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レビュー『ファタモルガーナの館』

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2周めのプレイを終えてからかなりの時間が経ってしまったが、今年に入ってからずっと推し続けている『ファタモルガーナの館』のレビューである。

好きすぎていつまでも書き終わらない呪いにかかっていたようで、「仮に自身が生まれ変わったとしても、この呪いは永遠に解けないのではないか」と思っていたのだが、本作をめぐっての大きな動きもあったので「こんな文章ではよさが伝わらない」という気になる部分がありつつも、どうにか書き終えたのでぜひ読んでいただきたい。

概要

■ジャンル ビジュアルノベル
■開発 Novectacle(ノベクタクル)
■プラットフォーム Win
■リリース日 2012年12月31日(コミックマーケット83)頒布
■価格 2000円(ショップ委託2500円)
■入手経路 各種イベント、委託ショップ(ダウンロード販売あり)
■公式サイト http://novect.net/
■プレイバージョン 2013年2月10日更新パッチ適用
■プレイ時間 40時間(2周プレイと全エンドの回収)

『ファタモルガーナの館』は、同人サークルNovectacleによる全年齢対象の長編ビジュアルノベル。サークル代表の縹けいか氏が企画・シナリオ・演出といった総合的なディレクションを行なっている。縹氏を含めたサークルメンバー4名が開発に携わっているほか、楽曲や着色などサークル外の人間も関わっており、10名強が製作に参加している。

開発に4年を費やした『ファタモルガーナの館』がサークルの代表作品であるものの、本作のキャラクターが登場する(ただし『ファタモルガーナの館』とは姿こそ同じものの別人、別世界という扱い)『霧上のエラスムス』が先立ってリリースされている。

吉里吉里にて開発。操作や基本的なシステム周りに特筆すべき事項はないものの、安定感のある仕上がりだ。私はほとんどXbox 360のコントローラパッドでプレイしたが、パッド操作に最適化されているわけではないのであくまでも「パッドでも操作できる」程度に捉えておいたほうがよい。
パッド操作だと、セーブやロード周りでの操作にやや難あり
クリア後の特典として、スチル(イベントグラフィック)閲覧の「美術館」や開発者のお遊びが垣間見える「舞台裏」といったエクストラコンテンツが用意されている。さらに本編にも僅かながら2周め独自の要素が存在。変化自体は小さく、本作を気に入れば見る価値のあるものではあるものの、変化そのものに期待を寄せてプレイするのはオススメできない。基本的には1プレイできっちり完結するものと思ったほうがいい。
自由に楽曲を聴ける「音楽館」のモードもクリア特典に含まれる
歌詞を知ることでより作品を味わえる
体験版は公式サイトなどからダウンロードが可能。ゲーム序盤の2章分、プレイ時間にしておよそ3時間程度のボリュームがあり、購入するか迷っており、本作の内容を判断したいのならプレイしたほうがよい。

「ファタモルガーナ(Fata Morgana)」は「蜃気楼」という意味だそうだ。私の場合、「蜃気楼」と言えば「Mirage」なのだが、「Fata Morgana」という言葉は『アーサー王物語』の登場人物モーガン(Morgan)が語源らしく、それゆえかヨーロッパではこちらも俗称として広く使われているようだ。

ゲーム内容

「その館に住む者は、必ず不幸になる」というキャッチコピーにあるとおり、本作の舞台は、とある理由で呪われている館だ。館に過去より永劫に続いている呪いの輪廻を紐解くというのが大きな目的となっており、物語は500年以上の時を行き来するという壮大なものとなっている。いわゆるループものではないが、既視感をうまく絡めた物語の構成からループもののそれに似た感覚を受けるかもしれない。

物語は、主人公である「あなた」が「旦那さま」と呼びかける女の声で目を覚ますところから始まる。そこは古びた館で、窓を打つ雨音と暖炉で火の爆ぜる音以外に何もないような生気の感じられない場所だ。なぜ「あなた」が館にいるのかはわからないまま、不思議な雰囲気の女中に手を引かれ、「あなた」は館の歴史をいくつか見ていくことになる。自身が何者なのか、眼前の女中が誰なのかを思い出すために。
「あなた」を「旦那さま」と慕い、語りかけてくる女中
女中に見せられる館の歴史は4つあり、これらが物語の序章を構成している。

1つめは「1603年 薔薇園の時代*1」。屋敷に住まう貴族の兄妹が主役である。人柄のよい兄と、幼少期より兄へと想いを寄せていた妹。年頃を迎えて恋慕の輪郭を帯びていく妹のそれは、館に白い髪の女が現れることで徐々に歪さを増していく。憧憬は恋慕へ、そして恋慕は嫉妬で焼け爛れるのである。その激情は、薔薇が咲き乱れるかの如く。

2つめは「1707年 狂獣の時代」。戦乱直後の時代、その館には「獣」が住んでいた。人を殺める衝動に駆られる化け物が住む館と、「獣」の恐怖に怯える海沿いの集落を舞台としている。館を訪れる白い髪の女、そしてとある事情で集落を尋ねる黒髪の女の登場によって、物語は思わぬ方向に動き出して行く。海の鮮やかな青の印象の強いエピソードだが、殺戮衝動の紡ぐ未来は赤に染まる。

3つめは「1896年 銑鉄(せんてつ)の時代」。産業が大きく飛躍する時代を迎え、館の主は大陸鉄道という大事業を成そうとする野心家の男となった。野心家の妻は白い髪の女。健気な妻と傍若無人な夫との仲は、傍から見ても決していいものではなかったが、ある事件をきっかけに関係はさらにこじれていく。寄せた想いは返さず、ねじれた想いだけが虚しく軋む。大陸鉄道の完成とともに迫る崩壊の足音は、彼らの耳には届かない。

4つめは「1099年 弾劾の時代」。時系列的には先の3つの時代より前にあたる。物語は、理由なき弾劾を受けた白い髪の女が館へと逃げこむところから始まる。館で出会うのは彼女と同じく白い髪をした人物。幸か不幸か奇妙な一致を見せた2人の生活は、このように唐突に始まるのだが、ここまでの館の歴史を見てきた「あなた」なら、この逃避行の結末を語るまでもなかろう。彼らの行き着く先は楽園ではない。楽園だとしたのならば、それは虚構なのである。

全編通して舞台となるのは同じ館だ。館の過去はすべて悲劇で塗りつぶされており、「あなた」はそれを次々と見ていくことになる。時代を問わず現れる白い髪の女、いつもそこにありつづける「館の女中」と謎は尽きないが、真相は4つの時代の向こう側にある。「あなた」はそこで知ることになるだろう、「他人の悲劇だから耐えてこられたんだよ」*2の意味を。
女中と同じく謎多き、白い髪の女。物語の鍵となりそうだ
ただし、最初の4章は序章にすぎず、四章終了時点で全体の3分の1程度である。序盤の展開を見ると、1話完結型のいくつかの悲劇を扱ったオムニバス形式のように見えるのだが、実際には館をめぐる一本の大きなストーリーが横たわっており、そこに続くための準備段階にあたるのが序盤の4章となっている。参考としてシナリオを手がけた縹氏のTwitter上での発言を貼っておこう。
公式には「西洋浪漫サスペンスホラー」と題しており、暴力描写などもあるため、その手のものが特別苦手という方には勧めにくい。イラストで言えば、本稿で使っているスクリーンショットのレベルのものを想像してほしい。たしかにサスペンス、ホラーといった要素は感じるが、物語の根幹で描かれているのは人の業であり、そこに生まれる葛藤、苦難をはねのける強い意志や信念、人の想いなどである。詳しくは次項にて詳述する。
*1 それぞれの時代の名前は便宜的に私がつけたもので、公式のものではない。
*2 公式サイトなどにある文言

本作を際立たせるさまざまな要素。肝となる物語の魅力

同人ゲームにおいて馴染み深いビジュアルノベルというジャンルでありながら、西欧を舞台にした物語、耽美なビジュアル、歌曲も用いられた表情豊かな楽曲と、本作を構成する素材は同人界隈でも異彩を放っていると言えよう。特に画と楽曲の部分は、プレイしなくとも公式サイトからいくつか確認できるので、ぜひ公式サイトで確認してみてほしい*3

一部の効果音を除いて、音楽はすべてオリジナルのものを使用。5名の作曲家が手がけた楽曲は圧巻の65曲を収録し、「異常なほど」と言っていい力の入れようである。映画の劇伴を手がける作曲家も参加しており、「ノベルを観劇に」というサークルテーマをまさに体現している。

一章と二章、三章、四章とでそれぞれ異なる3名の作曲家が担当しており、曲自体の色合いもずいぶんと違う。結果、音響によって各章を強く印象づけることに成功している。

また、全収録曲数の半数を越える実に35曲が歌曲というのも大きな特徴だ。歌詞は日本語ではなくポルトガル語が用いられている。そのためか歌が邪魔に感じることはなく、むしろ場面を盛り上げる効果を果たしている。

ビジュアルは言葉で説明するまでもないかと思う。実際に見てもらったほうが早い。ちなみにイラストを担当している靄太郎氏は、インタビューにて「末弥純氏の影響を受けている」と明かしている。私の場合、ゲームファンでありながら末弥純氏を知らなかったこともあり、最初に想起したのは『悪魔城ドラキュラ 月下の夜想曲』などで知られる小島文美氏である。

*3 一部楽曲は公式サイトから試聴可能

音楽・絵 - 『ファタモルガーナの館』公式サイト
http://novect.net/music_illust.html
さて、未プレイの人がもっとも気になるであろう肝心の物語について話そう。

物語は筆致、展開ともに目を見張る出来と感じた。館の呪いが引き起こす悲劇や惨劇は、ことごとく人の業を炙りだし、そこに対峙する人間の葛藤を精細に描いている。

際立って素晴らしいと感じたのは、登場人物たちの立ち振る舞いや発言である。悲劇ばかりを描いている物語の構成上、陰惨な出来事が続くとはいえ、やはりプレイヤーとしてはカタルシスがほしい。一方でプレイヤーは登場人物が急に様変わりするようなご都合主義は、最悪の結末であると経験で知っている(知らないのであればよほど恵まれた物語環境で育ったか、あまりに物語に触れずに育ったかのどちらかだろう)。

だが、本作においてそれは杞憂に終わる。最後の最後まで人物像をブレされることなく、説得力ある描写を完遂し、美しい幕引きを成し遂げているのだ。役者である登場人物も、追いかけ続けてきた物語も、私たちプレイヤーを決して裏切りはしない。
舞台となる館は、数多の不幸で彩られている。このため「きっと次なるページにも恐らくは不幸が綴られており、ページを繰る自身の手は不幸を紡ぐのだ」という確信がたしかにあるのに、私は読み進めるのを止めることができなかった。では「その原動力となったのはなんだろう」と考えてみると、描かれているものにどこか共感を覚えるからではないかと感じた。

メインだけでも優に10名を超える登場人物たちは皆、自身の幸せを願っている。しかし、誰しも容易には逃れられないような心的、あるいは物理的な縛りが存在している。それは他者に弱みは見せられないという歪んだ自尊心かも知れないし、変えることのできない強い信念かも知れない。「縛り」とは言ったものの、それこそがその人物たる本質と言い換えてもよかろう。もちろん、その形質は人によってそれぞれ異なる。
そして、誰もが自身の望むべきものを叶えるために進み、結果的に不幸を引き起こしてしまうのである。読み手である我々にも覚えがあるはずだ。現状を続けることが幸せな結末に結びつかないと知ったからといって、たやすく自分自身を変えたりできるだろうか? いや人というのはそんな簡単に変えられたりしないものだと思う。これを読むあなたに思い当たる節がなくとも、私にはある。「人の弱さ」と非難するのは簡単だろう。だが、それは「弱さ」なのだろうか? 仮に「弱さ」であったとしても、それが私を形作るのなら、その「弱さ」を保ち続けてしまうことは往々にしてあることなのだ。

同じように物語に出てくる様々な人物にも、彼らの「容易には捨てられない本質」を見る気がするのだ。そこに生じるのは彼らを否定することではなく、受け入れ、共感することである。涙が頬伝うこともあれば、やり場のない怒りに打ち震えることもあるだろう。いつしか私は彼らの分身となり、彼らは私の分身となり、不可思議な調和の先で私たちは叫ぶ。

「悲劇を生み出してきたのはやはり自分であった」と。
「だが、ここで歩みを進めないのなら幸せは得られない」と。

先に進むことが必ずや幸せに結びつくとは限らないが、我々は進むことしかできないのである。行く先に眠る不幸を恐れて歩みを止めれば、それこそ最大の不幸へ繋がるのだと私たちは知っているのだから。

物語は一筋縄でいくものではなく、終わったかに見せかけて二転三転し、最後までプレイヤーを翻弄してくる。総じてプレイヤーの作り出した思い込みを反転させる展開、いわゆるミスリードが多いのだが、ある章のそれはまさに圧巻。大仕事と言えるその内容は、ぜひとも自身の目で確かめてほしい。
そしてもうひとつ。

「初めて泣いたゲーム」といったようなフレーズは、本人以外にはあまり意味を持たない場合が多い。しかし、私自身が忘れないためにも、あえてそれを承知でここにひとつ書き留めさせてもらいたい。

この手のゲームのプレイ経験は乏しい私だが、基本的には「まず自分だったらどうするか」をいつも念頭に置いてプレイしている(誰もがそうだろう)。ただ、すぐにバッドエンドになりそうな部分はそれを確認してしまう場合が多い。しかし、『ファタモルガーナの館』では違った。トゥルーエンドに進めるよう(初回プレイでもトゥルーエンドに達することは難しくない)、危険を避けようとしたし、全力を尽くした。ここまで強く意識して登場人物の幸せを手にしようと思ったことは未だかつてなかったと断言できる。

この手のゲームに関して「記憶を消してもう一度プレイしたい」という言葉もよく見かける。正直、私はその気持ちがあまり理解できなくて、好きなゲームである『Steins; Gate』でもそれを感じなかったのだが、本作で初めてその気持ちを理解することができた。

それほどまでに強く心を打たれたし、魂を揺さぶられたのが、この『ファタモルガーナの館』なのである。

大きな意味を持った選択肢の存在

本作には8つのエンディングと5つのデッドエンド(不条理な死)が存在する。いくつか分岐も存在しているが、ストーリー進行自体はトゥルーエンドに向かうほぼ一本道で、少しだけ枝分かれしていくつかのエンディングに繋がっている、という形だ。

特筆すべきは、特定のシーンにおける選択肢である。

ビジュアルノベルにおいて選択肢は、「世界を変える鍵」だ。『ファタモルガーナの館』についてもそれは変わらない。しかし、一部の選択肢は「世界を分岐させるための鍵」から脱却し、「『あなた』の意志への問いかけ」へと変貌しているのである。意志決定に焦点を当てたこの仕掛けは、「世界が変わるかどうか」という結果よりも「どうしたいか、どうするか」という過程への帰結をもたらしており、本作の物語とも相まってとても意義深いものとなっている。

これによって「物語を自身の手で選んで進めている」という感覚が強く、読後感も相当のものであると感じた。20時間弱に及ぶプレイ時間の長さが、プレイ後の充実感につながっているのは言うまでもないが、胸を満たす気持ちは決してプレイ時間だけが理由ではない。本作を手に取るかどうかを「一本道」という言葉で躊躇している人がいるのなら、私は迷うことなく手に取ることをオススメしたい。
全体を通した美しいデザインに、細かな部分の演出に至るまで手がかけられている

本作を本作たらしめているもの

個々の要素を分解して語っておいてから言うものなんだが、実は『ファタモルガーナの館』という作品について、それを構成している素材から語っていくのは不適当だと感じている。

たしかにそれらの良し悪しを語ることはできよう。だが、ピースが揃ったところでこの作品は完成しない。画材が揃えば画が描けるというわけではないし、楽器と譜面があれば誰でも同じように音楽を奏でられるというわけではないのだ。素晴らしいのは、かように作品をまとめあげた製作手腕である。それは製作指揮であるとも言えるし、指揮に応えた個々の製作者と見ることもできるだろう。

もう一度言おう。個々のピースを評するのは簡単だ。だが、本作の波打つような力強さはそこではないと思う。『ファタモルガーナの館』最大の美点は、すべての要素が渾然一体となった圧倒的調和だ。どのピースが欠けても完成しないし、ピースだけでも完成し得ない、そんな作品であると思う。だから、改めて本作を要素立てて語るのは不本意であったと、念押しする意味でもここに記しておきたい。
■■大切なことなので2回言いました■■
また、本作は斬新なゲームではない。その点においてはインディー、あるいは同人といった括りのゲームが持つエッジのようなものは(人によるとは思うが)ほとんど感じないと思う。基本的にビジュアルノベルという形態から飛び出るようなものではないのだ。

だがしかし。

その代わりにこれでもかというほどありったけの力で、あなたの琴線を殴りつけてくるし、涙腺をぶち壊してくる。物語が、画が、音楽が、プレイヤーの心を掴んで決して離さない。圧倒的なまでのパワープレイなのだ。したがってビジュアルノベルというジャンルに抵抗さえなければ、多くの人に受け入れられるゲームだと思う。

一方で開発者自身が言及しているように、商業ではかなり困難だろうというテーマを扱っている。本作のネタバレになってしまうため、ここでは具体的に言及しないが、その点においては「本作が同人ゲームから生まれた」というのは一種の必然であり、大きな意味を持っているのではないだろうか。

些細な問題点たち

本作に微塵の隙も感じない程度には『ファタモルガーナの館』が好きなのだが、ほかのプレイヤーが気になりそうなところをピックアップしておこう。念のために言っておくが、以下に示すのは本当に小さな問題でしかなく、プレイを避ける理由としては不適当である、と断言したい。

ひとつはテキストのテイスト。現代劇ではなく、中世から近世の欧米を舞台にしているが、キャラクターの台詞のなかには「スルー」とか「イケメン」とか、あまり世界観にそぐわないものが少しだけ登場する。頻出するわけではないが、その部分に関しては評価が分かれるかもしれない。また、ゲーム後半のとある章では、重苦しさが抜けて軽めの会話描写になる部分があり、そこでは私自身も少したじろいでしまったほどであり、その章に関しては好みが大きく分かれそうだと感じた。余談だが、地の文に関しては個人的にかなり好みだった。

イラストについては違和感を覚えたものが少数存在する。例えば、一部イラストにおける腕の長さが思い当たる。また、45枚*4あるスチルは、ものによってかなり雰囲気の異なるものがあるという印象を受けた。あえてそうしているのか、着色のせいなのか、そのほかの理由によるものかはわからないが、開発が4年に及んでいたこともあり、イラストを担当した靄太郎氏のなかで変わったものがあるのかもしれない。
違和感といっても私が具体的に説明できるものではない
なんとなく、そんな気がするレベル
体験版からデータの引き継ぎが行えないのも欠点と言えるだろう*5。ちなみに製品版を始めてエンターキーを押しっぱなしにして進めれば、途中に選択肢の決定があるとは言え、15分もあれば体験版の終わる部分まで読み進めることができる。

*4 加えて差分が57枚ある
*5 開発もこの問題を認識しており、この問題を解消したいと思っているようだ。
2013年5月27日追記
PLAYISMのTwitterアカウントによると、セーブデータの引き継ぎ問題は解消されているとのこと。すべての体験版がそうなっているのか、PLAYISMで配信中のものがそうなっているのかは不明だが、いずれにしても遅かれ早かれこの問題は全面的に解決するものと考えてよいだろう。


英語へのローカライズ、購入に関して

本作は日本語版のPLAYISMでの配信が決定し、売り上げ次第では英語版の制作も行われるようだ。私自身、一プレイヤーとして「日本の同人ゲームを英語化して売ってる会社は、このゲームを英語化しなくてどうする!」と金銭的なものなど深く考えずに強く感じていたのだが、英語化に関して障害がないわけではない。
ビジュアルノベルはテキスト主導のゲームなので、
基本的にローカライズにお金がかかりやすい
聖女、魔女といった要素が登場するし、ほかにも宗教観に根ざした
なかなかセンシティブな要素が主軸になっている。ビジュアルノベ
ルも、海外の人にとってはあまり馴染みあるものではないだろう。
かなりの力を持った作品であることに疑いはないが、金銭以外にも
なにがしかの障害がいくつかあるとは思う。
それでも『ファタモルガーナの館』の英語化が前向きに検討されているのはうれしいし、ぜひとも成功してほしいと願っている。

なお、本作のPLAYISMでの売り上げは、販売元のPLAYISMや開発のNovectacleではなく、全額ローカライズ費用に回されることになっているそうだ*6。『ファタモルガーナの館』はDLsiteでもダウンロード販売が行われているが、このような事情もあって、個人的にはPLAYISMでの購入を強く勧めたい。
■■これがステマなはずないだろ■■
*6 ローカライズが立ち消えになった場合やそもそもの目標金額といった詳細は不明

なお、物理メディア版はイベントや各種通販サイトで取り扱っており、Amazonからも購入可能。以下に購入できる場所を列挙しておく。

PLAYISM(ダウンロード版)
http://www.playism.jp/games/fatamorgana/
DLsite(ダウンロード版)
http://www.dlsite.com/home/circle/report/=/report/201303031
Amazon(パッケージ版)
http://www.amazon.co.jp/Novectacle-%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%BF%E3%83%A2%E3%83%AB%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%81%AE%E9%A4%A8/dp/B00CAKQRX2
メロンブックス(パッケージ版)
http://shop.melonbooks.co.jp/shop/sp_213001012903_novec_yakata.php
とらのあな(パッケージ版)
http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/09/98/040030099800.html
D-STAGE(パッケージ版)
http://d-stage.com/shop/detail.php?seq=35202
AMPnet(パッケージ版)
http://www.ampnet.jp/item/item.php?iid=31385&type=detail&act=detail&ifg=

総括

『ファタモルガーナの館』は、「涙する」とか「感動する」とかを飛び越え、魂に凄まじいまでのパワーを打ち込んでくる作品だ。古典的なビジュアルノベルという枠組みはそのままに、シナリオ、ビジュアル、サウンド、演出といったものを極限までに磨き上げた同人ゲームのAAAタイトル(矛盾を孕んでいるように見えたって構わない!)と形容するに相応しい。

悲劇を扱う本作において、真実は悲劇に次ぐ悲劇の先にしかない。同じようにプレイヤーの望むカタルシスも決意に次ぐ決意の先にしかないのである。その決意なくして存在しえない展開は、本作の奥底に横たわる「人の心や想い」を鮮烈なまでに浮き彫りにし、キャラクターたちのみならず、それに向き合う我々をも裸にしていく。

開発Novectacleが目指したのは「ノベルを観劇にすること」だったそうだ。間違いなく、その理念は成功を収めているが、一方で本作はゲームらしい「開発者との闘争」と見なすこともできよう。『ファタモルガーナの館』では、彼らの矜持を、その意地を、際限なくぶち込んだ作品と真正面から向かい合うことができるのである。圧倒的な力でねじ伏せてくる作品の前で、前述のように我々は裸で立ち向かわなければならない。ありとあらゆるものを取り除き、魂だけがぶつかり合うそんな作品である。

「ビジュアルノベルだから」も「一本道だから」も「同人だから」も捨てろ。「ゲームだから」でさえも捨ててしまえ。館にかけられた永劫の呪いの物語と、そこで描かれる数多の感情、葛藤に対峙する勇気があるなら、答えは簡単だろう。問われるのは「あなた」の意志だけだ。

私は本作を「傑作」と呼ぶことに一切の疑念を抱かない。開発のNovectacleには、このように優れた作品に巡りあわせてくれたことに感謝したいし、また巡りあわせてくれることを切に願っている。

どげざを観覧してきた&『ファタモルガーナの館』半額セール開催

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「おすすめ!同人ゲーム・オブ・ザ・イヤー2012 for Novel and ADV(通称:どげざ)」という個人開催のイベントがあったので、実際に会場に足を運んで観覧してきました。

おすすめ!同人ゲーム・オブ・ザ・イヤー2012 for Novel and ADVについて

このイベントは、同人サークル開発によるノベルゲーム、アドベンチャーゲームを対象として、その年(今回の場合は、2012年4月~2013年3月に発表されたもの)のオススメなゲームを紹介するといった趣のイベントです。主催は「おすすめ同人紹介」というサイトを運営しているみなみ氏。「オブ・ザ・イヤー」を冠していますが、先述のようにあくまで個人開催のイベントであり、受賞作の決定もみなみ氏が行なっています。

おすすめ!同人ゲーム・オブ・ザ・イヤー2012 for Novel and ADV公式サイト
http://southerncross.sakura.ne.jp/of_the_Year/2012.htm
イベントUstream録画
http://www.ustream.tv/recorded/35159533

全22部門ある各賞の受賞作品は下記の通り。

  • 主演男優部門
     ミシェル・ボランジェ
     『ファタモルガーナの館』(開発:Novectacle)より
  • 助演男優部門
     奥寺
     『同人ing~Let's make the doujin game~』(開発:星団ファミリー)より
  • 主演女優部門
     桜咲六花
     『オフライン少女』(開発:チェーン)より
  • 助演女優部門
     御剣楚羅
     『TearDrop~虹人の思い出~Refrain』(開発:TimidLimit)より
  • 脚本部門、心部門、闇部門、泣き部門、歌曲部門、作曲部門、特殊効果部門、美術部門、作品部門
     『ファタモルガーナの館』(開発:Novectacle)
  • 熱部門
     『STARLIKE 皇星編』(開発:鉄鋼団)
  • 穏やか部門
     『天使仔猫譚 AF12「コトコラジオ」』(開発:シモメマイ)
  • 楽部門
     『同人ing~Let's make the doujin game~』(開発:星団ファミリー)
  • ロジック部門
     『LOOT』(開発:CREO)
  • 爆笑部門
     『王様ノ蝶』(開発:余白屋)
  • 独創部門
     『箱庭風コマンド式ADV 2012 ゴッド松村』(開発:サークル 置か岡)
  • 短編部門
     『おはよう、ラァビィ』(開発:Fortune Bell -フォーチュンベル-)
  • ムービー・動画部門 ※ノミネート1作のみ
     『Ariad-少年アリス-』(開発:Latte)
  • 体験版・連作部門
     『レウキア滞在記』(開発:レウキアの館)

同人ゲームはあまり知らないということもあって、刺激的なイベントでした。なお、イベント当日に感想をちょっとだけ入れつつまとめたドキュメントファイルは以下。

https://docs.google.com/document/d/1g6AngQoal19q_yUM45duH4y2NCFdw8oo172TJ1K3sz8

個人的に気になったタイトルは、次のタイトルたち。


  • 音も画もほとんどない、手記という形で全体を綴った短編『おはよう、ラァビィ』
  • 小説家と座敷童という取り合わせの和風ホラー短編『一夜奇譚』
  • アンドロイドの青年とのラブロマンスを描いた『桜哉』
  • 18禁中華風恋愛アドベンチャー乙女ゲー『斎国華譚』
  • ネタ感著しかった『スーパー攻め様の優雅な一日~野球拳編~』
  • タイトルもさることながら内容もインパクトはあった『箱庭風コマンド式ADV 2012 ゴッド松村』(体験版をプレイしたけど、途中で投げてしまった。18禁)

このほか、かねてより気になっていたタイトルとして『Bの話』、『同人ing~Let's make the doujin game~』が挙げられます。私自身はノベルゲームをたくさん消化するのが苦手なので、これらすべてに手をつけられるとは思わないのですが(それに18禁ゲームも苦手だ)、短編を中心にいつかプレイできればな、と思っています。

昨年プレイして好きだった作品『LOOT』のロジック部門受賞もかなりうれしかったです。

イベントは各タイトルの紹介、受賞作の発表というのがおおまかな流れなのですが、各タイトルの紹介は短いながらも実に丁寧で、みなみ氏自身の情熱を強く感じるいいイベントだと感じました。

ただ、「同人ゲーム・オブ・ザ・イヤー」という名前がついており、かつそれが個人選出であるという部分に若干の疑問を抱く部分もあり、むしろ「みなみ氏自身の名前を全面に出すような方向性のほうがいいのかな」と思ったのも事実です。それほどにみなみ氏の熱意を感じましたし、界隈でもちゃんとした認知度があるのではないかと思っています。長く続いているイベントなので、簡単にはいかない部分もあるのだとは想像しますが、それだけが心残りでした(これは結果に対する不満ではなく、あくまでイベントの名前についてです)。

とはいえ、知らないタイトルをたくさん目にすることができましたし、ぜひ今後も続けていってほしいと思いました。お疲れ様でした、そしてありがとうございました、みなみさん。

来年も楽しみにしております。

『ファタモルガーナの館』半額セールについて

今年うるさいほどに私が推している『ファタモルガーナの館』。先の「おすすめ!同人ゲーム・オブ・ザ・イヤー2012 for Novel and ADV」においては、最優秀賞にあたる作品賞を含めた前人未到の10冠を達成しました。
惜しくも主演助演男優賞を逃した『ファタモルガーナの館』のヤコポ・ベアルザッティさん
そこで『ファタモルガーナの館』のダウンロード販売を行なっているPLAYISMでは、今回の10冠を記念して24時間限定の半額セール(1冠につき100円OFF×10部門受賞で1000円OFF
)を行うそうです。セールは2013年7月5日15時より開始され、同6日15時まで続くものと思われます。

PLAYSIM - 『ファタモルガーナの館』ストアページ
http://www.playism.jp/games/fatamorgana/

フルプライスでも迷わず1本は買うレベルに好きな作品ですので半額はとてもオススメです。この機会にぜひとも手にとってみてはいかがでしょうか。同作のレビューも参考として貼っておきます。

関連記事:レビュー『ファタモルガーナの館』
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/05/blog-post.html

HOTLINE TOKYO 3rd開催告知。扱うタイトルは『Fez』

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『To the Moon』、『HOTLINE MIAMI』、『ふしぎの城のヘレン』といくつかのゲームについて語ってきたHOTLINE TOKYOの次回開催が決定したので告知。

今回は『Fez』がテーマ

開催日などについて以下にまとめる。
『Fez』について語り合う座談会
参加する場合は、以下のいずれかから主催である死に舞氏へ連絡すること。

Twitterアカウント - 死に舞
https://twitter.com/shinimai
メール
aka.shinimaiアットgmail.com

『Fez』について

リリースの延期に、Xbox LIVE アーケードでの配信後のアップデートパッチトラブル*1、そして件の発言と話題の多かった2Dアクションパズル。2D世界を回転させ、地形認識を変えて進めるというギミックが最大の特徴となっている。

私のなかでも「おもしろいんだか、つまらないんだか、二転三転する」という稀有なタイトル(一応、クリア済みでコンプまであとわずか)であったりする。

このため、『Fez』同様にひねったからこそ見えてくる世界があるのか、回せどそこにあるものはやはり変わらないのか、今回どのような内容が語られるのかかなり期待している。

*1 つい最近、もう1度アップデートパッチが来るといった報告が開発のPhil Fish氏からなされた
なお、ちょうどGOGでは半額セール実施中で$4.99で『Fez』の購入が可能。購入自体はXbox LIVE アーケードやSteamでもできる。

GOG - 『Fez』ストアページ
http://www.gog.com/gamecard/fez

ゲームファンなら必ず観てほしい映画『Indie Game: The Movie』のSpecial Editionが登場

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『Braid』、『Super Meat Boy』、『Fez』の開発チームを追って、開発者という側面からインディーゲームを捉えた映画『Indie Game: The Movie』。同映画のSpecial Editionがリリースされると、公式サイトで告知が行われている。



『Indie Game: The Movie』の詳細は過去記事に譲る。

関連記事:
『Indie Game: The Movie』に日本語字幕が来るっぽい(※来ました)
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/07/indie-game-movie.html
インディーゲーム開発に携わるということと、我々が払うべき敬意。『Indie Game: The Movie』感想
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/10/indie-game-movie.html

Special Editionの内容は以下のとおり。

  • 100分に及ぶ短編映画アンソロジー
  • エピローグ、そして本編後に彼らに何が起こったかが描かれる
  • 別のゲームクリエイターについての話も収録*1
  • 『Super Meat Boy』の開発Team Meatによる新たなコメンタリを収録

*1 トレーラーでは『Spelunky』が登場する

映画本編では『Fez』リリース後の状況が描かれていなかったため、個人的にいちばん楽しみにしているのは、Phil Fishの追加エピソードである。Special Editionはボーナスコンテンツという位置づけだろうから、本編ほどのエモーショナルな部分は期待しにくいと思うのだが、Phil Fishはさまざま思うところがあるだろうし(それに彼はしばしば激情的な部分をあらわにする)、期待を寄せている。あとついにスフィンクス(猫)が訪れたEdmund McMillen家のその後も気になる。個人的にあの映画のなかのEdmund McMillenが好きだし。

リリース形態については、Special EditionにはBox SetとDigital versionの2種類が存在している。

Digital versionは公式サイトのほか、Steamで『Indie Game: The Movie』のDLCとして配信される。Special Edition追加部分の価格は$4.99で、配信日は2013年7月24日。
Box Setは公式サイトで予約販売が開始されている。主だった収録物は下記を参照*2。こちらはBlu-ray版とDVD版が存在し、各限定3000セットが用意されているとのこと。価格はBlu-ray版が$69.99、DVD版が$59.99*3となっている。海外からの購入が可能かどうかは不明。

  • 10時間に及ぶコンテンツを収録したディスク3枚(リージョンフリー)
  • Edmund McMillenがデザインしたパッケージ、両面ポスター
  • 48ページの『Indie Game: The Movie』ノート
  • ノートPC用ステッカー
  • ディレクターによる手書きのサイン、ナンバー入り
  • 『Indie Game: The Movie』Special Edition(= DLC部分を含む)のSteamキー

*2 サウンドトラックは付属しない模様
*3 あくまで出荷開始までの予約価格。出荷開始後はBlu-ray版は$89.99、DVD版は$69.99になる

IGTM SPECIAL EDITION Box Set予約購入ページ - 『Indie Game: The Movie』公式サイト
http://shop.indiegamethemovie.com/collections/igtm-special-edition

最大の気がかりは日本語字幕はあるのかどうかという点だが、本編のとき同様少なくともリリース直後は日本語字幕のない可能性が高いものと思われる。

なお、Steam版『Indie Game: The Movie』は、サマーセール中につき70%OFFの$2.99で購入できる。過去記事でも言及したのだが、すべてのゲーム開発者のみならず、ゲームファンに観てほしい内容なのでこの機会にぜひとも購入し、観てほしい……と思ったのだが、Steam版はいまだに日本語字幕に対応していないようなので、英語では無理という方は日本語字幕に対応している公式サイトでの購入(ただし、記事執筆段階だとこちらはセール価格ではない)をオススメしたい。
2013年7月19日追記
本記事のアップ翌日にThe Humble Weekly Saleのラインアップが更新され、平均額以上の支払い*4をした人向けのボーナスコンテンツとして『Indie Game: The Movie』 が加わっている。これには『Indie Game: The Movie』 のSteamキーがつくほか、ダウンロード版やストリーミング再生にも対応。ダウンロード版とストリーミング再生はともに日本語字幕に対応しているので、迷うことなくオススメだ。

Jim Guthrie and Friends - Humble Weekly Sale
https://www.humblebundle.com/weekly?guthrie_weekly

セールは1週間限定(下記参照)なので購入を検討している方はお忘れなきよう。
 
*4 記事執筆段階の平均額は$3.45。平均額以上の支払いをすると、『Indie Game: The Movie』 のSteamキーに加え、iOSやAndroidを含む各プラットフォーム版『スキタイのムスメ』も同時に入手が可能


ソース:
IGTM SPECIAL EDITION - 『Indie Game: The Movie』公式サイト
http://www.indiegamethemovie.com/news/2013/7/16/igtm-special-edition.html

C84の気になるゲームをチェックするHOTLINE C84

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本日(2013年8月10日)、21時より死に舞さんとともに
コミックマーケット84の個人的な注目作をツイートするHOTLINE C84を行います。


  • 1人5作品紹介
  • 紹介は、1作品1ツイートでつぶやく
  • ツイートテンプレは「サークル配置/サークル名/タイトル名/オススメポイント」

はじめ強くあたり、あとは流れでお願いします。それと適当に質問とかする感じです。

特に私はC84にどういうゲームがあるのかあまり知らないので
こんなおもしろそうなゲームがあるとか、注目してるゲームがあるとか、
ほかの方からも教えていただけるとうれしいです(事前タレコミ含む)。

ふるってご参加くださいませ。

参加者のTwitterアカウントは以下の通り。

@shinimai https://twitter.com/shinimai
@HayanieMozu https://twitter.com/HayanieMozu

参考に、えーでるわいすのなるさんが作成したC84同人ゲームまとめ動画も貼っておく。


それと窓の杜の特集記事も。

【週末ゲーム】第530回:同人ゲーム体験版特集 2013夏 - 窓の杜
http://www.forest.impress.co.jp/docs/serial/shumatsu/20130726_609136.html

HOTLINE TOKYO 4th開催告知。扱うタイトルは『Bastion』

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前回『Fez』の終了時から、内々ではちょっとずつ話題にはしていたのだけれども、次回のHOTLINE TOKYOでは『Bastion』を題材にする。

今回は『Bastion』

開催日などは以下のとおり。
『Bastion』について語り合う座談会。
参加する場合は、以下のいずれかから主催である死に舞氏へ連絡すること。

Twitterアカウント - 死に舞
https://twitter.com/shinimai
メール
aka.shinimaiアットgmail.com

開催場所が前回までとは異なっているので、過去回の参加者は場所を間違えないように注意してほしい。

『Bastion』について

Supergiant Games開発の斜め見下ろし視点のアクションRPG。
主人公以外の人々が消え去った世界が舞台。タイトルになっている「Basiton」と呼ばれる空中拠点から世界を旅し、Bastionを再生しながら世界の謎を解いていくといった趣だ。
剣やハンマー、弓矢に銃器といった多数の武器が登場し、そのなかから2つを選択してプレイする(ステージごとに変更可能)。攻撃は溜め撃ちや必殺技などが使える。また、標準装備として盾を持っており、防御したり敵の攻撃をタイミングよく防御することでカウンター攻撃を繰り出したりできる。武器のアップグレードや必殺技のアンロックといった成長要素もある。

『Bastion』は、2011年7月にXbox LIVE アーケードでSummer of Arcade 2011の第1弾タイトルとしてリリースされた。のちにPC版がSteamで配信されたほか、Chrome向けやiOS向けのものもリリースされている。The Humle Indie Bundleに収録された経緯もあるため、すでにプレイ済み(または積みっぱなし)のプレイヤーもいるのではないかと思う。

残念ながら日本語版は存在していない(PC版は有志による日本語化MODが導入可能)。なお、過去にPLAYISMが日本語版のリリースを目指して、開発にコンタクトをとったそうなのだが、断られたようだ。

【PLAYISM】今後の配信予定作 一覧 - PLAYISM
http://playism.blogspot.jp/2012/04/pc-playism.html

なお、プレイ時間はクリアまで6時間程度かかるようだ。私はまだプレイ途中だが、もちろんクリアしてから臨みたいと思っている。




Pico Pico Cafeについて

今回、開催場所となっているPico Pico Cafeは、吉祥寺にあるカフェ。『Voxatron』を開発するLexaloffice Gamesの拠点となっている。

Pico Pico Cafe公式サイト
http://picopicocafe.com/
『Voxatron』はボクセルベースのアクションゲーム。
The Humble Voxatron Debut!で入手した人も多いのではないだろうか
エディタも付属しており、プレイヤーの作成したステージも遊べる
Pico Pico Cafeではインディーゲームを遊ぶイベント「Indie Game Night」や、クリエイターが自由に発表を行う「Picotachi-ピコたち」といったイベントも精力的に行っている(第2、第4金曜日夜はボードゲームを遊ぶBoard Game Nightが開催)。

チャージ料金がないうえに、無線LANや電源を無料で利用可能で、個人的にも(そしてHOTLINE TOKY主催の死に舞氏も)大好きなカフェである(ので開催の許可を申し込み、快諾を頂いた)。

駅からの行き方についてはPico Pico Cafe公式サイトを参照してほしい。カフェはビルの8階にあり、7階までエレベーターまで上がり、そこからは階段で移動する。

Access - Pico Pico Cafe公式サイト
http://picopicocafe.com/?id=access

座談会への参加はもちろん、配信を見てのコメントや事前に感想などを伝えるのも大歓迎。ぜひとも『Bastion』について語ろう。

『RPGツクール』で創り続けた8年間――コンテストパーク受賞作『Muspell』から最新作『ACDC』まで ゲーム製作者巫女瓜氏、初インタビュー 前編

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事前に告知していた*1、poroLogue氏による企画記事を公開する。内容は、長くフリーゲーム開発に携わってきた巫女瓜氏へのインタビュー記事だ。かなりの文章量があるため、前後編の2編に分けた。前編は過去作から最新作『ACDC』に至るまで、後編は『ACDC』と今、そして今後について語っている。

なお、前編では過去作の終盤、エンディングについて言及している部分もあることを付け加えておく。

*1 【告知】コンテストパーク受賞から『ACDC』までの8年間ー「space not far」巫女瓜氏 初インタビュー - GameLogue
http://d.hatena.ne.jp/tapimocchi/20130827/1377607594

関連記事:『RPGツクール』で創り続けた8年間――コンテストパーク受賞作『Muspell』から最新作『ACDC』まで ゲーム製作者巫女瓜氏、初インタビュー 後編
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/09/rpg8muspellacdc_8.html

巫女瓜氏は、2005年よりWebサイト「Space not far」にて、フリーゲームの公開を始めたゲーム製作者だ。

Space not far
http://muspell.raindrop.jp/




これまで『RPGツクール』で製作した多くのゲームを発表し、2006年に発表した『Muspell』は、『RPGツクール』の販売元であるエンターブレインの主催するゲームコンテスト「コンテストパーク」(通称:コンパク)にて、優秀な作品として賞を受賞した。

その後、作品ごとの間隔は空くものの、実に8年以上ゲームを製作している。今ではフリーゲーム・インディーゲーム製作の熟練者と言っても差し支えない製作者だ。

近年のフリーゲームとしては『ブラックデス』、『グリムボルト』など、良く練られたロジカルな短編RPGをリリースし、2012年のコミックマーケットでは、『ACDC』を頒布、完売した。2013年冬リリース予定の新作『にせものたちの祭典』にも期待ができる。私もβ版のテストプレイに参加させて頂いたが、根本的な部分は既に作りこまれていると感じている。

そんな経歴をもつ巫女瓜氏だが、今回が初めてのインタビューとなる。

私自身、巫女瓜氏と知り合ってから3年ほどになり、これまでの作品群を遊んだ1人のプレイヤーとして、自分の気になる質問をぶつけた形となる。

結果として長文になってしまったが、「8年間を振り返る」という企画に恥じない、過去の作品から現在まで幅広く話題にできたと考えている。また3章からは、これまで明かされることのなかった氏の貴重なゲームデザイン技法について掘り下げていけた。氏のゲームファンのみならず、ゲームデザインに興味のある人には、ぜひじっくりと読んでほしい。

『Muspell』公式サイト
http://muspell.raindrop.jp/mspmanual.html
『ブラックデス』 - Vector
http://www.vector.co.jp/soft/win95/game/se489849.html
『グリムボルトDeep』公式サイト
http://muspell.raindrop.jp/file/grmbdeep.htm
『ACDC』公式サイト
http://muspell.raindrop.jp/game/acdc/index.htm
『にせものたちの祭典』公式サイト
http://muspell.raindrop.jp/file/falsefesta/c83.htm

前編 Contents

1章 はじまりは『RPGツクール』から
  • ゲーム製作のきっかけ

2章 コンパク受賞作『Muspell』に込めた製作思想
  • 『夜明けの口笛吹き』と『ドラゴンクエスト』の奇妙な出会い
  • 製作秘話「主人公はいなかった」
  • 『クロノ・クロス』のような劇的展開を
  • ゲームの「道筋」はひとつでも、そこへ至るプレイヤーの『思想』はいくつもあって良いはず

3章 『ブラックデス』、『グリムボルト』、『ACDC』のゲームデザイン技法1

1.シミュレーションRPG『ブラックデス』
  • ゲームを作る上で楽がしたかった――『ファイアーエムブレム』から得た製作ヒント
  • 「難易度設定」、それはブログの記事がひとつかけてしまうほど壮大

2.パズルRPG『グリムボルト』
  • 「逃げる」コマンドが超重要!? 『魔法の塔』を参考にした「パズル&RPG」
  • 『風来のシレン』のような繰り返し遊べるゲームデザイン
※章タイトルクリックで該当部にジャンプします

1章 はじまりは『RPGツクール』から

ゲーム製作のきっかけ

poroLogue フリーゲームから、今では有償頒布まで幅広くゲームを作っている巫女瓜さんですが、ゲーム製作のきっかけなどありますか?
巫女瓜 明確なきっかけはないのですが、FF・ドラクエの影響を受けて、その模倣みたいなRPGを『RPGツクール SUPER DANTE』で作って、自分でプレイするといったことが始まりですね。
poroLogue 最初は自己消費だったんですね。明確に製作ということを意識し始めたのは、『RPGツクール2000』からなんですか?
巫女瓜 そうですね。家庭用のツクールって、そもそもの完成の可能性が低いと思うんですよ。「DANTE」の次に買ったツクールが『RPGツクール4』なんですけど、家庭用だと文字入力なども大変だったんです。「PC版だったらキーボード入力ができて、ひょっとしたら上手くいくんじゃないかな?」と思って、「ツクール2000」を買いました。

2章 コンパク銀賞受賞作『Muspell』に込めた製作思想

『夜明けの口笛吹き』と『ドラゴンクエスト』の奇妙な出会い

poroLogue 『RPGツクール2000』で作ってて印象深かったのは、やはりコンテストパーク銀賞を受賞した『Muspell』ですかね。明確にコンテスト受賞を狙いたいと思ってたのでしょうか?
巫女瓜 最初にツクールを触ったテンションと同じですね。フリーゲーム『夜明けの口笛吹き』の影響を受けて、それのリスペクトを作りたかったんだと思います。

『夜明けの口笛吹き』公式サイト
http://kiiiichi.sakura.ne.jp/yoake.html

poroLogue 『夜明けの口笛吹き』は私の周りのフリーゲームプレイヤーの中でもかなり人気でしたね。言われてみれば『夜明けの口笛吹き』も『Muspell』も、退廃的な世界観は似ていますね。

巫女瓜 退廃的に始まり、退廃的に終わるというか……。それで、作ってるうちにツクールを初めて触った気持ちに戻ったんでしょうね。FF・ドラクエのようなゲームを作りたくなったというか。

poroLogue なるほど、たしかに『Muspell』をプレイして思ったのが、システムやバランスなどはFF・ドラクエのような王道なRPGでありながら、物語としては『夜明けの口笛吹き』のような退廃的な雰囲気という、その2つを合わせた絶妙な作品になってることなんですよ。誤解を恐れずに言えば「フリーゲーム」と「コンシューマゲーム」が混ざって生まれた結果というような。

製作秘話「主人公はいなかった」

poroLogue そんな『Muspell』ですが、この作品はキャラクターも人気ですよね。イラストを書かれている方も多いです*2。敵として長く立ちはだかるガイとシトロンの2人組も特に人気な印象があります。

*2 ナンタラ - フリーゲーム絵
http://nantara.kenkenpa.net/nijisousaku/freegame_muspell.html

巫女瓜 あの2人は、よくある敵の四天王的な立ち位置ですね。悪役だけど、「自分はなんでこんなことをしているんだろう?」と悩む。キャラとしてはたしかに人気ですね。ちなみに、仲間キャラは当初ヤドリギとアップファルしかいなかったんですよ。
poroLogue 製作当初は、主人公であるゼムはいなかったんですか?
巫女瓜 プロトタイプでは「ヤドリギがただ冒険するゲーム」だったんですよ。かなり「夜明け」に近い。よく分からない世界を放浪するもので、アップファルは「夜明け」のヒロイン格であるエリナーのような立ち位置でした。ゼムが出てきたのは、たぶん「FF7」の影響かもしれません。
poroLogue なるほど。たしかにゼムは「FF7」の主人公クラウドのような、影のあるキャラクターですよね。さきほども話してましたが、「夜明け」のリスペクトとして作り、途中からFF・ドラクエの要素が入った結果なのか『Muspell』は作中で急激にノリが変わりますよね。
巫女瓜 序盤の短編部分は、たぶん「夜明け」と共に『ドラゴンクエスト7』の影響もあったと思います。あの作品もスポット参戦のゲストキャラと冒険するじゃないですか。『Muspell』も前半は、スポット参戦のキャラと一緒に一話完結のような短編ストーリーを次々と追うという形になってますね。

『クロノ・クロス』のような劇的展開を

poroLogue ヒロインである少女アップファルの正体が分かる後半から、ストーリーが急速に繋がっていきますよね。
巫女瓜 あの辺りから作っている側としても結末が見えてきた感じがあります。ちなみに、今まで参戦したキャラクターが再集結してアップファルを助けに向かうダンジョン「咎人の古城」は『クロノ・クロス』の「古龍の砦」のオマージュです。ストーリーが劇的に展開するので、それも重ねてます。
poroLogue 『クロノ・クロス』でも主人公と宿敵が相対する重要な場所ですね。『Muspell』ではこのあたりから、物語の最終目的も見えてきます。ラスボスに関してもこの時期に決めたのでしょうか。
巫女瓜 「咎人の古城」で戦う「魔王」をラスボスとして使ってもいいかなと考えていました。しかし、同じ敵が2回ラスボス級として立ちはだかる、というのは駄目だろう……と思い直しました。
poroLogue 結果的に、世界を破滅に導く存在「ムスペル」が、既に亡くなった人である主人公ゼムの姉アリムの意識を持って立ちはだかることになったんですね。

ゲームの「道筋」はひとつだとしても、そこへ至るプレイヤーの「思想」は、いくつあっても良いはず

poroLogue 最後の敵である姉アリムを倒した後、ゼムは苦しみのない「無」の世界に還ることを否定して、「現実」の世界を生きることを選んだわけですが、エンディング寸前にアリムが「これから、自分で道を決める覚悟はある?」という最後の問いかけをするじゃないですか。あれは「はい/いいえ」と選べますが、分岐などに関係ない、「意味のない選択肢」ですよね。あれにはどういった思いを込めていたんでしょうか。
巫女瓜 基本的なRPGは「ラスボスを倒す」ことに収束するじゃないですか。それに対するささやかな抵抗のつもりでした。ラスボス前で、「ラスボスを倒さない」という選択肢も選べますが、ゲームとしてはそれだと続かなくなってしまう。結局、倒さざるを得ないんですよね。だからせめて、ゲームの「道筋」はひとつだとしても、そこへ至ったプレイヤーの「思想」はいくつあってもいいはずだと思って作りました。
poroLogue たしかに、あの選択肢はゼムを通してプレイヤーにも語りかけている印象がありました。ちなみにラスボスは行動のパターンがほぼ確定していますよね。あれは後に製作するゲームのような「状況を分析し、ロジカルに対処する」というデザインを意識していたのかなと思っていましたが。
巫女瓜 それはあまり意識していませんでした。ラスボスの行動はどれも強力なので、ランダムにすると強すぎるんです。それで完全にルーティーンにしただけですね。バランス取りの一環です。

3章 『ブラックデス』、『グリムボルト』、『ACDC』に見るゲームデザイン技法1

1.シミュレーションRPG『ブラックデス』
ゲームを作る上で楽がしたかった――『ファイアーエムブレム』から得た製作ヒント

poroLogue 本格的にシステムに凝りだしたのは、シミュレーションRPGの『ブラックデス』以降ですよね。『ブラックデス』はHPがみんな1ケタという珍しいSRPGですが、ああいったゲームデザインにしたのは理由があるのですか?
巫女瓜 とにかくゲームを作るうえで楽がしたかったんです。考える要素を極力減らして、省エネでゲームを作ろう、と。HPなどの数値が大きくなると、ゲームバランスの調整など考えなければいけない要素が多くなるじゃないですか。そこで最大HPを1とかにして、「生きてる」か「死んでる」しか状態がないようにしました。
poroLogue 考える要素を減らしたかったというのは、プレイヤーにとっても?
巫女瓜 私がプレイしたいゲームを作ろうとしたので、そうなりますかね。遊ぶほうも楽だし、作るほうも楽。Win-Winですよね。
poroLogue 普通のSRPGではよくある「命中率」などの要素もすべて取り払ってますよね。
巫女瓜 たとえば『ファイアーエムブレム』は、究極的には「敵を引き付けて、倒す」をひたすら繰り返すゲームじゃないですか。そこで『ブラックデス』では、回避・命中などの要素を考えずに、「敵を引き付けて、倒す」に特化させた。乱数をなくすことで、「運が悪くてクリアできない」ということを発生させたくなかったという意味もあります。
poroLogue なるほど。「敵を引き付けて、倒す」というFEの本質部分を見抜き、ゲームデザイン要素として抜き出したわけですね。乱数がないというのは、『ブラックデス』では敵の視界が完全固定されているのもそうですね。そのおかげで「この距離なら見つからない」ということが確定でき、それを前提に戦術を考えられます。

「難易度設定」、それはブログの記事がひとつかけてしまうほど壮大

poroLogue この作品は複数の難易度からプレイを選択できますが、その理由はあるのでしょうか。また、選べる難易度が「イージー」と「ハード」で、「ノーマル」がない。というのは不思議に感じました。何か意図があるんでしょうか?
巫女瓜 難易度設定というのは、それだけでブログの記事が一つかけてしまうくらい壮大なんですよ。『ブラックデス』に関して言えば、当初はハードに当たるモードしかなかったんです。それでテストプレイしたら、テスターの方々からは難しすぎるといわれた。じゃあモードを分けよう、と。しかしそこでは、「ノーマル」と「ハード」という分け方はありえなかったんです。なぜかというと、そもそも、ハードが想定した難易度なので、「ノーマルクリアー! やったぜブラックデス終了~v(^^)」と思われたら、個人的には好ましくなかったんですよね。
poroLogue 難易度設定に関しては、いつかブログ記事を1本書いてほしいものですね。そういえば、『ブラックデス』で戦いがあまりに長引くと援軍として出てくる「有翼兵」という敵の圧倒的な強さには恐怖を覚えました。
巫女瓜 あの敵は単純なターン制限ですね。『チョコボの不思議なダンジョン』シリーズにおける「死神」みたいなものです。一定ターン過ぎるとプレイヤーを排除しにくる。粘り勝ちされたくなかったんですよ。ちなみにそれらを撃退しても、40ターン経つと自動的にみんな死にます。
poroLogue なんという仕打ちだ!(笑) 40ターンは自分で耐え切ったのですか?
巫女瓜 いや、実はやってないですね……。設定しておけば、粘り勝ちを防げるなと思ったので。ちなみに40ターン耐えるとちょっとしたイベントが見られるようにしてます。プレイヤーのブログ記事で、見られたという報告はあがってますね。

パズルRPG『グリムボルト』
「逃げる」コマンドが超重要!? 『魔法の塔』を参考にした「パズル&RPG」

poroLogue 『ブラックデス』を作った後の作品は、長く同人ゲームを扱っている窓の杜のゲーム紹介コーナーでも取り上げられた*3『グリムボルト』ですね。フリーゲームの投票企画である「フリゲ2011」にランクインした『停滞少女』の製作者である、うた氏がキャラクターイラストを手がけていて、これも魅力でしたね。
巫女瓜 そうですね。

フリゲ2011 あなたが選ぶ今年のベストフリーゲーム
http://yamazaru.s21.xrea.com/reviewers/best2011/vote.cgi
うた氏の公式サイト マテンロウ計画
http://www.ab.auone-net.jp/~uta_m/

*3 【週末ゲーム】第475回:16階建ての監獄塔から脱出するパズルRPG「グリムボルト」 - 窓の杜
http://www.forest.impress.co.jp/docs/serial/shumatsu/20120217_512595.html

poroLogue 知人のゲーム製作者の方と一緒に、「RPGの『逃げる』コマンドを重要にしたゲーム」という「お題」に沿って作るという製作をしていたようで。そのゲームデザインをステッパーズ・ストップのポーンさんも絶賛していたことが印象に残っています。
巫女瓜 「お題」から作ると言いつつ、割と自由に作っていました。途中で「あ……これちゃんとテーマに沿ってるのかな……?」と思い出したくらいです。
poroLogue 『グリムボルト』は階層とマップが固定されていて、最下層を目指すという目的を達成するというゲームですが、『世界樹の迷宮』的な構造を意識したんですかね。
巫女瓜 参考にしたのはむしろフリーゲームの『魔法の塔』ですかね。50階の塔を登っていくRPGなんですが、敵やアイテムの場所などが固定されていて、倒す順番をしっかり考えないとクリアできないパズルのようなRPGです。

『魔法の塔』公式サイト
http://hp.vector.co.jp/authors/VA013374/index.html

『風来のシレン』のような繰り返し遊べるゲームデザイン

poroLogue なるほど。そんな『グリムボルト』ですが、最初はフリーゲームとして出して、その後コミティアで改良版『グリムボルトDeep』を頒布したのですが、なぜでしょうか?
巫女瓜 『グリムボルト』は製作に時間制限があって、出来に満足していなかったんですよ。作り直して、せっかくならイベント頒布しよう、と考えてました。
poroLogue 満足していなかった点とはどこなんですか?
巫女瓜 まずラスボスが弱かったので、強くしたかった。あと、バランスが適当で特定のキャラが強くなりすぎた。罠使いシノの初期装備「ワイヤートラップ」とかですね。戦闘開始と同時に敵全体にダメージを与えスタンさせるという強力な効果があります。初期装備が強すぎて、装備を変える楽しみがなくなってしまったんです。
poroLogue あと、主人公も変えられるようになりましたね。
巫女瓜 「主人公を変えてプレイできれば、繰り返し楽しんでもらえるのでは?」と思いました。
poroLogue 剣士アロンを主人公にしたときだけ、仲間を斬って強くなるという異色なシステムになりますが、どういう意図だったんでしょう。
巫女瓜 あれも『風来のシレン』の特殊ダンジョンみたいなものですね。2回攻撃を受けないと絶対に死なないとか。そういうのは気分転換になって、繰り返し楽しめると思うので。ほかにも各主人公ごとに微妙にシステムが異なりますが、そういう理由です。

関連記事:『RPGツクール』で創り続けた8年間――コンテストパーク受賞作『Muspell』から最新作『ACDC』まで ゲーム製作者巫女瓜氏、初インタビュー 後編
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/09/rpg8muspellacdc_8.html
企画・記事作成:poroLogue

ゲーム研究やゲーム製作などやってます。「GameLogue」の運営。『QuestNotes」の製作メンバー、「ねとぽよ」でのゲーム記事の執筆、DigraJでの発表など。

GameLogue
http://d.hatena.ne.jp/tapimocchi/
『QuestNotes』公式サイト

http://www.questnotes.net/
ねとぽよ
http://news.netpoyo.jp/

『RPGツクール』で創り続けた8年間――コンテストパーク受賞作『Muspell』から最新作『ACDC』まで ゲーム製作者巫女瓜氏、初インタビュー 後編

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poroLogue氏による巫女瓜氏へのインタビュー企画の後編。近作ノンフィールドRPG『ACDC』のゲームデザイン、そしてその根源にあるものについて語っている。終章となる4章では、巫女瓜氏自身のゲーム製作全般に関すること、そして気になる今後の活動について迫っている。

なお、ネタバレというほどのことではないが、3章では『ACDC』のエンディングに部分的に言及がなされている。

関連記事:『RPGツクール』で創り続けた8年間――コンテストパーク受賞作『Muspell』から最新作『ACDC』まで ゲーム製作者巫女瓜氏、初インタビュー 前編
http://nydgamer.blogspot.com/2013/09/rpg8muspellacdc.html


後編 Contents

3章 『ブラックデス』、『グリムボルト』、『ACDC』のゲームデザイン技法2

3.ノンフィールドRPG『ACDC』
  • ゲーム内の情報はすべて公開し、プレイヤーは戦術に専念する
  • テーブルトークRPGを参考にしたシステム設計
  • マップがなくなったらもう勝ったも同然ですよ――ノンフィールドRPGという手法
  • 『雪道』のリスペクトから始まった「キャラ変換」システム
  • プレイヤーの無防備なところを攻撃する、「ゲームだからこそ」の演出

4章 ゲームを作るときに考えていること
  • 『四月馬鹿達の宴』の製作者も絶賛したテキストセンス
  • プレイヤーへの嫌がらせが、コミュニケーションとして盛り上がってくれたらうれしい
  • 3作厳選、影響を受けたゲームたち
  • 最近はSF小説――ゲーム以外に影響を受けた作品
  • 今後の活動について
※章タイトルクリックで該当部にジャンプします

3章 『ブラックデス』、『グリムボルト』、『ACDC』に見るゲームデザイン技法2

3.ノンフィールドRPG『ACDC』
ゲーム内の情報はすべて公開し、プレイヤーは戦術に専念する

poroLogue 次はそろそろ、現在の最新作である『ACDC』について聞きたいと思います。
巫女瓜 『ACDC』も最初はフリーゲームで出すつもりでしたが、結局はイベント頒布しました。ゲームデザインに関して言えば、ゲームは、ゲーム内情報を絞るのもひとつの手段だと思うんですけど、『ACDC』は情報を公開していました。敵のステータスなんてどうせ細かくて覚えられないから、情報を可能な限り出して、戦術はプレイヤーに任せよう、と。
poroLogue なるほど、製作期間はどのくらいですか?
巫女瓜 正確にはわからないんですが、1年以上かかっていますね。
poroLogue 『ブラックデス』、『グリムボルト』と立て続けに作り、だいたい1年に1本作っている感じですね。

Space not far
http://muspell.raindrop.jp/




『ACDC』公式サイト
http://muspell.raindrop.jp/game/acdc/index.htm
『ブラックデス』 - Vector
http://www.vector.co.jp/soft/win95/game/se489849.html
『グリムボルトDeep』公式サイト
http://muspell.raindrop.jp/file/grmbdeep.htm

テーブルトークRPGを参考にしたシステム設計

poroLogue ちなみに、ゲームを作っていないときの趣味などは何をやっているんですか?
巫女瓜 TRPG(テーブルトークRPG)とかやってますね。
poroLogue たしかに最近、TRPGのセッションも熱心に行っていますよね。アナログゲームであるTRPGを、デジタルなゲーム製作の参考にしたりは?
巫女瓜 『ACDC』はまさにそうですね。TRPGを主に出版する、冒険企画局という会社が出しているゲームがあるんですけど、それらはだいたいアイテム入手のランダム表があって、6面ダイスを1つ振って、1~6の出目に対応して入手できるアイテムジャンルが決まる。さらにもう一度振って、出目によってジャンルの中のどのアイテムが入手できるのか決まる。
poroLogue なるほど。

冒険企画局公式サイト
http://www.bouken.jp/

巫女瓜 『ACDC』はそれを参考にしたので、1ジャンルごとにアイテムが6種類しかない。このようにTRPG的なルールで、数を抑えてみようと思いました。今までRPG作るときは、適当にデータを増やしてました。なので、今回は制作上の縛りということですね。そこで自然とバランス取りがされていきました。
poroLogue TRPGを参考に、アイテムの縛りという形式を取り入れ、数をシンプルにしたんですね。

マップがなくなったらもう勝ったも同然ですよ――ノンフィールドRPGという手法

巫女瓜 ちなみにシンプルと言えば、『ACDC』をノンフィールドにしたのは、マップという煩わしい要素を取り除いてシンプルにしよう、という意図です。RPG製作でいちばんめんどくさいのはマップですからね。マップがなくなったらもう勝ったも同然ですよ。
poroLogue なるほど!(笑) ちなみに製作者としてではなく、プレイヤーとしてもマップ移動は好きではないんですか?
巫女瓜 マップ移動自体はむしろ好きですね。ただ、マップに労力を掛けられないようならなくてもいいんじゃないかと思ってます。ゲームにマップ移動をつける必要がある時というのは、マップを探索する楽しみを設けるときだと思うんです。
poroLogue これまでのゲームの中で、マップを探索する楽しみとして作ったものはありますか?
巫女瓜 製作した中ではやっぱり『Muspell』ですかね。『グリムボルト』はマップを丁寧に作った気がします。あれも、マップ製作に関しては『ACDC』みたいに縛りプレイで作られてますね。まずはマップ全体の大きさや輪郭をかっちり決めて、その制限のなかでマップの中身を作ってるだけなんですけど、マップを組んでて楽しかったですね。『RPGツクールVX』はマップチップの形が特徴的なので、『グリムボルト』みたいなパズルっぽいRPG作るのに向いてるかなと感じます。

『Muspell』公式サイト
http://muspell.raindrop.jp/mspmanual.html

『ACDC』はシューティングのようなRPG

poroLogue なるほど。話は戻って、以前に『ACDC』は、シューティングっぽいRPGと言っていましたが、それはどういう意味でしょう?
巫女瓜 以前、poroLogueさんにステッパーズ・ストップの『フォーリング★スター』をプレイしてほしいと言いましたが、あのゲームのプレイ感覚を目指しました。まるでプレイヤーが操作せずともサイコロが自動で振られているように、どんどん進んで、どんどん敵を倒していって、最後にボスがいる。ワンプレイが短くて、繰り返しプレイに耐える作品です。
poroLogue 教えてもらった後に早速プレイしましたが、操作せずとも状況が自然に進んでいき、プレイヤーが必要なときにのみコマンドで介入するという、独特なRPGでした。あの作品のような、プレイの自動性を『ACDC』の参考にしようとは思いませんでしたか?
巫女瓜 『フォーリング★スター』は、アクションのような要素が入ってるので、『ACDC』にそのまま流用はないですね。ただ、ゲームを作る時の基本理念「ポテチを食べながら遊べるゲーム」は外さないようにしました。操作系をシンプルにして、片手でプレイできるような。
poroLogue たしかに『ACDC』のようなノンフィールドRPGという形式は、現在のソーシャルゲームにも見られますからね。それこそ、ケータイで片手にプレイするという操作で。

『フォーリング★スター』公式サイト
http://stst.cocot.jp/other/am/f_star.html

『雪道』のリスペクトから始まった「キャラ変換」システム

poroLogue 『ACDC』の特徴的なシステムである「キャラ変換」についてはどうでしょう? 「キャラ変換」とは、通常キャラとして使う「AC」から、非常に戦闘能力に優れた「DC」にいつでもチェンジできるシステムですが、普通のRPGのようにMP的なリソースの消費をしないんですよね。回数制限を気にせず使っていい必殺技のような。その代わりに、負のパラメータである「罪」がどんどん蓄積していく、というのは斬新な気がしました。
巫女瓜 その部分は考えましたね。『ACDC』は、リソースとしてのHPやEMはだいぶ変動しやすい。つまり、リソース消費型だと、限りなくリスクが低くなるか、あるいは限りなく使い物にならなくなると思ってたからです。また、「キャラ変換」でのDCモードは、ステッパーズ・ストップの『雪道』でいう「奥の手」です。「奥の手」は、敵を1発で倒せる代わりに、隠しステージへのフラグが閉じてしまうという諸刃の技。それのリスペクトです。

『雪道』 - ステッパーズ・ストップ
http://stst.cocot.jp/mygame/mygame.html

poroLogue 「キャラ変換」の場合は、1発使っただけではアウトにせず、ある程度なら大丈夫だ、という形にゲームデザインの翻案を行ったわけですね。「罪」は、少し溜まっても大丈夫ですが、溜まりすぎると敵が凶悪な強さになっていく。その結果としてゲームクリア不可能になってしまうという。
巫女瓜 そうそう、猶予を持たせた感じですね。

プレイヤーの無防備なところを攻撃する、「ゲームだからこそ」の演出

poroLogue 次はエンディングについてなのですが、ラスボスを倒すと、ゲーム内で死亡した回数に比例してラスボスが「よくやった、○○人目のACDCよ」といった台詞を言いますよね。あそこで多くのプレイヤーは、「死がゲームデザインとして組み込まれていたのか!」と気付くと思います。主人公であるAC・DCの死亡は、ゲーム上でのリセットの意味ではなく、実際に死を繰り返し再生していた、という事実に。「死亡した回数」というプレイヤーのインプットに応じてアウトプットが変化する演出は、ビデオゲームの本質を突いているようで、印象深かったです。
巫女瓜 『ACDC』はああいった演出でしたが、私はプレイヤーの無防備なところを攻撃する、ちょっとしたドッキリみたいな演出をしたいと思ってるんですよ、プレイヤーにも良い刺激が与えられると思うので。ゲームでできる演出って言うと、ノベルゲームとかもそうだと思うんですけど、インプットがあってアウトプットがあれば、それはゲームだと思うんです。ノベルゲームは、クリックして文字が出てくる。これだけでもゲームです。『ACDC』の「何人目のACDC」も、本質的にはそれの1バリエーションに過ぎないんです。
poroLogue なるほど。ちなみに『ACDC』は「シナリオ・システム共に現在の形とはかけ離れていたもの」といってましたが、以前はどういう形だったんでしょう?
巫女瓜 『ACDC』は過去作『よみがえれアルフレド』のリメイク作品だったんですよ。これは自分でも相当なクソゲーだと思うんですけど、なぜかおもしろいと言ってくれる人が多かった。それを作り直していくうちにこうなりました。

『よみがえれアルフレド』 - Vector
http://www.vector.co.jp/soft/win95/game/se500644.html

poroLogue そうだったのですか。『ACDC』は音や絵、レベルアップの声素材なども凝ってますよね。素材製作の進行管理などは大変ではなかったですか?
巫女瓜 そこまで厳密には管理してませんでしたね。ゲームを作っているという話をしたら、素材を作ってくださる方が出てきて、それらを使わせてもらいました。
poroLogue なるほど、自然と製作の協力者が名乗り出てきてくれたのですね。
巫女瓜 あとレベルアップの声は、『雪道』や『たゆみ』のオマージュをしたくて「セーブするときに声が出ないかな」とチャットで話してたら、声をupしてくれた人がいたんです。協力していただいた方々はモチベーションがとても高くて、うれしかったですね。

『たゆみ』 - ステッパーズ・ストップ
http://stst.cocot.jp/mygame/mygame.html

4章 ゲームを作るときに考えていること

『四月馬鹿達の宴』の製作者も絶賛したテキストセンス

poroLogue フリーゲーム『四月馬鹿達の宴』の作者であるynさんがフリゲインタビューで巫女瓜さんのテキストセンスを絶賛してましたが*1、テキストやネーミングについてなにかこだわりはありますか?
巫女瓜 ネーミングは基本、連想ゲームですね。例えば最近の作品でよく出る炎の攻撃「ディアブロ」。これは『魔王物語物語』などを製作している、カタテマのてつさんの作品『勇者の憂鬱』で、敵が「ミディアム・レア」という技を使ってきて、この名前をカッコいいなと思ったのがきっかけです。ミディアム・レアって肉の焼き方なので、まず肉の焼き方から調べて、連想して肉の料理名を調べていたら「ディアブロ」という言葉にたどり着きました。ディアブロって「悪魔」を意味する言葉でもあるんですよ。ダブルミーニングでカッコいいなと。アイテムやスキル名はだいたいそんな連想ゲームで、意味を重視しつつ、響きもそれっぽいものを採用してます。
poroLogue なるほど。

yn氏の公式サイト 西高科学部
http://www.geocities.jp/nishikou_kagakubu/
『四月馬鹿達の宴』公式サイト
http://www.geocities.jp/nishikou_kagakubu/af_manual/index.html
カタテマ
http://members.jcom.home.ne.jp/wtetsu/
『魔王物語物語』公式サイト
http://members.jcom.home.ne.jp/wtetsu/maou/
『勇者の憂鬱』公式サイト
http://members.jcom.home.ne.jp/wtetsu/yuyu/

*1 フリーゲーム あの人に聞きたい ! -第7回 西高科学部 ynさん
http://yamazaru.s21.xrea.com/reviewers/interview/007yn.html

巫女瓜 あとは、言い換えですね。正確に言うと「ケニング(迂言法)」です。たとえば『Muspell』だと、「○○ムーン」という剣がある。なぜ剣の名前がムーンなのかというと、「三日月」の異名が「月の剣」であるように、ケニングで「剣」を表すのは「月」だからなんですよ。『ACDC』は全部覚えてて、たとえば「フローレンス」ですかね。「ケア」(=回復魔法)の上位魔法なので、「医療」とかでググってたんですが、そこで「ナイチンゲール」に行き当たった。そしてナイチンゲールの下の名前が「フローレンス」だったんです。

プレイヤーへの嫌がらせが、コミュニケーションとして盛り上がってくれたらうれしい

poroLogue ゲームを作っているときにいちばん楽しいのはどういうときでしょうか。
巫女瓜 プレイヤーに対する嫌がらせを考えているときがいちばん楽しいですね。例えば『グリムボルト』だと、あるフロアに全体攻撃魔法を撃ってくる敵がいる。その次のフロアでは「一度に出す仲間を少なくすると、全体攻撃の被害が少なくなるよ」と立て札に書いてます。プレイヤーからしてみたら、「それはもっと前に言ってくれよ!」となりますよね。次にそれを実践しようとすると、1体だけで出てきた敵が3体になっていて、仲間を1人しか出していないと死ぬ。嘘は言ってないよ、という。こういう嫌がらせが、プレイヤーへのコミュニケーションとして盛り上がってくれたらいいな、と思ってます。
poroLogue 実に楽しそうだ。逆に、ゲーム製作で辛い部分はありますか?
巫女瓜 作って壊しての繰り返しなところですかね。システムなどの根幹が固まってきたらようやく作りこむ。ある程度最初にアイデアを固めておいても、それでも絶対思い通りにならないから壊さざるを得ない。『ACDC』も当初めちゃくちゃおもしろくなくて、1回システム全部ぶっ壊しました。
poroLogue 最初はどんなシステムだったんですか?
巫女瓜 装備する項目が固定されていたとかですね。出てくるアイテムが基本ランダムなので、例えば武器が多く手に入ってしまうと、持ち腐れになる。そこでバランスを考え直し、3つ分の装備スペースを自由に使えるようにしました。なので武器を3つ装備したり、防具を3つ装備したりできるわけです。

3作厳選、影響を受けたゲームたち

poroLogue 印象に残った、影響を受けたゲームを教えてください。
巫女瓜 

1.『夜明けの口笛吹き』
やはり短編で次々と進んでいくという形式や、会話の回し、全体のアトモスフィアが好きですね。

2.『冥宮惑星desParaiso』
Wizardryライクなダンジョン探索RPGです。嫌がらせのためのゲームデザインというのがとても良く伝わってきていいと思います。個人的には凄く好きなんですけど、難易度などで他人には薦めづらいですね。でもぜひプレイしてほしいです。
上記画像は『冥宮惑星desParaiso』公式サイトより引用

3.『Seraphic Blue』
敵のステータスを丸見えにしたうえでプレイヤーに意思決定を委ねるというゲームデザインにはここから影響を受けてますね。こういうタイプのRPGだと画期的だと思います。

『夜明けの口笛吹き』公式サイ
http://kiiiichi.sakura.ne.jp/yoake.html
『冥宮惑星desParaiso』公式サイト
http://www.platinedispositif.net/games/mqp/
『Seraphic Blue』公式サイト
http://www2.odn.ne.jp/~caq12510/SeraphicBlue.htm

「最近はSF小説」――ゲーム以外に影響を受けた作品

poroLogue ゲーム以外に影響を受けた作品など教えてください。
巫女瓜 『ACDC』はジョージ・オーウェルの『1984年』の影響ですね。最近だと主にSF小説がいいなと思ってます。主にカッコいいルビ探しで。例えばロバート・A・ハインライン『夏への扉』には、「文化女中器」という単語に<ハイヤード・ガール>というルビが振られてて、カッコいいなと思いました。

今後の制作活動について

poroLogue これまではPCゲームがメインでしたが、例えば、今流行しているスマートフォン向けのゲームなど作りたいとは思ってますか?
巫女瓜 もしも『iPhoneツクール』というソフトがあったら作ってみたいと思っています(笑)
poroLogue エンターブレインさんに期待ですね(笑) 最後に、今後の製作について一言もらえればと。
巫女瓜 今後はフリーゲームよりは、イベント頒布をメインにしていくかなと思います。頒布といえば、以前に「ダウンロード販売とパッケージ販売の客層は被ってない」という記事を見かけたので*2、次の頒布ではそのあたりも少し考えてみようと思います。
poroLogue なるほど。今後の製作*3も楽しみにしています。今回は3時間以上お付き合い頂き、ありがとうございました。

*2 えーでるわいす -同人ゲームサークルx同人ショップ座談会-
http://edelweiss.skr.jp/column/1211_circle_shop/
*3 次回作として『にせものたちの祭典』が開発中
『にせものたちの祭典』公式サイト
http://muspell.raindrop.jp/file/falsefesta/c83.htm
企画・記事作成:poroLogue

ゲーム研究やゲーム製作などやってます。「GameLogue」の運営。『QuestNotes」の製作メンバー、「ねとぽよ」でのゲーム記事の執筆、DigraJでの発表など。

GameLogue
http://d.hatena.ne.jp/tapimocchi/
『QuestNotes』公式サイト

http://www.questnotes.net/
ねとぽよ
http://news.netpoyo.jp/

質問募集について

今回のインタビュー記事では、追加の質問を募集している。

「巫女瓜氏にまだまだ訊ねたいことがある」、「あれについてもっと知りたい」という方は、
  • poroLogue氏のインタビュー告知記事か
    【告知】コンテストパーク受賞から『ACDC』までの8年間ー「space not far」巫女瓜氏 初インタビュー - GameLogue
    http://d.hatena.ne.jp/tapimocchi/20130827/1377607594
  • このインタビュー記事(前編、後編)

  • のいずれかにコメントを残してほしい。後日、改めてその質問に対する回答を公開する。

TGS 2013とかINDIE STREAMとかに行ってきました

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東京ゲームショウ2013(TGS 2013)と、TGS 2013最終日の夜に行われたINDIE STREAM、それともうひとつのイベントについての雑感。

TGS 2013とインディーゲームコーナー

今年のTGSでは国内外のインディーゲームを取り扱う「インディーズゲームコーナー」が設けられた。「インディーズゲームフェス2013」と銘打った本コーナーは、メインステージでは人気の実況主を迎えてのゲーム実況イベントや音楽ライブ、開発者のトークライブなどが行われ、隣のクローズドブースでも実況主によるプレイ実況のライブが行われた。また、展示ブースには応募で集まった43のゲームと、センス・オブ・ワンダーナイト 2013でプレゼンテーションをした9作品*1が展示された。

*1 センス・オブ・ワンダーナイト 2013では10作品がプレゼンテーションを行ったが、『Museum of Simulation Technology』のみ、インディーズゲームコーナーへの出展をしていない

このような試みは初ということで期待を抱きつつも、「運営の動きが鈍い」だとか「そもそもどういったタイトルが出展しているのかがとてもわかりづらい」といったような声が開発者から漏れ聞こえてきて、当日まで不安が増すばかりであった。

しかし、実際に足を運んでみると「思っていたより」かは盛況で「タイトルによっては」途切れることなく、ブースを訪れてゲームをプレイする人がいたように見えた。あの場でゲームをプレイした人が本当にそのゲームを買うに至るかどうかは甚だ疑問なのだが、プラットフォームの問題もあるし(出展しているゲームの多くはPC、あるいはiPadなどのタブレット機向けで家庭用ゲーム機でのリリースが決まっているものは極めて少ない)、メディアに取り上げられるなどして存在感を示したのは大きな価値があったのではないかというのが率直な感想だ。

「来年は参加してみたい」という人もいれば、「今年と同じなら別にいいかな」という人もいるようで開発者からの評価はまちまちなようだった。

気になったゲーム

とかいう雑感はきっとあまり求められていないと思うので、気になったゲームをいくつか紹介していきたい。

『Lost Toys(開発:Barking Mouse Studio)』

センス・オブ・ワンダーナイト 2013出展作品。いくつかのパーツにわかれた木製のオブジェクトを、パーツを回転させながら正しい形に持っていくという内容のパズルゲーム。プレイ感覚はルービックキューブに近く、色ではなく、造形をヒントに答えを導き出すルービックキューブだと思えばわかりやすい。
指紋がめっちゃ写ってしまって申し訳ない
一定の手数内で正しい形にしなければならないという制限があるが、オブジェクトは『Zen Bound』のような木製のもので色もついていないため、これがなかなか難しい。クリア時にはオブジェクトの色が蘇り(音も出るかどうは忘れた)、地味ながら確かな達成感があり、毎日チマチマプレイしたいと感じる出来だった(パズルゲーム好きならこの感覚わかるよね)。

パッと見は先ほど挙げた『Zen Bound』を連想させるが、内容も雰囲気もパズルゲーム『Cogs』に近いと思う。あれをもっとしっとりさせた感じかな。ゲーム内容に斬新さは感じなかったが、パーツを回転させるときのやや誇張めのゴリゴリ音などSEをはじめとした音周りや没入感を高めるHUDの少なさが心をくすぐる感じで、好みの雰囲気パズルゲームだった。

2013年秋にiOSでのリリースを予定しており、PC版の予定は今のところないようだ。とても残念。

『Lost Toys』公式サイト
http://barkingmousestudio.com/

ゴムの入ったぬいぐるみコントローラ

すでにゲームのタイトルですらないが、これはすごい!

何がすごいってそもそも開発者がゴム屋さん。株式会社東海ゴム工業という会社の新事業プロジェクトに位置づけているものらしい。センス・オブ・ワンダーナイト 2013出展作品『チュー太とふしぎな洞くつ』は置いていなかったのだが、ぬいぐるみコントローラはあったので触らせてもらった。

ぬいぐるみに仕込まれたゴムを押すことでマウスカーソルを操作できるというもので、ぬいぐるみの右側を押せ(揉め)ばカーソルが右に、左側を押せ(揉め)ばカーソルが左にといった具合になっている。強く押せばその分だけカーソルが早く移動する。Oculus Riftと組めば、よからぬゲームの未来の扉がまたひとつ開く気がする。

なお、ブースにいたプロジェクト担当課長の來田歩氏によると、「(操作デバイスとなる)ここまでは作ったので、(ゲームとして仕上げる?)プログラマを募集している」とのことだった。

『Analogue: A Hate Story(開発:Christine Love)』

有志日本語化を止めるような動きがあったりと*2、さてさてどうなることやらといった感じだった海外産ビジュアルノベル。先日、PLAYISMから日本語版のリリースが発表され、これが出展の契機となったものと思われる。『To the Moon』同様にプレイしたいのに、言語の壁があって泣き寝入りしていた作品だけに期待が高まる。

TGS 2013出展時のバージョンは突貫で日本語を載せたものだそうで(PLAYISMのJosh談)、ダイアログがフレームからはみ出たりしていたが、さすがに今後治るであろう。日本語版は年内リリースを予定している。

*2 Steam上の『Analogue: A Hate Story』有志日本語化フォーラム参照のこと
http://steamcommunity.com/groups/AnalogueJP#announcements

日本語版『Analogue: A Hate Story』公式サイト
http://ahatestory.com/jp/

『Crypt of the NecroDancer』


音楽に合わせてテンポよく操作して進めるローグライク。判断の高速化(ターンベースのソフトな破壊)、探索の単純化は俺が求めるローグライクのひとつの形だったため、そのうち片方が実現されているということもあり、ずっと気になっていたタイトルである。

サウンドと画面上のエフェクトを含めた全体的な手触りがとてもよく、期待どおり。ちなみに1フロアごとに曲が変わるので、操作テンポも変える必要がある。いつものことながら製品版に期待ということで早々にプレイは切り上げた。アンデッドがいっぱい出るし、任意のMP3を読みこませることもできるので、マイケル・ジャクソンの『Thriller』をぶちこんでプレイしたいね!

なお、後述のパーティーでは、TGS出展時のプレイでは確認できなかった、いくつかのコンテンツをさらに見せてもらった。武器や敵など結構思い切りのあるデザインをほどこしてあり、最初の何フロアかだけが楽しい一発屋ローグライクでは終わらせない可能性を感じた。

2014年春Steamでリリース予定。

『Crypt of the NecroDancer』公式サイト
http://necrodancer.com/

『TENGAMI(開発:Nyamyam)』

センス・オブ・ワンダーナイト 2012で知り、リリースを待ち続けているポイントクリックタイプのアドベンチャーゲーム。和紙っぽい風合いの幻想的なビジュアルに、飛び出す絵本のようなエフェクト、それを用いた謎解きが持ち味となっている。折り紙っぽい雰囲気は海外の人だけでなく、日本人にも響くものがあるはず。

昨年、センス・オブ・ワンダーナイト 2012でプレゼンテーションした林のステージのほか、新たに海のステージをプレイできた。ただ、俺は林のステージを少しだけプレイするに留めた。なにしろ自分はこれを買うって知ってるから。仕事だったらガッチリプレイして4gamerみたいにここでレポートすると思うけど、そうじゃないんだから製品版でじっくり味わいたいよね、という気持ちです。

ブースにヘッドフォンが見当たらなかったため、サウンド周りがどんな風になっているのかわからなかった(例えば謎が解けたときのSEはあるかだとか、ページめくり時のSEはどんなものかなど)のは心配だけど、杞憂に終わると思う。あと雰囲気を味わう方向でプレイしようとすると結構難易度が高いかな、と感じた。


『TENGAMI』公式サイト
http://nyamyam.com/games

『Coated(開発:Muhammad A.Moniem)』


色をテーマにした2Dパズルアクション。ステージ上のペンキバケツに入るとプレイヤーキャラの色が変わり、その色に応じて同じ色の煙幕に隠れたり、同じ色のワープゾーンに触れるともう1つのワープゾーンにワープしたりできる。ペンキの色は組み合わせることもでき、黄色い状態で赤のペンキバケツに入るとオレンジ色になったりする。

クリア済みのステージに戻って色を変える(ステージセレクトの概念はなく、地続きで繋がる直前のステージへ移動する必要がある)というようなことが平然と行われてしまうレベルデザインとなっており、この部分では少々難ありかな、と感じた。それでもパズルゲーム好きならぜひチェックしてほしいという味わいはたしかに持っている。

『Coated』公式サイト
http://www.coated-game.com

『LA-MULANA2(開発:NIGORO)』

ブースにはアートブックとスコアブックがあり、
スコア集計してるかと思ったら、楽譜のほうのスコアだった
開発中の2Dシューテイングを一旦止めて、急遽発表となったNIGOROの看板タイトル続編。

2010年のエイプリルフール動画に出てきたキャラはこちら
……なのだが、唐突に開発を始めたわけでなく、開発開始は4年前に遡るというのが公式発表。『LA-MULANA』の開発、販売、そしてその後のシューティング開発を進めつつも、ネタを温めてたって感じなのかな。ただ、俺は残念ながらプレイする機会に恵まれなかった。というのもそれほど盛況だったからでどのタイミングでいっても誰かしらがプレイしていた。ブースでカウントされた挑戦者数を見ると、30を超えるプレイヤーが挑み、儚く散っていたようだった。ちなみにボス戦も実装していたらしく、TGS期間中に撃破した猛者もいたそうだ。

肝心のゲーム内容はプレイしていないため、主人公が女性キャラになったことくらいしかわからなかった*3(ジャンプ力が上がってる気がしたけど、『LA-MULANA』プレイしたのが結構前なのでたぶん気のせい)。

*3 かつてのエイプリルフール動画に登場したルエミーザ小杉博士の娘のようだが、果たして……

印象的だったのは、隣接のキッズコーナーから来たと思しき家族連れ。娘さんがゲームをプレイしたんだけど、途中でNIGOROのなかの人が「下を押すと錘を置けますよー」と言って圧死の手助けをしていた……。

汚い、「めしうま」のためとはいえ、さすがNIGORO汚い!

それとその娘がXbox 360パッドの方向パッドでキャラを操作してたことが興味深かった。左スティックではなく、方向パッドでキャラを操作するのはスーパーファミコンまでのゲーム世代なのかと思ってたぜ!(どうでもいい) あとステージ開始時から針に囲まれているので、「針は横から触れる分には大丈夫」ってことをすごく教えたくなった。

リリース時期は発表されてないようなので、どのくらいの期間で開発するのかが気になるところ。濃さの部分は前作で体感済みなのでまったく心配していないのだが、前作みたいなボリュームを作るとなるとかなりの時間がかかりそうなんだよね。まぁ今後の動きで見えてくるではないかと思う。

『LA-MULANA2』公式サイト
http://newproject.nigoro.jp/ja/

公式ブログにある「今後情報は漏らしていくだろうから、それまではLA-MULANAの中に散りばめておいた伏線でも探しておきなさい。」*4に触発されたのか、すでに『LA-MULANA2』について考察動画を上げている海外のファンがいる模様。

アップデートで、前作にわざとらしく伏線めいたものとかそうじゃない偽伏線とかを盛り込んでくれてもいいのよ(『Portal』方式)。

*4 以下の記事参照のこと
LA-MULANA2 - NIGORO公式ブログ
http://nigoro.jp/ja/2013/09/la-mulana2/

『EF-12(開発:クアッドアロー)』

3D MUGEN。TGS出展バージョンでは『アルカナハート』の愛乃はぁとに加え、ユーザーから募集したコンテンツ(キャラクター、ステージ、曲)も収録し、さらにMUGEN感を加速させた。

新しいPVは今までのよりもゲームの魅力が伝わるいい内容になっている。とはいえ、最終的な目標に向けて、まだまだ今後の飛躍に期待しなければならないタイトル。
『EF-12』公式サイト
http://ef-12.com

『PAVILION(開発:Visiontrick Media)』


PS4とPS Vitaでのリリースが決まっているアドベンチャー。左スティックでポインターを操作して、マップ上のオブジェクトに干渉して道を開き(数はそこまで多くない)、プレイヤーキャラクターを先へと進めていく。

とにもかくにも圧倒されるアートワーク。プレイしてもその感想は変わらなかった(ので二度言おう)。アートワークが素敵。ちなみに謎解きはそれほど難しくない。この世界に物語が乗っていれば言うことなしなんだが、少なくとも直接的に物語が語られるようなゲームではなさそうな様子だった。

『PAVILION』公式サイト
http://visiontrickmedia.tumblr.com

『World of Finger -3min little planet(開発:ELiDEA)』

iOS向けゴッドゲーム。プレイヤーができるのは惑星の地殻変動とアイテムの使用で、それらを駆使して惑星を発展させていく。画面左下の3つのゲージの溜まり具合によってエンディングが分岐するらしい(といってもプレイ時間はタイトルどおり3分なはずだが)。

おもしろげだったけど、説明してくれる人がほとんどやってくれたので実際には触らず、その場を後にしてしまった。

『World of Finger -3min little planet』公式サイト
http://el-idea.com/jp/

『C-WARS(開発:Onipunks Studio)』

日本語が書いてありますが、中国のデベロッパです
『ロックマンエグゼ』ライクな見た目のアレ。ブースの設営にいちばん力入ってたんじゃないかな。一応ゾンビが関係しているタイトルだけど、SFっぽいテイストでそこまでゾンビゾンビしてない。WSADで移動して、123で攻撃という操作体系はだいぶ左手に偏ってるのが難。この問題自体は開発も認識してるそうなので、今後の改善に期待したい。
ドット絵への力の入れようが尋常じゃないことはトレーラーで見ていたとき以上によくわかったんだけど、ゲームの勘所は掴めなかった。ウェーブを凌ぐタイプのゲームモードもあるみたい。

プレイできなかったゲームたち

『Mirage』すごく気になってたんだけど、席が埋まっててプレイできませんでした。ここの開発は、INDIE STREAMのときもリアルタイムコース生成シャレオツレーシングゲーム『KRAUTSCAPE』出してたし、現段階ではこちらを推す感じなのかもね。『Framed』はセンス・オブ・ワンダーナイト以前から評判を聞いてたので、ぜひにと思ったものの、こちらもプレイできませんでした。あ、『Mirage』は新清士さんがインタビューしてるっぽかったので、そのうちどこかで記事が上がるのかも。
『KRAUTSCAPE』
『Voxatron』と『TorqueL』のブースも『LA-MULANA2』に次いで盛況だったように思う(2台展示ということもあるだろうけど)。

INDIE STREAMという夜会

なぜかお呼ばれすることができたのでこっそり参加してきたINDIE STREAM。どういうものなのかは各種メディアで報じられてると思うので、ちょっと昔話を書き出してみる。

昔々、あるところに音楽がとても盛んな国があったそうな。なかでも王宮直属の楽団、詩人たちはたいそうな腕前で、王族はもちろん、町の人々もその音色を毎日のように楽しんでいたのだという。

あるとき、国のそばを通りかかった吟遊詩人が、自慢の腕を披露しようと王族への謁見を申し出た。しかしながら、王は「どこの馬の骨とも知らぬ詩人に金を払えるか」と彼を門前払いしてしまう。

これは何もこの吟遊詩人に始まったことではなかった。

幾人もの詩人たち、そして在野の楽団たちがその音を披露しようと国王の元へと赴いたのだが、なかなかどうして彼らの願いは叶わなかったのである。彼らのなかには町で大きな人気を集めたものもおり、機運自体は高まってはいたものの、詩人らの願いは結局ほとんど聞き入れられずに虚空へと飲み込まれた。

そこで名乗りを挙げたのが、とあるさすらいの詩人である。

彼はひょんなことから王への謁見を果たしたことがあり、王にその腕もある程度認められていた。さすらいの詩人は、謁見を果たすための方法をほかの詩人に伝えた。それはほかの国々で自身の名声を上げることだったり、詩をこの国の言葉にするときの工夫の仕方だったりした。ほかの詩人や楽団たちも情報を得た代わりに「あそこの酒場では楽団を受け入れてくれやすい」だの「教会と王宮にはつながりがあるので、教会に接触するのがよさそうだ」といった情報を提供した。

こうしてさすらいの詩人が結成したアライアンスは徐々にその影響力を増していき、最終的には王宮で演奏を行う楽団や詩人が増えていったそうな。今もその国では、ほかの国を凌ぐ豊かな音色が響いているのだそうだ。
ってこんな昔話。この例え話は現実とはそぐわないちぐはぐな部分があるんだけど、結局のところ、俺はINDIE STREAMを「開発者同士のアライアンス」だと捉えたってことが言いたいだけで深い意味はない。

彼らは自分の作品に自信があるんだけども、その上手なアピールの仕方を知らない(あるいは知っていてもそれを実現することが難しかったり、思わぬ手落ちがあったりする)。そこで彼らは戦略として互いの情報を共有して、問題解決に当たろうとしているのである。例えばそれはフォーラムでの情報共有やプレスキットのより簡易な取り回しを可能にすることだったりする。

メディアへのアプローチという点では今もって「やや弱い」と感じざるを得ないが、今後フォーラムからうまく情報を掬えるような仕組みができるのなら大きな可能性があるのかもなー、というのが個人的な感想。とはいえ、大手メディアに限らず、個人メディアでも協力大歓迎ということなので俺としてはうれしい。ただ、今の状態は構想段階と言っても差し支えないレベルで、実際どういったものになるのかがよくわからないのが残念なところではある。

今回の動きについて「青田買いが加速するだけじゃないの?」みたいな意見も散見されるのだが、その点について個人的には次世代ゲーム機の流れも含めて心配していない。というか「青田買い結構です。それでおもしろいゲームが生まれるんなら万々歳です。クリエイティビティーが失われるとか幻想です。吹いて飛ぶんなら最初からそういうものなんじゃないの」くらいに思っている。

というわけで応援していきたい(けど実際どうなるのかがまだわからないのよね)。

なお、INDIE STREAM中にはいくつか発表があったので列挙しておく。
  • 『LA-MULANA』がPS Vitaに移植。移植はピグミースタジオ
  • PC版『TENGAMI』はPLAYISMで先行配信
  • 完成版『TorqueL』をPS4で出そうか画策中*4
  • 『メゾン・ド・魔王』Steamでの配信が決定(非Greenlight)
  • 日本では未配信だったPSNでの『Machinarium』リリースが決定

興味深いのは『メゾン・ド・魔王』の件かな。これを見るとPLAYISM経由ならSteamリリースが限りなく近くなったように見える(例外も当然あるんだろうけど)。俺自身はどこでリリースされてもいいんだけど、他人に勧めやすくはなるよね。

*4 PS4開発機はアクティブゲーミングメディア経由で使うことになる模様

そうそう、昔話で思い出したんだけど、俺の好きなエピソードを1つ。
ある編集者が野球選手にインタビューを行ったときのこと。インタビューはつつがなく終わりました。しかし、話下手だと自身で感じている野球選手は、心配そうな顔で編集者に問いかけます。

「あまりうまく話せなかったんですけど、(記事)大丈夫ですかね?」

編集者は即答します。

「ご安心ください。あなたが野球のプロであるように、私は編集のプロですから」

でなんでこんなこと言い出したかというと、INDIE STREAMで稲船さんに会ったから。稲船さんが舵取りしてKickstarterでファンディング中の『Mighty No.9』について正直なところ、俺は期待半分不安半分くらいだったわけです。「本当にアレみたいなの作ってるれるんだよね、劣化版みたいなのじゃないよね」と。

『Mighty No.9』公式サイト
http://www.comcept.co.jp/mightyno9/

そういう気持ちを「ここしかないだろ」と思って稲船さんにぶつけてみたら、「僕はプロだからゲームをおもしろくする方法はちゃんと知ってる。絶対に裏切らないから安心して(おぼろげ)」みたいな返答をしてくれて、すごく痺れてしまったのです。

そういえば「日本に10機ないんじゃないか」という巨大タッチパネル「Samsung SUR40」対応のシューティングゲームも展示されてました。
ディスプレイ上にフィギュアを置いて、フィギュアを自機に見立てて(ディスプレイ上に弾もちゃんと出る)実際に動かして操作するという内容。というかこのディスプレイの未来感たっぷりでいい。フィギュアの向き(厳密にはフィギュアの裏に貼り付けたタグの向き)を検出して、その方向に弾が出るのもとてもよかった。

このシューティングに関して、詳しくはニコニコ動画に上がっている動画を参照のこと。

TGS After Party

TGSが終わって翌日の夜、吉祥寺ピコピコカフェにてパーティーが開かれたのでこちらも参加してきた。ゲーム開発者と語らうのが目的だったので、取り立ててゲームをプレイはしてないんだけど、PLAYSTATION側の人がインディーゲームにすごく興味を持っていることがわかったのがいちばんの収穫。

日本語版のリリースが決まった『They Bleed Pixels』のMiguel Sternberg、『Analogue: A Hate Story』のChristine Love、『Crypt of the NecroDancer』のRyan Clarkと、カナダの開発者が多かったのかな。俺も最近カナダ産のゲーム*5をいくつかプレイしていたので、妙な親近感がわいた。

*5 例えば『The Girl and the Robot』、『Sang-Froid -Tales of Werewolves』

同じくパーティーに出席した死に舞氏が『RefRain』を海外の開発者に布教してて見せてて、擬似OSっぽい部分に彼らがとても大きく反応してたのも印象深かった。

Christineについてはしばらくしたらおもしろそうな話がありそうなので、またそのとき。

以上、今年のTGS関係のいろいろでした。

PS4ブースには『Hohokum』があったみたいで、それに気づけなかったのは大きな誤算でした。それと余談だけど、今年TGSでいちばん驚いたのは実況主の人気。あの人気は本当に凄まじい。

インディーゲームの小棚:Shelf#11『Lens』

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INDIE STREAMにて「インディーズゲームの小部屋」の中の人に会うことに成功した筆者がお送りする「インディーゲームの小棚」。久方ぶりの更新となる第11回は『Lens』を紹介する。ついに本家の人にこのコーナーを認知させることができたのは(きっともう忘れてると思うけど)、INDIE STREAMでのうれしい誤算であった。

開発はカリフォルニア大学サンタクルーズ校の学生チームで、ゲーム起動時の表示やトレーラーの投稿時にはOut of Focus Gamesの名を用いている。公式サイトによると、20名強が開発に携わっているようだ。ゲームエンジンはUnityを採用。Unity Awards 2013では、Best Student Project部門において入選(Runner-ups)を果たしている。開発者たちは『Myst』が大好きということで、作中からその息吹をどこかで感じるプレイヤーもいるかもしれない。

Unity Awards 2013
https://unity3d.com/awards/2013/winners

ゲーム内容はと言うと、いわゆるFirst Person Puzzlerと呼ばれる一人称視点のアクションパズルゲームである。操作はFPSの基本的なそれに準じている。ゲームの舞台は不思議な古代技術の眠る打ち捨てられた島で、古代技術のなかにはタイトルにもなっている「Lens」も含まれる。このLensの力を使いながら、この島の謎を解いていくというのが本作の内容だ。
主人公は、船に乗って島に戻ってきたひとりの学者
Lensと似た効果を持つ鏡のような形状のゲートもあり、
これを通過するともうひとつの世界に一時的に入り込める
Eでインタラクション。序盤の謎解きは比較的普通の内容
本作の根幹を成しているLensには、2つの異なった世界を結びつけるゲートのような力がある。

Lens入手後にQを押下するとLensを起動でき、起動したLensはプレイヤーの視界をほぼ覆うように前面に展開する。するとこれによってプレイヤーはLens越しにもうひとつの世界を見ることができるのだ。舞台となっているのは荒廃した島なのだが、Lensを通して見れば繁栄の続くもうひとつ(過去?)の島の風景が見られるという具合だ。
荒れ切った島の風景も……
Lens越しには華やかな情景が広がる
さらにLensはもうひとつの世界を見る力だけでなく、互いの世界の構造物をもうひとつの世界に送り込む力も持っている。道を塞ぐ瓦礫をもうひとつの世界に送り込んで排除すれば、こちらの世界の道を切り開くことができるし、足場のない場所に足場を作り出すことも可能だ。こういったLensの能力を駆使して、島に活気を取り戻していこう。
先に進もうにも足場がないが……
Lensを使うと、もうひとつの世界に足場があるのが見える
足場に視点を合わせカーソルが変化したらマウス左ボタン
あちらの世界から、こちらの世界に足場が移動してきた
『Lens』で描かれている世界は、『ゼルダの伝説』シリーズにたびたび登場する「闇の世界」を想起させる。ほとんど同じ場所なのに、相反する2つの世界が同時に存在し得るという形だ。『BioShock Infinite』の「ティア」やLilly Looking Through』の不思議なゴーグル*1にも近いものがあるかもしれない。とりわけ『Lens』がユニークなのは、潜在的に存在するもうひとつの世界をリアルタイムにLens越しで確認できること(しかもプレイヤーがそのまま移動しても構わない)、そしてそこに干渉できる(物を移動させられる)ということだ。

*1 本ブログ過去記事参照のこと
Kickstarter My Heart 『Lilly Looking Through』
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/06/kickstarter-my-heart-lilly-looking.html

プレイ時間はクリアまで1時間程度と短く(迷っても2時間くらいだと思う)、パズルもそこまで難しくはないものの、Lensを通じて体験する世界は単純な仕組みながらもやはり魅力的だ。First Person Puzzler好きはぜひ(そうでないひとももちろんなのは言うまでもなかろう)という感触のゲームだった。
ゲーム中のテキストは少なめ
進行に応じてページが増えるジャーナルで、世界観の理解を深めることができる

残念な点としてラストは一瞬スタックしたかのような挙動になってしまうのが勿体なかった。プレイ動画をアップしている人が困惑しているのも見かけたので、筆者だけではないと思う。スタックではないので安心してほしい。詰まる人が多いと思うので、以下にヒントを書いておく。

「今までしなかった操作で、かつこれまでの操作の延長線上にあるもの」がヒントだ。

『Lens』は公式サイトで無料で公開されている。Windwosのほか、Macにも対応している。

『Lens』公式サイト
http://www.lensthegame.com/

Novectacleと『ファタモルガーナの館』はいかにして生まれたのか――『ファタモルガーナの館』インタビュー 前編

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『ファタモルガーナの館』について、開発のNovectacleのメンバーに話を伺った。もちろん、以前、募集した質問への回答も、すべてではないものの含まれている。

『ファタモルガーナの館』公式サイト
http://novect.net

関連記事:
レビュー『ファタモルガーナの館』
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/05/blog-post.html
『ファタモルガーナの館』とのコラボを含んだ企画のお知らせ
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/01/blog-post_28.html

記事はネタバレを含んでおり、基本的にクリア済みのプレイヤー向けの内容となっている。未プレイの人は読むのを避けてほしい。記事は前後編の2部で構成されている。後編は以下のリンクから読める。

Novectacleと『ファタモルガーナの館』はいかにして生まれたのか――『ファタモルガーナの館』インタビュー 後編
http://nydgamer.blogspot.com/2013/10/fatamorganainterview2.html

サークル結成とノベルゲームを選んだ理由


こんにちは、Novectacle(ノベクタクル)の縹です。インタビューではサークルのメンバーも交えて回答していきたいと思います。回答者は縹(シナリオライター)を中心にして、靄太郎(イラストレーター)とがお(歌手兼作曲)の3人です。

縹けいか
――まずはサークル結成の経緯を教えてください。
 元々コアメンバーの4人*1はPBW*2で知り合ったんですよね。ロゴを手伝ってくれた㈹魔王くんとか、フェナキストスコープ描いてくれた真弓さんとかもPBW繋がりなんですけど。
がお PBWってなんだそれ。「なりきりチャット」で通ってきた私のこの田舎臭さ。
 Play By Web!! まあ、このあたりから我々の年代を察してください(笑) それぞれみんなドンパチ戦うような世界観で遊んでいたのですが、割とバラバラのところにいたので、声をかけるきっかけになったのは縹がGMをやったサイトです。そこに私含め4人がいたので「シナリオ、絵描き、音楽集まったし、何かできるんじゃない!?」って。当初はそのサイトの世界観でゲームにしようとしていたのですが、SFファンタジーのバトル物だったので、演出が未知数過ぎたため見送り、ヒューマンドラマ系に方向性を変えましたね。

――先ほどもあったように外注の方もいらっしゃいますよね。
 外注で関わって頂いた方は大勢いて、特に音楽は堤さん、守屋さん、Aikawaさんと、実力派の方々が揃っているんですが、こちらの方々についてはPBWの繋がりではないです。堤さんは私が堤さんの音楽が好きだったので、オファーをかけました。守屋さんは『霧上のエラスムス』の頃にご協力頂いて、素晴らしい仕事をしてくださるので「ファタモル」でもぜひという感じに。Aikawaさんは知人の知人という感じで、知り合いを通してお願いさせて頂きました。音楽は大変拘りたかったので、だいぶ偉そうな言い方であれなんですけど、曲から世界観を感じる人じゃないとお任せしたくなかったです。その点、サークルメンバーのMellok'nやがおさん含め、皆さん素晴らしい作曲家さんです。

守屋氏は、『ファタモルガーナの館』の人気曲7曲のオーケストラアレンジも公開している(下記動画参照)。

――ゲームという媒体を選んだのはなぜでしょうか。
 私が元々ゲーマーですし、働いているのもずっとゲーム会社なので、オリジナルのゲームを作りたかったんですよ。でもなかなかゲーム会社にいてもオリジナルの作品は開発できないですからね。業界的には縹なんて若造もいいところで……。大きなタイトルに関われるようになったのや、クレジットに名前を載せて貰えるようになったのもここ2年くらいの話です。そのようなわけで、自分たちの作品だと言えるものが欲しかったんです。「ファタモル」を制作し始めた4年前くらいは特に燻っていたので……。このまま自分が何も残せず消えていくのかと思うと、それも恐ろしかった。あと、全員の能力を活かしたかったんですよね。靄太郎さんも前から絵がうまかったですけど、仕事で絵を描いたことはなかったですし、がおさんやMellok'nもそんな感じで、縹としては「才能あるのにもったいない!」みたいに思ってて。みんなで作ればいいものができるんじゃないかな、と。今、我々は「ノベルゲームのサークル」ってなってますけど、「ノベゲが作りたい!」ってサークルじゃなくて「ゲームが作りたい!」ってサークルなんですよね。ただ、初期メンバー的にスクリプトをやれるのが縹くらいで、そして縹も詳しくないので、手の届きそうな範囲がノベルゲームだった、というのはあります。

――つまり、プログラマーがいれば*3ノベル系ではない作品もあり得る、と。
 大いにあり得ますね! これについては、今後の活動を見守っていてください。

4年に渡る開発を支えたもの

――『ファタモルガーナの館』の開発は4年に及んだということでしたが、モチベーションの維持は大変だったのではないでしょうか。
初期の体験版のチラシ
(公式ブログより)
 モチベーション維持は確かに……。
がお 個人的にははなださんが最初にプロットをばばーんと出してくれたこととか、途中途中で絵が入ってなくてもゲーム画面を見せてくれたことはよかったなあ。ヤコポに会うためにがんばったがお*4。あとは無駄に褒めまくることですよね! お互いを! 熱烈に! 褒めあう!!
 あんまりがおさんに褒められなかった気が(笑)
がお あ……。
 (笑) でも確かに、そういう部分は気を遣いましたよね。もちろん手放しに褒め続けるわけじゃないですけど、無報酬で作業を続けるわけだし、「いいね」って言葉がないと調整をお願いする際もキツいじゃないですか。
がお はなださん、デキるディレクター!
 仕事が忙しくなって放置状態のときも多々あったので、デキてないディレクターです……。そう、仕事といえばそれぞれみんな本職があるので、4年間ずっと制作を続けていたかと言えばそうでもないんですよね。でも制作に戻ってこられたのは、「完成しないと」って意識が強かったからだと思います。
がお 落としたときにもイベント会場に来てくれた方々がいて、そのときに頂いたお言葉がいい意味でプレッシャーになったね。
靄太郎 体験版を出せたのも大きいと思う。体験版で製品版を期待してくれる人が多かったから、「出さないといけない」って気持ちになりましたね。体験版がもし出ていなかったら、制作も続けられなかったと思う。
 やはりプレイヤーさんのお声って、大切ですよね。

――4年の間には『霧上のエラスムス』というスターシステムを採用した作品のリリースもありますが、これもモチベーションの維持とは関係しているのでしょうか。
 「エラスムス」はモチベーション維持というより、話題作りのような……(笑) 忘れ去られないために!
がお (笑) でもいい具合に相乗効果を産んでいるみたいで、考えてたよりずっといい結果になったよね。
 そうだね、生放送とか動画とかアップしてくれる人もたくさんいるし。派生物から本編入ってくれる人も結構いるね。本編出したあとですけど、今年のエイプリルフールに出した『セブンスコート』*5も、そこから我々の存在を知ってくれた人がたくさんいて嬉しいです。

――完成したときの気持ちは覚えていらっしゃいますか。
がお うぉおおおおおおおおおおおおおおおお! これに尽きる。
 (笑) 縹は終わった実感があまりなかったです。というのも実際に人の手に渡って、ようやく自分の手から離れた感じがします。制作は終わったけど、今度は手に取ってもらうために動いていかないといけないので、今も終わった感じはしていません。
がお なるほどー、靄さん*6は?
靄太郎 「終わった!!」っていうのは確かにあったんだけど、実際に冬コミ参加して、そこでの成果は予想よりだいぶ下だったから、縹さんほどではないけど危機意識みたいなのは続いていたと思います。
 リリースした段階で、今後のスケジュールとかも考えてたよね。靄太郎さんが言ったように初動があまりよくなかったので、このままウェブも更新しなくなると完全に終わるな、と思いました。なので、ウェブ企画であったり、人気投票とか四月ゲームとか、リリース後もファタモル関連の活動は止めませんでした。サークルに動きがあると、プレイヤーさんが話題に出してくれるかな……と。たぶんこのあたりの努力は報われているんじゃないかな、と思います。

(このあたりで、がおさんがウェブ企画*7にあまり関わっていないとやや拗ねる。
 そして「じゃあライブやろうぜ!」という話に脱線していく)

 話がライブに脱線していた!
靄太郎 がおさんの生声ライブ聴きたい。
がお 個人的にはやっぱ楽団の用意が難しいから、ちょろっとギターとかピアノとかでこそっと歌うくらいがちょうどいいわー。
 やろうやろう! というか質問に戻りましょう。

タイトル、エピソード、キャラクターに込められた意味

――『ファタモルガーナの館』のストーリーの生まれた経緯はどのようなものでしょうか。
 最初に描こうと思ったのが、女中の悲恋でした。ずっと愛する人を待ち続けた亡霊のメイドの長い軌跡というか、再び巡り合うためのラブストーリー的な。とりあえず自分が前に書いていた小説を引っ張り出してきたんですよ。「これを元にゲーム作ろう」って。この小説の段階で、三章まではほぼ完成していました。前述のように、キャラクター性に合わせて流れが変わったのはありますが。
靄太郎 幻の四章もありましたね。
 そう、幻の四章!(笑) この没エピソードの詳細は設定本で詳しく書くとして、当初もうひとつ物語がありました。ナチスドイツ時代の話で、リュディガーという負傷兵が主人公。白い髪の娘が館の女主人で、彼を介抱し……みたいな導入です。ただ、これ以上キャラを増やすと根幹の物語が収拾つかなくなるのと、ナチス時代は詳しい人は本当に詳しいので、ツッコミが恐ろしくてできなかった(笑) 以降、何か没になることをサークル内で「リュディガー現象」と呼んでました。
靄太郎 もう、それ言ってないですけどね(笑)
 一応、話のオチも含めたプロットはできているので、あとは設定本で!

――ゲームタイトルも印象的です。ブログでチラリと触れられていたこともありますが、タイトルに込められた意味を教えてください。
 タイトルの英題は「The house in Fatamorgana」で、「in」を使っているため「蜃気楼」として扱ってます。だから直訳すると「蜃気楼の中の館」で、意訳としては「幻の館」という感じです。あと『アーサー王物語』の妖精モリガンともかけていて、モリガンが最初の文献では歌のきれいなよい魔女なんだけど、後の文献では悪い魔女になってるっていう。このあたりの逸話がモルガーナと絡んでます。ですので、二重タイトルなんですね。

――モルガーナの名が出てきましたが、そのほかのキャラクターの名前にも由来はありますか。
 キャラクターに関してですが、メルとネリーはMellok'nの案です。アーティストから引っ張ってきたようです。
がお あ、そうなの!?
 そうそう。ポーリーンは可愛い名前にしたくて、当初カトリーンにしてたんですけど、何かと被ったのでやめました。ヤコポは普通に友だちの名前(笑)
がお 友だち(笑)
 縹がイタリア留学していたときに知り合ったんですけど、エラスムスの学生が集っているアパートの家主でした。最近、子供が産まれた!
靄太郎 その人は監禁癖があるんですか……?
 ないよ! 何言ってんだ!(笑) ……話を戻して、マリーアは元々の小説がマリアだったので。このあたりは定番的に、聖女の名前した女がとんでもない奴だった、ってパターンですね。エメ、ディディエ、ジョルジュは語感。会田幸正さんはその時代にいる名前を調べつつ、やはりこれも語感。ジゼルも語感。……語感ばっかりだな! でも、ミシェルはちゃんと意味がありますね。ミシェルっていろんな作品にいるので、最初は変わった名前にしたかったんですけど……。男女どちらでもある名前で、天使性とかも織り交ぜていくとなると、ミシェル以外あり得なかった。
がお うん、よくある名前っていうのもなんかいいと思う。すごくたくさんの人が「いい名前」と思って、純粋につけたものだから。
がおさんの上記の言葉にグッときた縹さんは、
『セブンスコート』のジゼルの台詞として、この言葉を使っている
がお ……そう考えるとリディー*8辛いね。なんかこう、純粋な愛情を持っている人なんだなあというか。素直な人だよね。価値観に逆らったりするというのを考えたりしなくて、満たされてるって純粋に思って、そういう人は私すごいと思う。
 リディーが女の子欲しがってるのも、理由的なものは存在しないんですよね。「女の子が欲しい」というのが理由というか。以前いとこが出産する際、「女の子がいい」と言っていて、なぜ女の子がいいのか質問したら、「だって女の子がいいでしょ」という返答だったんです。だから、そういうことなんだと思う。
がお でもリディーのそういうの、なんかわかるな、おてんばでも何でもいいんだけど、ただ、「女の子」というアイデンティティを持つ子であれば、満足してたんじゃないかなって。
 ですね。ミシェルのインターセクシャルも、設定的に一応細かく決めているんですが、ちょっと生々しい話にもなるのでまた別の機会に。

――各エピソードにテーマはありますか。
 こんな感じだと思います。

一章:子どもと大人の移り変わり。自己愛。
二章:人間性の境界。狂気。
三章:隠された想い、すれ違い。信じることについて。
四章:寓話のような美しさ。

五章から最終章までは大きな流れになっていて、悲劇と向き合っていく強さとか、主観による真実の違い、性自認の不一致とか……ですかね。でも性自認に関しては、それが主題というよりも、自己認識だと思う。だから性に関する問題というよりも、己に対しての自問自答みたいな、きっと誰しもが抱える部分が主軸です。性に関するアイデンティティはよく分からない人も多いと思いますが、結局それは、自己認識の話に集約されると思っています。そう考えたら、わからない問題でもないんですよね。ネガティブ属性の人は共感しやすいのではないでしょうか……(笑)

――そういえばプレイヤーから「1日あたりにどのくらいの量のシナリオを書くのか」という質問もありました。
 ちょっと難しい質問だな! というのも縹はあまりコンスタントに書けないので、書くときは一気に書くんですけど、書けないときはさっぱりっていう。たとえば『霧上のエラスムス』のサイドストーリーは、あれ170kbくらいなんですけど、2日です。まあ2日って言っても寝てないから、4日分くらい使ってるのかもしれない。『セブンスコート』は230kbくらいで、あれは3日か4日とかそのくらいかな。これも寝てない。
靄太郎 狂気。
 でも書けない時は0kbなんで……(笑) あ、仕事ではもう少しまともなやり方していますよ!!

開発中の変化――魔女の設定、チームそのもの

――少し具体的な話に移ろうと思います。開発しているうちに大きく変わったものはありますか。
 これは結構あるな! ストーリー自体は最初のプロットがあって、そこから肉づけしていったので、大幅に別物になったということはないんですけど、私の話の作り方がプロット準拠ではなくキャラ準拠なんですよね。書いていくうちにキャラクターの造形もより詳細になっていくので、「このキャラはこういう行動しないんじゃないか?」っていうのも出てくるんですよ。その場合、キャラクターに合わせて話の流れを変えますね。
靄太郎 各キャラかなり掘り下げていった感じになりましたね。ミシェル、ジゼル、ヤコポ、モルガーナはかなり当初と印象が違ったなあ。
 ヤコポも!? あれは一貫して本心の言えない男だったような気が(笑)
靄太郎 キャラ性はそうなんですけど、肉づけされてより複雑な感じになったと言うか。リアルになりましたね。それぞれ行動や葛藤が、地に足のついた感じに見えた。
がお 割とこう、ほかのゲーム的なものを見てると、主人公が「うおー! 俺はやるぜー!」って言って急に強くなったりとかしちゃうもんね。
靄太郎 その演出自体は王道で好きだけどね! ミシェルのは、地に足のついてない強さではないからいい。
がお あとモルガーナ! モルガーナの話が出てるけど、モルガーナが思ってたよりずっとシンプルなデザインだったのはちょっとびっくりしました。
 最初のデザイン、めちゃくちゃファンタジーだったけどね! シンプルなのは時代感もありますね。
初期のファンタジー色あふれるモルガーナ
没ラフ集より
靄太郎 モルガーナのキャラ設定の変遷は「黒猫」から始まって「もっとアバウトな概念的な(?)もの」、「実体」と変遷していって、このあたりよく覚えてないんだけど、そこから「女の子」、没になった「ファンタジー」と進んで「王道的な地味」に落ち着いた感じだった気がする……。
がお そういえば黒猫だった!
靄太郎 体験版以前は黒猫だったと思う。
 忘れていた……。
靄太郎 おい(笑)
 このあたりはちゃんと思い出して設定本にしましょう(笑) 最初は結構、「ザ・魔女!」って感じだったなあ。
がお キャラクターのビジュアルもだんだんリアルな方向で肉がついてきた感じなのかな。
靄太郎 リアルっていうより、受けがよいほうに調整した気がします。
 最初、そのあたりで衝突しましたね。
がお 音楽的にもそうだった気がする。めろ*9が突っ走っていたから。
靄太郎 俺もめろも「自分のやりたいものができる」って意識だったんだと思うな。
 でもそれだと、ひとつの作品に仕上がらないんですよね。
靄太郎 今はまさにそうだなと思える……。
がお 最初にこうして「チーム」ができあがったのであった……。

(一同同意)

 そうそう、制作期間4年のうち、最初のほうは揉めたり、ああだこうだ的な期間でしたね。制作としては進んでなかったけど、あれがなかったらチーム自体ができてなかった。
靄太郎 よくまとめてくれたと思います……。
 今だから言えますけど、ストレスがヤバかったですよ(笑) でも自分としてもいい勉強でした。みんながみんな、初心者だったんですよね。技術的なところだけじゃなくて、制作するってこと自体が。最初のサークル結成の話にもかかりますけど、そもそもその道のプロが集まったわけではなかったから、手探りの連続でした。それでも今はこのメンバーでやれて本当によかったと思っています。
がお 音楽班のめろと私は、揉めるというより、むしろ基本的に事件すぎた。
 事件を起こす男、Mellok'n。
がお まじめな話をするとしたら、めろが作りたいものに私が技術的に追いつかなくて、結構苦労して、お腹鳴った音が入っちゃったりしたことですかね! それと主題歌作るときに私が歌えなさすぎて、「これ、コードがおかしいんだよ!」と逆切れしたことがあって。それに対してめろが「俺、耳おかしいんですよ」と結構マジで凹んで、でもコードを一緒に探しましょう、っていろいろやってくれたんだよね。結局、作り直しはできなかったけど、歌えない私に最後までつきあってくれたのはうれしかったなあ。
靄太郎 ……(がおさんが歌えないというのは嘘だな、と思っている)。
がお 話が逸れたので、キャラクターのほうに……。
 そうそう、キャラといえば、縹としてはミシェルがいちばん変化があったと思う。 当初はちゃんとイケメンだったので(笑) 体験版以前レベルの話ですけど、神秘的な方向性だったと思う。
靄太郎 デザイン上では、何かと無心というか情動のないキャラという指定だったはず。顔つきとか表情とか。
がお 舞台裏のせいで崩壊したんじゃ……。
 いや、どちらかと言えばエラスムスのサイドストーリー(笑)
靄太郎 たしかに(笑)
 あと、結局ミシェルが主人公なんですけど、「イケメン書いてもつまらないなー」と思って。なんか駄目なところがあるほうが、親しみを持ちやすいじゃないですか。だから話を膨らましていくうちに「ミシェルは人間臭いキャラにしよう」と思いました。最後のモルガーナに対する接し方とか、救い方とかも、プロット時点では結構突き放した感じだったんですけど、ミシェルのキャラクター性が固まるとそのあたりも変わっていきましたね。
がお ファタモルは人間の内面を描くような作品だったから、キャラクター準拠の作り方でよかったと思う。あと演出も好きですよ。個人的にはあのイチマス空いた選択肢の画面がヤバかったです*10。ミシェルのときみたいにどっかやったらなんか起きるんじゃないかと結構試行錯誤したりさ。キャラクター的な行動、とシナリオ的な行動がすごい形で融合したような気がする。
 よかった、いらん演出になってなくて……。あれはミシェルとプレイヤーをシンクロさせたかったんですよね。「あそこでためらう時間=ミシェルのためらい」みたいな。テストプレイヤーさんはあの場面で何もためらわずに刺し貫いてしまったので、そういう人もいるとは思いますが。

――そんな人が!!
 はい(笑) まとめてみると、私は弱さの見える主人公が好きなので、ミシェルはぼちぼち成功したと思ってます。

後編に続きます。

関連記事:Novectacleと『ファタモルガーナの館』はいかにして生まれたのか――『ファタモルガーナの館』インタビュー 後編
http://nydgamer.blogspot.com/2013/10/fatamorganainterview2.html

以下、注釈。赤字の注釈番号で該当の場所に戻ります。

*1 縹、靄太郎、がお、Mellok'nの4名
*2 Play By Web。インターネットを介して行うTRPGサービスのようなもの
*3 余談であるが、縹さんは、過去にNovectacle代表を募集するという破天荒なひらめきをしている。
*4 エイプリルフールに合わせてリリースされた、ウェブと連動したフリーゲーム。2013年4月5日リリース。のちに台湾のプレイヤーによる中国語版がリリースしたほか、ニコニコ動画にはフルボイス動画がアップされている

*5 がおさんはヤコポが好きです
*6 サークルメンバーの1人、靄太郎さんのこと
*7 キャラクターの人気投票や前述のファタモルオーケストラなど。最近だと、C85向けのゲストページの募集も行っている
*8 ミシェルの母の名前
*9 サークルメンバーの1人、Mellok'nさんのこと
*10 「刺し貫く」の選択肢のことやその他のネタは公式ブログの以下の記事が詳しい(当然、プレイ済みの方推奨)

ファタモルガーナの館に関する小ネタなど - Nove Blog
http://novectacle.lys.hiho.jp/?eid=64

Novectacleと『ファタモルガーナの館』はいかにして生まれたのか――『ファタモルガーナの館』インタビュー 後編

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『ファタモルガーナの館』の開発Novectacleへのインタビュー後編。こちらはこだわった部分、キャラクターたちについて、そして今後の活動について主に回答している。

『ファタモルガーナの館』公式サイト
http://novect.net

関連記事:
レビュー『ファタモルガーナの館』
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/05/blog-post.html
『ファタモルガーナの館』とのコラボを含んだ企画のお知らせ
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/01/blog-post_28.html

記事は前後編の2部構成で(本記事は後編)、前編、後編問わずにネタバレを含んでおり、基本的にクリア済みのプレイヤー向けの内容となっている。このため、未プレイの人は読むのを避けてほしい。前編は以下のリンクから読める。

Novectacleと『ファタモルガーナの館』はいかにして生まれたのか――『ファタモルガーナの館』インタビュー 前編
http://nydgamer.blogspot.com/2013/10/fatamorganainterview1.html

製作時にこだわった部分

――さきほどの話もそうですが、『ファタモルガーナの館』に携わるうえでこだわった部分、あるいは見てほしかったり、聴いてほしかったりする部分やシーンがあれば教えてください。
「自分を取り戻す」のシーン
靄太郎 縹さんから聞きたい。
 すごい難しい(笑) でも個人的には、やはり五章以降ですかね。「自分を取り戻す」シーンはすごく気に入っています。あそこは「長い」とか賛否両論あるのですが、あれはミシェルが自分を取り戻す意味もあるけど、プレイヤーと主人公の剥離でもあるんですよね。ああやって段階を重ねて、連続して自分を取り戻すことで、「『あなた』=プレイヤー」ではなくなっていく。それで主人公が独立した人格としてやっと動き出すみたいな。そして五章の段階では、プレイヤーとミシェルは剥離してるというか、ミシェルはキャラクターだと思うんですけど、七章で動き回ったり、彼の根幹が語られることで、主人公とプレイヤーがまた一緒になっていくような全体の流れを意識しました。
がお それが文字どおり「自分を取り戻す」だと。
 ですね、あのシーンの段階ではすべてを取り戻しきってない。七章で完全になって、ついに最終章って感じです。
靄太郎 そしてあれだけ一緒に頑張って突き落としたあげく白髪を刺させる。鬼畜。
 すみませんでした(笑)

――「鬼畜」だなんて、靄太郎さんは白髪の娘に並々ならぬ思い入れが?
 靄太郎さんは彼女がすっごく好きなんですよ。髪の毛もめっちゃ描き込んだりして……(笑) それで続きですが、ある意味五章って、四章までのプレイヤーの意識がリセットされるところだと思うんですよ。だから五章から七章までのあいだで、しっかりと主人公を立たせていく必要があったんですよね。ほか、細かい部分的なシーンで言ったら、ミシェルがモルガーナを救済するシーンですね。「今だけはお前の天使になろう」っていうところ。ミシェルはずっと、自分が普通の人間である、という主張を持っていたので、それをモルガーナのために覆す唯一の場所です。

――あれだけ頑なに生涯ずっと否定し続けたことなのに、それを1度だけ覆すというのに私も激しく心を揺さぶられました。
がお そしてウキマサ*1の天使になってしまうミシェル。
 その一言で台無しだよ!(笑)
がお (笑)
 彼が天使天使言うの、天然みたいな捉え方されてますけど、別に天然じゃないですよ(笑) 時代的に、神や天使という概念が身近だったと思うし、ユキマサは人間には自分の感情を受け入れられないと思っているから、そういった意味でも、自身のありようを吐露する相手を人間でないと定義づけたかったんだけど……。
がお いい具合にくすっと笑えるポイントでもあるんだけど、すごく切ない理由があって私は好きだな。行間を読むポイントだし。
 ユキマサは行間キャラですね。あと自分の中で非常に印象的なシーンは、最終章のミシェルとモルガーナの対話です。夢の中で会話するところ。あのあたりは、ライターの主張がほかよりも色濃い部分ですね。

――四章を丸々仕掛けとして使ってしまう構成も強く印象に残っています。あれってかなり度胸がいると思うのですが……。
 度胸いりましたね! 「四章で辞められたらどうしよう!?」って。
靄太郎 それに関してはずっと気にしてたね。
 すごく気にしていたので、演出で明らかに変な感じにしたりと、気を使いました。バックログで文章が違うのもその一環で。ストーリーの長さも一応気を使ってます。あまり長いと飽きてしまうし、読み損みたいになってしまうので、一章より短いです。とはいえあっさりしすぎていると、引っ掛けにもならないし。
がお 結構勇気を持って「えいや!」とやった章が四章なんだね。お話としては綺麗だけど、でもちゃんと起承転結があって、ちゃんとまとまってるよね。
 うん、あと、意味のない物語にはしたくなかったので。四章にはモルガーナ自身の願望であったり、ジゼルの願望であったりと、裏の意味も含めたりしていきました。それが最終章終わったあとのミシェルの台詞で、「創作には作り手の感情が潜んでいる」に繋がるんですよね。
がお だね。
 前述したバックログ演出は、ほかでやっていないことをしたかったというのもあります。とはいえいろいろな作品を見ているわけではないので、どこかでやっている可能性も大いにありますが……。
がお でもバックログはずーっと「やりたい」って言ってたよね。
 うん。偽物と本物の差がすごい出やすい演出だと思って。真実は隠されてる的な……。バックログってプレイヤーが1つのシステムとして捉えているところだし、盲点だと思うんですよね。ここは結構反応がある部分で、うれしかったです。スクリプト面倒くさかったので(笑)
気づいたときに驚き、妙な焦燥に襲われる
四章のバックログ
――恐らく賛否あるかと思いますが、作中に時折出る現代語についてはどうでしょうか。
 現代語の件はね、割といろいろなところで言われてて、見るたび若干凹んだりするんですけど(笑) 個人的にはいいなって思っていて、そうしたかった部分です。「スルー」とか「イケメン」とか。
靄太郎 キャラクターの掛け合い、結構重要視してたよね。
 そう、あと堅苦しくしたくなかったんですよ。過去の時代の人たちでも、テンションというか、根本的な姿勢は同じだと思ってて。現代語についていろいろ言うと言い訳っぽくなって嫌なんですけど、まあ、言い訳でもいいや(笑) 結局、現代日本語を話している時点で大きな翻訳が入っているので、それなら現代人と似通った言い回しにして親近感を持たせたかったんですよね。あと、私が言葉のギャップみたいなもので、ずっこける感じが好きで(笑) イケメンなのに言うことがダサいとか。「え、そんなこと言うの!?」みたいな。別の作品の話ですけど、杉田圭さんの『うた恋い。』という漫画*2の手法が好きで、あれも平安時代の人たちが出てくるんですけど、テンションとか言うことがフランクで軽いんですよ。それが笑えるんですけど、そこから一気にシリアスに落としていくのがいいですね。あの漫画がもし、キャラクターが堅苦しい喋り方をしてたら、時代の雰囲気には合うけどキャラ自体はどうでもよくなってしまったと思う。あとは、女中との対比もあります。女中の物言いって詩的だったり難しかったり、文学っぽい感じを目指していました。逆にキャラクターは生き生きしているというか、普通の言葉なんですね。女中の異質さとかキャラらしくない感じとか、そういうのを印象づけておいて、ジゼルとしてキャラに戻していく……みたいな。だから六章で語る女中の地の文は、詩的さや難しさはほとんど無くしてて、普通の言葉になっているんです。あれは決してライターが疲れて平易になったのではなく、そういう意図です。あの時点で彼女は、キャラクターとなった女中なので。……という感じで、この場所は結構欠点として挙げられることが多いですが、自分としては意図して作っています。でも伝わらなかったのは、自分の力量不足ですね。ということで次!
靄太郎 ビジュアル面では、ジゼルの表情については結構気を遣った部分だと思う。
がお ジゼル、最初「怖いな」って思ったのにどんどんかわいくなっちゃうんだもんね。
靄太郎 女中の顔立ちを基礎にしつつ、明るく若い顔立ちっていうのがまず難しかった。そもそも女中の顔立ちは、若さと妖しさが必要で難しかったが。ヒロインだけに細かいところまで指示があったりしたけど、わかる範囲で台詞読み込んで、こういう表情しそうだなってのを想像して、いちばんいろいろなパターンを作ったなあ。ウィンクとか斜め上を見て笑う顔とか、笑顔のときの目元口元の癖とか。
 表情描くの、最後のほう上手くなってましたよね。生き生きとした顔になっていたと思う。
がお 鼻水とか見たことなかったし。
靄太郎 あとはやっぱり最後のほうに手がけたジゼル周りの一枚絵かな。鼻水も含めて(笑) あれはゴーサインでないかなと思いながらやった。
 よかったですよ、鼻水(笑) 台詞変えましたからね。がおさんは?
がお 私はこう、音楽班のことを語りだすときりがないので……サクッと。そうだなー。「アイキャッチもちゃんとやってるよ!」っていうくらいかな。
 アイキャッチの意味も出してしまうか! あ、でも既に記事が長くなってきてる……。じゃあアイキャッチの意味集は、設定本で!(笑) 今は、それぞれ意味のある言葉になってますよ、と言っておこう!

歌曲を使うのは、はじめから決まっていた

――がおさんのコメントは控えめですが、音楽にはかなりこだわりがありますよね。歌入りというのもかなり特別な印象を受けます。
 いちばん最初は、私が『ドラッグ オン ドラグーン』とか『ニーア レプリカント』がすごくカッコいいなと思っていて、歌が始終流れているビジュアルノベルとか新鮮そうだなー、と。
がお そうだ、ニーアの曲聞かせてもらった。
 なので「歌を入れよう」という発想は、もうこのゲームを作るって時点からありました。「それを売りにしよう」って感じで。けれど、日本語の歌だとどうしても意識が取られるから「じゃあ英語?」となって「英語も意識とられる場合があるから、もっと分かりにくい言語で!」となり、結果的にポルトガル語に。ポルトガル語なのは、がおさんがポル語が扱えるからですね。
がお 依頼は結構がっちり、欲しい曲の曲調、シーン、参考曲をセットでいただいて、それに合わせて曲数を揃えて、聴いてもらって、手直しする、っていう感じでしたね。かなりわかりやすい感じ。後半はデータをもらって、ここに入れる曲、っていうのもあった。
 ですね。基本的には、Excelに「使用するシーン」、「雰囲気」、「参考になるかもしれない動画」を貼って、Mellok'n、がおさん、守屋さん、Aikawaさんに送っていました。

――というと堤さんは例外?
 堤さんだけ異例で、堤さんには全体のあらすじをどーんと送って、ここで使います、こういう曲調です、というのを送ったら、「明るいの」、「暗いの」、「日常的なの」ってすごい漠然としたタイトルで凄まじく素敵な曲が返ってきました(笑)
がお 神だ。それ、たぶん神だよ。
 まさに(笑) いや本当にすごい人です。最初のほうでも答えたんですけど、堤さんは私が好きな作曲家さんだったので、この人の曲はファタモル……というより我々の作風にすごく合うなと思いました。七章書いているとき、まだオファーかけていなかったんですけど、堤さんの曲を聞いていたんですよね。「A Grave by the Sea」とか。だから「もうお願いするっきゃない!」って気持ちでした。

「A Grave by the Sea」は以下の曲。

靄太郎 話の雰囲気にすごく合ってましたね。
 うん。堤さんは、根幹の物語にすごく合致していたと思う。そして守屋さんもすごい人で、彼はキャッチーな音楽を作るのが非常に上手い人なので、前半の章に非常にマッチしていましたね。「三章、ジャズっぽく!」とかかなり無茶振りで、守屋さんも結構困っていたんですけど(その節はすみません)、やりきって頂けました。「ジャズっぽく!」って言いながら参考で渡しているのが「CICAGO」だったり(笑)
靄太郎 守屋さんはエラスムスの頃から安定感がありますよね。「プロな仕事をするなあ」という感じ。
 ですね! 作曲勢の方々は本当に安定感があった。
がお でも、好きなようにさせてもらった感じがしてますよ。あんまり大きなNGってなかったし。
 みんな、明らかに道が逸れてるのは上げてこなかった、っていうのが大きいんだけど、私の「こうしてくれ」という指示より、「こうしたい」っていうような、音楽側のオリジナリティを重視したくて……。だからあくまで「こういう感じの~」と提示しても「絶対にこれにしてくれ」って意図はずっとなかったです。なんか、作業する人、にはしたくなかったんですよね。
がお うん、「オリジナリティをもっと出していいよ!」っていう指示はむっちゃくれてたよね。
 だってバックグラウンドミュージックじゃないんですよ、ファタモルは! 音楽であって楽曲なんです。BGMって言い方は、あまり好きじゃないな。

手を加えたいところや反省点など

――プレイヤーに注目してほしい部分がある反面、一方では今振り返ってみると逆に手を加えたい部分もあるのではないか、と想像します。いかがでしょうか。
靄太郎 正直言うと、五章後半以降にてがけた部分を除けば、すべて直したいです。一章は特に古いですし。
 一枚絵を入れたい、って意味での手を加えたいならたくさんありますねー。たとえば七章の、モルガーナが復活するシーン*3は一枚絵入れたかったな。ほかにもたくさんあるけど。
靄太郎 申し訳ない……。
 実際、七章もそうなんですが、全体通すと一枚絵はそこまで多くないんですよね……。立ち絵は多いんですけど。結構作ってるときもそのあたりを感じてて、だから余計に空気感は大事にしようと思いました。音楽の入るタイミングだったり、メッセージレイヤの変化だったり、背景とかイメージ映像みたいなので何とかしてみたり(笑) 背景、写真素材を加工した形ですけど、かなりの量を入れているので結構大変でした。日本の写真は基本的に使いたくなかったので、海外のサイトとか、あとは自分がイタリアに滞在していたときの写真とかを総動員したんですけど、なかなかイメージ通りのが見つからず……。
がお 確かに、一枚絵については全然気にならなかった。
 とはいえ、少ないというご指摘もあるので、次から頑張ろう……!
靄太郎 はい……!
 音楽のほうは?
がお 私もぶっちゃけ、靄さんと一緒で「全部直してーーー!」と思うけど、あれはあれでそのときできる最大限にがんばったことなので……。環境的なことも含めてね。「まあいっかな、とりあえずやりきったな」という感じです。
 なるほど! 一章の曲とか、特に急ぎでやってもらったから直したいってのは前々からいってたね。
がお うん、「『Tarantula』とか今ならもっと怖く歌える!」とか思うよね。
 結論:次でがんばる!

「Tarantula」は『ファタモルガーナの館』公式サイトで聴くことが可能。

音楽・絵 - 『ファタモルガーナの館』公式サイト
http://novect.net/music_illust.html

キャラクターたちと自分たちの共通点

――先ほど、靄太郎さんは白髪の娘が好きという話がありましたが、それぞれ好きなキャラクターや似ていると思うキャラクターはいらっしゃいますか。
靄太郎 自分が似てると思うのはメルだなあ。
 そうか?
靄太郎 自分ではそう思ってる。
 でもメルの自己愛は割と人類共通的な、多くの人はありそうな感じかなって気も。
がお 靄さんはエラスムスのネインがぴったんこかんかんすぎて。すごく真面目で一途で、自分のパワーを過小評価してる感じがネイン。
 (笑)
靄太郎 でもネインと違って増長しまくるしな……自分ではやっぱりメルだと思う。
がお じゃあ、ダメルで。
 (笑) 好きなキャラは?
靄太郎 結構競ってるけど、正直モルガーナ。
がお あ、白髪じゃなくなったんだ? なんで?
靄太郎 モルガーナって、急に言葉遣いが変わるじゃないですか。素の願望っていうか、抑えきれないものが出てきて。自分には触れようもないし救い方なんかまったくわからないから、あくまで物語の中の人として、だけど、ミシェルの前でだけそれが出てしまうのとかすごく好き。かわいいじゃん。

(ここでしばらくメンバー全員モルガーナに対する語りに入る)

がお モルガーナ語り熱い!
靄太郎 がおさんはヤコポじゃなくていいんですか(笑)
がお ヤコポ好きだよ!!!! もう一緒に住むなら絶対ヤコポだよね!!*4
靄太郎 監禁されるぞ!
がお 監禁されたらヤコポ中毒が出るわ。欠乏症で手が震える。キモいタイプの白髪になる。
 白髪がそのノリだったら悲劇なんて起きなかった!(笑)
がお あとアメデも好きだよ。「俺はジゼルが好きかもしれない!」から「ジゼル、君を犠牲にするのは心苦しいが……」ってなって最終的な「俺は村を守る勇者だー!」という思考の流れがあまりにも鮮やかでいい。
靄太郎 (笑)

(以下、アメデ語りが続くが省略)

がお はなださんは?
 私の好きなキャラはモルガーナですね。真面目に語るといろいろあるけど、単純にキャラとして萌えます(笑) 「友だちになってくれる……?」のあたりがいい。ラスボスがデレるのはいいですね。

(モルガーナの可愛いポイントを縹さんと靄太郎さんが語りだし、若干ヒくがおさん)

 あと、ビジュアル的にネリーも好きです。最終章の。「やめて、お兄さま助けて!」ってなっているところを無理矢理ぺろぺろする。
靄太郎 通り魔か!
 ていうかこんな回答、ユーザーさんも求めていないのでは! 真面目に戻します! 共感できるのはミシェルとかヤコポかなと思います。
がお はなださんは、ミシェルだと思う……似ているキャラが。
靄太郎 俺もそう思う。
 え、そうかな。見栄はっちゃうところとか、プライドが先行して失敗するところとか、ヤコポ的だなと思うので、割と同属嫌悪に陥るときがあります(笑) ていうか自分たちの性質について語るのは恥ずかしいね、これ。

――キャラクターと言えば、Twitter上で何度か見かけた巨乳問題もありますね。
靄太郎 巨乳に関しては確かどっかで言ったけど、形を綺麗にしようとするとなんかどんどんでかくなるだけですよ。ほんとにそれだけ。
 そしてマリーアの乳を削る事件に至る。
靄太郎 ポーリーンも若干削りましたね……。ていうかこの話題おもしろくないだろ!
 じゃあ白い髪の娘を刺し貫くところで、最後Novectacle崩壊危機に陥ったところとかか(笑)
がお なにそれ!
 彼女を刺し貫くところで靄太郎さんがマジギレし、クソゲー呼ばわりして口をきいてくれなくなりました!
靄太郎 事前に聞いてたのにね! 一枚絵、自分で描いたのにね!
がお (笑)
 でも事前に聞いたのとイメージが違うっていうのは確かにあっただろうし、そこでマジギレがなかったらあのシーンのテコ入れもしなかったから、最後の大噴火でよかったと思います(笑)
靄太郎 あそこ感情的になりすぎてて具体的に何をごねたのか、覚えてないという……。
 なんだそれ! すごいdisられたぞ! その後のミシェルの行動にまでキレてたぞ! 縹がひよってテストプレイの人に意見聞きにいったレベル(笑)
靄太郎 ごめん……。
 いや、でも結果的にいいものになったので! 説明すると、テコ入れ前はミシェルの地の文がなかったんですよ。「魂を強制的に呼んだから不確かな存在になっている」って、白髪が言うじゃないですか。
がお うん。
 現状だと、ミシェルの心の声が聞こえるけど、それが聞こえなくて。白髪がずっと、「プレイヤー=ミシェル」に語りかけている図で、初期の「あなた」の頃みたいになっていたんです。私の意図としては「あなた」の頃の再来みたいな感じだったけど、最終章でプレイヤーがミシェルと共感している状態なのに、急に遮断された感じがあったから、それはそうだなって思って。というか靄太郎さんの怒りを整理するとそういうことなんだなって思って(笑)
がお なるほど(笑)
 ミシェルの行動に納得がいかないのも、ミシェルとしての声が聞こえないからだと思い、ちょっと話し合い、地の文を入れる感じになりました。
靄太郎 その説は申し訳なかったんですが、調整後はすごく納得いく形になりました。
 ちょっとシステム的になっちゃったんだよね、きっと。「展開上殺らなければならぬ」のと「システム的に殺らなければならぬ」は大きな違いがあるから。ミシェルがどう思いながら殺害を強要されたのか、わかったほうがよい部分だったと思う。
靄太郎 考えてみるとミシェルはタフだな。
 あいつはタフですよ。VIT値は最弱ですけど(笑)

Novectacleの今後――英語版、サントラ、ファンディスク

――Novectacleの今後の活動について教えてください。
 海外展開についての考えを以前アンケートで頂いていて、「前向きに考えてます!」みたいな回答をするつもりだったんですけど、時間が経ちすぎてしまった……。現在、海外展開に向けて取り組んでいます*5。PLAYISMさんとの協力で進めておりまして、売り上げがローカライズ費用になる形です。それ以外でも費用の捻出を検討しているので、結構現実的になってきました。ということで、海外展開についての続報は、PLAYISMさんとか、我々のサークルサイトをぜひチェックしてみてください! 応援して頂けるとうれしいです。

――2枚組2種類、計4枚で68曲収録のサウンドトラック*6がリリースされていますが、ダウンロード版のリリース予定はありますか。
 ダウンロード版も出したいです。現在、現品の在庫が多いのと、ちょっと忙しいのもあって準備できてないんですけど……。そのうちリリースします! でもいつになるかは明言できない状況です、すみません。

――最後にプレイヤーにメッセージをお願いします。
 ここまで読んでくださってありがとうございます。今回、このような場を頂けて、ひとまず対談形式で回答してみたのですが、対談は話が膨らんで大変でした(笑) C85で出す予定の設定資料集もですが、今後もSSやファンディスクなど、ファタモル関連で展開を広げていこうと思っていますので、サークルのサイトを時折見てもらえると嬉しいです。また、Twitterがありますので、@novectacleをフォローして頂けたら、最新の情報はお知らせできると思います。とはいえ、予定は予定なので……。確実に出るとは言いきれないのですが……特にファンディスク……。Novectacle自体は活動を続けますので、どうぞこれからも見守っていてください。それでは、最後までありがとうございました!

NovectacleのTwitterアカウントはこちら。


関連記事:Novectacleと『ファタモルガーナの館』はいかにして生まれたのか――『ファタモルガーナの館』インタビュー 前編
http://nydgamer.blogspot.com/2013/10/fatamorganainterview1.html

以下、注釈。赤字の注釈番号で該当の場所に戻ります。

*1 正気と狂気を行き来する東洋の男、ユキマサの通称
*2 『超訳百人一首 うた恋い。』。杉田圭による百人一首を題材にした漫画。メディアファクトリー刊
*3 ミシェルが物見の塔に行き、初めてモルガーナの声を聞いて、という一連のシーン
*4 がおさんはヤコポが好きです(大切なことなので2回言いました)
*5 ローカライズとPLAYISMでの配信については、Novectacleの公式ブログ参照

ファタモルガーナの館、英語化に向けて - Nove Blog
http://novectacle.lys.hiho.jp/?eid=84
INDIE STREAM参加してきました&ローカライズのこと - Nove Blog
http://novectacle.lys.hiho.jp/?eid=99

なお、記事執筆段階では「二章までのローカライズ費が捻出できそうだ」という旨のツイートがPLAYISMよりなされている
*6 サウンドトラックは以下にて販売されているほか、各種イベント時にも頒布している

とらのあな(実店舗でも販売)
http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/12/37/040030123734.html
ステラワース(実店舗でも販売)
https://www.stellaworth.co.jp/shop/item.php?item_id=nqHYTYHHCqY
Amazon
http://www.amazon.co.jp/ファタモルガーナの館-オリジナルサウンドトラック-1-2-セット/dp/B00FMPY7MU

Kickstarter My Heart『The Girl and the Robot』

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締め切りギリギリでの駆け込みの記事になってしまうが、Kickstarterで支援募集中の『The Girl and the Robot』というアクションアドベンチャーゲームについて。
『The Girl and the Robot』は、カナダのモントリオールのデベロッパFlying Carpets Gamesが手がける三人称視点のアクションアドベンチャーゲームだ。

タイトルにもある通り、主人公は小さな少女「The Girl」と彼女を庇護する(「庇護」とは言ったものの、自動操縦ではなく、プレイヤーが操作を行う。詳細は後述)「The Robot」。The Girlが、The Robotと協力しながらEvil Queenの治める古城から脱出するといった物語となっている。

ここまで読んでピンと来た人もいることだろう。本作は、開発の中心人物であるSalim Larochelle氏がMy Favorite Gamesのひとつとして挙げている『ICO』の影響を受けている。Kickstarterのプロジェクトページにも『ICO』、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』、そしてスタジオジブリの名が挙がっている。

『The Girl and the Robot』公式サイト
http://flyingcarpetsgames.com
『The Girl and the Robot』 - Kickstarter
http://www.kickstarter.com/projects/2039811773/the-girl-and-the-robot
個人的な感覚では、「『プリンス・オブ・ペルシャ』の世界で『ICO』」というのが最も近い

ゲームプレイ

Kickstarterでの支援募集を始める前から、Desuraや公式サイトでアルファ版($9以上の支援でも入手が可能)のリリースが行われており、そのアルファ版の感想をザッとまとめておく。

ゲームのコアメカニックは、The GirlとThe Robot、異なった特性を持つ2人のキャラクターを切り替えて、パズルや戦闘を切り抜けていくというものだ。2人のキャラクターを同時に操作することはなく、その都度、操作キャラクターを切り替えてゲームを進めていくスタイルとなる。
The Robotは最初、牢に閉じ込められている
冒頭で手に入る魔法のペンダントでロボットを操作できるようになる
 The Girlは戦闘には向かない代わりに(敵に触れると直近のチェックポイントから復帰)身軽で、離れた足場をジャンプして渡っていくことができる。一方のThe Robotは戦闘能力があり、うまく戦って敵のRobot(プレイヤーの操作するThe Robotに酷似)を退けることができる。
The Robotは剣で戦えるほか
弓矢も使用可能。矢の本数に制限はない
The Robotの受けたダメージを魔法回復させるThe Girl
The Robotは、肩の上にThe Girlを乗せて移動することができる
アルファ版でプレイできる範囲に出てくるパズルはさして複雑なものではなく、スイッチの起動をキーとしたものが主だ。例えばThe Girlがエレベーター型の仕掛けに載り、The Robotがエレベーターを起動させる。エレベーターで移動したThe Girlが、同様にエレベーターを起動してThe Robotを進めてやる、といった具合。いかんせん序盤ということもあって、バリエーションなどは判別がつかない。
こんな感じでスイッチの仕掛けがある
『The Girl and the Robot』は、『ICO』の影響を受けていることもあってかゲーム中にダイアログの類がほとんど出てこない。『ICO』は2人のキャラクターが手をつなぐ、という行為が強烈に印象に残るゲームであったが、その方向性での力強さを出すのはなかなかに難しいと想像している。しかし、互いに言葉が通じない(発しない)、か弱い少女と剛力なロボットという関係性はやはり味わいのある設定でもあり、ストーリーと演出に私は期待したい、と思っている。

さてFlying Carpets Gamesはカナダの開発会社であるが、開発に関わる人にはイギリスや日本の人も含まれている。また、キャラクターデザインやコンセプトアートを手がけているもなかさんは日本の方で、非常に魅力的な画を描いている。Kickstarter期間中は【今日のGnR】というタグつきで1日1枚画を投稿しているのでそちらを見るのもオススメ。


Salim氏へのショートインタビュー

最後に。開発者であるSalim Larochelle氏からメールで頂いた返答を載せておく。訳は私のもので不確かなものもあるかもしれないので、英語が読める方は併載した原文を読んでほしい。

――まずはSalimさん自身の自己紹介をお願いします。
Salim Salim Larochelleです。Flying Carpets Gamesという名の小さなゲーム開発会社の設立者で、そこでゲームデザイナーをやっています。以前はGameloftというiPhone向けのゲームを多数手がけた会社で働いてたんですが、もっと自由でクリエイティブなゲームを作るために2012年にそこを離れて、自身のスタジオを設立しました。現在手がけている『The Girl and the Robot』は、ほかに5名が関わっています。
<原文>
Hello, my name is Salim Larochelle, I’m a game designer and also the founder of a  little game studio called Flying Carpets Games. I used to work at a game company called Gameloft who mostly makes iPhone games, but I left in 2012 to start my own studio and make games with more creative freedom. I’m now working on The Girl and the Robot with 5 other people.
――『The Girl and the Robot』の紹介をお願いします。
Salim 『The Girl and the Robot』は、PC、Mac、Linuxを対象にした三人称視点のアクションアドベンチャーゲームで、プレイヤーは幼い女の子となって悪の女王が治める城から脱出を試みるという内容です。The Girlは道中で、魔法のペンダントによってコントロールが可能な不思議なロボットに出会います。

本作のおもしろいところは、プレイヤーがThe Girlを操作していても、必要に応じてシンプルなボタン操作だけで、ロボットの操作に切り替えることができる点です。先へ進むためにはThe GirlとThe Robot、双方の能力を駆使していく必要があるんです。
<原文>
The Girl and the Robot is a third person action/adventure game for PC, Mac and Linux where you take on the role of a young girl trying to escape from a castle ruled by an evil queen. On her way, the girl meets a mysterious robot that she can control by using a magical pendant.

What make this game interesting is the fact that the player controls the girl but he can switch his control to the robot at any time by a simple press of a button. The player will need to use both the girl and the robot’s abilities to progress.
――『The Girl and the Robot』を開発するにあたり、大切にしていることはなんですか。
Salim もしもひとつだけ選ぶとしたらだけど、いかなるゲームにおいてもいちばん大切にするのは、あなたが楽しんで、それを気に入ってくれることでしょう。開発にゲームを作る楽しさがあるときこそ、プレイヤーがそれを楽しんでプレイするチャンスがたくさんあると思います。

2番めに大切なのは、開発にあたってビジネスの側面を過小評価しないことです。
<原文>
If I can only choose one, I would say that the most important thing when making any  game is to love what you are doing and to have fun. If the developers have fun making a game, there is a very good chance that the player will have fun playing it.

A second important thing would be to not underestimate the business side when making a game.
――『The Girl and the Robot』はゲーム中のテキストがまったくないゲームなのでしょうか。もしもそうだとしたら理由を教えてください。
 Salim そうですね、『The Girl and the Robot』はほんの少しの言葉しかありません。ダイアログで語るよりも、ゲーム環境やキャラクターたちのアクションに語らせることを望んでいるというのが最たる理由です。それに予算の都合も効果的にクリアできると思っています。
<原文>
Yes, there is very few words in The Girl and the Robot. The main reason is because we wanted to tell the story with the actions of the characters and also with hints in the environment rather than spoken dialogue. I think this can a very effective way to tell a story while been easy on the budget.
――あなたのプロジェクト(『The Girl and the Robot』)に、モナカさんが加わった経緯を教えてください。
Salim アートについては明確に望むものがあったので、そこに合致するコンセプトアーティストを探すのに何週間もかけました。最初にもなかさんの描くものを見たとき、すぐにそれに惚れ込んで、ゲームに完全に沿うものはこれだと思いました。もなかさんにコンタクトを取ってゲームのストーリーを伝えたところ、彼女もそれを気に入ってくれて、アートスタイルがよく合うことに同意してくれました。私はカナダ人で、もなかさんは日本人ですが、彼女と一緒に仕事に取り組むのは全然難しくないですし、とても楽しいです。今後も継続して彼女と一緒に取り組めることを切に願っています。
<原文>
For the art, I wanted something very specific so I spent many weeks looking for a proper concept artist. When I first saw Monaka’s style for the first time, I loved it immediately and I knew her style was perfect for the game. After contacting Monaka and telling her about the story of the game, she loved it and she agreed that her style would be a good match.  Even if I’m  Canadian and she is Japanese, working with her is so easy and fun; I really hope to continue working with her in the future.
――『The Girl and the Robot』の世界観や、楽曲はアラビア風(例えば『プリンス・オブ・ペルシャ』)だと思いました。モチーフにしている世界観はありますか。
Salim 『The Girl and the Robot』は、ヨーロッパや中東を含む世界中のおとぎ話からインスピレーションを受けています。それを知って、コンポーザーのEikoさんがアラビアンの雰囲気を少し試してみて、結果とてもうまく世界観に合うものが生まれました。
<原文>
Yes, The Girl and the Robot take inspiration from fairy tales from around the world including Europe and the Middle East. Knowing that, our music composer Eiko tried to experiment with a slight Arabian feel and the result fit very well with the game’s setting.

――日本のゲームファンにメッセージをお願いします。
Salim 『The Girl and the Robot』は世界中のプレイヤーが楽しめるゲームだと思います。日本のたくさんのプレイヤーにもプレイしてほしいですし、そのサポートを続けていきたいです!
<原文>
I think that The Girl and the Robot is that kind of game that can be enjoyed by players from around the world. We hope that many Japanese players will also enjoy our game and continue to support us!
実は、Salim氏は日本に住んでいたこともあり、日本語もかなり堪能である。Kickstarterのページや公式サイトにも日本語が用意されているくらいである。日本からのKickstarterの支援もしやすくなった(クレジットカードに対応したっぽい)ので、ぜひ支援を検討してみてほしい。


はじめての『ファタモルガーナの館』

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『ファタモルガーナの館』は、私のなかで今年を代表するタイトルのひとつなのだが、サークルの精力的な活動により、ゲームに関連してそこそこの情報量が存在しているため、初めて手に取ろうと考えている人、ちょうどクリアした人向けについてザッとまとめた。
2013年12月10日追記
一部誤った情報(ダウンロード版の価格差、正しくはオリジナルサウンドトラックのAmazonでの公式販売があること)を訂正、プレイ環境について追記

『ファタモルガーナの館』とは


ざっくりとまとめる。

  • Novectacle開発のビジュアルノベル
  • 住む人に必ず不幸が訪れるという呪われた館が舞台
  • どこを切り取るかにもよるだろうが、個人的にはラブロマンス
  • 選択肢による分岐はあるものの、基本的に一本道
  • 楽曲は歌曲を使用(歌詞はポルトガル語)
  • プレイ時間はおよそ20時間程度
  • ホラー、暴力、性に関する表現があるため、そのへんが苦手な人は注意

おもしろいんですか?

プレイフィールは人によって異なるが、おもしろいと思ってなかったらこんな文章を準備しない。

レビューはありますか?

前者は私自身によるもの、後者は個人的に好きなもの。

どこで買えますか?

ダウンロード版

パッケージ版

PLAYISM版に関しては、売上のすべてが英語版へのローカライズ費に回されることが明言されている。パッケージ版はだいたいの場合、Amazonがいちばん安い(と思う、小さな差だが)。ダウンロード版に価格差はないが、ダウンロード版はDLsite版が5円だけ安いが、PLAYISM版は章ごとに分割購入できる。

Macでプレイできますか?

記事執筆段階では、Macでプレイすることはできないのだが、オンラインノベルゲーム配信サービス、ノベルスフィアにて『ファタモルガーナの館』の配信が決定しており、ノベルスフィア版はブラウザ経由でのプレイとなるため、Windowsはもちろん、Macやスマートフォンでのプレイが実現する予定。

体験版はありますか?

Vector版とDLsite版は2章を収録、PLAYISM版は1章のみ収録。


また、2013年10月19日に体験版が改定し、製品版へのセーブデータ引き継ぎが可能になった。体験版のインストールフォルダから「house_save」と「savedata」という2つのフォルダをコピーして、製品版のインストールフォルダにペーストすればよい。

パッチはありますか?

以下のリンクより「修正パッチ」がダウンロードできる。

前作からプレイしたほうがよいですか?

記事執筆段階でNovectacleの作品は、以下の3つに触れることができる。


基本的には『ファタモルガーナの館』を軸にした派生物なのだが、それぞれは独立した物語なので、好きな順でプレイして問題ない。個人的にベストなプレイ順は、いかに示したゲームのリリース順だと思う。
  1. 『霧上のエラスムス』
  2. 『ファタモルガーナの館』
  3. 『セブンスコート』
特に『ファタモルガーナの館』と『セブンスコート』は、キャラクター性を引き継いでいる部分が多分にあったりするので、『ファタモルガーナの館』→『セブンスコート』の順でプレイするのを強くオススメしたい。

なお、『霧上のエラスムス』とキャラ設定が共通のショートストーリがWeb上で公開されている。


と思ったのだが、『おやばけ!』やファタモル人気投票ミニゲームという短編もある(無料)。ネタバレ&コメディ枠。

関連書籍はありますか?

公式で2冊、非公式のものが1冊存在する。


『The Archives of House in Fata morgana』は、『ファタモルガーナの館』に関連した書き下ろしのショートストーリーがメインとなっている(ほかに4コマなどを収録)。紙媒体のものは売り切れてしまって、現在はダウンロード版のみの提供となっている。

『THE BOOK -呪われた館への道標-』は公式の設定資料集。未リリース。

『ふぁたもるのすべて 準備号』は、Novectacleではなくオカルト省が手がけたファンによる非公式考察本。

サウンドトラックはありますか?

2枚組のオリジナルサウンドトラックが2セットリリースされている(ダウンロード版はない)。


以下で購入が可能。Amazonでも購入できるが、業者によるもので価格がアレなので載せていない。どうしてもAmazonでという人は探してください。AmazonでもNovectacle公式のものが販売されている。

インタビュー記事はありますか?


短いながら、週刊アスキーNo.942にも載っている。こちらは今からだと電子版くらいしか入手法がない(未確認だけど)。

公式イベント関連


キャラクターツイッターイベントについては、公式のまとめ(以下)もあるが、ファンによるまとめのほうが読みやすいと思ったので、上記ではファンによるまとめを貼った。

そのほか

公式による小ネタについての言及や没ラフ集。当然ながらネタバレを含むので未クリアの人には向かない。

フリゲ2013が始まっています&私の選ぶ今年のベストフリーゲーム

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「フリゲ2013 あなたが選ぶ今年のベストフリーゲーム」の投票が12月1日から始まっている。よそでも紹介されているし、このブログを訪れる人の大半はこのイベントのことを知っているのだろうな、と思ってぼんやりと時間が経っていたが、やはり「私の選ぶ今年のベストフリーゲーム」の紹介も兼ねて、紹介したいと思う。

フリゲ2013とは

フリゲ2013は、フリーゲームを対象としたオンラインの投票イベント。簡単に言うと、「今年(2012年12月1日~2013年11月30日)リリースされたフリーゲームから、あなたが好きなものを選んで投票してね」というものだ。
公式のQ&Aを読むと、痺れる文言が書き連ねられている。
  • 複数のタイトルへの投票可(1タイトルには1票しか投じられない)
  • 順位は飾り
  • 1位がすごいかはわからないし、あなたに合うとは限らない
  • 1位になってもいいことは特にない
  • 開発者自身による投票可
  • 投票を呼びかけてもよい
言ってみれば当たり前のことなのだが、そこをあらためて記述されるとグッと来るものがある。こんなにも慇懃な、潔く、紳士なアワードがあってたまるか、と思わずにはいられない。好きなものを好きなだけ「好き」と言っていい賞は最高だし、高潔だ。

というわけで、これを読むあなたが好きなフリーゲームがあるのならぜひ投票してほしい。

フリゲ2013 あなたが選ぶ今年のベストフリーゲーム 投票ページ
http://yamazaru.s21.xrea.com/reviewers/best2013/vote.cgi

個人的にオススメするフリーゲーム

今年を代表するといった印象のある『帽子世界』は気になりつつも未プレイだし、序盤をプレイして「時間あるときにやろう」と思った『影明かし』も積みっぱなしだし、そもそも熱心にフリーゲームをプレイしているわけでもないのだが、好きなゲームのなかにはフリーゲームもあるので、おすすめの5作品をリストアップしておこう。なお、掲載順に特に意味はない。

『Records』(開発:マルニキカク)


ウディタ製のアドベンチャー。RPGではお馴染みの中世っぽい世界観だが、舞台となるのは小さな田舎町。主人公のロランは「音の錬金術」を志す学生で、成績が悪かったために「音を集める」追認試験に挑戦する、というのがおおまかなストーリーだ。

ゲームの中核は「音を録りため、それを鳴らすこと」。

キーアイテムを集めて、必要な場所でそれを使うというのは、アドベンチャーの基本と言ってもいいくらいありふれたシステムであるが、『Records』ではキーアイテムを目に見えない音というものに変え、新鮮なプレイ体験を生み出している。

2~3時間程度とプレイ時間は短い。ストーリーやキャラクター設定は典型、王道といったもので安定感はあり、短いながらきっちりと丁寧に収めている。リプレイ性が特別高いというほどではないものの、分岐やコンプリート要素もある。

『Records』 - マルニキカク
http://maru2kika9.boo.jp/index/index.html#c02
ダウンロードは以下より可能
『Records』 - ふりーむ!
http://www.freem.ne.jp/win/game/4437

『セブンスコート』(開発:Novectacle)


『ファタモルガーナの館』を手がけたNovectacleによって、エイプリルフール期間に送り出された新作ノベルゲーム(画像はやや悪意をもって選択した、というかキャラのビジュアルを避けた結果がこれ)。

主人公のフリーゲーム製作者Dark†Night(ハンドルネーム)はヒット作にも恵まれないうえ、現実世界でも燻っているという、いささか冴えない男。が、そんな彼を変える存在が現れる。彼のゲームの熱心な女性ファンがコンタクトをしてきたのだ。

彼女との出会いによって、Dark†Nightと彼の新作は今までにない息吹きを吹きこまれ、新たな色を纏っていく。そして、その先に紡がれ、生まれた作品の名は、本作と同じ名の『セブンスコート』。しかし、『セブンスコート』の公開に伴って、Dark†Nightのサイトの常連とDark†Night自身はRPGめいた異世界へと飛ばされてしまい……。

今書いても「ちょっと意味が……」って感じの物語なのだが、公式サイトに綴られた文句「ウェブ連動型、純情と絶望のメタファンタジーここに開幕!」を忘れてはならない。ネタのためと言っても過言ではないエイプリルフールという季節に、変化球でもなくド直球、それもデッドボールというネタを振りかぶったうえに助走をつけて放り投げてくるNovectacleに脱帽したのは、きっと私だけではなかっただろう。

過去に私は『Indie Game: The Movie』を「すべてのゲームファンに観てほしい映画」と形容した。本作『セブンスコート』は、それに近しい「すべてのゲームを作る人にプレイしてほしいゲーム」だ(まぁ、私はゲーム作ってないんだけど)。

世界観は『ファタモルガーナの館』の設定を持ち越している部分が結構あるので、ファンとしては、やはり『ファタモルガーナの館』からのプレイを推奨したい。しかし、『ファタモルガーナの館』をプレイしていないというだけでは、『セブンスコート』をプレイしないとう理由には不十分だろう。なぜなら単に順序が入れ替わるだけの問題でしかないから。

ダウンロードは以下より可能
『セブンスコート』 - Novectacle
http://novect.net/april.html

『怪奇瘴忌譚』(開発:HashimotoRST)


RPGツクールVX Ace製のRPG。神社に現れた妖怪を討伐するのが目的となっており、そのために数々の謎を解いていかなければならない。RPGでありながらアドベンチャーゲームっぽい謎解きがこれでもかと詰め込まれており、パズルゲームやアドベンチャーゲームを好むプレイヤーのほうが向いていると思う。

特に優れているのが、謎解きのエッセンスをマップ上のみでなく、戦闘、特にボス戦(7体いる大妖怪)にまで持ち込んだことで、ロジックを組み立てて戦闘に臨むようにデザインした点だ。例えば物理攻撃がさっぱり効かないだとか、そもそもエンカウントすることができないだとか、頭をひねった攻略が求められる。そのうえでボスの倒し方も1つではなく、いくつかの方法があり、さらに進行にはかなりの自由を持たせているというのも大きな美点だ。ゲーム序盤からすべての大妖怪と相まみえることが可能な設計、ありとあらゆるテキストが何かしらの謎に通ずることなども素晴らしい。

ゲーム序盤は、初期のドラクエのように一撃でゲームオーバーになるようなメチャクチャ強い敵とエンカウント(このゲームはシンボルエンカウントだ)してしまったりするし、中ボスクラスの敵になると適切な倒し方を見つけ出さなければまったく歯がたたないのも日常茶飯事である。もっともザコ敵は術を使えば確実に逃げられるし、そこまで無茶苦茶な要求をしてくるゲームではない。戦闘を含めた謎解きは全体的に一筋縄ではいかないが、理不尽なものはなく、頭の悩ませ甲斐がある。

「マゾゲー」と切って捨てるのは早計だ。

本作が影響を受けた『LA-MULANA』同様、あなたの知恵を開発者のそれと戦わせて、妖怪ともども一泡吹かせてやろうじゃないか。

実は本作については私がとても好きで、いくつか本ブログ向けに動いている案件があるのだが、それはまた次のお話。

ダウンロードは以下より可能
『怪奇瘴忌譚』 - ふりーむ!
http://www.freem.ne.jp/win/game/4550

『魔王姉妹の憂鬱』(開発:水飴)


1人のボスにただひたすら立ち向かうという変わった形式のRPG。マップはほぼない、と言って差し支えない。

敵1人対味方3人とはいえ、相手はすさまじく強く、1度の戦闘では到底倒せない。そこで鍵を握るのが「ラーニング」だ。これは敵から受けたスキルを覚えて、自分自身でそのスキルを使えるようになるほか、戦闘外の拠点のような場所で覚えたスキルをポイントに変換して、アイテムや装備の購入に充てることができる。

ラーニングとポイント使用によるキャラクターの強化を繰り返しながら、少しずつ強敵打破へと向かっていく過程が楽しい。ビジュアルや少しずつ語られる世界観も目を引く。早ければ1時間程度でクリア可能。長くとも4時間くらいだと思う。

私が春先にプレイしたときは、一部のスキルがかなり強かった記憶があり、配布停止ののち、改善版を配布予定だったと思うのだが、その後どうなったのかは不明。ウディフェスのアーカイブからダウンロード自体は可能なようだ。

ダウンロードは以下より可能
ウディフェス - 2013年応募作品 → 『魔王姉妹の憂鬱』は51
http://hinezumi.velvet.jp/wodifes/works/index/page:3

『Soundodger』(開発:Studio Bean)


ブラウザで動作する弾幕回避音ゲー。サウンドに合わせて射出される弾幕をただひたすら避けるだけのゲーム。「音ゲー」と言ったが、ゲーム内容はシューティング(の弾避け)に近い。単純に画と、「時は動き出す」という台詞でもついているかのように弾幕の停止、再射出される演出がカッコいい。

プレイヤーは自機の移動のほか、マウス左ボタンでスローモーションをかけて弾幕を回避しやすくすることもできる。また、スローモーションのあいだは曲にもエフェクトがかかるのが特徴的。

私の周りではあまり評判がよくなかった(特にマウスでのプレイについて)が、私は結構好き。上記のゲームと比較してしまうとベストからはちょっと遠いかもしれない。

のちにレベルエディタも付いた『Soundodger+』がSteamでリリースされた。

以下よりプレイ可能
『Soundodger』 - Adult Swim Games
http://games.adultswim.com/soundodger-puzzle-online-game.html

なお、今回紹介した5本は「いつかちゃんとレビューを書こう!」と思い、その決意を胸の奥底に秘めたまま年末を迎えてしまった(怠惰とも言う)作品群である。特に『セブンスコート』と『怪奇瘴忌譚』はとびきりの思い入れがあるのでいずれ書くつもりである(これらのゲームに当てたい言葉はいくつかあるのだ)。できれば『Records』と『魔王姉妹の憂鬱』も書きたい。

このほかにも本ブログの「インディーゲームの小棚」で紹介したゲームは、フリーで公開されているものが多く、そちらも基本的にオススメ。以下にフリーのものを列挙しておく、と考えたのだが、ほとんどが投票の対象外で、投票の対象となるのは『日常侵食ホラー つぐのひ』、『ナイトガイスト』、『Lens』の3作品だけだと思う。『日常侵食ホラー つぐのひ』は、新たに第3話も公開された。

インディーゲームの小棚:Shelf#07『日常侵食ホラー つぐのひ』
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/03/shelf07.html
インディーゲームの小棚:Shelf#08『ナイトガイスト』
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/04/shelf08.html
インディーゲームの小棚:Shelf#11『Lens』
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/10/shelf11lens.html

ちなみに『ふしぎの城のヘレン』は、PLAYISMでのリリースに合わせてアップデートされ、同様のバージョンが公式サイトでも公開されたため、投票の対象となっている。昨年のフリゲ2012で2位に輝いただけあり、その内容は折り紙つき。私のなかでは2013年のゲームという印象が薄いのだが、未プレイならぜひともプレイしてもらいたいのは言うまでもない。

レビュー『ふしぎの城のヘレン』
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/08/blog-post.html
上記は主催の赤松弥太郎氏のツイート。今年は昨年よりもたくさん票が集まっているようで、さまざまなゲームを知るいい機会なので結果も楽しみ。理念も好きなので、今後も継続していってほしいな、と思う。

投票は、2013年12月23日23:59:59まで。
クリスマスイブ前日は誰もが忙しいだろうから、先に投票しておこう!

フリゲ2013 あなたが選ぶ今年のベストフリーゲーム 投票ページ
http://yamazaru.s21.xrea.com/reviewers/best2013/vote.cgi

『Brothers: A Tale of Two Sons』について語ろう! HOTLINE TOKYO 5thは2月9日開催

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4ヶ月ぶりの開催となるゲームに関する座談会HOTLINE TOKYOについてのご案内。第5回となる今回は、Starbreeze Studiosの『Brothers: A Tale of Two Sons』を取り扱う。

開催概要

開催日などは以下のとおり。
『Brothers: A Tale of Two Sons』について語り合う座談会。
参加する場合は、以下のいずれかから主催である死に舞氏へ連絡すること。

Twitterアカウント - 死に舞
https://twitter.com/shinimai
メール
aka.shinimaiアットgmail.com

『Brothers: A Tale of Two Sons』のアレがよかったコレがよかった(or 悪かった)はもちろん、この手法について掘り下げて語りたい、同じようにこんな素晴らしいゲームがあるというのも大歓迎。思うがままに語り合いましょう。

場所は前回同様、吉祥寺のPico Pico Cafe。Polygonの『Voxatron』の記事にある動画からもお店の雰囲気も伝わるかと思う。

Pico Pico Cafe公式サイト
http://picopicocafe.com/
Vision of the future: Voxatron's high-priced gamble - Polygon http://www.polygon.com/features/2013/8/28/4460616/voxatron-lexaloffle

アクセス方法は以下を参照のこと。画像の左側もみじビルの8Fが所在地だ。

Access - Pico Pico Cafe公式サイト
http://picopicocafe.com/?id=access

大きな地図で見る

なお、Pico Pico Cafeでは、ジャンルを問わないクリエイターの発表の場「Picotachi-ピコたち」を開催している。次回は2月14日の開催を予定しているそうだ。この日以外にもプログラムをしていると思しき人が国籍問わず訪れている印象。電源や無線LANの貸出も可能で、とても居心地のよいカフェだ。

『Brothers: A Tale of Two Sons』について

Starbreeze Studios開発のアドベンチャーゲーム。死の間際にある父を助けるために、2人の息子たちが旅に出るというストーリーだ。ゲームパッドでの操作が推奨されていて、兄を左スティック、弟を右スティックで動かすという一風変わった操作方法が特色。

プレイ時間は3時間ほどと、この記事を読んでからプレイしてもHOTLINE TOKYOの開催に間に合うくらいの長さだ。ゲームだからそこ成し得たストーリーが秀逸なので、ぜひともプレイして確かめてほしい。購入はXbox LIVE アーケード、Steam、PlayStation Networkのいずれかから行える。

なお、私の感想は以下の記事にまとめてある。

4Gamer開催のレビューコンテスト佳作『Brothers: A Tale of Two Sons』レビュー ゲーム史に残したい、2人の息子の冒険譚
http://nydgamer.blogspot.com/2014/02/reviewbrothers.html

4Gamer開催のレビューコンテスト佳作『Brothers: A Tale of Two Sons』レビュー ゲーム史に残したい、2人の息子の冒険譚

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「いいゲームレビューとは何か」というのを考えたりするんです。たまに。
明確に答えなんて出ないわけです。やはり。

そんな折、飛び込んできたのが4Gamer.net主催のレビューコンテスト「4Gレビューコンテスト」。ブログでゲームレビューを書く者の端くれとして、また、そのような問を持っていた者としてやはり参加せずにはいられませんでした(締め切りギリギリまで書けなかったのはいつものこと)。

明日の4Gamerを支えるライターは君だ! 6年ぶりとなる「4Gレビューコンテスト」を開催します - 4Gamer.net
http://www.4gamer.net/games/000/G000000/20130930019/
「4Gレビューコンテスト」第1次審査の結果を発表。過去最多の27作品が通過 - 4Gamer.net
http://www.4gamer.net/games/000/G000000/20131129102/
「4Gレビューコンテスト」最終結果を発表。応募総数130作品の頂点に選ばれたのは? - 4Gamer.net
http://www.4gamer.net/games/000/G000000/20131219065/

と、このコンテストに向けて書いた『Brothers: A Tale of Two Sons』のレビューが、PCゲーム部門で佳作となりました。本ブログでの公開の手筈も整いましたので、ここに全文を公開しようと思います。
『Brothers: A Tale of Two Sons』でレビューを書いた人はほかにもいるそうですし、同じようにレビューを公開したニカイドウレンジさんが、直さずそのままブログに公開していたので私もそのようにしようと思います。と言っても一部あまりにアレなところがあるので、わかるように直しておきます。

【4Gレビューコンテスト】この程度ではプロにはなれぬ!あと一歩で大賞逃したレビュー記事を全文掲載 - ニカイドウレンジ公式ブログ
http://nikaidorenji.blogspot.jp/2014/01/4g.html
ちなみに4Gamer.netに掲載されている同作のレビューを意識して書いた部分が少しだけあるので、先に読んでおくとより楽しめるかもしれません。

美しい世界を独特の操作で冒険するアクションアドベンチャー「ブラザーズ:2人の息子の物語(Brothers: a Tale of Two Sons)」のレビューを掲載 - 4Gamer.net
http://www.4gamer.net/games/186/G018658/20130903013/

というわけでどうぞ。

レビュー『Brothers: A Tale of Two Sons』

「いいゲームとは何か?」

簡単そうでいて難しい問いである。あなたが熱心なゲームファンであるなら,なおのことではないだろうか。緻密に構築された広大な世界,圧倒的爽快感,胸ぐら掴まれるような重厚なストーリー,息を呑むビジュアル,一筋縄ではいかない深みある戦略性,溢れんばかりのやりこみ要素,もしくはそれらの複合的要素。ひょっとしたらゲームの要素ではなく,「コントローラを握る手に自然と力が入る」といった感覚的なものを挙げる人もいるかもしれない。とにもかくにもこの問い対する回答はさまざまなものが思い浮かぶが,私は「ゲームである必然性がある」ゲームが好きだ。

「好き? いいゲームの話じゃなかったのか?」だって?

上述のように「いいゲーム」はかくも多様だ。だからあえて私は「好き」という言葉を用いた。だが,「好き」と言うからには私にとってそれは「いいゲーム」なのだ。そして今回紹介する『Brothers: A Tale of Two Sons(邦題 ブラザーズ:2人の息子の物語)』もその例外ではない。

Steamでは2013年9月14日にリリースされた本作。手がけたのは,スウェーデンのデベロッパStarbreeze Studiosだ。『The Chronicles of Riddick: Assault on Dark Athena』や『Syndicate』を生み出してきた同社(『PAYDAY』シリーズも同社だが,こちらは買収したOVERKILL Softwareが開発を手がけている)は硬派なイメージが強く,『Brothers: A Tale of Two Sons』はかなり異色の作品と言っていいだろう。

既存作品とは毛色の異なるゲームが生まれた背景については,スウェーデンの映画監督Josef Fares氏を本作のディレクターとして迎えたことが大きい。当初,「P13」というプロジェクト名で報じられていた本作は,ゲーム好きのFares氏が相当な期間温めていたゲームコンセプトを具現化したものだ。したがって彼自身の持つコンセプトや,テーマ,カラーといったものが強く反映されているのは想像に難くない。

実際,第一報でStarbreeze StudiosのCEOであるMikael Nermark氏が,Fares氏の提示したゲームコンセプトに共感を覚え,その日のうちにすぐさま仕事にとりかかったことを明かしている*1。しかし,それでいて『Brothers: A Tale of Two Sons』がコンセプト一辺倒の作品にならなかったのは,Starbreeze Studiosの確かな開発力によるものであることも間違いないだろう。

前置きはこれくらいにして,ゲーム内容へと話を移そう。

『Brothers: A Tale of Two Sons』は,ファンタジー色の濃い世界を舞台にした3人称視点のアクションアドベンチャーだ。物語は,死の淵にある父を救える「命の水」を求め,2人の息子たちが遙かなる旅に出るところから始まる。兄弟――特に弟は過去に眼前で母を失ったトラウマによって泳ぐことができず,身体能力も兄には劣ってしまうのだが,2人は力を合わせてさまざまな苦難を突破していく。
村人に教えられた「命の水」を探し出して,父親を助けるのが本作の目的
海上で,母を救えずに失ってしまった過去を持つ弟
水を恐れる弟は,水際では兄を頼って進まなければならない
グラフィックはリアリスティックなものではなく,ややゲームっぽくデフォルメされた質感ではあるものの,目を見張る美しさである。既存のゲームでは『Fable』シリーズのそれがもっとも近く,あの色彩感や空気感が好きな人ならすぐさま惹かれるだろう。また,巨人や意志を持った樹木といった架空の生物も登場し,ロケーションも豊富なので先の世界への興味もなかなか尽きない。
序盤の村は叙情的な風景が広がる
狼を松明で退けて進む夜のシーン
地下に広がる遺跡のような場所
ただし,明るい雰囲気の場所だけがずっと続くわけではない。タイトルにもある「Tale」で想像するお伽話の世界のように,途中からは死の臭いも漂いはじめる。重厚とは言わないまでも,軽くあっさりとした世界観ではないことは付け加えておく必要があるだろう。なお,CEROレーティングでは17歳以上対象のD指定となっている。

牧歌的な村から始まる2人の旅は,古代遺跡のような地下世界や僻地にそびえ立つ古城など,さまざまな歴史や背景を感じさせるいくつかの場所を点々としていく。ここで本作が特徴的なのは,彼らの訪れる場所について名前が明示されることはないし,行く先々で出会う人物の名前すらも知ることはできないということだ。

実はこのゲームでは,言語による情報が意図的に取り払われているのである。
メニュー周りは日本語化されているが,環境設定はかなり少ない
そもそも登場人物はすべて架空の言語と思しきものしか発せず,それを補う字幕も存在しない。あるのは言葉らしきものと,彼らの身振り手振りだけだ。だから今いる場所の名前はおろか,会話した相手の名前もわからないままなのである。しかしながら,共通の言葉を持たずとも,その世界は確かな存在感とともに広がっている。むしろ言葉がないからこそ,プレイヤーは自由にその世界へと想いを馳せることができると言うこともできよう。ありとあらゆるものから世界を断片的に読み取り,プレイヤーはそこから思い思いの世界を構築していくのだ。そういう意味では『Brothers: A Tale of Two Sons』は,逆説的ではあるが,想像力を刺激される極めて読書的な世界観を持っていると言えるかもしれない。

言語に関する部分も独特だが,操作方法も一風変わっている。本作はコントローラでのプレイが必須とされており,Xbox 360コントローラの場合だと兄を左スティックとLT,弟を右スティックとRTで同時に動かしていかなければならない。スティックはキャラクターの移動,トリガーはジャンプや仕掛けの起動といったアクションに相当しており,アクションは状況に応じたものが自動的に選ばれる。このように操作は非常にシンプルではあるが,兄弟を同時に動かす必要のあるシーンが徐々に増えていくため,簡単すぎて味気ないということはない。
兄のほうが力持ちで,序盤は兄しか操作できないレバーもある
弟は小柄な身体を活かして,狭い場所でも進むことができる
ゲーム自体は完全に一本道で,道中のパズルを解きながら先へと進んでいくというスタイルになっている。パズルに関しては2人で協力してオブジェクトを運ぶといったようなシーンや,一方が仕掛けを動かしてもう一方が進むための道を切り開くといったようなシーンが盛り込まれている。シンプルな操作と比べるとパズル自体はかなりの練り込みが見られ,使い回し感もほぼない。一部難しいと感じた部分もあったが,個人差もあるだろうし,軽微な問題だ。高所を進むシーンや一発でミスとなるような罠もあるが,失敗してもすぐそばから復帰するため,ストレスはあまりない。
病床に伏せる父を2人で協力して運ぶ
兄の手助けで高所へと進む弟
 アクションに関してはシビアな操作を要求される場面はなく,難易度はかなり低め。全体を通してゲームプレイの緩急の付け方が非常にうまく,飽きを感じさせずに適度な手応えを味わいながら進めていくことができる。
徒歩での移動だけでなく,乗り物や動物の背に乗って進むシーンもある
プレイ時間はクリアまでに3時間強といったところ。時間のかかるプレイヤーでも4~5時間程度だと思われる。繰り返しプレイするを促すようなデザインにはなっておらず(Steam実績はある),リプレイ性はかなり低い。1500円前後(Steamで$14.99)で購入できるゲームとしてもかなり短いほうだが,プレイは非常に濃密で,必要なものを過不足なくまとめきった,という印象が強い。このため,プレイ時間と価格を天秤にかけて判断するのはナンセンスである,とあえて言い切りたい。

さて先ほど言及したように『Brothers: A Tale of Two Sons』はコントローラ必須のゲームだ。これはすなわち,本作がコントローラでのプレイを前提として作られていることにほかならない。ディレクターであるJosef Fares氏が「PCでプレイするつもりなら,コントローラでプレイするのを忘れないでほしい。完全な体験のためにはそれがものすごく重要なんだ*1*2」と言っていることからも明らかである。

例えば「兄を左スティック,弟を右スティックで操作する」というのは狙って設定されていることが伺える。ほかのゲームでは左スティックがキャラクターの移動,右スティックが視点の移動に割り当てられやすい。このため,本作をプレイすると,左スティックで操作する兄のほうが弟よりもずっと動かしやすく,「年上の兄のほうが優れた身体能力を持っている」という兄弟の設定に合わせた挙動が,操作難度によって知らずのうちに実現するようになっている。

コントローラプレイ前提の作りはレベルデザインにもにじみ出ている。画面左側に兄,右側に弟がいたほうが,感覚的に操作しやすいのだが,これにならってゲームを進める(おそらく多くのプレイヤーは無意識にそうする)と,兄が先導し,弟がその後をついていくといった構図が自然とできあがるようになっている。特に序盤のチャプターはこの傾向が色濃い。一方で中盤以降は強制的に2人の位置が入れ替わるようなシチュエーションが出てきて,この暗黙のルールは破壊されていく。これは同時に物語上での兄弟の立ち位置の変化にも共通しており,操作を通して無意識的に物語へとプレイヤーを導いていく手法はエレガントと言わざるを得ない。
序盤の一場面。兄が先を進むようにしたほうが操作が楽なはずだ
兄弟の位置が交互に入れ替わる中盤のシーン
このように『Brothers: A Tale of Two Sons』は,そのすべてがコントローラで体験するためにあつらえてある。言葉を介さずとも世界そのものが雄弁にその存在を語っていたように,操作デバイスとそれを操作するあなたとが,まさしくゲーム体験そのものを生み出す語り部となるのだ。

さて,冒頭の問いかけに戻ろう。

繰り返しになるが,私は「ゲームである必然性がある」ゲームが好きだ。本作がまさにそれだ。ゲームでなかったら,この作品は表現できなかったのは疑いようがない。

プレイを通じて,私の左手は画面のなかの兄に,右手は画面のなかの弟になっていく。まるで初めて『バイオハザード』をプレイしたときのようにたどたどしい足取りであった弟も,徐々にうまく動けるようになる。いつも兄に引っ張ってもらってばかりだったのが,いつしか2人で力を合わせるようになり,いずれは率先して道を切り開くようなこともできるように変わる。長いようでいて短い旅によって瞬く間に彼は成長していくのだ。そう,この右手,いやプレイヤーである私と共に。

実のところ,本作を高く評価することについて,エンディングに至る部分が占める比重ははとても大きい。詳細を語るのはこれからプレイする人のためにも避けるが,台詞のない世界でゲームメカニックと,ここまでゲーム体験を経たプレイヤーの手によって物語を締めくくる様は圧巻の一言に尽きる。

『Brothers: A Tale of Two Sons』が極めて優れているのは,世界中の誰しもが同じスタートラインからプレイできることだ。操作をとってもそうだし,言葉がないこともそうだ。それに加えてエンディングの深みにあたる部分も難解な読解を必要としない。むしろとてもわかりやすい内容だと思う。しかし,終幕で心動かされるのはプレイヤーがこれまでコントローラを握ってきたからである。きっとこのゲームはプレイ動画を観てもほとんど感動はない,あるいはプレイヤーのそれとは質がまったく異なる。なぜならプレイ体験のみがその情動を形作るからである。多くのゲームがそうであることは承知しているが,『Brothers: A Tale of Two Sons』のプレイ体験は際立って異質だ。

本作はタイトルどおり,2人の息子の物語だ。だからと言って本作のテーマを「兄弟愛」と片付けるのは早計ではないかと私は思う。

これは「(弟の)成長」をテーマにしていて,「兄弟愛」は「成長」を語るためのひとつのピースにすぎないのではないだろうか。最初,私はゲームの冒頭に「弟のトラウマとなった母親を失うシーン」があることが疑問だった。弟が泳げないことが判明するシーンで挿入すればよいと思ったからだ。しかし,弟が主人公であることを示唆していると考えると,このトラウマのきっかけのシーンが最初にあることに納得が行く。物語全体を振り返ればなおのことである。

しかし,これはプレイしなければわからないはずだ。表面的に物語をなぞったところで,おおよそそのテーマには到達しえないのである。本作の描くテーマがなんであるのかは,ぜひプレイして確かめてほしい。

何も案ずることはない。

『Brothers: A Tale of Two Sons』は,すべてのゲームファンのみならず,すべての人に向けられている。本作は「コントローラを握る手に自然と力が入る『いいゲーム』」なのだ。

*1 ComputerAndVideoGames.comの記事より
*1*2 Josef Fares氏のツイートより「If you are going to play "brothers" on PC. Remember to use a controller. Its extremely important for the full experience:)」

締切は2月23日(日)13時、『LA-MULANA2』のKickstarterについて

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NIGOROの手がける『LA-MULANA2』のKickstarterプロジェクトの支援締切が目前に迫っている。

支援総額はすでに目標の20万ドルに到達。あとはどこまでStretch Goal(目標金額を超えて集まった資金によって実現するボーナスコンテンツのようなもの)が実現するかといった状況にある。
La-Mulana 2 - Kickstarter解説日本語サイト
http://newproject.nigoro.jp/kickstarter/
La-Mulana 2 - Kickstarter
http://www.kickstarter.com/projects/playism/la-mulana-2
NIGORO公式サイト
http://nigoro.jp/

ゲーム内容は、先日公開になったばかりの『LA-MULANA2』のデモ版が参考になるだろう。これは東京ゲームショウ2013に出展されていたものだ。前作にもデモ版がある。根幹を成すプレイ感覚やゲームデザインは前作からでも十分に伝わると思われるので、前作のレビューを読むのもオススメ。

ファーストインプレッション『LA-MULANA』
http://nydgamer.blogspot.jp/2012/07/la-mulana.html

ちなみにデモ版をプレイした限りでは、「前作よりいやらしい」という感覚が強い。手触りはほとんどそのままといった感じで馴染みやすい。
もちろん、『LA-MULANA』にもそういった面がないわけではない。その一方で「私が単に難易度を高めるならこうするな」という部分はそうなっていないことが多く驚かされる。きっとあえてそうしていないのだと思う。
以前、『LA-MULANA』について上のように書いたのだが、 ここがちょっと変わったかなという風に感じた。単に難しいとかいやらしいといったゲームデザインではなかったというように記憶しているのでちょっと意外だが、今後変わっていくのかもしれないし、前作について勘違いをしている可能性もあるだろう(あるいはさらに難しくなることもありえる)。

画面がワイドになったことはなんら違和感がない。極めて自然でプレイ感覚への影響も特段なかった。

支援するか迷っている人へ

稲船敬二氏の『Mighty No.9』や松野泰己氏の『Unsung Story』といった日本人にも馴染み深い開発者のプロジェクトが登場したこともあり、Kickstarterもかなり認知が広がった感があるが、なんとなく支援を迷っている人もいるかもしれない。

そういった人は過去作に触れる以外にも開発者のインタビューに触れるのもいいと思う。

というのもKickstarterプロジェクトの支援は、リリース予定作品の予約購入ではないからだ。プロジェクトの延期も少ないわけではないし、リリースされてもそれがあなたの満足の行く内容であるとは限らない(もっともこれはどんなゲーム、娯楽でも同じだからあまり意味をなさないのだが)。リリースから数ヶ月でかなりの安値で並ぶ可能性だってあるのを否定できない。

したがって、プロジェクトの応援であると同時に、その開発者の応援であると捉えるなら、その開発者はどんなことを考えているのかとか、どういった人柄であるかとかを知るのは重要だ。起こる結果すべてに寛容であれ、とまでは言わないまでも(個人的な心情としてはかなりの部分そう思っている)、リスクを承知したうえで納得できる金額で支援するのがよいと思う。

それと。

「予約購入ではない」というのは、「プロジェクト全体を盛り上げる一員として参加する」という側面もあるということだ。フォーラムなどを使って開発者やほかの支援者と積極的にコンタクトしたほうが楽しめると思う。結果も重要だが、その過程にも大きな意味がある。アルファ版の動画公開に制限がないのも幸いだ。

というわけで『LA-MULANA2』Kickstarterプロジェクトの支援締切は2014年2月23日13時。WebMoneyでの支援にも対応したので、支払いのハードルはかなり下がった。支援を検討してみてはいかがだろうか。

【インタビュー】『LA-MULANA 2』とNIGORO、Kickstarterへ挑む - Gamers' Geographic
http://gamersgeographic.com/la-mulana2-vs-kickstareter/
NIGORO 楢村匠に訊く 2[前編] TGS振り返り - Gamers' Geographic
http://gamersgeographic.com/nigoro-%E6%A5%A2%E6%9D%91%E5%8C%A0%E3%81%AB%E8%A8%8A%E3%81%8F%E3%80%81tgs%E6%8C%AF%E3%82%8A%E8%BF%94%E3%82%8A%EF%BC%86%E3%80%8Ela-mulana2%E3%80%8F%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%97%E3%83%88/
NIGORO 楢村匠に訊く 2[後編] 『LA-MULANA2』のコンセプト - Gamers' Geographic
http://gamersgeographic.com/nigoro-%e6%a5%a2%e6%9d%91%e5%8c%a0%e3%81%ab%e8%a8%8a%e3%81%8f-2%e5%be%8c%e7%b7%a8-%e3%80%8ela-mulana2%e3%80%8f%e3%81%ae%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%82%bb%e3%83%97%e3%83%88/
“30歳以上推奨”のアクションアドベンチャーとは? 『LA-MULANA』(Windows/Wiiウェア)【ファミ通インディーゲーム】 - ファミ通.comインディーゲーム
http://www.famitsu.com/serial/indie_game/201402/03047329.html
『LA-MULANA』開発者インタビュー 前編
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/01/la-mulana.html
『LA-MULANA』開発者インタビュー 後編
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/01/la-mulana_16.html

『EF-12』に前作の主人公が参戦

間接的なかかわりだけれども、おもしろい試みだと思ったので紹介。格闘ゲーム『EF-12』に、前作『LA-MULANA』の主人公ルエミーザ・小杉が参戦した。もちろん、プレイアブルである。

『LA-MULANA2』のKickstarterでの支援総額が30万ドルを突破すると、さらに『LA-MULANA2』の主人公ルミッサも参戦するのだそうだ。『EF-12』のダウンロードは、PLAYISMから可能。

EF-12にルエミーザ・小杉登場 - NIGORO公式サイト
http://nigoro.jp/ja/2014/02/2396/
『EF-12』公式サイト
http://ef-12.com/
『EF-12』 - PLAYISM
http://www.playism.jp/games/ef12/

HOTLINE TOKYO 6thのテーマは『Gone Home』。3月30日(日)吉祥寺にて

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ゲームをひとつ取り上げて、それについてああだこうだと語り合うHOTLINE TOKYO(ちなみにこの名前を掲げて1年が経った)。第6回となる次回は、The Fullbright Companyの『Gone Home』をテーマに開催する。

『Gone Home』は一人称視点の短編アドベンチャーゲームである。主人公は1年ぶりに生家に戻ったケイティ。しかし、本来彼女を迎えるはずの家族の姿はそこにはなく、家に明かりを灯しながら、家族の痕跡、そして1年の間に何が起きたのかを探していくという内容になっている。

詳しくは『Gone Home』日本語版のサイトや、HOTLINE TOKYO主催の死に舞氏による紹介記事を参照してほしい。

『Gone Home』というゲーム - Gone Home 日本語版のページ
http://gonehomej.exblog.jp/21538180/
キャラクターがまったく登場しない青春アドベンチャー!? 90年代が舞台の『Gone Home』(PC/Mac/Linux)をインプレッション【ファミ通インディーゲーム】
http://www.famitsu.com/serial/indie_game/201402/17048108.html

開催概要

以下に記す。
会場を貸し切りにしているため、参加費として600円をお支払いいただく(前回より安くなってお得な感じだ)。

参加する場合は、以下のいずれかから主催である死に舞氏へ連絡すること。

Twitterアカウント - 死に舞
https://twitter.com/shinimai
メール
aka.shinimaiアットgmail.com

Steamグループもあるので、こちらにコンタクトしてもOK。

Steamグループ HOTLINE TOKYO
http://steamcommunity.com/groups/hotline-tokyo/

『Gone Home』の購入、日本語化について

『Gone Home』はSteamや公式サイトから購入可能。

『Gone Home』公式サイト
http://www.gonehomegame.com/




公式に日本語字幕は収録されていないが、有志による日本語化が完成しており、記事執筆現在、2つの日本語化プロジェクトが存在している。

Gone Home 日本語版のページ
http://gonehomej.exblog.jp/
gonehome日本語化 - 開拓フロンティア
http://www49.atwiki.jp/gefrontier/pages/81.html
日本語化はこんな感じ

『洞窟物語』のプレイヤー座談会が2014年4月27日に吉祥寺にて開催

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過去にも数度告知を行ってきたHOTLINE TOKYO。今回はHOTLINE TOKYO CLASSICS(7th)と銘打ち、今も楽しまれるフリーゲームの名作『洞窟物語』を取り上げます。

開催概要

先に概要をば。
HOTLINE TOKYO公式サイトの告知記事は以下

Announce! HLT CLASSICS (7th) / 『洞窟物語』(Cave Story)
http://hotlinetokyo.blogspot.jp/2014/04/anounce-hlt-classics-7th-cave-story_18.html

HOTLINE TOKYOって何ですか?

テーマとなったゲームについて感想や考察を持ち寄り、語り合ってみようという会がHOTLINE TOKYOです。公式の告知記事にも「ゲームについて語り合い、議論をとおしてプレイする。」とあります。ちなみに過去に取り上げたタイトルは以下のとおり。

  • 『To the Moon』
  • 『HOTLINE MIAMI』
  • 『ふしぎの城のヘレン』
  • 『Fez』
  • 『Bastion』
  • 『Brothers: A Tale of Two Sons』
  • 『Gone Home』

しかし、主たる理念は「ゲーム好きの、ゲーム好きによる、ゲーム好きのためのイベント」なので、何もかしこまることはありません。交流会の側面も併せ持っていますし、気楽な気持ちで参加してOKです。

ただ、会の性質上、取り上げるタイトルのネタバレは避けられない点のみ、ご了承ください。欲を言えば、クリア済みのほうが望ましいですが、未クリアでも問題はありません。幸い、今回扱う『洞窟物語』は5~6時間程度でクリアできると思うので、今からプレイしても十分に間に合います(私もつい先ほどクリアしたばかりです)。

HOTLINE TOKYOに参加するには

これと言って必要なことはありません。飛び入り大歓迎ですので、参加費500円を持って、2014年4月27日に吉祥寺ピコピコカフェを訪れればOKです。できれば事前に参加人数がわかったほうがよいので、以下のサイトで参加の意志を表明していただけると助かります。

調整さん
http://chouseisan.com/schedule/List?h=f11f7b677269a66117aebdab49bc86a9

雰囲気は過去回の配信を見るのが手っ取り早いと思います。

死に舞氏のチャンネル - Ustream
http://www.ustream.tv/channel/shinimai

また、配信中にハッシュタグ「#hotlinetokyo」でつぶやいたり、Ustreamのソーシャルストリームからリアクションするといった参加の方法もあります。

『洞窟物語』はどんなゲームですか?

横スクロールタイプの2Dアクションゲームです。

銃器を使った攻撃やマップを行き来しながらの探索があり、『メトロイド』シリーズに似ています。ドット絵とピコピコ音の織りなす雰囲気やアクションの手触りのよさは格段によく、長く愛されていることも納得の仕上がりです。
また、『洞窟物語』の開発者である天谷大輔氏(開発室Pixel)の最新作『Kero Blaster』が2014年5月11日にリリース予定となっていますし、先んじて『Kero Balster』のスピンオフ作品『PINK HOUR』がリリースされています(『PINK HOUR』は無料)。

開発室Pixel公式サイト
http://studiopixel.jp/
『Kero blaster』 - PLAYISM
http://www.playism.jp/games/kero_blaster/

『PINK HOUR』 - PLAYISM
http://www.playism.jp/games/pink_hour/

※『Kero Blaster』のWindows版はPLAYISMでリリースされるが、Windows版と同じく2014年5月11日にiPhone版もリリースされる

座談会前に希望者でニコラ・ビュフの展覧会に行きます

『洞窟物語』とはまったく関係ないですが、HOTLINE TOKYO開催日の2014年4月27日お昼頃、希望者で品川の原美術館に足を運ぼうと思います。

「幼少期に見た『宇宙刑事ギャバン』が日本で生まれたと知り、日本に活動の拠点を移して活動している」というフランス人ニコラ・ビュフの展覧会です。詳しくは以下のリンクを参照してください。

「ニコラ ビュフ:ポリフィーロの夢」展 - 原美術館
http://www.art-it.asia/u/HaraMuseum/GwOPoduKS8kchb4Tmq0W/

一応、HOTLINE TOKYOプレイベントとしていますが、単に座談会に参加するゲーム好きなメンバーが集って美術館に行くというだけです。HOTLINE TOKYOの参加の可否は関係ありません。以下で一緒に行く人を募集しています。

Hotline Tokyoプレイベント - ATND
http://atnd.org/events/49951

というわけでHOTLINE TOKYO、多数の参加者をお待ちしております。

インディーゲームの小棚:Shelf#10『Monaco: What's Yours is Mine』

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ステルスゲーム大好きっ子な筆者がお送りする「インディーゲームの小棚」第10回は、トップダウンステルスアクション『Monaco: What's Yours is Mine(以下、Monaco)』を紹介する。コソコソした日常生活を送ったとしても、ノーアラートによる称賛をしてくれる人はいなく、誰からも気づかれないという理不尽仕様となっているのが難しいところ。

※本連載「インディーゲームの小棚」は、4Gamerで連載されている「インディーズゲームの小部屋」のタイトルとコンセプトを真似たものですが、「インディーズゲームの小部屋」との関連は(私が一方的にファンであるというだけで)一切ございません。

4Gamer - インディーズゲームの小部屋http://www.4gamer.net/words/001/W00176/

『Monaco』を開発しているのは、アメリカのカリフォルニア州サンディエゴのデベロッパPocketwatch Games。いくつかの作品をリリースしているが、やはりIndependent Games Festival 2010でSeumas McNally Grand Prizeを受賞したこともあり、今回紹介する『Monaco』がいちばん有名だろう。戴冠からかなりの期間を経てリリースされたため、筆者のなかでは「いつリリースされるのだろう」と思いつつも待ち続けていたタイトルで、その点においては『Fez』に近い。

ステージクリア型を採用。ステージごとに定められた目標を達成しつつ、所定の脱出地点からマップを離脱すればクリアとなる。クリア目標は、何かを盗むだとか、マップ上に囚われている仲間を救出するだとかで難しいものはない。基本的にはマップ上の財宝なり仲間なりに触れさえすれば完遂する。また、マップ上に散らばっているコインを集めることでスコア(クリア時、タイムに換算される)が上昇する。

『Monaco』の根幹を成すのは、以下の2つ。

  1. 解錠やハッキングといったアクション
  2. プレイヤーキャラクターによって異なる特殊能力

1つめは、いくつかのオブジェクトに対して行えるアクションのことを指す。具体的には解錠、セキュリティへのハッキング、変装、アイテムの入手が主なものとして挙げられる。特定のオブジェクトに触れ続ける(オブジェクトに触れた状態で、その方向に移動し続ける)ことでアクションを開始し、そのとき表示される円形のゲージがいっぱいになるとアクションが完了する。

ゲージがいっぱいになる前にその場を離れると
アクションがキャンセルされ、最初からやり直しになってしまう
上述のアクションが誰でも行えるものだったのに対して、2つめに挙げた特殊能力はキャラクターによって異なる。例えば、The PickpocketはペットのサルHectorがコインを勝手に集めてくれるし、The Moleは壁をぶち壊すことができる。ほかにもThe Locksmithのように解錠スピードが上昇するといった能力もある。これによって同じマップでもプレイヤーキャラクターによってプレイ感覚が異なるのが特徴となっている。
プレイヤーキャラクターはステージ開始時に選択する方式となっている
『Monaco』はトップダウン視点のゲームだが、プレイヤーの視界を大きく制限しているのも特徴だ。ドアが閉まっていれば、ドアの向こう側は見えないし、初めて訪れたマップならそこを実際に視界に入れるまで、構造は一切知ることができない(マップ自体は固定である)。その代わりに付近を歩く敵の足音が聞こえたり、距離が近ければ足音とともに足跡が表示されて敵の位置を推測できるようになっており、目だけではなく、耳にも頼らないといけない内容になっているのがいかにもステルスゲームっぽい。
このように視界に入らない部分はグレーで表示され、敵の位置を直接見ることはできなくなる
本作をほかのステルスゲームと比べると、ノーアラートやノーキルといったステルスゲームではお馴染みとなっている、完全なステルスプレイを推奨するデザインになっていないのが興味深い。『Monaco』では、それらを完遂してもゲーム側から褒められることはないのだ。

また、敵から発見されても、リカバリーが容易いのも特徴として挙げられる。特にゲーム序盤はこの傾向が顕著となっており、ステルスゲームを難易度の点から敬遠している人でもプレイしやすいだろう。
ステージが進むにつれ、セキュリティは厳重になっていく
マルチプレイ(協力)はシングルプレイと同じマップで、プレイヤーキャラクターが増えるという形式を採用している。このため、シングルプレイよりもさらに気楽に挑戦できるのがうれしい。アラームを鳴らしてヒヤヒヤしていたシングルプレイとは異なり、賑やかなゲームプレイになりやすくオススメ。
『Monaco』は公式サイトからHumbleヴィジェット経由での購入($15)か、Steamでの購($14.99)入が可能。Humlbleヴィジェット経由での購入は、SteamキーとDRMフリー版がつくそうだ。

『Monaco: What's Yours is Mine』公式サイト
http://www.pocketwatchgames.com/Monaco/
Pocketwatch Games公式サイト
http://www.pocketwatchgames.com/

告知

今回の更新をもって、以降の「インディーゲームの小棚」は不定期連載とする。

主な理由は、筆者があまりゲームを消費できておらず、週一更新が枷となってほかのコンテンツ(レビューなど)に力を注げなくなってきたように感じたためだ。プレイしたゲームには一定の敬意を払って紹介したいし、更新そのものが目的化してしまっては本末転倒なので、このように判断した。

もしも楽しみにしていた方がいたのなら申し訳なく思う。

より充実したコンテンツを提供できるようにしたいので、そちらに期待してほしい(なお、『Monaco』については詳細なレビューを後日書きたいと思っている)。

インディーゲームの小棚:Shelf#08『ナイトガイスト』

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連載10回を迎える間もなく、3週連続で休載してしまった筆者がお送りする「インディーゲームの小棚」第8回は、デッキ構築型のカードゲーム『ナイトガイスト』を紹介する。不定期連載にしてもいいような気もするけど、それやっちゃうと絶対更新しなくなるという罠。

※本連載「インディーゲームの小棚」は、4Gamerで連載されている「インディーズゲームの小部屋」のタイトルとコンセプトを真似たものですが、「インディーズゲームの小部屋」との関連は(私が一方的にファンであるというだけで)一切ございません。

4Gamer - インディーズゲームの小部屋
http://www.4gamer.net/words/001/W00176/

開発は丈・ふらっ子氏。第三回ウディフェス*1に出展している。

*1 WOLF RPGエディター製のゲームが集まるオンラインイベント。近しいイベントとしてWOLF RPGエディターコンテスト(通称、ウディコン)が挙げられるが、ゲーム内容を競うウディコンとは異なり、投票や順位発表といったものはない。よりお祭りという感覚の強いイベントと言ってよいだろう

ゲームはデッキ構築型と呼ばれるカードゲームの形を採っている。デッキ構築型と言えばボードゲーム『ドミニオン』が代表格だが、『ナイトガイスト』のゲームプレイも実際のボードゲームをビデオゲームとして落とし込んだような印象だ。『ドミニオン』をプレイしたことのある人なら理解もたやすいだろう。

操作はすべてマウスで行う。マウス左ボタンで決定、マウス右ボタンでキャンセル、またはメニューを開くことができる。1ゲームかかる時間は15分~20分程度。

本作は人間と魔物の軍団の激突を描いており、プレイヤーは人間側にあたる。ゲームはターンベースで進行し、毎ターン自軍の戦力を整えながら魔物軍の侵攻を凌ぎ、最終ターン(基本は20ターン)まで攻撃に耐え切れば勝利だ。ターン開始時にダイスによって決定する魔物戦力(敵軍の戦力)に対し、自陣に兵員を展開してそれを迎え撃つというのが基本的なターンの流れ。
終盤は魔物戦力決定用のダイスが6個となり、かなりの戦力を成す
自軍戦力はターン開始時に配られる5枚のカードの総戦力で決定するが、そのままでは魔物戦力に太刀打ちできないことも多いので、以下の3つのアクションをすることで自軍戦力を拡張していく。
  1. 「サプライエリア」からの兵員展開(供給)
  2. 自陣に展開された兵員による能力行使
  3. 「士気」を使用しての兵員補充
「サプライエリア」はこれから自軍に加えることのできる兵員たちが並んでいる。ここから毎ターン1枚だけ入手して、自陣に展開することができるのだ。自陣に展開した兵員の戦力は総戦力に加算されるため、毎ターン4枚のカード(初手の3枚とサプライエリアから入手できる1枚)まではノーコストで兵員を展開可能ということになる。
カードの左側に書かれた剣のアイコンのマークの下の数字が、そのカードの戦力
《騎士》の場合は戦力3だ
能力行使によって戦力を拡充することもできる。能力にはカードの入手上限を増やすもの、カードを引けるもの、「士気」を上昇させるものなどがある。ただし、能力行使できるのは自陣に展開された兵員の能力だけとなっている。とはいえ、デメリットのあるものはあまりないので、気軽に使っていけるのが魅力だ。
一部能力のないカードもある
《流浪の剣豪》は能力がない代わりに戦力がバカ高い
能力には特定の条件でのみ発動できるものも存在する
《預言者》はゲーム後半向き
さらにそれでも戦力が足りなければ、「士気」を1消費することで山札からカードを1枚引いて、自陣に展開してもよい(式の初期値は10)。士気は重要なリソースで、0になるとその時点で敗北となる。さらに自軍戦力が魔物戦力を下回った状態で戦闘した場合は、戦力差分だけ士気を失ってしまうので、自軍戦力が十分ならば士気を消費してカードを引く必要性は(ほぼ)ない。

ターンが終了すると自陣のカードはすべて捨て札へと移されて、次のターンになる。また、デッキ構築型ゲームの例に漏れず、山札を引ききった瞬間に捨て札をシャッフルして、これを新たな山札とする。このため、「サプライカード」からの兵員補充はのちのちのゲーム展開にも影響を及ぼす。ほかのカードとの相乗効果(いわゆるコンボ)などを考えて選択していこう。

『ナイトガイスト』では山札が空になったときに、山札に《難民》というカードが1枚紛れ込むようになっている。このカードはまったく役に立たない邪魔なカードとなっており、これがプレイヤーの進行予定を狂わすちょっとしたスパイスになっている。
《難民》は戦力0で、能力もないという完全なる無駄カード
と長くなったが、ここまでがおおよその本作の流れである。

1人プレイ専用ということでやや『ソリティア』っぽさがあるのは否めないが、ゲーム後半に顕著な自陣にカードがたくさん並んでいくコンボ感、インフレ感、コンボや今後のゲーム展開を考えた「サプライエリア」からの兵員補充、ライフである士気を使ってのカードドローなど、カードゲームらしい楽しさをたっぷりと味わえる。

初級、中級、上級のほかに、さらなる高難度である混沌も用意されており(ランダム要素が強いがクリアできないほどではなく、安定してクリアできる調整ではある)、この手のゲームに馴染みがない人から慣れ親しんだ人まで気軽にプレイできる。『ナイトガイスト』は第三回ウディフェスのページから無料でダウンロード可能だ。
どこまで詰めた内容かは不明ながら、スコアアタックもできる
第三回ウディフェス(2013年)応募作品 - ウディフェス
http://hinezumi.velvet.jp/wodifes/contents/pastworks/2013/pastworks_2013.php
※『ナイトガイスト』は59にエントリーされている

ニコニコ超会議2がらみのニュース

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2013年4月27日、同28日に幕張メッセで開催されるニコニコ超会議2に関していくつか。

ニコニコ超会議2公式サイト
http://www.chokaigi.jp/

『TorqueL』がニコニコ自作ゲームフェスでなんらかの賞を受賞

FullPowerSidAttack.com のなんも氏が手がけた『TorqueL(トルクル)』が、ニコニコ自作ゲームフェスでなんらかの賞を受賞したと、なんも氏がブログで明かしている。どの賞を受賞したのかは伏せられているそうで本人もわからないそうだ。
『TorqueL』は、同氏の過去作『BREAKS』や『ARP-BOX』とは毛色の異なる2Dアクションゲーム。

ゲームの目的は極めて単純。プレイヤーキャラクターをステージ上にあるゴールへと導けばよい。プレイヤーキャラクターは左スティックで転がることができるが*1、自力でジャンプできないというのが大きな特徴で、ジャンプの代わりに「あるもの」を使ってステージを進んでいく。「あるもの」というのはプレイヤーキャラクターを囲っている枠のことだ。この枠は4色にわかれており、それぞれの色に対応したボタン(赤ならBボタン、青ならXボタン)を押すことで枠が棒状に伸び、それを使って活路を切り開いていくというゲームになっている。

*1 Xbox 360 コントローラーに対応している。キーボードでの操作も可能。

ゲームプレイは、棒を伸ばしてすぐに縮めて(ボタンを放すとすぐに棒は収縮する)ジャンプしたり、棒をひっかけて高所に登ったりといったアクションがベースとなっており、一見とてもシンプルなのだが、アナログな操作感覚が奇妙な味わいとプレイの幅を作り出している。ちなみにステージは全部で10あるのだが、私はステージ7あたりで挫折している。

【追記あり】ニコニコ自作ゲームフェスの何かの賞を受賞したらしい件 - 戸袋に手を引き込まれないように
http://nanmo.hateblo.jp/entry/2013/04/19/222050
[Release] TorqueL prototype 2013.03 - FullPowerSideAttack.com
http://fullpowersideattack.com/post/46644047292/release-torquel-prototype-2013-03

そのほかの受賞作について

ほかのゲームはプレイしていないのでタイトルだけの紹介になるが、以下の作品もなんらかの賞を受賞していると、開発者が明かしている。

『感染性ナイトメア』

※Twitterで知って雰囲気が好みだったのでプレイを予定していたのだが、なぜかセーブができなかったのでプレイを断念している。

『くのいちと小判』
『迷宮航路グラナドア』
※第三回ウディフェス出展で気になっていたタイトル。プレイ済みなのだが、個人的に合わず1プレイのみで終えてしまった。本作はテキストオンリー(画と音楽なし)のRPG。キャラメイクに、ダイスで諸々の判定を行ったりとTRPGライクな手触りで、ネットワーク機能も使っている。

『BoneStage(ボーナステージ)』
『Treasures of the dragon』
なんと!受賞を伝えるメールではありませんか!!!
なんとあのTreasures of the dragonが受賞ですよ!!
http://blog.ap.teacup.com/sakuseioi/139.html

なお、敢闘賞受賞の作品者には「敢闘賞受賞の旨」の連絡が来ている模様。以下にタイトルを列挙しておく。なお、出典はニコニコ大百科(仮)の「ニコニコ自作ゲームフェスについて語るスレ」とTwitter。

  • 『使い捨て勇者』
  • 『ギャンブルクエスト』
  • 『ゴーレムのハーレムでメルヘンなADV』
  • 『コトノハタウン』
  • 『ジャイアントバスター』
  • 『女子中学生の衣服をバラバラにするゲーム』
  • 『しりとりパズル ルリルのことば』
  • 『ステップステップ2』
  • 『スナグマンズ・バトルホイール』
  • 『世界終焉神話 MYTHOS 第一部 前篇』
  • 『どんぱっぱ』
  • 『爆裂サンタ†スーパーマリィ』
  • 『はじめての宿屋さん』
  • 『ボツネタ通りのキミとボク』
  • 『蟲喰いノ哭』
  • 『ワタシノホネ再構築』
  • 『42 : ななし』
  • 『Duple Story』
  • 『IOAL』
  • 『MuNiCa~Cry of Pluto』

敢闘賞は当初予定になかったが、盛況ぶりを見て急遽追加したものらしいという話も聞こえてきている(ただし、真偽は不明)。分断されている部分も多い、さまざまなゲーム開発クラスタが一同に介した意味は大きいと個人的に感じている。

ニコニコ自作ゲームフェスの授賞作発表及び、受賞式は2013年4月28日の11:00~12:00に行われる。

ユーザー企画ブースにて同人ゲームブースが出展

ユーザー企画ブースにて、関西同人ゲーム制作者交流会の筆者氏が同人ゲームブースを出展するそうだ。開催日時は2013年4月27日の11:00~13:00となっており、タイムテーブルは以下のとおり。

第1部 同人ゲームサークルさんの本音(11:00~11:30)
  1. 作品開発と発表
  2. ユーザーからの質問など
2012年末『ファタモルガーナの館』をリリースしたNovectacle。同サークル代表の縹けいか氏を迎え、開発と発表から今後に至るまでを訊いていく。
コミケで壁になった時に作品完成しなかった話などは是非聞いてみたいものです。
ということらしいので結構突っ込んで訊くつもりのようだ。以前、本ブログと協力して募集を行った質問にもいくつか答える予定らしい。

ニコニコ超会議2に出演します!! - Nove blog
http://novectacle.lys.hiho.jp/?eid=80

※記事作成遅れておりまして申し訳ございません

2部 完成率10%未満。東西同人ゲーム交流会トーク
  1. 東西で同人ゲームサークルやクリエイターが集まる交流会を開催している方を招いてのトークを行います。
  2. 完成率10%は本当なのか!?
3部 同人ゲームから商業ブランドへ

「仕事を辞めて(エロゲ)メーカーを立ち上げる」という言葉を実際に実行したSMILE(スミレ)からディレクションとシナリオを担当している雪仁氏を招いてのトークショー。

各部の合間には同人ゲームサークルの紹介が行われる予定となっている。2部と3部の相田にはスタジオKPCのけっぽし氏が登場するようだ。

ユーザー企画ブース! - ニコニコ超会議2 公式サイト
http://www.chokaigi.jp/2013/booth/category/userbooth.html
関西同人ゲーム制作者交流会 - ニコニココミュニティ
http://com.nicovideo.jp/community/co1975904

インディーゲームの小棚:Shelf#09『Henry Attacks!』

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明日に迫ったPC版『Fez』のリリースを心待ちにしている筆者がお送りする「インディーゲームの小棚」第9回は、2Dと3Dの世界を切り替えつつ進むアクションゲーム『Henry Attacks!』を紹介する。「頭の切り替え」なんてよく言いますけど、そういうのが苦手な筆者のような人は「マルチタスク人間だ」と言い張っていきましょう。

※本連載「インディーゲームの小棚」は、4Gamerで連載されている「インディーズゲームの小部屋」のタイトルとコンセプトを真似たものですが、「インディーズゲームの小部屋」との関連は(私が一方的にファンであるというだけで)一切ございません。

4Gamer - インディーズゲームの小部屋
http://www.4gamer.net/words/001/W00176/



『Henry Attacks!』はロシアのデベロッパMechanical Starlingによるアクションゲーム。ゲームの目的は、とにかくマップの上方を目指すこと。そこかしこに落ちている銃器やアイテムを拾ってプレイヤーキャラクターのHenry(かどうかはわからないが、便宜上Henryということにしておく)を強化しながら先へと進んでいこう。

ユニークなのは、マップを2D表示と3D表示とに切り替える機能があることだ。この機能はYボタンを押すことでいつでも使用でき*1、一見行き止まりに見える場所をこの表示切り替えを使って進むのにが基本となる。

*1 Xbox 360コントローラーに対応。アナログスティックには対応しておらず、キャラクターの移動は方向パッドで行う。
例えばゲーム冒頭の青いバーで遮られている場所で3D表示に切り替えると……
道を塞いでいた青いバーが画面手前側に表示され、先へと進めるようになる
一見足場がないこんな場所でも……
2D表示に切り替えると、
手前側(先の写真、右下部分)にあった足場が目の前に現れる
また、Henryに次々と襲い掛かってくる敵たちの移動範囲も画面表示に依存するため、この切り替え機能をうまく使うことで敵を撒いたり、閉じ込めたりもできる。マップが完全固定であるため、プレイの新鮮さは徐々に失われていくのだが、一方で敵の出現は完全固定ではなく、プレイヤーには状況に合った対応が求めら、飽きないように工夫がされている。
開けた空間があれば、3D表示で敵をやりすごしたりできる
ランダムという点で言うと出現するアイテム類もプレイを豊かにしている。はじめは非力なハンドガンで進んでいくHenryだが、貫通効果のあるマグナムや着弾時の爆風が強力なバズーカ、近接戦闘向きのチェンソーなど個性豊かで多彩な武器が用意されており、それらを使いこなす楽しさがある。なお、武器は一度に1種類しか持つことができない。

アイテム類はライフを回復する食べ物系のほか、Henryに特殊な能力を付加する帽子系(B
ボタンで装備)、ジャンプ力やライフを増強するもの、シールド(実質ライフ2倍)などがある。アイテムの入っている金庫を開けるための鍵、エレベーターを使うためのお金といったように、単体では意味を成さないアイテムもある。

先述のようにマップは完全固定で、さらにリアルタイムで操作を要求するアクションゲームなのだが、ランダムに現れる武器やアイテムを駆使して、先へ先へと進んでいく感覚はローグライクのそれに近い。たまに現れるやたら強力なアイテム(ジャンプが浮遊になり、どんどん高所へ上昇していける帽子、自動追尾武器のfirefliesが筆頭)もその感覚を後押ししている。

惜しむらくは、リトライがステージの最初からなことだろう。

本作の難易度は決して低くなく、どうしても同じ場面の繰り返しになりやすい。いくらランダム要素で状況に「ゆれ」を作り出しても結局のところ、見栄えはあまり変わらず、プレイヤーが上達している手応えがやや薄い。開発へもそういった要望がいくつか届いているようでアップデートも検討しているようだ。今後に期待したい。
2Dと3D、両方の表示が用意されているアイテム類のグラフィックがかわいらしい
公式サイトにはハイスコアランキングが掲載されている。登録は自動ではなく、プレイヤーがゲーム上でデータを送信する必要がある。ちなみに筆者はかつてトップランカーだったのが現在は6位へと転落してしまった。

HIGH SCORES - 『Henry Attacks!』公式サイト
http://henryattacks.com/Highscores/Highscores.php
『Henry Attacks!』はDesuraで無料で配信されているほか、公式サイトからも無料でダウンロードが可能(元は有料ソフトだった)。シンプルながら驚きのある仕掛け、歯ごたえのあるゲームプレイと魅力的な部分も多いのでぜひプレイしてみてほしい。

『Henry Attacks!』公式サイト
http://henryattacks.com/
『Henry Attacks!』 - Desura
http://www.desura.com/games/henry-attacks
Mechanical Starling公式サイト
http://mechanicalstarling.com/

別サイトでの『Henry Attacks』の紹介記事
Henry Attacks! - またたび屋敷
http://matatabi-yasiki.blogspot.jp/2013/04/henry-attacks.html

2YDGamer

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ながらくほったらかしになっている本ブログですが、この度、ちゃんと更新停止いたします。
今まで読んでいただいた方、協力していただいた方、本当にありがとうございました。

2YDGamerでお会いしましょう。


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