期を予定している。デモ版はWindowバージョンしかないものの、リリースプラットフォームについては、Win / Mac、それにモバイル向けにもリリースを考えているようだ。

個人的には非常に期待のできる作品だと感じており、リリースが楽しみである。予約購入が始まれば、迷わず予約することだろう。

ショートインタビュー『Gorogoa』

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デモをプレイしてひどく気に入った『Gorogoa』。デモレビューを書いたはいいが、作品に関する情報が不足しており、モヤモヤしてしまった。そこで開発者にコンタクトをとったところ、いくつか回答をいただくことができた。

本稿では、開発者より許可を得てその回答を掲載する。これを通じて『Gorogoa』の源泉を少しでも知っていただければ、と思う。なお、原文も併せて掲載するので、英語が読める方はそちらを参照してほしい。

関連記事:
デモレビュー『Gorogoa』
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/10/gorogoa.html

開発のきっかけ

――自己紹介をお願いできますか?
Jason Jason Robertsと申します。『Gorogoa』が処女作です。『Gorogoa』に取り組む前は、ゲーム会社ではないところでソフトウェア開発を行なっていました。それでも時間のあるときに画を描くのは大好きでしたし、頭のなかにはいつもゲームのアイディアが浮かんでいましたよ。
<原文>
My name is Jason Roberts. Gorogoa is my first game. Before I started working on it I was software developer, outside the game industry. But I loved to draw in my spare time and always had game ideas floating round in my head.
――開発はおひとりでなさっているのですか?
Jason そうです。
<原文>
Yes.
――『Gorogoa』のアイディアはどこから来たのでしょうか?
Jason パネルを動かして、互いのストーリーに影響を及ぼすっていうのは、インタラクティブコミックのアイディアとして始まったものなんだ。ただ、このアイディアは時間の概念が絡んで(当初はコミック上の各パネルが、それぞれ異なった時間を表現していたんだよ)、今公開しているゲームよりもずっと複雑だった。だからもっとシンプルなデザインで進めることにしたんだ。
<原文>
It started out as an idea for an interactive comic, whose panels could
be moved around and interact with one another to change the story. This
idea was actually more complicated than the current game, since it
involved the element of time (since each panel in a comic represents a
different point in time). But I decided to start out with a simpler design.

影響を与えている作家や作品

――お好きなアーティストをお教えください
Jason 特に大きな影響を受けた漫画家は、もっとも奇妙で、それでいて素晴らしいレイアウトを生み出すChris Wareかな。イラストレーターだと、Christopher Manson、Chris Van Allsburg、Gustav Dore、それにEdward Goreyなんかが好きだよ。ビデオゲーム製作者に限って言えば、上田文人はこのリストのなかでいちばん上に位置するアーティストだね。それとここまでその名を挙げていないにも関わらず、スタジオジブリの映画からは多大な影響を受けているというのは言っておかなきゃならない。
<原文>
A comic artist I was especially inspired by was Chris Ware, who makes
the most strange and wonderful layouts . Illustrators I like are
Christopher Manson, Chris Van Allsburg, Gustav Dore and Edward Gorey. As
far as video game makers, Fumito Ueda would be at the top of the list.
And even though I haven't said it before, I'd have to say the films of
Studio Ghibli have also had a deep effect.
―インスピレーションを受けているものはなんですか?
Jason 上述したすべてのアーティスト、なかでもChris Wareによる2次元平面上の美しいストーリーパネルは特別だね*1

*1 意味がうまくとれなかった。Chris Wareの大ファンであることはわかるのだが。
<原文>
Everyone mentioned above, especially Chris Ware for his beautiful
arrangements of story panels on a 2D plane.

回答のなかで言及されている人物に関する補足

彼が名を挙げたアーティストについて、簡単にまとめておく。

Chris Ware

アメリカの漫画家。彼の手がけたオークパーク&リバーフォレスト歴史協会(The Historical Society of Oak Park and River Forest)のポスターは、丸で囲まれた特定のスポットのみ時間軸が異なって描かれており、『Gorogoa』の雰囲気を感じ取ることができる。

そのほかいくつか作風を知ることのできそうなリンクを、以下にいくつか貼っておく。
オークパーク&リバーフォレスト歴史協会のポスターの一部
※下記URLから引用
The Historical Society of Oak Park and River Forest「Art Posters by Chris Ware」
http://www.oprfhistory.org/about/history_store/product_categories/Art_Posters_by_Chris_Ware,8.aspx
ADAM BAUMGOLD GALLERY「CHRIS WARE BUILDING STORIES September 8 - October 27, 2012」
http://adambaumgoldgallery.com/Ware/2012/building_stories.htm
Black Balloon Publishing「"Building Stories" & Chris Ware in a Few Lines」
http://blackballoonpublishing.com/blog/building-stories-chris-ware-few-lines

Christopher Manson

アメリカの児童図書作家・イラストレーター。代表作である『MAZE: Solve the World's Most Challenging Puzzle』は、1万ドルを賭けた謎解きコンテストが行われたらしい。作品がどのようなものなのかは、以下のWebアーカイブで見ることができる。

Open Book Systems「Maze」
http://archives.obs-us.com/obs/english/books/holt/books/maze/

Chris Van Allsburg

アメリカの作家、児童図書のイラストレーターも手がける。
公式サイトにあるインタラクティブな画は独特の雰囲気を放っている
※下記URLから引用
Chris Van Allsburg公式サイト
http://www.chrisvanallsburg.com

Gustav Dore

19世紀のフランスの画家。版画や彫刻なども創作していた。以下のサイトに、多数の作品がまとめて掲載されている。

Art Passions「Gustav Dore Art Collections」
http://dore.artpassions.net/

Edward Gorey

アメリカの絵本作家。日本でも多数の作品が翻訳、出版されているため、ご存知の方も多いだろう。子どもたちが名前のアルファベット順に死んでいく、『ギャシュリークラムのちびっ子たち(原題:The Gashlycrumb Tinies)』の表紙は特に有名だと思う。

『ギャシュリークラムのちびっ子たち』の表紙
※下記URLより引用
河出書房新社『ギャシュリークラムのちびっ子たち』
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309264332/

上田文人

日本のゲームデザイナー。彼や彼の作品のファンであると公言している国外のゲームクリエーターも多い。『ICO』、『ワンダと巨像』が代表作。

インディーゲーム開発に携わるということと、我々が払うべき敬意。『Indie Game: The Movie』感想

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『Indie Game: The Movie』がついに日本語字幕に対応したので、早速観てみた。このドキュメントを観て感じたこと、思ったこと。

関連記事:
『Indie Game: The Movie』に日本語字幕が来るっぽい(※来ました)
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/07/indie-game-movie.html

4人の開発者に迫って描かれる、開発に伴う表裏一体の2側面

インディーゲームと言えば、『Braid』の成功以降(という印象)、凄まじい勢いで持ち上げられ、まだまだその熱は冷めそうにない。もっともインディーゲームというものが認知され始めたあたりに比べれば、熱はある程度冷めてきているし(今もってメディアの過剰な加熱があることは否定できないだろう)、インディーゲームというものの在り方が問われるタイミングなのかな、と思わなくもない。メジャーゲームに対するカウンターとして訪れたインディーゲームと同じように、ポストインディーのような存在が現れて、価値を再構築するような日も遠くないような気さえする。そんなものがあるのかなんて知らないけれど。

さて話がそれた。そのような華々しい世界を支えているインディーゲーム開発者たちが何を思い、どのような状態で来たるべきリリースを迎えているのか、というのをつぶさに描いたのが、この『Indie Game: The Movie』である。

本作を観て感じるのは、想像以上に彼らは過酷な精神状態に追いやられているということだ。このドキュメントでは、主に以下の4人のエピソードで構成されているのだが、それぞれのエピソードごとに完結して次のエピソードに移る形ではなく、それぞれを断片的に結び併せて描くという手法を取っている。
すでにインディーゲームの成功者たる『Barid』のJonasan Blow
まだ成功を手にしていなかったときの『Super Meat Boy』のTommy Refenes
同じく『Super Meat Boy』のEdmund McMillen
彼とTeam Meatを象徴する台詞だ
IGFの栄冠という名声を得たものの、
なかなかリリースにこぎつけられない『Fez』のPhil Fish
事前に観た人から「想像以上にエモーショナルだった」と耳にしていたが、たしかにあふれんばかりの感情が詰め込まれた作品であった。

最初のシーンはTommy Refenesが、『Super Meat Boy』のリリース日にその状況をチェックするシーンから始まる。のっけからとても感情的な部分が描かれている印象的なシーンだ。この作品では大きく分けて2つの側面が描かれていると感じたが、冒頭部はそのひとつめ、「彼らが直面する血反吐を吐くような状況」を象徴するシーンだ。

もうひとつの側面は、「彼らが味わうリリースに伴うカタルシス」である。と言ってもこれは諸手を上げて喜べるような代物ではない。プレイヤーが味わう狂気と熱狂以上に、開発者は狂乱に満ちている。作中で紹介される『Braid』リリース直後のJonasan Blowのエピソードは、それを端的に表していると言えるだろう。Edmund McMillenが自身のゲームをプレイしている世界中の子どもたちについて思いを馳せているシーンも同様だ。
『Braid』のアルファ版の映像もチラリと出てくる

彼らの尊き行い、それに対して私たちができること

『Indie Game: The Movie』の詳細は本編を見ていただくとして、私の感じたことをまとめて本稿を締めくくりたい。

当たり前のようだが、ゲーム開発者も人間だ。その点においてどこかの工場で機械的に生産される工業製品とはまったく異なっている(いやそのような工業製品ですらも開発に携わった人間はいるに決まっているのだが)。私たちがその作品をプレイし、リアクションすることに彼らは至上の喜びを覚えるし、同時に自分の伝えたかったことがまったく伝わっていないことについてひどく不満を覚えることもあるだろう。

だからこそ、我々は彼らに敬意を払うべきである。

くだらぬゴシップにうつつを抜かして、PVやアフィリエイトを稼ぐような行いは唾棄されるべきだし(別にアフィリエイトが悪いということではない)、理念や自身の感情が伴わないコンテンツは駆逐されて然るべきである。

何も彼らの作品を否定するな、と言っているのではない。開発者たちは想像以上に負の評価をも求めているし、このドキュメントでも少なからずそのことが描かれている。彼らが心血注いで創りあげた作品に対して敬意を払い、私たちも同様に対峙するべきなのだと思う。しかしそれは言うほど難しくない。子どもがゲームに触れているときのように、あるいは我々が初めてゲームに触れたときのようにゲームで一喜一憂して、夜を明かすほど熱中したり、それを友人に語ったりすればいい。ときにはコントローラを投げ出したり、大切なお小遣いをドブに捨てたような気持ちになることも必要かもしれない。それだけでいいのだ。極めて単純である。

そういった点から『Indie Game: The Movie』は次のような人にオススメしたい。インディーに限定せず、ゲームメディアに関わる人、ゲーム系のブログを運営している人、ひいては多くのゲームファン。インディーゲームに限定しなかったのはAAAタイトルも基本的には同じ構造だと思ったからである。インディーゲームは開発規模が極めて小さい。したがって開発者にのしかかる重圧も、それを跳ね返すようなカタルシスもAAAタイトルよりもずっと濃縮された形になっているだけなのだ(ひょっとしたらそれこそが開発者としてのインディーゲームの持つ魅力のひとつなのかもしれない)。

だから『Indie Game: The Movie』は、ゲームを愛するすべての人に観てほしい。現在の自分と過去の自分とを照らし合わせ、ゲームに対する真摯な気持ちだとか態度だとかを考えさせられる。

娯楽を崇高なものに仕立て上げるのは(音楽とかそういうイメージがある)、個人的に好きではないのでこんなことは言いたくなかったのだが、それを言わせるほどの力を感じた。このドキュメントはそういう素朴な力を持った、素敵な作品である。

日本語字幕について

まだ観ていない方や購入していない方のなかには、日本語字幕がどんなものか気になっている方もいると思うので、『Indie Game: The Movie』の日本語字幕についていくつか言及しておこう。ちなみに記事執筆段階ではSteam版は日本語字幕に対応しておらず、公式サイトのもののみが日本語字幕に対応している。

全体的にほとんど不満はない。この作品を日本語で楽しめるというのはそれだけで福音である。訳のクオリティに関しては私は英語をほとんど読めないので言及を避ける。私が感じた字幕に関する不満点は以下のとおり。
  • 時折、字幕が地の文にかぶってしまうことがある
  • 脱字と思しき箇所が数カ所ある
  • 『Megaman』が『メガ・マン』と訳されている(『Megaman』は『ロックマン』の英題なので、『ロックマン』でよかったと思う。画面が出てくるからわかるけど)
字幕位置がうまく調整されているものもあるが……
こんな風になっている箇所も。
本来は右上の黒帯部分に字幕が来るのが正しい(英語字幕で確認
一応、不満点として挙げたが、これらは些細な問題である(特に『メガマン』は)。日本語でほとんど問題なく観られる、これだけで御の字だろう。ボランティアで翻訳を行ったというHaraguchi Shungo氏、それに日本語字幕に対応してくれた『Indie Game: The Movie』のスタッフにただただ感謝である。

なお、再生時間は103:05。最後の8分ほどがスタッフロールとなる。
2012年10月18日追記
『Indie Game: The Movie』のサポートに、以下の2点について問い合わせた。
  1. 日本語字幕の位置が不正確なものがあります。必要であれば私はこれをレポートする用意がありますが、字幕位置の修正は可能でしょうか
  2. 日本語字幕版のダウンロードができないので修正してほしい
これについてサポートより返答があったので、おおよその内容を掲載しておく。
  1. 我々も字幕位置の問題については認識しており、修正している最中です。申し訳ございません
  2. ダウンロード可能になり次第、ご連絡差し上げます
とのことだった。いずれの問題も近々解決されそうで一安心である。問題が解決されたときには、またここに追記しようと思う。
2012年11月4日追記
2012年10月25日にサポートより連絡が来た。諸々修正を行った、とのことのようだ。私は確認できていないが、日本語版字幕版のダウンロードも可能になった模様。公式サイトでの購入者は安心して楽しめる状態になったと言っていいだろう。

ファーストインプレッション『Kung Fu Strike: The Warrior's Rise』

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BeMine 5で入手した『Kung Fu Strike: The Warrior's Rise』。Twitter上でなかなか好評ようなので「試しに……」と思ってプレイしてみると、想像以上におもしろい。いわばダークホース的に私の内的ゲームライブラリに追加された本作を、これはぜひとも伝えねばと筆をとった。

『Kung Fu Strike: The Warrior's Rise』ってどんなゲーム?

主人公は武闘家のChi。彼を操り、四方八方から襲いかかる敵たちを拳と蹴りで倒していくという3人称視点の格闘アクションゲームだ。デフォルトでXbox 360純正コントローラに対応しており、主な操作は以下のようになっている*1
  • 左スティック:移動(Move)
  • X:攻撃(Attack)
  • X(押しっぱなし):乱打攻撃(Snap Attack)
  • A:ジャンプ攻撃(Jump Attack)
  • X+A:必殺技(Chi Moves)
  • B:ブロッキング(Deflect)
  • B(長押し):前転(Evade)
*1 一部のアクションはわかりやすいように別の言葉に置き換えた。以下ではここで使った言葉を使用する。正式名称は()内を参照のこと

チュートリアルではRTやLTにも操作が割り振られて説明されている。ただ、実際には上記のとおり、左スティックと3ボタン(BはRTで代用できる)で操作が可能だ。XとAが攻撃系の操作、Bが防御系の操作と極めてシンプルである。

本稿は、Steam版の『Kung Fu Strike: The Warrior's Rise』を元に書いているが、恐らくXbox 360版(Xbox LIVE アーケードで配信。現在はDLCしか配信していない模様)も基本的には同じだと思われる。Steam版は英語のほか、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語の5ヶ国語を収録している。字幕は自動的に流れてしまうが、あまりストーリーを重視するゲームでもないと思うので、プレイに支障はないだろう。それにイベントシーンは短く、いつでも見直すことができる。

Steamでは、デモ版も提供されている。
ストーリーはステージ開始時にこのような形で描かれる
ゲーム内で確認したところ、記事執筆時点での私のプレイ時間はおよそ3時間ほど。ステージ数から見ておよそ半分あたりに相当するようだ。

『Kung Fu Strike: The Warrior's Rise』公式サイト
http://www.playkungfustrike.com/

簡単そうに見えて、実は奥深いゲームデザイン

序盤は敵が弱いので、適当に攻撃をブロッキングしながら、なにも考えずにボタンを連打して必殺技を出していればクリアできる。しかし、ステージが進んでなかなかクリアできなくなってくると、徐々にこのゲームの骨格が見えてくるようになり、途端にその奥深さに引き込まれる。

いくつか本作を象徴するシステムを紹介しよう。

攻防を兼ね備えたブロッキング

相手の攻撃が当たる瞬間に合わせてブロッキング(操作はB)すると、相手の攻撃を完全に無効化して、相手を無防備な状態にすることができる。おもしろいのはブロッキングに成功すると、相手が緑色に光り、その間に攻撃を加えることで自キャラのライフが少量回復する点。このため、相手の攻撃を読んでブロッキングし、そこから反撃につなげられれば大幅に有利な状況を作り出せる。

さらに以下の特性により、ブロッキングそのものの使い勝手がかなりよい。
  • いつでも出せる
  • すぐにブロッキング判定が生じる
  • キャラの向きは関係なく、タイミングさえ合えばブロッキングできる
  • ブロッキング判定は時間経過以外では消失せず、短時間の集中攻撃であれば再入力不要
  • 飛び道具をブロッキングすると跳ね返せる
  • エフェクト(演出)が心地いい
5人同時攻撃だろうとブロッキングで打開できる
もう一方の防御アクションである前転(操作はB長押し)と比較しても、回避のみの前転とは異なってブロッキングのほうが大きなアドバンテージを生み出せるようになっており、プレイヤーが積極的にブロッキングを狙いたくなるデザインが施されている。

爽快感の高い必殺技

敵に攻撃を当てると左下のオレンジ色のゲージ(Chi Gauge)が溜まっていき、ゲージがいっぱいになると水色の必殺技スロット(Chi Slots)が1つ溜まる。このスロット1つを消費して出せる強力な攻撃が必殺技(操作はX+A)である。必殺技は以下の点が優れている。
  • 強力である
  • 割と連発できる(実は攻撃を受けてもゲージが溜まる)
  • やっぱりエフェクト(演出)が心地いい
なかでも動作の溜めと解放のエフェクト(SE含む)は非常によく、かなり爽快である。それと単純にカッコいい(カッコいいことは大事だ)。
タメ中は画面がモノクロになり、スローがかかる演出が入る
格闘ゲームで超必殺技などを出すときの暗転に似ている
最初から使える必殺技はDragon Kick
余談だがスト2シリーズでお馴染みの「昇龍拳」は、英語で「Dragon Punch」と呼ぶ
また、相手が赤く光る攻撃に合わせて必殺技を当てると、カウンターをとって大ダメージを与えられる。カウンターに成功するとライフが少量回復するようになっており、積極的な使い所がゲーム側で明示されているのは素晴らしい。
カウンター時は赤っぽいエフェクトになり、カッコいい!かなりの決まった感がある

単純な連打ゲーにさせないガードブレイク

こちらの攻撃を相手がガードした場合、続けざまに相手に乱打攻撃(操作はX押しっぱなし)を浴びせて、相手のガードを弾き飛ばすこと(ガードブレイク)ができる。

しかし、ガードブレイクは漫然とボタンを押し続ければいいわけではなく、大抵、相手がこちらの攻撃を読んでブロッキングからの反撃を狙ってくる。相手がブロッキングを狙ってくる直前には、敵の頭上に表示されているXボタンのアイコンがAボタンに変わるので、そのタイミングでAボタンを押せばよい。
ガードブレイクさせてしまえば、そこからコンボタイムの始まり
ただし、操作が遅れると、相手にブロッキングされて無防備な状態を晒すことになる。しかもほとんどの場合、相手は反撃後にバックステップで距離を離してしまうため、こちらからの確定反撃はほぼない状態となってしまう。したがってガードブレイクは絶対に成功させたほうがよい。

とシステム面から3点紹介してみたが、つまるところカッコいいアクションを推奨するお膳立てと、それが決まったときの演出がピッタリとハマっているのだ。

そして、ここまで読めば対戦格闘ゲームっぽいエッセンスがいくつも取り込まれていることも理解いただけたと思う。『DEAD OR ALIVE』シリーズの血を受け継いだ『NINJA GAIDEN』シリーズ同様、『Kung Fu Strike: The Warrior's Rise』も対戦格闘ゲームの血を色濃く受け継いでいるアクションゲームなのである。
多数の攻撃を連続で当てると、相手をピヨらせる(気絶させる)ことができる
相手を浮かして空中コンボや壁や地面への叩きつけ、拾い直しなども可能

バリエーションに富み、プレイのしごたえあるレベルデザイン

システム面での練り込み同様、レベルデザインもかなり優秀だと感じた。

ステージごとに明確なコンセプトがあり、しっかりと攻略の糸口を見つけていかないとなかなかクリアできない。これは攻略時にブロッキング成功によるリスク軽減という側面が大きいことも影響しているだろう。ブロッキング成功のためには、相手の攻撃を読み切る必要があるので、適当にボタンを連打するだけではなかなかクリアできない。

敵のモデルはやや使い回し感がある。一方、ステージを使い回す場合は、同様のコンセプトにならないように気をつけているようで、あまり使い回しは感じさせない。
主人公Chiの師匠Master Mo
亀仙人でもなければ、タン・フー・ルーでもないがやはり強敵である
前後にかなり奥行きのあるステージや
爆発物のあるステージも存在している
4ステージで1チャプターを構成しており、全7チャプター28ステージを収録。1ステージは3分程、長くても5分あれば初見のステージでもクリア(ないしゲームーオーバー)できるはずだ。

不満を感じる部分

全体的にはとてもおもしろいと感じていながらも、少なからず不満を感じている部分もあるので記しておこう。

全体的な説明不足

例えばブロッキング後の反撃でライフが少量回復することや、必殺技でカウンターがとれるといったことは、ゲームプレイ中のチュートリアルでは紹介されない。また、Xボタン押しっぱなしで敵をロックする乱打攻撃が出せるのだが、てっきりこのゲームはボタンを連打しないゲームかと勘違いしてしまった(実際はボタン押しっぱなしの乱打攻撃と、ボタン連打で出る攻撃は異なる)。

How to Playを見ればだいたいは解説されているのだが、なまじっかチュートリアルがあるばかりにHow to Playには目が届きにくい。昨今の過剰なほどに丁寧なゲームに慣れているせいもあるが、攻略にあたって、上述の2点は知っていて然るべき内容なので、やはりフォローが必要だったろう。

ほかにもブロッキング属性を付与した攻撃があるようだし(ブロッキング時同様に自キャラが黄色く光る)、ステージごとにボーナスが設定されていること(特定の条件を満たしてクリアすると一度だけボーナスを貰える。ステージ選択時にYボタンで確認できる)もわかりづらいなど、説明不足であるという印象が拭えない。

お金不足でキャラクターカスタマイズが楽しめない

ここまで紹介していなかったが、本作にはスキルを購入してキャラクターをカスタマイズしたり、アイテムを購入してゲームを有利にしたりすることができる。
空中ダッシュや空中ブロッキングは購入しないと使えない
特定のアイテムを拾うと呼び出して共闘できる
仲間(写真の少林拳使っぽいキャラクター)も購入可能
しかし、スキルやアイテムの購入に必要なお金がさっぱり集まらない。稼ぎプレイが簡単すぎるとなんでも楽に購入できて購入システムの意味がなくなる、といった弊害があるのはわかる。しかし、これではあまりにお金が集まらなさすぎるのではないだろうか。あと25%とか30%でいい。初回ステージクリア時のボーナス2倍でもいいだろう。個人的にはもう一声ほしいというのが率直な感想である。

まとめ

私が最初に抱いた感想は「『Kung Fu Strike: The Warrior's Rise』は現代に蘇った『ファイナルファイト』である」だった。「倒してくれ」と言わんばかりに主人公のもとに押し寄せる敵たち。彼らを拳ひとつで黙らせていく快感は、まさに『ファイナルファイト』そのものである。

初代『ストリートファイター』から生まれた『ファイナルファイト』。
『Dead or Alive』の息吹を細部に宿す『NINJA GAIDEN』。

これらの先輩作品たちと同様、『Kung Fu Strike: The Warrior's Rise』の根底には間違いなく対戦格闘ゲームの血が流れている。そして受け継いだその血脈がプレイのたびに増していく懐の広さとなり、難しいながらも攻略しがいのあるゲームプレイを実現している。

棒立ちの木偶の坊を倒すより、血気盛んな敵たちを磨きぬいた拳法(と己の技術)でブチのめす。そういう感覚が性に合っているプレイヤーなら、『Kung Fu Strike: The Warrior's Rise』こそオススメの1本だ。
2012年10月22日追記
私の場合、当初ゲームが起動せず、ファイルの整合性のチェックや再インストールを行なっても問題解決できなかった。そのときに試した対処法を載せておく。起動しなくて困っている人は以下の方法を試してみてほしい。

私が試した対処法
  1. インストールフォルダ(デフォルトでは、C:\Program Files\Steam\steamapps\common\kungfustrike)にあるConfig.exeを起動し、解像度を変更する
公式で推奨されている対処法

『Kung Fu Strike: The Warrior's Rise』公式サイト - Troubleshooting Guide
http://qoocsoft.com/en/troubleshooting-guide/
  1. インストールフォルダ内をたどり、config.xmlを開く(デフォルトなら場所は、C:\Program Files\Steam\steamapps\common\kungfustrike\Content\data)
  2. 以下の3箇所を書き換える
    • <Windowed>false</Windowed> → <Windowed>true</Windowed>
    • <MSAA>true</MSAA> → <MSAA>false</MSAA>
    • <Verbose>1</Verbose> →  <Verbose>3</Verbose>
  3. 再起動する
  4. それでも起動しないなら、先と同様にconfig.xmlを開き、以下の箇所を書き換えて起動する
    • <DXInputDisabled>false</DXInputDisabled> → <DXInputDisabled>true</DXInputDisabled>
公式で推奨されている対処法を行えば、詳細なログファイルが生成されるようなのでこれで起動しなかった場合は、ログファイルをサポートに送れば問題の解決が図れるかもしれない。

News Pick Up 2012年10月第4週

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「1ヶ月溜めてから更新してみよう」と思ったら、とてもじゃないけどやる気がしないというような量になっており、更新が途絶えていたわけだが、普通に更新を再開したいと思う。

休んでいた間にはSteam Greenlit第2弾の発表、Nyu Mediaローカライズの日本産ゲームがSteamに登場(ただし、リージョンロックで日本からは購入できない)、ロンチを迎えたIndie Game Standは既視感のあるタイトルが多く、あまり振るわないなんて出来事があったのでだけれども、ここではそれらは扱わず、先週キャッチしたニュースについてのみ扱うものとしたい。

ハロウィンに合わせ、各種値引きセールが実施中

ハロウィンになるとホラーテイストのゲームを中心にセールになるというのは、すでに定番になった感があるが、今年もその季節が訪れた。余所でもまとまっていると思うのでバンドル収録でもゲームのみの簡単な紹介に留めておく。
2012年10月30日、同31日、同11月1日追記
2012年10月30日分
Desuraに1タイトル、Steam、GamersGateのハロウィンセールに関する記述を追加
『Three Dead Zed』に関する記述を追加
2012年10月31日分
THE BUNDLE OF THE DAMNEDに新たに加えられた『Legendary』を追記
Desuraに1タイトル追記
2012年11月1日分
Indie Game Standのタイトルが切り替わったので追記
GoGのNot Scary Gamesを追記

※基本的に期間限定のセールなので、気になるタイトルがあれば早めの購入をオススメする

The Halloween Bundle

  • Sam & Max: The Devil's Playhouse (full season)
  • Home
  • Pathologic
  • MacGuffin's Curse
  • EvilQuest

Indie Royale公式サイト
http://www.indieroyale.com/

すでに24回目となるおなじみIndie Royaleから。私は購入を見送ったが、割と小粒なタイトルが並んでいる印象。

THE BUNDLE OF THE DAMNED

  • 『Cryostasis』
  • 『Rijn the Specpyre in... Manor of the Damned!』
  • 『Legendary』 2012年10月31日に追加
  • 『Blinde Side』 $4以上の支払いをした人に提供
  • 『Anna』  $4以上の支払いをした人に提供
  • 『Post Mortem』  $4以上の支払いをした人に提供

Groupees - THE BUNDLE OF THE DAMNED
http://groupees.com/damned

『Cryostasis』と『Anna』目当てに購入したGroupeesの新バンドル。『Anna』は1時間ほどプレイしたのだが、トレーラーで観たとおり雰囲気はとてもいいのだが、操作性の悪さと謎解きの難解さ(不親切さ)が足を引っ張っているかな、といった感想。できればクリアしたいのだが。

Desura

  • 『Three Dead Zed』 70%OFFで$1.49
  • 『Amnesia: The Dark Descent』 75%OFFで$4.99
  • 『Metal Dead』 80%OFFで$0.99
  • 『Rijn the Specpyre in... Manor of the Damned!』 50%OFFで$1.99
  • 『Haunted Dreams』  70%OFFで$1.49
  • 『Paranormal』 50%OFFで$4.99

The Humble Indie Bundleに収録されたこともあるとはいえ、評価、人気ともに高い『Amnesia: The Dark Descent』は安心してオススメできるタイトルだと思う。ちなみに『Three Dead Zed』は先日アップデートが入ってEnhanced Editionになっており、GamersGateやIndievaniaでも同様のセール価格で販売中。

Desura公式サイト -セールページ
http://www.desura.com/games#sale

Indie Game Stand

  • 『Deadly 30』
  • 『Zombies』

ほぼ完全なPay What You Want方式を採用しているのIndie Game Standより、サバイバル横スクロールシューター『Deadly 30』がお目見え。溢れかえるゾンビを撃退しながらお金(ネジなどの金屑)を集め、装備と拠点を守るタレットなどの建造物を強化しながら最終日の30日後まで耐えぬく。春先のセールで購入してプレイしたのだが、単純なゾンビ撃ちゲーながらなかなかおもしろい。ただ、ゾンビが多数襲来する夜間パートはとにかく動作が重くなるというのが大きな欠点。

2012年11月1日より同じくゾンビものシューター『Zombies』に切り替え。こちらは斜め見下ろし視点を採用している。ステージ中のオブジェクトを壊しまくれるのが最大の特徴で、派手めな効果音が爽快感を倍加させてくれる。

Indie Game Stand公式サイト
https://indiegamestand.com/

Winter Wolves

クーポンコード「HALLOWEEN」を入力することで、Winter Wolves公式サイトで購入するゲームが40%OFFになる。女性キャラが中心となるゲームが多いWinter Wolves、代表作は『Cinder』かな。

Winter Wolves公式サイト
http://www.winterwolves.com/

Steamハロウィンセール

毎年恒例となりつつあるSteamも一足遅れて、ハロウィンセールが開催。タイトル数が多いので、該当タイトルの列挙は省略する。

独立系開発会社だと『Orcs Must Die!』シリーズ、先月リリースしたばかりの『Closure』、8月末リリースと日も浅い『They Bleed Pixels』あたりがめぼしいところなのかな。『Home』や『Anna』のように各種バンドルとかぶっているタイトルもあるので、Steamで単品購入するか、ほかの気になるタイトルとバンドル購入するか検討したほうがお得だろう。

Steam - ハロウィンセール2012
http://store.steampowered.com/sale/halloweensale_2012

GamersGateハロウィンセール

すっかり忘れていたが、GamersGateもハロウィンセール中だった。該当タイトルの列挙はしない。こちらは日替わりのタイトルもある。

GamersGate - HALOWEEN SALE
http://www.gamersgate.com/halloween

『CYPHER: Cyberpunk Text Adventure』HALLOWEEN SALE

カブレラ兄弟が手がける、NEO SUSHI CITYを舞台にしたアドベンチャー『CYPHER: Cyberpunk Text Adventure』がハロウィンセール。テキスト直打ちで進めるという古のゲームスタイルをあえてとった異端の香りがすごくする作品。ここまででなにか感じるものがあった人は公式サイトをチェックしてみるといいだろう。

セールは公式サイトにある特設ページを訪れて、ページ左側にあるベルを押し「best spooky voice(ベルを押すのだからお化けになりきって怖がらせるボイス、のことだろう)」を送りつければいい。すると登録したメールアドレスに『CYPHER: Cyberpunk Text Adventure』Deluxe Version(たぶんDeluxe Collectior's Editionのこと)購入ページへのリンクが送られてくる仕組みのようだ。

これを利用すると、50%OFFで購入できるということなので定価$33.99の半額$16.99で買えるのだと思われる。

「以前もショーン・コネリーの声真似を送ってきたら35%OFF」といった誰得の奇っ怪なキャンペーン*5を行なっており、ユーモアのセンスに溢れたカブレラ兄弟。今後のセールにも注目したい。

*5 もう利用できないと思われるが参考としてショーン・コネリーセールのページを貼っておく
『CYPHER: Cyberpunk Text Adventure』  - ショーン・コネリーセール特設ページ
http://www.cabrerabrothers.com/connery/

『CYPHER: Cyberpunk Text Adventure』 - ハロウィンセール特設ページ
http://www.cabrerabrothers.com/halloween/
『CYPHER: Cyberpunk Text Adventure』 公式サイト
http://www.cabrerabrothers.com/

GoG.com - Not Scary Games

今年の途中からインディーゲーム配信も始めたGoGは、あえての「怖くないゲーム」特集を開始。Amanita Designのポイント・アンド・クリックアドベンチャー『Botanicula』が50%OFFが個人的にはオススメ。The Humble Indie Game Bundleへの収録実績があるものの、$4.99は十分によい価格設定だと思う。

GoG - Not Scary Games
http://www.gog.com/en/promo/halloween_promo_31_10_12
2012年10月30日追記

『Cave Story+』が日本語に公式対応 2012/10/29

Steamのハロウィンセールに合わせて『Cave Story+』がアップデートされ、公式に日本語対応した。

『Cave Story+』は、日本産フリーゲームの金字塔とも言える『洞窟物語』のリメイク版にあたるゲーム。「日本のゲームでありながら日本語が入っていない」ということに多くのユーザーが落胆したのが1年前の11月のことである。リリースからかなり日が経ってしまったとは言え、喜ばしいことではないかと思う。
Steamのストアページに「対応言語:日本語」という記載はないが、
たしかに日本語が載っている
パブリッシャのNICALiSが告知しているとおり、タイトル画面からGame Options > Languageと進んでJapaneseを選択すれば日本語になる。ただし、タイトル画面など一部は英語のままのようだ。とは言え、プレイに支障はないだろう。
また、アップデート後にセーブデータの不具合を指摘している声が少なからずあるようだ。Steamは設定しないかぎり自動アップデートしてしまうが、念のため、起動前にセーブファイル*4をバックアップしておいたほうがいいかもしれない。

*4 セーブファイルは恐らくインストールフォルダにある「Profile.dat」。インストールフォルダはデフォルトなら「C:\Program Files\Steam\steamapps\common\Cave Story+」だと思う。

アップデートは日本語のサポートのほか、マシンガンチャレンジとリーダーボードの追加といったコンテンツの拡充も図られている模様。加えてゲーム本編もハロウィン仕様になっているので、プレイ済みの方も一度チェックしてみてはいかがだろうか。
NICALiSのロゴや最初のデモなど、のっけからハロウィン仕様
いつまでこの仕様が続くのかは不明

なお、『Cave Stroy+』はSteamにてハロウィンセール対象となっており、33%OFFの$6.99で購入できる。

ソース:
NICALiSのTwitterアカウント
https://twitter.com/nicalis
天谷大輔(『洞窟物語』、並びに『Cave Story+』の開発者)のTwitterアカウント
https://twitter.com/amaya_pixel

『The Ship』の続編開発が告知 2012/10/24

『Half-Life』Modからスタートし、スタンドアロン版のリリース、続編となる『Bloody Good Time』の登場、そして事実上のチーム解散*1、『The Ship』のSteamキーばらまきとよくも悪くも話題に事欠かなかった『The Ship』シリーズ。

*1 『The Ship』の買収に関してまとまっている記事があったので貼っておく。

SryTK.COM - The Ship: Murder PartyをBlazing Griffinが買収 - 再”出港”へ
http://www.srytk.com/2011/11/ship-murder-partyblazing-griffin.html

その『The Ship』に続編が登場するようだ。タイトルは『The Ship: Full Steam Ahead』。開発を手がけるのは『The Ship: Murder Party』を買収したBlazing Griffin。開発資金をKickstarterで募る予定のようで、詳細は2012年10月31日に公開予定とのこと。

目標金額は£128,000(およそ$200,000)で*2、Windows版とMac版のマルチプレイヤーモードの開発に充てられる。これには新たなマップや武器を含み、新エンジンによって開発される模様。さらに多くの金額が集まればシングルプレイモードなど、その他のモードの搭載も検討したいと考えているようだ。

*2 2012年10月31日に開始予定のイギリス版Kickstarterでファンディング予定のため、目標金額はポンド建てでの支払いがベースになるようだ。参考としてイギリス版Kickstarterの告知ページを貼っておく。

The Kickstarter Blog - Kickstarter in the UK
http://www.kickstarter.com/blog/kickstarter-in-the-uk

私自身が『The Ship』を知ったときには、すでに過疎の波が押し寄せたあとだった。内容的に好みのゲームなので今後の発表に期待したい。

ソース:
Blazing Griffin - The Ship: Full Steam Ahead - Kickstarter sets sail on 31st October 2012http://blazinggriffin.com/2012/10/the-ship-full-steam-ahead-kickstarter-sets-sail-on-31st-october-2012
Blazing Griffin - Full Steam Ahead gains a rousing welcome
http://blazinggriffin.com/2012/10/full-steam-ahead-gains-a-rousing-welcome

今週の気になるゲー&注目トレーラー

『Atum』

Rock, Paper, Shotgunが「First-Person Platformer-er」と紹介した*3一風変わった2Dプラットフォーマー。「ゲーム内に外部から働きかけることができたらおもしろいだろうな」という、ゲーマーが少なからず未来に抱いている願いを具現化したようなゲームだ。

*3 Rock, Paper, Shotgun - First-Person Platformer-er: Atum
http://www.rockpapershotgun.com/2012/10/26/first-person-platformer-er-atum/

ゲームは2つのキャラクターを操作してプレイする。1人はマリオに相当する主人公キャラクターで、WSAD(カーソルキー)とスペースキーを使って操作する。もう1人はマウスを使って操作するゲーム内のプレイヤーキャラクター(仮に宮本としよう)である。

主人公はマリオと違って特殊な力を何一つ持っていないので、もう1人のキャラクターでサポートしてやる必要がある。例えばドラム缶が道を塞いでいたら、宮本を操作してライターを手に取り、ドラム缶を爆発させてやるといった具合だ。

フリーで公開されているが、Unity製なのでUnityプラグインが必要。クリアまでは30分程度だろう。小品ながらも非常におもしろい試みなので、さらにボリュームアップさせたものをプレイしてみたいと感じた。

ソース:
『Atum』公式サイト
http://atumgame.com/

『ANTIBODY』

マウス操作のみの全方位シューター。操作はマウス操作で狙って左マウスボタンで射撃、右マウスボタンでカーソル方向へブースト(ステップ移動)とシンプルなものになっている。

ブーストは何回でも使えるが、連続使用は3回までで、ブーストの使用回数は自然回復する。敵を回避する方法がブーストしかないため、以下に素早く敵を倒し、安全な場所に移動するかが鍵となる。とにかく敵をひたすら倒すだけの内容だが、アクションが小気味よく気持ちいい。

こちらもUnityプラグイン必須。フリーで公開されている。

ソース:
『ANTIBODY』公式サイト
http://www.circleofjudgement.com/antibody/

『Lovers in a Dangerous Spacetime』

カナダのトロントに拠点を置くAsteroid Baseというデベロッパが開発している2人COOPゲーム。プレイヤーはピンクのネオンカラーをした丸型宇宙船に乗る乗組員となり、襲いかかる脅威を2人で協力して退けるというゲームのようだ。

宇宙船にはタレット、レーザー、シールド、推進器などがついており、プレイヤーが船内を行き来して宇宙船の崩壊を防ぎつつ、敵を撃破していくという内容になっている。2013年リリース予定。

ソース:
『Lovers in a Dangerous Spacetime』公式サイト
http://www.asteroidbase.com/dangerous-spacetime/

『Pinstripe』

オサレ感漂う2Dプラットフォーマー『Coma』の開発者Thomas Brushの新作。詳しい情報が見当たらなかったのでトレーラーのみ貼っておく。『Coma』と同じような方向性のように見えるのだが。

まとめ

久しぶりに書いたらとても時間がかかってしまって紹介したくても紹介してないものもいくつか。とりあえず『Atum』はかなりいい感触なのでプレイしてみてほしい。

日本語版『To the Moon』の配信日決定、併せてレビュアーの募集開始

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PLAYISMがローカライズを行なっていた『To the Moon』の配信日がついに決定した。配信日は2012年11月16日で、価格は980円。11月9日より予約受け付けが開始され、予約購入者は10%OFFで購入できるようだ。

「『To the Moon』は人生」、「いや『To the Moon』は文学だ」などというやりとりがなされるほどに、本作の評判は著しく高く、私個人としてもわざわざIndie Royaleをスルーしてまでローカライズを心待ちにしていたタイトル。やっと配信が決まったとあって素直に嬉しい。

『To the Moon』に関しては以下の記事が参考になるので、本作についてあまり知らない方はぜひ読んでみてほしい。

PenguinHolic - ついにTo the moonの日本語版がplayismから出る
http://blog.steamcommunity.jp/2012/07/to-moonplayism.html

配信に合わせて、レビュアーを募集

販売元のPLAYISMでは今回の配信日決定にあたり、『To the Moon』のレビュアーを募集している。これはリリース直前のベータ版『To the Moon』をプレイしてレビューを行い、それを自身のブログ、あるいはホームページなどに掲載するという極めてシンプルなものだ。

応募資格・注意点

基本的にはレビュアーの応募に関して制限はないらしく、サイトの規模も問わないそうだ(アダルトサイトは除く)。ゲームブログである必要もないとのこと。注意点は以下のとおり。

  • プレイするのはベータ版であり、製品版とは多少異なる可能性がある
  • レビュー内容は自由。記事内容の事前確認は不要。ただし、ストーリーが非常に重要なゲームということもあり、あらすじを全部書いているというようなものはあとから修正依頼がかかる場合がある
  • ゲーム画像の使用は自由。プレイ動画も問題ない
  • レビューの公開は、PLAYISMに『To the Moon』のストアページができる11月9日以降を希望
  • PLAYISMへのリンクを貼る必要あり(強制ではないようだが)
  • ベータ版『To the Moon』をもらえるのみで、謝礼は発生しない。ゲームファイルのコピーを他人に受け渡すのは当然不可
  • 募集人数は明言されていないが、30名程度を上限として想定している。仮に応募人数が多ければ選考(抽選ではない)にて決定
  • 応募者はPLAYISMのサイトにて公開され、広報活動に執筆したレビュー記事が使用される可能性がある

応募方法

  • 『To the Moonレビュー希望』という件名で
  • 自身の管理するサイト名とアドレスを明記し
  • contact@playism.jpに
  • 2012年11月4日(日)までにメールする

いち早く日本語版『To the Moon』に触れられるとあって、私も早速応募した。どうせ購入するつもりだったし。自身のサイトを持っていて、『To the Moon』に興味のある方は応募してみてはいかがだろうか。

ソース:
PLAYISM ニュース & ブログ - To The Moon 11月16日配信決定 & レビュワー募集
http://playism.blogspot.jp/2012/11/to-moon-1116.html
PLAYISMのTwitterアカウント
https://twitter.com/playismJP/
2012年11月5日追記

今回のキャペーンが持つオープンなスタンスの意味合い

書こうと思っていたのに、書き忘れていたことがあったので追記する。

さて今回のレビュアー応募について、PLAYISMは「ステルスマーケティングではない(= オープンである)」という立場を強く表明している。上記で引用したTwitterでも「アンチステマ」という言葉を使っている。

なぜ彼らがこの点を強調しているのかというと、過去にそういった批判(簡単に言えば、「ゲームキーを無料発行してブロガーにレビュー書いてもらうってのは、ステルスマーケティングにあたるんじゃないの?」というもの)があったので*1、このことに対するPLAYISMなりの解答なのだと思う。

*1 過去のPLAYISMとブロガーのレビューに関する話題については、以下の記事が参考になるかと思う。記事中では当時のPLAYISMのスタンスも明らかにされている。

SryTK.COM - PLAYISMを眺めて
http://www.srytk.com/2012/03/playism.html
※最後の項、「Playismのモラル」の部分が該当する内容
SryTK.COM - PLAYISMから説明のメールをいただきました
http://www.srytk.com/2012/03/playism_11.html

ゲームをプレイしてもらい、それを評価してもらう(できれば売上につながるようなよい評価をもらう)というのは広告、宣伝という観点からはきっと大きな意味を持つだろう。しかし、過去に行ったやり方について彼らは「マズかった」と考えていて、結果として選択したのが今回のすべてをオープンにしてやるという方法なのだと思う。

私は、該当するすべてのレビュー記事に「PLAYISMより本作のベータ版を提供いただき、この記事を書いています」と言ったような一文が添えられていたほうがよいと思う。その一文だけで読者が抱く印象は、より正当な方向へと導かれるだろう。それは誰の目にも明らかだ。
2012年11月6日追記
応募した人宛にメールが届いたので、早速ブロガーなどによるベータ版のプレイが始まっているものと思われる。じきにレビュー記事もアップされるだろう。また、このメールには諸々の注意事項に加え、新たに以下の2点が記されている。

  • レビュー記事の最初で、PLAYISMのレビュー企画へ参加していることを明らかにする
  • レビュー企画の説明ページヘのリンクを貼る

企画参加の明示が義務づけられたため、よりクリーンな形になったと言えよう。

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